【事案】
自動車に搭乗、信号待ち停止中に、左方より右折車の正面衝突を受けたもの。以後、頚部・腰部及び、肩関節の痛みに悩まされる。
【問題点】
本件は弁護士からの調査依頼で、受任時にはすでに後遺障害診断書が記載されていた。頚椎捻挫・腰痛捻挫など、おなじみの診断名に、肩腱板損傷(棘上筋不全断裂)の診断名が続いた。さらに、肩関節の可動域の外転が90°と、左右差1/2(10級10号?)となっていた。
受傷機転から、肩関節に棘上筋が断裂するほどのダメージがあったのかが問われるが・・・自賠責の怒りを買う事必至と思った。この場合、医師の診断名は患者サービスに過ぎ、正しくは「棘上筋損傷の疑い」に留まるもので、多くは頚部神経由来の頚肩腕症、肩関節炎の発症、痛みからの関節拘縮であることが多い。毎度のことだが、このまま提出するにためらわれる内容であった。
ためらわれる理由 ⇒ 肩腱板損傷の認定、過去記事から 発端編
【立証ポイント】
出来るだけ受傷機転他、事情を説明した文章を添付したが、案の定、自賠責から「怒りの非該当」回答が戻った。
実は認定結果がでる前から、肩関節の症状を究明する為、専門医に誘致していた。そこでのエコー検査では断裂を示す所見はないと、専門医は明言した。痛みから動かさないことで拘縮が進んだもので、事故との直接因果関係からは遠いことになる。
そこで、2つの対策をとった。一つ目は、同医師の指導の下、理学療法を再開して肩関節の回復を進めること。90°の可動域など、賠償金以前に日常生活への支障を取り除く必要がある。
2つ目は、最低限の後遺症を認めてもらうこと。肩関節はひとまず置いておき、主治医に意見書を記載頂き、少なくとも頚部・腰部の神経症状が続いていることを主訴に、14級9号に絞って再申請に臨んだ。
結果、頚・腰共に症状の一貫性から14級の認定を受け、あるべき解決の軌道に戻した。
(令和3年12月)
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