【事案】
8年前に自動車事故で両大腿骨、恥骨を骨折、頭部は外傷性くも膜下出血となる。本人・家族は後遺症を残さないことを目標、治療に全力を注ぎ、以後の小中高校生活をリハビリで過ごすことになる。しかし、歩行や生活全般に様々な不具合を残すが完治ならず。ようやく賠償問題解決に進む決意のもと相談会に参加された。
【問題点】
長い治療年数から症状はある程度回復をみせ、微妙な検査数値・画像ばかりで後遺障害の的が絞れない。つまり、本件最大の問題ははっきりした等級に集約できないことであった。画像の保管期間5年も超過しており、集積に苦労の連続、完全取得とはならなかった。もっとも成長に伴って変化するので、頭部、骨折部すべて撮り直しを行った。
【立証ポイント】
嚥下障害は口腔外科でVF検査を実施、脳神経外科では視覚認知検査、神経心理学検査を数種、整形外科では下肢のXP、CT検査を実施、耳鼻科ではT&Tオルファクトメーター検査、醜条痕の写真撮影・・・立証作業のオンパレード。あらゆる可能性を排除せず、徹底的な検査を重ねに重ね、病院同行は18回に及んだ。
(参考画像:嚥下造影検査)
結果は神経症状をすべて高次脳機能障害の7級に包括して評価、下肢は短縮の13級8号と股関節の可動域制限12級7号が併合された。特に嚥下障害(11級レベル)、嗅覚障害(14級レベル)、めまい・ふらつき(12級13号レベル)・・など多くの症状から9級評価を7級に押し上げた感がある。立証側も大変だったが、調査事務所の柔軟かつ誠実な評価にお疲れさまと言いたい。
弁護士に引継ぎ後の賠償交渉も、相手保険会社は請求額全額をあっさり認め、異例の全面勝利。また、家族契約の人身傷害保険に請求した過失分も「人傷先行するぞ!(人身傷害を先に請求する)」と強硬姿勢を見せた弁護士に対し、こちらも裁判基準での支払いを容認した。このように立証が強固であれば、弁護士の戦いも強力な論陣が展開できる。複雑かつ年数が経っている本件は、保険会社も反証にうんざりだからだろう。
被害者とご家族にとって長く険しいリハビリと立証作業だったが、その苦労は賠償の完全勝利で結実した。
(平成26年6月)