【事案】
バイクで交差点を直進中、対抗自動車が右折急転回してきた為、衝突してバイクから投げ出された。診断名は、クモ膜下出血、硬膜下血腫、脊髄損傷、顔面骨折、肋骨骨折、血気胸、大腿骨転子部骨折、脛骨・腓骨骨折、さらに右上腕神経引き抜き損傷となった。
当然に高次脳機能障害の懸念があるが、それより、数日後に脳梗塞が頻発され、その原因として椎骨動脈解離を起していた。緊急にコイル塞栓術で動脈解離を防いだが、脳障害が重度化され、左半盲も生じた。また、徐々に体力が回復する中、とくに短期記憶障害と易怒性が目立った。
脊髄損傷は最終的に右半身に麻痺を残すことになった。それ以上に右上腕の神経損傷から、右上肢の可動は完全に失われた。その他は顔面に線状痕が残った。
【問題点】
加害者が保険会社に事実と違う事故状況の説明をしたため、治療費の対応がされなかった。したがって、自身の人身傷害に治療費を請求してしのいだ 。続いて、特約を使って弁護士に委任したものの、その弁護士が後遺障害全般に不慣れであったため解任、いよいよ弊所への相談となった。
本件は多枝に渡る障害を追う、およそ三人分の立証作業が課せられた。高次脳機能障害と脊髄損傷による麻痺は、”神経系統の障害”として総合評価になるが、事故による直接的な障害と、椎骨動脈解離による脳障害、脊髄損傷による麻痺、これらを各々遺漏なく正確に診断書に落とし込む必要がある。これから長く厳しい立証作業に入った。
【立証ポイント】
高次脳機能障害や脊髄損傷は、その障害の程度について、家族の訴え、検査結果、医師他専門士の判断、これらの整合性を整えなければならない。仙台まで病院同行、4つの病院、合計7科をめぐり、丁寧に診断書と検査結果を揃えた。それでも、申請後、すべての治療先に医療照会がかかった。それらに対する意見書ついても、丁寧に1科ごとに附属書類や手紙を添えて依頼、慎重に取得を進めた。審査はおよそ8か月に及んだが、妥当と思える5級2号の結果となった。内訳を想像するに、高次脳で7級レベル、脊髄損傷で9級レベルと思う。
最終的に、左同名半盲で9級3号、上腕神経麻痺で5級6号、醜状痕の9級16号から併合2級とした。
自賠責保険の評価では最高の成果となった。しかし、後の訴訟は2年半に及び、秋葉も弁護士の指示の下、画像鑑定や医師の意見書の取得、書面作成に奔走することになったが、結果としては等級の維持はできなかった。もっとも、半身麻痺の回復が進んだこと、顔面の醜状痕はそれ程目立たず、かつ逸失利益に換算されないこともあって、訴訟上4級レベルの賠償金額でも仕方ないか。自賠責では大勝も、訴訟ではドローに持ち込まれた感があるが、裁判官が示した和解額は実態に沿った金額と言える。厳しい状況から、依頼者さまとご家族、弁護士と共に遺憾なく戦い切った。
※ 併合により分離しています
(令和1年12月)