【事案】

道路を横断中、自動車の衝突を受けたもの。骨折箇所は、上肢は左上腕骨骨幹部、下肢の脛骨・腓骨は骨幹部、右肋骨、左骨盤、右足趾は母指・基節骨、第2~5中足骨。加えて頭部・顔面の打撲。

【問題点】

足趾(足指)を除いては、骨折箇所が関節に直接影響を及ぼさない所ばかり。上肢・下肢は骨幹部で、予後の癒合は良好。また、肋骨と骨盤(恥座骨)も癒合さえすれば、深刻な障害は残らない。しかし、高齢者である。上肢は肩関節、下肢は足関節の拘縮が進み、可動域制限が残存した。

高齢者にこれだけの骨折があれば、もはや、歩行は不能となる。事実、リハビリを重ねても車イス脱却とならなかった。

最初の相談時、これらの可動域制限は、自賠責の認定基準から認定されない可能性が大であることを説明、足趾など認定されるところを確実に抑えること、高齢故の2次的な障害は後の賠償交渉に委ねること・・高齢者の交通事故解決の現実を予告しての受任となった。

【立証ポイント】

高齢者の後遺障害は日本一を名乗りたい位、様々な実績を重ねてきた弊所、本件もその挑戦の一つとなった。
 
医師面談を重ね、主治医の信頼と協力を得た。症状固定の際も立ち会い、二次的な拘縮であろうと肩関節、足関節、そして認定が見込める足趾一本一本を主治医に丁寧に計測頂いた。

特別な資料として、リハビリ記録を入手し、要介護認定の申請・認定資料の開示を実施、それら資料からリハビリ努力と介護の実態を訴えた。また、ご家族と協力して、障害の実態を訴える文章を作成、万全の申請を敢行した。これは、後の賠償交渉を見据えての書類収集とも言える。
  
認定は早々と届いた。足趾は、「1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの」=11級9号に。しかし、肩と足首の可動域は、”関節に直接の骨折がない”ことから認めず、予想通りの認定結果に。介護状態も、事故外傷と直接因果関係がないので、まったくのスルー。

本件のように、二次的な関節拘縮=リハビリ不足は被害者の責任・・これを高齢者に当てはめるなど、老若男女均一の認定基準である自賠責の欠点と言える。本件に限らず、弁護士と共に「正当な後遺障害」の評価を追及・追求・追究していきたい。

(令和2年2月)

※ 併合の為、分離しています