【事案】

高速道路で渋滞中、後続車に追突された。直後、脳震盪を起すも、自走して目的地に向かった。翌日から通院開始する。単なるむち打ちでは説明がつかない頭痛、目のかすみ、不眠、健忘症が生じた。

そして数日後、匂いがしなくなったことに気付く。

【問題点】

頚椎捻挫を契機に様々な不定愁訴(なんだか調子悪い)が生じることは珍しくない。しかし本件は「むち打ちで嗅覚が失われた?」ことを立証しなければならない。器質的損傷がない嗅覚障害である。これは我々の仕事の中で最も難しいミッションの一つと言える。

【立証ポイント】

整形外科だけでは話にならない。複数の科で丁寧に検証していくことなる。まず基本通り、耳鼻科でT&Tオルファクトメーター検査、アリナミンPテストを実施して「嗅覚脱失」を明らかにする。しかし嗅覚脱失の原因に踏み込まなければ非該当が待っている。
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続いて脳神経外科を受診し、CT、MRI、スペクト等あらゆる画像検査を実施する。やはり目立った所見はでない。そこで方向を変えて高次脳機能障害の評価で有名な医師を受診し、MRI(T2スター)等の画像検査、数種の神経心理学検査を実施する。高次脳機能障害の発露の一環、つまり脳外傷に起因する感覚器障害であるかについて専門医の意見を乞う為である。

いよいよ自賠責へ提出の際、事故直後の受傷機転について詳細な説明、写真を添付する。追突の衝撃はヘッドレストの軸がへしゃげて後方に飛んだ位の衝撃である。

これらの診断結果、検査結果、申述書から嗅覚障害12級相当の認定を導いた。脳障害については 当然、否定された。しかし長期にわたる治療、その過程で行った執念深い検査などが訴えの信ぴょう性を担保したと自負している。

(平成25年11月)