【事案】

自動車直進中、カーブでスリップし、対向車線に停車中のバスに衝突する。その際、左足首をダッシュボード下に挟み、脛骨内果、腓骨頸部を骨折、距骨から関節脱臼した。

【問題点】

100:0事故で相手に何も請求できない。業務中事故なので労災で治療費だけはカバーできた。しかし自車は会社の車両で、掛金節約のためから人身傷害特約、搭乗者傷害保険を付けていなかった。会社も「対人、対物賠償のみ。労災以外、何もおりる保険はない」との認識。肝心の代理店さんも自損事故保険の請求に気付かない状況。また会社側は相手から取れない自社車両の修理費損害に憤慨し、ケガから復職不能の被害者に対して、保険使用に協力的ではない。

【解決ポイント】

まず会社の責任者、代理店、保険会社に丁寧に説明を行い、保険使用の道筋を作る。自損事故保険の請求など誰も慣れていない。請求した方が皆のためになることを理解させなければならない。
このように自分で契約していない会社の自動車保険となると、ほとんどがそのまま泣き寝入りのケースと思う。本件解決の肝はここにありです。

後遺障害立証はいつも通り、医師面談を行い、関節可動域の計測に立合う。しかし、完成された診断書の計測値に誤りがあり、毎度のことですが後日計測値の修正をお願いした。併せて労災の後遺障害診断書も仕上げた後、労災のレセプト開示請求を行い、自社認定へ漕ぎ着ける。保険会社の担当、代理店と何度か電話で協議し、10級11号を抑える。

自損事故特約から後遺障害で10級=280万円、入院と通院で536000円、合計3336000円を確保。そして、労災からは支給調整のない満額の後遺障害給付を得る。支給調整(労災の金額から自損事故保険金を差っ引く?)を検討する労災に対して、「自損事故保険の給付は逸失利益と同視できるものではなく単なる傷害保険です!」と主張した。これも本件のもう一つのポイント。

このように身近に保険に精通する者がいるかいないか、間違いのない専門家に依頼するか否かで大きく運命を分けるのです。弊事務所に相談する前は、どこの事務所からも「残念ながら何もでない」と回答されていたのです。

ちなみに会社は保険金の入った被害者から自社車両の修理費を回収できました。これが会社の協力を引き出す一番のポイントだったかもしれません。

(平成25年8月)