弊所の実績を観ても、肋骨骨折は明らかな変形が無い限り、等級はつかないものです。変形の12級5号、痛みの13号はもちろん、14級9号がつくとしても、近い部位である腰椎捻挫で認められる傾向です。この点、本件は肋骨骨折後のわき腹痛に14級がついた珍しい例と言えます。

 他に、プラトー骨折の14級9号、腰椎横突起骨折後の腰痛に14級9号がつきました。これらはお馴染みの認定でしょうか。 また、自賠責保険の有責条件である”他人性”、後の賠償問題では主婦性の立証など、勉強になる論点が目白押し、新人さん向けの研修になるような案件でした。   ついでの認定かな?

14級9号:肋骨骨折・腰椎横突起骨折(70代女性・静岡県)

【事案】

友人の自動車の後部座席に搭乗・走行中、交差点を赤信号で直進、対抗右折車と衝突したもの。明らかな赤侵入のため、直進車の過失が100%となった。すると、被害者にとって自車の運転者が加害者となる。その損保社の対応で治療を進めていた。骨折箇所は膝(脛骨近位端)と肋骨、腰椎横突起。   【問題点】

肋骨、腰椎横突起共に、ひどい転位や変形の危険がなければ保存療法となる。癒合に問題なければ、12級に届かないどころか、14級も否定されることがある。   【立証ポイント】

後遺障害診断書に骨折部分の痛み、不具合を丁寧に記載頂く。肋骨は脇腹痛、腰椎横突起は腰痛として、それぞれ14級9号が認定された。   ★ 併せて認定、手術しない程度のプラトー骨折で14級 👉 14級9号:脛骨高原骨折(70代女性・静岡県)  

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【事案】

友人の自動車の後部座席に搭乗・走行中、交差点を赤信号で直進、対抗右折車と衝突したもの。明らかな赤侵入のため、直進車の過失が100%となった。すると、被害者にとって自車の運転者が加害者となる。その損保社の対応で治療を進めていた。骨折箇所は膝(脛骨近位端)と肋骨、腰椎横突起。   【問題点】

肋骨の骨折は、ひどい転位や変形の危険がなければ保存療法となる。癒合に問題なければ、12級に届かないどころか、14級も否定されることがある。   【立証ポイント】

後遺障害診断書に骨折部分の痛み、不具合を丁寧に記載頂く。肋骨はわき腹痛として14級9号が認定された。これは、比較的珍しい認定結果と思う。

(令和5年5月)

※ 併合の為、分離しています。  

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【事案】

友人の自動車の後部座席に搭乗・走行中、交差点を赤信号で直進、対抗右折車と衝突したもの。明らかな赤侵入のため、直進車の過失が100%となった。すると、被害者にとって自車の運転者が加害者となる。その損保社の対応で治療を進めていた。骨折箇所は膝(脛骨近位端)と肋骨、腰椎横突起。   【問題点】

加害者となる運転者は友人の為、執拗な賠償請求はしないことに留意する必要があった。

また、骨折状態からプレート固定なく保存療法が選択された。何より、年齢以上に回復が良く、リハビリも精力的に行った結果、膝の可動域はほぼ正常に。   【立証ポイント】

本人の回復努力に敬服も、痛み等不具合は残るはず、主治医に細かく説明し、診断書を記載頂いた。

同乗者の事故ゆえに、自賠責から同乗の理由・状況を調べる回答書が追加要請された。恐らく運転者との他人性(Q)を調べる意図があったと思う。その分、審査期間が延びるも、無事に14級9号の結果を得た。

Q:他人性とは? ⇒ 自分の車を他人に交代して運転させ、その車に同じ目的・行先で同乗していた場合、自賠責はおりません。これは「自分の為の運行」になり、他人からの加害行為から外れるからです。自賠責保険は賠償保険ですから、あくまで他人からの危害でなくてはなりません。

(令和5年5月)

※ 併合の為、分離しています。    

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過換気症候群(かかんきしょうこうぐん)

  (1)病態

 胸部の外傷で紹介する傷病名の中で、もっとも軽傷なもので、後遺障害を残すこともありません。肩の力を抜いて、学習してください。

 ヒトが生きるには新鮮な酸素が必要であり、呼吸によって吸い込んだ酸素は全身を巡り、細胞の中で消費されて二酸化炭素となり、肺から呼吸によって吐き出されています。つまり、呼吸とは、酸素を吸って二酸化炭素を吐き出すことなのです。   (2)症状

 さて、過呼吸とは、呼吸が速く、浅くなることですが、この発作を目の当たりにすると、間断なく息を吐き続けるのですが、息を吸うことを忘れてしまい、白目をむいて倒れるような印象です。つまり、ヒトが無意識に行う、自然な呼吸のパターンが崩壊している状態なのです。これまでの交通事故110番の無料相談会で、複数回、そのような相談者さんが参加されました。最初は、代表の宮尾氏はじめ皆、驚愕、狼狽えました。

 その後、過換気症候群を知ってからは、慣れっ子となり、代表の宮尾氏から紙袋が渡され、この袋の中で反復呼吸をするように指示をして対処しています。であれば、2、3分で元通りとなり、落ち着きを取り戻しています。過換気症候群とは、精神的な不安を原因として過呼吸になり、その結果、息苦しさ、胸部の圧迫感や痛み、動悸、目眩、手足や唇の痺れ、頭がボーッとする、死の恐怖感などを訴え、稀には失神することもある症候群のことです。

 当然ですが、放置しておいても、この症状で死に至ることはありません。几帳面で神経質な人、心配症であり、考え込んでしまう人、10~20代の若者に多いとの報告がなされていますが、宮尾氏が経験した件は、全て30~40代の女性で、交通事故受傷後に、非器質性精神障害である不安神経症やパニック障害の診断がなされている被害者に限定されています。

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心肺停止(しんぱいていし)

(1)病態

 心肺停止とは、心臓と呼吸が止まった状態で、医療現場では、CPAと呼ばれています。心臓の動きが先に、肺呼吸が先に停止する、この2通りですが、いずれであっても、放置すれば、間違いなく2つは合併し、心肺停止状態となります。

 しかし、蘇生の可能性が残されているために、死亡ではありません。脳に血液が供給されず、手遅れとなれば、命はとりとめても、脳死状態になる危険があります。心肺停止の患者に対しては、人工呼吸や心臓マッサージなど迅速な救命措置が必要となります。心肺蘇生法はCPRと呼ばれています。   ◆ メディアの心肺停止  余談ですが、最近のメディアでは、自然災害や交通事故などで、心肺停止、心肺停止状態と表現することが増えています。日本では、医師が心・呼吸・脈拍の停止と瞳孔散大を確認して死亡宣告することで、法的に死亡が確定しています。

 医師以外でも、心・呼吸停止を確認することは可能ですが、死亡宣告をすることはできません。事故・災害現場で、まだ救出されておらず、医師も近づけない状態の遺体や、病院に搬送途中の遺体は、医師による死亡が未宣告であることから、心肺停止と表現されているのです。   (2)後遺障害のポイント

Ⅰ.

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 昨日は、八丁堀の事務所から都営バスで25分、丸井のデパートの上階の研修所へ。錦糸町は子供の頃に親戚が錦糸町で日本料理屋をやってまして、よく遊びに行った街です。当時は(当時も、か)赤鉛筆を耳に掛けた競馬オジさんが街中にあふれ、年齢層の高いところでした。30年程前に丸井ができて、楽天地と呼ばれた映画館も西武デパート化されて、ずいぶんとイメージも変わりました。近年はスカイツリーを見上げる北口がより賑やかになりました。

 都内の小セミナーもコロナ以来、久々でした。

  ↓ エレベーターから薄曇りのスカイツリーを臨む。 続きを読む »

(3)治療

 大動脈解離の主たる治療は、血圧を下げる療法と、手術療法があります。   ① 血圧を下げる治療

 大動脈解離の被害者に、最初に実施される治療方法です。確実に血圧を下げる必要から、点滴で薬剤が投与され、急性期を過ぎると内服薬で血圧をコントロールしていきます。100~120mmHg 以下がコントロールの目標とされています。   ② 手術、人工血管置換術

 手術では解離した大動脈を人工血管で取り換えるのが一般的ですが、解離した大動脈をすべて人工血管で取り換えようとすると、身体への負担が大き過ぎて、逆に死に至ることも予想されます。そこで,人工血管置換術では、内膜の傷の場所、解離の広がり、解離した血管の太さ、枝への血液の流れ、被害者の状態等を総合的に勘案して手術する場所を決定しています。      下のイラストですが、上行大動脈に解離があるときは、上行大動脈に解離が無いときに比較して致死率が高いといわれています。これは上行大動脈に位置する解離では、心臓や頭部に行く血管、大動脈弁などが巻き込まれ、規模の大きい合併症が起こりやすく、また解離した部分が容易に拡大して破裂する危険性が高いためです。上記の理由で、上行大動脈を巻き込んだ大動脈解離は、緊急手術が実施されています。

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【事案】

自動車にて走行中、センターラインオーバーの自動車と正面衝突、大腿骨と骨盤を骨折したもの。骨盤の骨折部は股関節の寛骨臼、広範囲に亀裂骨折がみられた。

【問題点】

大腿骨の手術が優先され、寛骨臼は保存療法の方針となった。また、受診するたびに医師が変わり、責任の所在がはっきりしなかったため、治療方針が曖昧であった。   【立証ポイント】

股関節の可動域をご自身でしっかりと確認していただいてから、診察に臨んだ。

計測を実施したところ、伸展は左右差がなく問題なかったが、屈曲は軽度制限(3/4をギリギリ超える数値)、内転・外転は3/4制限、内旋・外旋に至っては1/2制限が残存した。可動域制限を裏付けるために受傷時の画像打出しを後遺障害診断書に添付し、申請したところ、1ヶ月で12級7号が認定された。

(令和4年12月)

※ 併合の為、分離しています  

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【事案】

自動車にて走行中、センターラインオーバーの自動車と正面衝突、受傷した。直後から強烈な神経症状に悩まされる。   【問題点】

体質の問題なのか、骨再生速度が緩やかだったため、事故から1年を経過するも骨癒合が完了せず、ただただ待つばかりの状態が半年間も続いた。また、執刀医が転勤したため、その後の診察では、受診するたびに医師が変わり、誰が主治医なのか定かではなかった。   【立証ポイント】

仕事の都合やご本人の意向で抜釘はしない方針となったため、骨癒合が完了した段階で症状固定とすることとなった。偶然にも、癒合完了を確認したのが、事故当初に診断書を作成してくれていた医師であったため、後遺障害診断の話がスムーズにでき、膝の可動域等を計測していただいた。

膝の曲がりが悪く、12級の数値となったため、修正の必要もなく提出に至った。また、受傷時と症状固定時のCT・XP画像を精査すると、砕けた骨が枝葉のように癒合していることや仮骨形成によって多少角度がついていることが分かったため、画像打出しを添付資料として補完した。

審査に時間がかかると予想していたが、1ヶ月で併合11級(膝の機能障害で12級7号+大腿骨の変形で12級8号)が認定された。骨折の癒合には個人差があると痛感した次第。

(令和4年12月)

※ 併合の為、分離しています  

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外傷性大動脈解離(だいどうみゃくかいり)

(1)病態

 大動脈解離とは、大動脈解離は身体の中で一番太い大動脈が裂ける病気で、血管が破裂してショック症状を引き起こす、身体に酸素や栄養が供給されない緊急事態が一瞬のうちに起こります。病院に到着前に50%の人が亡くなるといわれており、致死率の高い、緊急性を要する外傷です。

 大動脈が縦裂きになった状態を大動脈解離といいます。縦裂きとは具体的には、内膜のどこかに傷ができ、本来、血液が流れるべき血管の内側から内膜の傷を通して内膜の外に血液が流出し、内膜と外膜が中膜のレベルで剥がれ、裂けてしまう状態のことを言い、解離とは剥がれて、裂けることです。血液が流れるべきでない場所、偽腔または解離腔にも、血液の流れや溜まりが生じます。

 内膜にできた穴をエントリーと言います。剥がれた内膜のヒラヒラはフラップと呼ばれています。約70%が高血圧を原因としており、その他には、外傷性、血管の病気、妊娠、大動脈2尖弁の先天的異常がありますが、ここでは外傷性について説明します。高所からの転落や、交通事故のハンドル外傷など、胸部に大きな衝撃が加えられたとき、大動脈に間接的に衝撃が加わって解離を生じると想定されています。   (2)症状

 血管が裂けているときは、裂けている部分に強烈な痛みを発症します。胸の血管では胸痛、背中なら背部痛、腰の部分では腰痛が生じるのですが、突き刺すような、ときに張り裂けるような強い痛みを生じると表現されています。痛みは血管の裂けが止まると消失しますが、引き続き、予断を許せない問題が起こります。   ① 大動脈破裂

 解離した大動脈の壁は外膜だけで保たれていますが、外膜は圧がかかると膨らみやすく、大動脈瘤を形成、破れて破裂することがあります。破裂、大出血をきたすと、急激に血圧が下がりショック症状を示します。心臓の周囲に血液が溜まると、心タンポナーデとなり、心臓の動きを妨げ、放置すれば死に至ります。   ② 臓器障害  大動脈解離が枝別れ部分に生じると、枝別れ部分が解離腔によって圧迫され、狭窄や閉塞することが予想されます。さらに、その枝別れ部分が引きちぎられ、枝への血流が不良となります。

 また枝別れ部分に解離がなくても、他の部分の解離により枝別れ部分が閉塞され、枝の血流が不良となることもあります。大動脈解離により、頭部の血管が閉塞されると脳梗塞となり、冠状動脈の閉塞は心筋梗塞となります。どの枝の血流が不良になっても、命にかかわる症状となります。   ③ 大動脈弁の閉鎖不全

 大動脈の始まりは心臓の出口ですが、ここには心臓から出た血液が、再び、心臓に戻ることなく、血液の流れを一方向にするための大動脈弁があります。大動脈の解離が根元まで進行すると、この弁の枠が壊れ、大動脈弁が閉じなくなり、一度、心臓から大動脈に出た血液が心臓に逆流することも予想されます。これを大動脈弁閉鎖不全と呼び、心臓には急激な負担がかかり、急性心不全状態となります。身体の血液の循環は不良となり、重症例では、急激に血圧が低下し、ショック状態を引き起こします。

   つづく ⇒ 外傷性大動脈解離 Ⅱ  

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 長管骨の変形には、厳密に基準が定められています。大腿骨は以下の通り。   ① 屈曲 = 折れてくっついた・・・15°の曲がり   ② 回旋 = ねじれてくっついた・・・外旋(外側に)で45°、内旋(内側に)で30°   ③ 直径の減少 = 細くなった・・・3分の1以上減少    弊所の経験上、上記に合致した例は1~2件と記憶しています。現在の医療では、変形なきようにできるだけ手術で矯正します。いわゆるヤブにあたらない限り、それなりに変形は回避されます。

 しかし、自賠責保険は上記の基準を正確に計測した結果と言うより、視認で明らかに変形が確認できた場合、12級8号をくれるようです。今までも、弊所の実績では、仮骨により癒合部が極端に膨らんだもの、癒合部の転位(ズレ)で太くくっついてしまったものは認定を得ています。    大腿骨変形の認定例 👉 併合11級:大腿骨骨折(40代女性・神奈川県)    その辺は柔軟な審査を感じています。本件も見た目、曲がったり、ねじれたわけではありませんが、枝状に骨が剥がれたような部分があり、総合的に転位と仮骨による変形は明らかでした。

 なお、併せて寛骨臼の骨折もあり、その内容もUPしました。   長い期間の対応となりました。

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 入所以来、秋葉から話は聞いておりましたが、実際に体験したのは初めてでした。先日、弁護士から「旧依頼者が通っていた接骨院が水増し請求をしていたらしく、今まで通っていた患者についても捜査していると警察から連絡があった。」との連絡が入りました。旧依頼者はそのような不整に加担するタイプではないため、共犯ではないと思われますが、確かにほぼ毎日通院しているとおっしゃっていました。

 本件は、ご相談を受けた際、保険会社から接骨院の一括対応打切りを迫られているとの事だったので、接骨院への通院を終了させ、整形外科に週2~3回通院するよう指導し、切り替えさせました。結局、半年を待たずに症状が改善したことから後遺障害申請はせず、弁護士が示談交渉し、解決に至りました。    既に解決から3ヶ月以上経ってからの連絡に戸惑いましたが、まだ不正請求を行っている業者がいるのか…と呆れてしまいました。一部?の悪徳接骨院・整骨院のせいで、真面目に営業している院に影響が出てしまうのは由々しき問題です。

 なお、皆様にも知っていただきたい知識としては、接骨院や整骨院の治療費については、賠償上認められない傾向にあるということです。これは、裁判や紛争処理センターにおいてということですが、弁護士が介入して示談交渉をする際、接骨院・整骨院の治療費がかさんだ場合、「相手方との示談交渉しか選択肢がない」ということを意味します。紛争処理センターや裁判で賠償金を引き上げたとしても、治療費を返還しなければならなくなってしまえば、最終的な手取りが減ってしまう可能性があるのです。

 もちろん地域や勤務時間によっては、整形外科への通院ができず、接骨院・整骨院しか行けない方もいらっしゃると思いますし、接骨院・整骨院の施術が気に入っている方もいらっしゃると思います。一律に整形外科へ行きなさい!と申し上げている訳ではなく、賠償交渉時にそのようなリスクがあるということを承知した上で治療を受けていただきたいということです。    どこの世界でも、262の法則(上位2割、中位6割、下位2割)はあると思いますので、治療先についてぜひとも下位2割を引かないよう、慎重に選んでいただければと思います。

 

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  (4)後遺障害のポイント   Ⅰ. 交通事故、労災事故では、外力により大動脈弁、僧帽弁または三尖弁の弁尖が損傷、腱索または乳頭筋が断裂することが報告されています。弁尖が損傷し、あるいは腱索または乳頭筋が断裂したときは、弁の閉鎖不全をきたします。そのため、左心系の弁では、早期に心不全が出現するのですが、三尖弁損傷では、長期間を経過後に症状が出現することが多く、この点にも注意を払わなければなりません。

※ 尖弁・半月弁・腱索・乳頭筋  尖弁=房室弁は右心房室間の三尖弁と左心房室間の僧帽弁、半月弁=動脈弁は、右心室と肺動脈間の肺動脈弁と左心室と大動脈弁間の大動脈弁を言います。  三尖弁と僧帽弁は、腱索と呼ぶヒモで心室にある乳頭筋につながっていますが、動脈弁と大動脈弁は3枚のポケット弁で腱索や乳頭筋とは関係ありません。

Ⅱ.

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(1)病態

 心臓は、全身に血液と酸素を供給する、ポンプの役割を果たしています。全身に酸素を届けたあとの血液=静脈血は右心房から右心室へ戻り、肺に送られます。肺で酸素が供給された血液=動脈血は、左心房から左心室へ送られ、大動脈を通って全身を循環し、酸素を届けます。この一連の動きは、途絶えることなく、1日に10万回も繰り返されています。

 血液の流れを一定方向に維持するために、心臓内の4つの部屋には、弁が設置されています。

① 右心房と右心室にあるのが三尖弁、

② 右心室と肺動脈の間にあるのが肺動脈弁、

③ 左心房と左心室の間にあるのが僧帽弁、

④ 左心室と全身をめぐる大動脈の間にあるのが大動脈弁です。    大多数は、鋭利な刃物や弾丸により、心筋、心膜、心室中隔、弁・腱索・乳頭筋、冠動脈などの損傷をきたした穿通性心臓外傷であり、交通事故では滅多に経験しないものです。

 交通事故110番では、トラックの荷崩れにより、ロープが掛かっていた鉄製のフックが後方に飛び、後方を走行中の軽トラックの運転手を直撃、大動脈弁を損傷した被害者を担当した経験があります。金属片が胸部を直撃したような工場内の労災事故であれば、複数例の経験があります。さすがに、刃物、弾丸の経験はありません。ネットでは、バイク事故2、自動車事故4、転落1例が紹介されています。   (2)症状

 症状は、意識障害、頻脈、頻呼吸、四肢冷感および冷汗などのショック症状を示しています。心タンポナーデを発症していれば、血圧低下、静脈圧上昇、心音減弱、頚部の静脈が膨れる頚静脈怒張、呼吸に伴い、大きくなったり小さくなったりする脈、奇脈などがみられます。   (3)診断と治療

 身体所見、胸部X線、胸部CT、心電図、超音波などの検査によって、急ぎ、確定診断が行われます。治療では、緊急手術が絶対に必要、迅速、適切な外科治療以外に救命する方法はありません。

 TVドラマ「ER」の一シーンですが、重いショック状態で手術室まで移送するのが困難なときは、ER室で緊急開胸を行い、心縫合が行われているようです。

 心タンポナーデを起こしているときには、心嚢穿刺や心嚢ドレナージを行い、一時的に状態の改善を図り、引き続いて開胸手術が実施されています。    つづく ⇒ ⑧ 心臓、弁の損傷 Ⅱ  

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 およそ、もめ事の解決は感情に走るより、冷静に損得勘定をするべきです。    まずは、保険でどうにかなるか、それを考える必要があります。それは以前の記事でも取り上げました。   👉 法律問題ではなく、保険の有無!    今日は、物損事故でケーススタディしたいと思います。  

車両保険先行 ~ 金持ちケンカせずを実現

 ある日、有村さん(仮名)は信号待ち停車中に追突事故に遭いました。今年で10年目の愛車は無残にお尻が潰れてしまいました。加害者の岡田さんは平謝り、「すみません、保険で弁償します」とのことです。警察の現場検証を終えて、その日はレッカー移動しました。

 翌日、相手の保険会社:甲斐損保のアジャスター(査定員):田辺さんが工場にやってきて、「え~と、修理費は60万ですね。ただし、車の価値は20万円でしょうか。経済的全損ですね。あとは、担当者から連絡します。」と帰りました。

   次の日、損保の担当者:阿部さんから「修理する場合、対物全損差額費用がありますので、全額お支払いできます。買替の場合は、平成25年車ですから、査定額は20万円です」と。 

 愛車ですが、さすがに10年落ちの車を60万円もかけて修理するのは・・現実的ではありません。しかし、車検をとったばかり、買替は2年先と思っていたところ、たった20万円では軽の中古車すら買えません。明日からの通勤の足もありません。「20万円なんてふざけた額ではどうにもなりませんよ!(怒)」と食って掛かっても、担当者はカエルの面にション便、「じゃあ、修理しますか?」との対応です。

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 心挫傷、心筋挫傷(しんざしょう、しんきんざしょう)

 

(1)病態

 心挫傷は、前胸部表面部に対する強い衝撃で発症しています。野球のボール、ホッケーのパックの直撃を胸に受ける、ベンチプレス中にバーを自分の胸の上に落下させた、交通事故では、肋骨骨折など、心臓に近い部位に、強度の打撃が加わったときに、前胸部に受けた強い衝撃が心筋に伝道することによって起こると想定されています。

 交通事故110番では、5年前に心筋挫傷を経験しています。45歳男性が軽四輪のワンボックスを運転中、センターラインオーバーの自動車の衝突を受け、左3、4、5の多発肋骨骨折、胸骨骨折の被害者でした。

 前胸部表面部に対する強い衝撃により、心臓が強く圧迫された結果、心筋組織の断裂や壊死、出血、浮腫などが生じます。多くは、早期の治療対応で、良好な改善が得られていますが、まれに心タンポナーデや心原性ショックなどの重い心機能障害を伴って死に至ることもあります。   (2)症状

 胸部外傷後の胸痛や胸内苦悶が主な症状です。重症例では、心タンポナーデや心原性ショックを合併し、頻脈、不整脈、血圧低下、頻呼吸、四肢冷汗および冷感、頚静脈怒張=頚静脈が膨れる、意識障害などが現れます。   ※ 胸内苦悶  心筋梗塞、狭心症等に多く現れる症状で、苦悶とは、疼痛に近く、絞扼感、圧迫感、圧搾感、押し潰す感じ、窒息感、万力で締められる感じ、重量物を載せられた感じ、伸展感、突き刺される感じ、焼けるような感じなどの性質をもち、呼吸が出来ない、眩暈がする、吐気がする、胃部の重い感じ膨満感などを伴います。   ※ 心原性ショック  急激な心機能の低下により、血圧が低下し、十分な酸素供給ができなくなり、全身の臓器の機能が低下し、放置すると死に至る状態で、重症な急性左心不全状態です。   (3)診断と治療

 症状と、心電図検査、血液検査、心臓超音波検査、心臓核医学検査、心臓カテーテル検査などにより確定診断が行われています。

 心筋挫傷の治療は、急性心筋梗塞に準じます。心電図検査で異常が認められればベッド上で安静を保ち、酸素吸入を行って心電図の変化を厳重に監視し、不整脈に対しては抗不整脈薬を投与します。

 心原性ショックに対しては、昇圧薬や強心薬の投与など、適切な薬物療法を行います。 また心タンポナーデが認められれば心嚢穿刺=針をさすや心嚢ドレナージ=管を挿入して排液するが行われ、重いショック状態であれば、機械を用いた補助循環を行います。

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  (1)病態

 心臓は、大部分が心筋という筋肉でできている臓器です。心臓は、心筋が収縮、拡張を繰り返すことにより、1分間に約5リットルもの血液を全身に送り出すポンプの役割を果たしているのです。当然ながら、心筋も、絶えず酸素が供給されないと、十分な働きをすることができません。

 心筋は、その他の筋肉と比較して約3倍の酸素を必要としており、冠動脈により、優先的に新鮮な動脈血が供給されるようになっています。冠動脈は、大動脈の根元より左右1本ずつ分岐し、心筋の表面を冠のように覆っています。

 頻繁に発症するのではありませんが、交通事故や高所からの転落で、胸部に強い衝撃を受けたとき、冠動脈が裂傷することがあります。冠動脈の裂傷により、心筋に十分な血液を送れなくなると胸部痛が出現、この状態を狭心症といい、さらに、心筋に全く血流を送れなくなると、心筋は働けなくなり、壊死します。心筋が壊死した状態を心筋梗塞と言います。   (2)症状

 息もできないほどの胸部痛、息苦しい、不整脈、尿の量が減るなど、   (3)治療

 冠動脈の裂傷では、心タンポナーデなど重篤な事態に至ることも予想されますが、縫合、経皮的冠動脈形成術やバイパス手術が実施されとときは、冠動脈そのものに障害が残存することはありません。

 ただし、冠動脈の狭窄または末梢の閉塞が残存し、心筋虚血をきたし、胸痛が生ずることが想定されるときは、狭心症に準じて、障害が審査されています。

 また、冠動脈損傷の時点で、心筋への血流が途絶え、心電図、血液生化学検査または画像所見により心筋壊死が認められるときは、心筋梗塞に準じて、障害等級が審査されています。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 心膜損傷、心膜炎(しんまくそんしょう、しんまくえん)

(1)病態

 心膜は、心臓を包み込んでいる二重の膜で、内側を心内膜、外側を心外膜と言います。心内膜と心外膜の間隙は、心膜腔と呼ばれ、15ml程度の心膜液で満たされています。心膜には、以下の3つの役割があります。

 ① 心臓の過剰な動きを制御する、

 ② 心臓の過度の拡張を防止する、

 ③ 肺からの炎症の波及を防止する、

 さらに心膜液は、二重の心膜間での摩擦を軽減しているのです。心膜損傷は、交通事故や高所からの転落により、相当に大きな外力や剪断力が胸郭に働いたときに発症すると想定されています。

 心膜損傷では、心膜の炎症であり、しばしば心膜液の貯留を伴います。外傷を原因として、心膜に炎症が起きると、心膜炎と呼ばれる状態になります。   (2)症状

 症状としては、胸部痛や発熱、胸部圧迫感を訴えます。心膜炎が起こると心膜液が増えて心臓を周りから圧迫し、心臓の拡張を妨げることがあり、短期間に大量の心膜液が貯留すると、心タンポナーデ、重篤な症状に至ります。   (3)治療

 診断は、症状、心膜摩擦音、心電図変化およびXPまたは心エコーによる心膜液貯留を検査します。

 治療は一般的には、鎮痛薬、抗炎症薬の投与、改善が得られないときは、穿刺により、貯留し、心臓を圧迫している心膜液を抜くドレナージ術が行われています。   ※ 心タンポナーデ  心膜腔の限られた空間に、大量に心膜液が貯留すると、心嚢内の圧が上昇し、心臓の拡張が障害され、全身に送る血液量が少なくなる状態のことをいいます。症状としては、呼吸困難、胸痛、チアノーゼなどで、放置すると死に至ります。心破裂や大動脈解離によって、血液が心膜腔に流入、心タンポナーデを発症することもあります。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 本日は千葉でセミナー開催後、その反省会を事務所で行いました。ゲストを招いての事務所飲みは久々、コロナ以来です。   ← 本日の主役、醸し人九平次

 最初はモエで乾杯でしたので、ケータリングは近所のイタリアン。生ハムやチーズ、アヒージョ・・日本酒のあてでも全然OKです。    美味しいお酒と料理で何よりですが・・・家飲みの危険は「だらだら長時間」です。アッと言う前に23時過ぎ! うっかり時計を見るのを忘れていました。  

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