【事案】
歩行中、自動車に衝突される。頭部を強打し、意識不明の状態で救急搬送、急性硬膜下血腫、脳挫傷の診断が下された。
【問題点】
本件事故以前に「中心性頚髄損傷」の手術を受けており、他にてんかん等様々な既往症があった。したがって、事故以前の症状を知るべくカルテ開示からスタートした。カルテの精査とご家族、代理店さんからお話を伺い、既存障害が本件脳損傷とはほとんど関係ないことを確認したつもりであった。
【立証ポイント】
最後に実施した検査が2年も前だった為、病院同行で検査を改めて検査依頼し、いつも通りに、ご家族、代理店さん、医師、臨床心理士と一緒に本人の障害についてあぶりだしていった。書類作成作業では、奥様から具体的なエピソードを伺った。職人らしい一本気な性格だったせいか、医師も「元々そういう性格が今回の事故で助長された。」と話しており、元々の性格と事故外傷による症状を切り離すことに苦労した。「記憶障害」、「易怒性」、「固執性」に特化した文章を完成させ、調査事務所がどう判断するか審査を待った。
高次脳審査会も調査に時間を要し、延長通知が4回届き、結果が出たのは申請から10ヶ月後であった。3級認定に喜んだのも束の間、既存障害の「中心性脊髄損傷:5級2号」が加重障害としてマイナスされていた。早速、医療照会資料を開示し、ご家族や代理店さんにも以前の事故について聞き取りをした。その結果、「中心性脊髄損傷」は事前にうかがっていた自損事故での申請ではなく、政府の補償事業で5級2号が認定されていたことが判った。
異議申立は諦め、3級3号-加重障害5級2号にて後遺障害手続きは終了となった。何年も前の既往症で家族も良く覚えておらず、聞き込みに頼った医療調査で事前に把握できていなかったことは、反省すべきであった。
(平成30年10月)