【事案】
道路で作業中、前方不注意の自動車が工事中の表示を乗り越えて進入、跳ねられた。顔面の頬骨、頚椎、胸椎、胸骨、肋骨、骨盤、中足骨に至るまで20箇所以上の骨折に歯牙損傷、血気胸も加わる重傷となった。
【問題点】
症状が多肢に渡るが、その内で首を反らす「後屈」に制限が残存した。しかし、頚椎の骨折箇所が棘突起であった為、可動域制限は認めてもらえないだろうと予断した。C3とC4、C6とC7の棘突起の癒合が進むも、下のCT画像の通り癒着を起こしていた。これが後屈制限の原因である。せめて変形障害を主張するも、神経症状の14級9号の判断をされた。
尚、労災では顧問医の診断で後屈の制限から、素直に8級を認めて頂けた。
【立証ポイント】
本件は加害者が無保険であり、自身加入の人身傷害・無保険車傷害への請求、それも裁判基準での回収を目指すものであった。連携弁護士と打合せの上、相手に資力がなくとも訴訟を起した。その際、労災での頚椎8級認定と胸椎の11号の併合7級を前提に主張、あっさり判決で認められた。
次に計画通り、人身傷害にその判決額を請求も、「自賠責は併合10級ですから・・」と判決額はもちろん、後遺障害等級を盾に難色を示してきた。埒があかず、自賠責に対して再認定を得なければならなくなった。再度、病院に同行して主治医に協力を依頼、後遺障害診断書に再計測値を追記頂いた。続いて、労災と障害年金の診断書、そして判決文を添付し、複数の医師の計測値を集計した意見書と画像打出しを作成した。「実態上、首の運動障害が残存していること」について、経過的に医証を重ねた。
自賠責の基準上、頑なに否定してくることを覚悟したが、「裁判までの一連の経過」を尊重、頚椎の運動障害が再認定された。この8級2号に胸椎の変形:11級7号を併せて7級相当となり、さらに、胸骨の変形:12級5号が併合され、労災の認定等級を上回る併合6級となった。
前例のない判断に自賠責の柔軟性をみたが、本被害者の窮状をみれば当然の結果とも言える。後は、鬼の首(自賠責6級の頚部)を獲った連携弁護士から、保険会社に問答無用の請求を行うだけである。
※ 併合のため、分離しています。
(令和1年5月)