【事案】
歩行中、自動車の衝突を受け、骨盤を骨折した。自動車は逃走したが、後に逮捕され、幸い任意保険の存在を確認できた。
内臓損傷は数箇所に及び、大腸・小腸の切除と一時的な人工肛門の増設を含め、腹部に数度の手術を施行した。不幸にも、最初の術中に低酸素脳の状態が生じ、脳にも障害を残すことになった。
低酸素脳を原因とする「神経系統の機能又は精神の障害」は、弊所初の受任である。
【問題点】
主な症状は、軽度の言語障害と易疲労性、体感バランス・筋力の低下、4肢への軽度麻痺が確認できた。加えて、精神面でもダメージがあり、落ち込む、鬱になるなど、派生する症状も見逃すことはできない。
【立証ポイント】
深刻な知能・記憶の障害はなく、従前と変わらないことから、高次脳機能障害との診断名は採用されていない。それでも、立証の手法は高次脳機能障害を踏襲することなる。リハビリ科の主治医と面談を重ね、神経症状を大きく2つに分けて、立証作業を進めた。
1、運動機能の低下
→ 医師と日常生活動作検査表を作成し、麻痺の詳細を明らかにした。加えて、言語障害は言語聴覚士の先生と協議、リハビリ過程で実施したディサースリア検査(発声発語器官の検査)に加えて、SLTA検査をリクエスト、”話し方がゆっくりになった”点について客観的データを揃えた。
2、精神機能の低下
→ 既にWaisⅢ(知能)、WMS-R(記憶)、CAT(注意機能)、BADS(遂行機能)が実施されていた。追加検査は必要ないと判断し、検査結果と実際の症状を文章7ページにまとめた。あくまで本人の主観的データ(自己判断、自己申告)に過ぎませんが、審査側にしっかり伝えなければならない、重要なものと考えています。
SLTA検査シート(参考)
軽度の言語障害、四肢麻痺、易疲労性、そして、精神面での意欲・活動の低下が認められ、総合的な判断から7級に押し上げた(臓器の障害と併合され、併合4級に)。
※ 併合の為、分離しています
(平成30年4月)