年をまたぎました本シリーズも最終回です。じっくり分析を進めてきましたが、今改定が現状の認定状況に大きな影響を与えることはないと思います。それでも前進した部分もあり、認定基準の細部に血が通ったきた印象を受けます。それはいくつか明確な判定基準や調査姿勢を打ち出してきたこと、そして最後に取り上げる、「障害の周知についての努力義務」でしょうか。報告書原文を抜粋します。

【関係各方面への周知】

(1)被害者(一般)への周知

 現在損保料率機構が作成している被害者(一般)向けのリーフレットは、保険請求にあたっての諸手続き、高次脳機能障害審査会制度などを記載しており、周知に当たっての一定の効果があると考えられる。被害者(一般)向けのリーフレットについては、今後も各保険会社の受付窓口や損保料率機構自賠責損害調査事務所に備え付けるだけでなく、口弁連交通事故相談センターなどの各種請求相談窓口にも漏れなく備え付けることが必要である。  また、口弁連交通事故相談センターが行っている高次脳機能障害相談の窓口に対しても積極的に協力するなどして周知への努力を続けるべきである。  さらに、当委員会の検討において、軽症頭部外傷を原因とする高次脳機能障害の被害者が審査の対象から漏れている可能性についての指摘もあったことから、その点についても一層の注意喚起を行っていくことが適当である。

(2)医療機関への周知

 脳外傷による高次脳機能障害を評価するうえでぱ、診療医作成の経過診断書および後遺障害診断書の記載内容が極めて重要である。特に、初診時の被害者の状態(意識障害の有無・程度・持続期間等)、各種検査結果、被害者の現在の症状などについて、診療医から提供される医療情報が不可欠である。今後、関係各方面の協力を得ながら、現在損保料率機構が作成している後遺障害診断書の記載方法などをわかりやすく解説した医療機関向けの解説書を改訂・配布することが必要である。

(3)医師への啓発

 脳外傷による高次脳機能障害は、社会的な認知が高まりつつあるが、依然「見すごされやすい」障害である。仮に診療医がこれを見落とした場合は、医証を中心に検討を行う現行の保険実務では、被害者救済に一定の限界があるといわざるを得ない。  このような場合も含めて、診療医が高次脳機能障害の診断と評価を適切に行なうことが、被害者救済を充実させることにつながる。とりわけ、軽症頭部外傷を原因とする高次脳機能障害を的確に認定していくためには、医師が初診時の患者の状態を正確に記録することが極めて重要であり、診療録の記載の充実を求める必要がある。  そのため、後遺障害診断書を記載する現場の診療医に向けた啓発活動を継続(軽症頭部外傷による高次脳機能障害発症の可能性についての注意喚起および意識障害に関する必須情報の記載を含む。)することが必要である。この目的で、医療機関向けの解説書等の整備を図るとともに、各種学会・講習会等の場で高次脳機能障害の後遺障害等級認定に関する情報提供を行うなど、広く啓発活動を行っていくことが望まれる。

【おわりに】一今後の取組みと継続的な見直しー

 当委員会では、自賠責保険として脳外傷による高次脳機能障害について、画像機器の技術革新などによる診断技術の現状の確認を行うとともに、現状の認定システムを再点検することで、より一層的確な認定が行えるよう論議し種々の提言を行った。今後、今回の提言を活かした実効性ある取組みが必要と考える。  なお、今回の提言を踏まえた取組みが行われることにより、当面の問題は整理できるものと考えられるが、損保料率機構は今後とも定期的に検証作業を行い、必要に応じて適宜認定システムを見直し、被害者保護を一層充実させなければならないと考える。 以上    <解説>

 要約すると、以下4つの課題です。

1、保険会社の努力を期待 2、医療機関への情報提供 3、医師への呼びかけ 4、継続的な見直し

 1の保険会社への期待は望めないように思います。高次脳機能障害の認定はつまり、営利企業である保険会社の利益に反するからです。(でも担当者個人の正義感にはいつも期待しています。)  2、3の医療機関と医師ですが、病院経営者の姿勢や医師の人柄に負うところが大きいと思います。毎度、立証側の我々は身に染みています。

 障害の立証=「人に頼らず、自らの学習・努力が欠かせない」という基本は変わりません。

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 4日は箱根日帰り、6日~7日新宿を拠点に活動、そして今朝から福島行きです。

移動に次ぐ移動ですが、無料対応も多く・・今年も貧乏暇なしが続きそうです。

本日の日誌も情報発信とならず歯がゆいです。明日以降取り戻しますね。

正月返上で頑張ってますが少々バテ気味。一つ一つ押さえていきます。

 では行ってまいります。  

             都庁(西新宿)の昼と夜

     

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 昨年は各方面の皆様からたくさんのご指導を頂き、勉強・修行の一年でした。そしてのべ40か所の病院めぐり・・・様々な医師との出会いから貴重な医療ネットワークが実を結んできております。この調子で本年も「病院お遍路」を続けていきたいと思います。

 さて、年始にあたり今年の抱負を少し。いわば大枠の目標です。  

1、高次脳機能障害の最新マニュアルの出版

 自賠責が示す高次脳機能障害の等級認定基準ですが、被害者や医師に対し未だ周知されていません。これだけ情報が出回っていながら、有用な情報、専門家、機関に出会えず右往左往している被害者が本当に多いのです。深刻なのは頼るべき弁護士、行政書士等の各法律職者、民間機関、公的機関の方々が、はったりやにわか知識で専門家を名乗るケースです。ではよく勉強し、医学的な知識が豊富であればいいのか?そうではありません。具体的な立証方法を理解・確立し、専門医・検査機関への誘致ができなければまったく意味はないのです。

 医学書は山のようにあります。しかし実践的な立証マニュアルとなると・・・交通事故110番の出版物以外見当たりません。幸い昨年も多くの被害者と専門医に接し、最新のノウハウが蓄積されつつあります。「これらを世に出さねば!」 これは立証型行政書士の使命だと思います。  

2、立証型行政書士を名乗る

 昨年の業務で痛感しています。それは、

 「後遺障害を異議申立てや裁判上で争うような苦労を被害者にさせてはいけない」 ことです。

 それには受傷から一貫したフォローを行い、間違いのない等級認定に導くことが一番です。これは行政書士業務にぴったりはまります。行政書士は事実証明(自らの権利・義務を法律文章化すること)が仕事です。そして予防法務(裁判などの紛争を未然に防ぐこと)の専門家です。行政書士法を読めばそのような解釈となり、これに対し誰からも異論はないのです。  

 我々が目指すところは「立証型行政書士としてより力をつけることです。

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【事案】

歩行中自動車に轢かれ、足関節と鎖骨を骨折したもの。

【問題点】

日整会方式による正常値は背屈20度・底屈45度。対して本件被害者の健側他動値は背屈45度・底屈60度(合計105度)、患側他動値は背屈5度・底屈40度(合計45度)であった。事実としての可動域で比較した場合は2分の1以下10級の要件を満たすが、日整会方式正常値(合計65度)との比較では4分の3以下12級となる。

被害者はスポーツマンで関節に柔軟性があり、事故前と同じように運動することが出来なくなった事実と、日整会方式正常値との関係でどのような申請をするべきか。

【立証ポイント】

日整会方式にとらわれない相対的な認定を目指し、日常生活の苦痛・支障を丹念に書類にまとめた。結果、2分の1の制限ありとして10級11号が認定される。これにより鎖骨変形12級5号との併合で9級が確定。弁護士に案件を引き継いだ。

※ 併合のため分解しています

(平成23年12月)  

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【事案】

歩行中、自動車に轢かれ、足関節と鎖骨を骨折したもの。

【問題点】

足関節で12級以上が認定される可能性が非常に高いため、併合を意識すると鎖骨変形12級5号を取り逃がすことは出来ない。骨変形が外形で確認出来る事実を、いかにしてありのまま調査事務所に伝えるか。

【立証ポイント】

角度を変えて何枚も写真を撮影し、一目で骨変形があるとわかる資料を作成。12級5号が認定された。足関節10級11号との併合で9級が確定。弁護士に案件を引き継いだ。

※ 併合9級の事案であるため分解して掲載しています

(平成23年12月)  

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【事案】

飲み会の帰り道、自動車後部座席で寝ていたところ、運転者がハンドル操作を誤って民家の塀に激突した。

【問題点】

1.当初骨盤打撲と診断され4ヶ月ほど治療したものの、腰痛・下肢のシビレについて改善が悪い。シビレについては特に医師に訴えていない。

2.腰部MRIを撮影していない。

【立証のポイント】

当事務所が懇意にする専門医をセカンドオピニオン受診。筋萎縮、反射低下等、異常所見が確認されたため、急遽MRI撮影を手配。突出所見が確認された。

最終的には 「自覚症状」⇒「神経学的所見(萎縮・反射・筋力、SLR等)」⇒「画像所見(MRI、ミエロ)」 +日常生活状況報告書 によって、症状固定日時点では完璧な立証となった。ただし、当事務所関与前、受傷直後の対応の拙さ(自覚症状を伝えきっていない⇒そのため正しい診断を受けていない)は、医師にカルテの修正を拒否され、最後まで解消できなかった。

最終結果は、予想通り受傷直後の問題を指摘され14級認定。初期段階から正しい対応をしていれば12級13号認定の可能性もあった事案である。異議申し立てをせずに弁護士に案件を引き継ぎ、対応終了とした。

(平成23年12月)

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【事案】

自動車運転中に追突されたもの。

【問題点】

1.交通事故の立証に協力的な医療機関が見つからない。

2.既往症でヘルニアがある。

3.今回撮影したMRIにて脊髄空洞症と診断された。

【立証のポイント】

http://www.jiko110.com/contents/gaisyou/keiyoubunennza/index.php?pid=3001&id=1136524843#1136524843

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MTBIについて力説してしまいました。あと、2つのテーマを取り上げます。  障害の把握について細かな配慮を指摘しています。  

【小児、高齢者の留意点】

 一般に成人では、急速な急性期の症状回復が進んだあとは、目立った回復が見られなくなることが多い。したがって、受傷後1年以上を経てから症状固定の後遺障害診断書が作成されることが妥当である。 しかし、小児の場合は、暦年齢によって、受傷後1年を経過した時期でも、後遺障害等級の判定が困難なことがある。後遺障害等級が1~2級の重度障害であれば、判定は比較 的容易であるが、3級より軽度である場合、幼稚園、学校での生活への適応困難の程度を的確に判断するには、適切な時期まで経過観察が必要になる場合が多い。  小児が成長したときにどの程度の適応困難を示すかについては、脳損傷の重症度だけでなく、脳の成長と精神機能の発達とによる影響が大きい。ところが小児事例で受傷から1年以内であっても後遺障害の審査請求が提出される事案が散見される。これは事故に伴って起きたさまざまな事柄に早期の決着をつけたいと希望する親の意向も反映されることが一因と考える。障害を負った小児は、こうした判断を自力で行うことができない。したがって親の判断に基づいて障害認定が進められることになるが、障害を負った小児が正当な社会的補償を得るために、医学的に充分な考察に基づく障害固定時期の判断について、より広く理解されるべきである。すなわち、学校などにおける集団生活への適応困難の有無を知ってからであれば、成人後の自立した社会生活や就労能力をより正確に判断できる可能性がある。  したがって、適切な経過観察期間、例えば、乳児の場合は幼稚園などで集団生活を開始する時期まで、幼児では就学期まで、後遺障害等級認定を待つ考え方も尊重されるべきである。 また、高齢者の場合は、障害認定後しばらく時間が経過してから認知能力や身体能力のさらなる低下に対して、再審査請求がなされる場合がある。このような場合、当該脳外傷以外に疾病などの原因がないか、加齢による認知障害の進行が原因でないかなどを、慎重に検討することが必要になる。

<解説>  簡単に言いますと、「乳幼児が脳損傷を受けた場合、ある程度成長しないと障害の具合がわからない」ということです。  今年も赤ちゃんが頭部にケガをし、障害の可能性のある案件の相談が一件ありまあした。仕事としての受任にはならなかったのですが、数年にわたる家族の観察と専門医の見守りが必要なケースです。  まず、家族とくに母親が子の成長日記をつけて、つぶさに成長と障害の有無、程度を記録していく必要があります。その間、適時専門医による神経心理学検査を続け、知能、認知、記憶などを成長に沿って把握します。最後に就学時を迎えた後、社会性、適合性など性格に関わる観察を加えます。このように就学期までの観察・検査を総合評価しなければ、正確な障害の判断ができません。  神経心理学検査では、一般成人と区別した知能検査があります。   ① WPPSI(ウィプシイ)、WISC-Ⅲ(ウィスク) 

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 年末はギリギリまで事務に忙殺されると思いますが、25~26日は強引に休暇を取りました。研修を兼ねて温泉に行ったのですが、しかしねぇ・・神様は良く見てらっしゃる。緊急の事故相談の電話が入ってきまして、それがなんと現地にお住まい方から!本当に奇跡的な偶然で、宿を出てから10分後に喫茶店で面談となりました。  10年前も軽井沢で休暇中、現地でお客さんの事故に出くわす偶然がありました。この手の巡り合わせは何故か起こるのです。

 難しい案件です。脊椎の手術の段階ですので等級認定まで慎重な判断が続きます。まずは経過を整理し、方針を見定め、安心してお正月を迎えていただきたいものです。

           

         終始、晴天でしたが富士山は雲帽子。寒さは尋常ではなかったです。

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 そしてMTBI裁判の決着は? MTBI編は最終回です。

③ 東京 高裁は、事故直後に強い意識障害がなくても脳外傷は生じうるとした。

 この点について加害者側は、”事故後にきちんと事故状況の説明をしているし、ましてや自分で車を運転して帰っているのだから、意識障害はないだろう”と主張したが、高裁は”だからといって脳外傷が生じていないとはいえない”と判断している。

 しかしながら、脳外傷の有無に関する東京高裁判決の論理展開は、「提出された診断・検査結果の内容と被害者側医師意見書を考えると器質性の脳幹損傷が起こった」というのみであり、他方、加害者側から出てきた意見書については単純に「採用できない」と否定するだけであって、脳外傷の判断における医学的意見の採否の理由は十分に説明されておらず、また、被害者に発生した神経症状や所見(被害者側が主張するもの)についても、どう評価すべきかの検討が十分ではないと思われえる。

(解説)  本判旨では証拠不十分(画像所見なし)でも実際の症状、治療経過、医師の診断によって脳損傷が推定できるとし、「事故直後、症状がなかった」から脳障害はないと主張する被告の反論を採用しなかった、に留めてています。したがってなんらMTBIの障害性に断定的な結論を出していません。

 原告は上告すると聞いています。最高裁で決着がつくのか?再逆転判決(やはり障害はない)となるのか?・・・注目が続きます。

以前MTBIの相談者が事務所にいらっしゃいました。その方はなんでも赤信号なのにぼーっとしてたため、道路を横断し始め、一歩踏みだしたところ、かするように通り過ぎる自動車と太ももが接触、よろけて転倒しました。そして直後、接触に気づかない自動車を怒鳴りながら走って追いかけて停車させたそうです。そして数日後、めまい、頭痛、内臓疾患、その他あらゆる不調、が起こり、MTBI患者であると…。こんな軽い衝撃で、なおかつこの元気でそのような重篤な障害となるのか?周囲からそう見られて困っているようです。

 実はMTBIを訴える患者はこのように軽いとケガと思われるケースが多数なのです。血を流して倒れていた、意識不明となった、であれば脳損傷の可能性が推察されます。しかし軽い捻挫、軽い追突によるむち打ちで脳障害を訴える場合、当然外傷性について疑いが生じます。画像上、脳損傷の所見がないのに治療が長期化する・・・その患者の中には既往症が原因である者、詐病者、心身症患者が含まれると指摘されています。

 MTBIは「言ったもん勝ち」、「心身症患者が自身をMTBIと思い込む」・・・このような懸念を常にはらんだ症状名なのです。

  (結論)

1、脳外傷の画像所見がなくても脳損傷はありうるのか?

2、意識障害がなくても脳損傷はありうるのか?

 これら2つの追求はいまだ解決されたわけではありません。画像所見・意識障害がなければ脳損傷はない、これが原則です。今回の高裁判決も極めて限定的な、被害者救済的な、判断をしたのだと思います。今後類似裁判が続くとしても認められるケースが頻発するとは思えないのです。

 やはり脳神経外科の新しい医学的検証、新しい臨床診断、新しい画像検査法、これらがなければ話は進みません。医学的な論拠がなければ弁護士も苦しい戦いが続きます。また、仮に整形外科医や歯科医など専門外の医師がこれらの研究を発表しても、労災や自賠責保険の認定基準を揺るがす力はありません。

 私たち立証側行政書士は常に言い続けています。

 「医証がすべて」。この言葉に帰結します。

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シリーズ再開します。

 新システムの検討委員会においても念入りにMTBIを定義し、結論しています。しかし昨年9月のMTBI裁判について触れないわけにはいかなかったのでしょう。以下抜粋、解説を加えます。  

【D委員、E委員による意見発表】

 明確な意識障害や画像所見のない場合に後遺障害9級(ただし30%の素因減額を適用)を認定した裁判例(東京高裁平成22年9月9日判決。平成22年(ネ)第1818号事件、同第2408号事件)にづいて、報告がなされた。

① 本件 事案について、一審の東京地裁は事故で脳外傷が生じたことを否定して後遺障害14級を認定したが、東京高裁はこれを認め後遺障害9級を認定したうえで、損害賠償額の算定において「心的要因の寄与」を理由として30%の素因減額を行っている。

(解説)  つまり、画像上明らかではないが、なんらかの脳外傷があったのだろう、と推論をもって障害の存在を認めています。しかしこの認め方も灰色で、心因性の影響も捨てきれず、損害額の70%だけを認めました。  これを「MTBIの障害認定に風穴が空いた!」と歓喜するか、「原因不明ではあるが現状の障害の重篤度を考慮した結果であって、MTBI自体の障害認定はしていない」と受け止めるかは各々の判断です。

  ② 東京 高裁は因果関係の判断にあたり、最高裁昭和50年10月24日判決(ルンバール事件判決)を引用している。同最高裁判決は、因果関係を判断するうえで”自然科学的な証明まで求めなくて良い”ことを述べたものである。東京高裁が因果関係の判断に関する最高裁判決を引用した上で判断した点と、損害額の算定において「心的要因の寄与」を理由とする素因減額(最高裁昭和63年4月21日判決参照)を行っている点とを考え合わせれば、東京高裁は、脳に器質的損傷が発生したか否かという点、被害者の訴える症状の全てが脳の器質的損傷によるものか否かという点の双方について、悩みながら判断したという印象を受ける。   (解説)  自然科学的な証明=画像所見と置き換えるなら、これは画期的な判断です。しかし引用した最高裁判例は35年前のルンバール事件で、これは医療過誤、医療事故における医師の治療行為の正当性が争われたものです。ここからの引用は苦し紛れ、強引さを否めないと思います。    「医学的な判断をする=裁判官の苦悩」は毎度のことなのです。

お医者さんがわからないものを判断しなければならないのですから。

 明日につづく  

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 年末です。交通事故は人身事故、物損事故問わずこの時期に多く発生します。

 私の事務所に相談に来る方も被害者、加害者双方おります。また任意保険のお客様からの事故報告も11~12月で大小8件対応中です。軽微な事故であれば保険会社との話し合いでサクサク解決していきます。しかし重大事故や事故状況に争いがあれば長期化となります。もちろん相応のケガによる治療の長期化は仕方ありません。  困るのは軽微な物損であっても、ぶつかったのぶつからないの、どっちが悪いだのもめにもめてしまうケースです。

 皆がクレバーに紳士的に話し合い・交渉を重ねれば良いのですが、そうもいかない人たちが存在します。  あきらかに詐欺、あきらかにゴネ得狙い、あきらかに心身症・・・これらの対応をしている保険会社担当者さんもキレ気味で業務を行っています。保険会社の支払担当部の方々は本当に大変なんです。

 最近も”話し合い続行不可能な極めて感情的な被害者さん”、”ぶつかっているか定かじゃないのに3カ所の被害を訴えてきている物損被害者”に関わっています。誠実な対応にも限界があります。保険会社には顧問弁護士なる存在が控えており、保険会社はいざとなったらこの顧問弁護士に対応を委託(法的には契約者が委任契約を結ぶ)をします。すると以下の流れになります。  

1、相手に「これからは交渉の窓口は保険会社でも加害者でもなく、私共が対応します」と数名の弁護士の署名が入った通知が届きます。

2、結果、被害者は委任契約を結んだ弁護士以外と話ができなくなります。

3、そしてこの弁護士に「○○円払わんかい!」と言っても、「これ以上払えません」。保険会社担当者よりもさらに厳しい提示もあり得ます。

4、それでも納得しないと、「債務不存在確認の訴え」※ で逆訴訟が待っています。

5、これを食らうと「それ以上の交渉は法廷で待つ」状態になります。

6、そして被害者は請求額を争って裁判するか、弁護士の提示に泣く泣く従うかの選択となります。

7、もちろん争っても勝つ見込みは薄いと思います。なぜならこの案件を受任してくれる弁護士を探すのは至難の業です。請求額も小さく、負ける見込みが大のケースが多い、つまり採算が合わない仕事だからです。  

 これは保険会社、最後の手段です。または伝家の宝刀です。これ(伝家の宝刀)を抜くときは保険会社担当者もスカッとします。

 そうならないよう被害者も賢く交渉を進めていかねばなりません。

 しかし感情的に過ぎてしまったり、悪意の請求者は弁護士対応を受けてしまいます。

 弁護士が入ってしまい、あわてて相談にいらしゃる被害者さんもいますが、保険会社との交渉解決はほぼゲームセットなんです。

現在私が関わっている保険案件に対しても「弁護士入れちゃおうか」と検討しているものがあります。・・・先ほど入れちゃうようリクエストしました。(スカッ!)

 被害者の皆さんには「くれぐれも保険会社を甘く見ないよう」にと警告しておきます。

     ← 「どこにキズがあるんよ?」                       細かい傷で大騒ぎするな!とは言いませんが・・・  

※ 債務不存在確認訴訟 (さいむふそんざいかくにんそしょう)

 ・・・権利の存否について紛争がある場合に,義務者とされている者が原告となり,権利者と主張している者を被告として,被告の主張する原告の債務が存在しないことの確認を求める訴訟です。  一般論としては原告(被害者)が債権(賠償)を主張するのがふつうと思いますが、債務不存在確認訴訟では原告(加害者)が債務の不存在(こっちが弁償するいわれはない!)を先に主張します。被告が応じた場合、被告は法廷にて債務の存在を主張することになります。

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 X’masイルミネーション輝く赤坂、12月の相談会も20名弱の相談者がやってきました。交通事故の岐路に立たされ、それぞれ解決を模索しています。相談者さん達に最良の道しるべを示すことができるのか?ガチンコ面談が続きます。

 人体模型もスタンバイOKです。

<今回のレポート>

1、山崎先生、高次脳機能障害等の神経心理学検査でおなじみのウェスコンシン・カード・ソーティング・テストに挑戦です。   結果は・・・遂行能力問題なし。前頭葉は大丈夫のようでした。  

2、スカイプ三者面談

 相談会の途中、都内の弁護士事務所より被害者面談のスカイプ中継を挟む。弁護士、行政書士、被害者の疑似三者面談を試行しました。離れていてもこの三者で打ち合わせができます。連携体制のダイナミズムを実感です。続きを読む »

続いてMTBIについて、今委員会における専門医の意見を見てみましょう。

【片山医師の意見陳述】

 片山医師は脳神経外科学が専門である。当委員会の検討対象となっている、1回限りの軽症頭部外傷により遷延する重篤な症状あるいは障害が発生することがあるかという点について説明を行った。

課題1:一度だけのMTBIにより、遷延(3か月以上)する重篤(社会生活が困難)な症状あるいは障害が発生することがあるか?

a.受傷直後から数日ないし数週間までは、頭痛やめまいなどの愁訴や、記憶障害および注意障害、不安および抑うつなどの症状が持続することがある。

b.これらの症状は、受傷後しばらく脳の機能的障害および器質的障害の影響を受けるために起きると考えられる。

c.

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 「 MTBIについて掘り下げたい」・・・

MTBIって言葉をご存知でしょうか?これは Mild traumatic brain injury=軽傷頭部外傷 の略語です。

 外傷性のない、もしくは希薄な頭部の受傷により、脳障害を残すものとしておおむね認識されています。高次脳機能障害は「脳の器質的損傷」が前提である以上、高次脳機能障害とは認めれていません。したがって高次脳機能障害が疑われる障害を残しながら脳外傷がない為、MTBIと位置づけられる患者が少なからず存在します。

 当然自賠責や労災の基準に満たないこれらMTBI患者は障害認定されません。昨年9月訴訟で障害を認めた?との判決がでましたが、判旨を読むとそうも言えないようです。高次脳機能障害に携わる者にとって、まさに奥歯に刺さったとげです。

 今回の委員会でもMTBIの定義と扱いについて相当のボリュームを割いています。この新システム検討の過程をなぞりながらMTBIについて正面切って意見展開したいと思います。    まずはWHOにおけるMTBIの定義についておさらいしましょう。  

【WHOにおけるMTBIの診断基準】  (WHO 共同特別専門委員会のMTBIの診断基準)                   

MTBIは、物理的外力による力学的エネルギーが頭部に作用した結果起こる急性脳外傷である。

  臨床診断のための運用上の基準は以下を含む:

(i)以下の一つか、それ以上:混乱や失見当識、30分あるいはそれ以下の意識喪失、24時間以下の外傷後健忘期間、そして、あるいは一過性の神経学的異常、たとえば局所神経徴候、けいれん、手術を要しない頭蓋内病変

(ii)外傷後30分の時点あるいはそれ以上経過している場合は急患室到着の時点で、グラスゴー昏睡尺度得点は13-15上記のMTBI所見は、薬物・酒・内服薬、他の外傷とか他の外傷治療(たとえば全身の系統的外傷、顔面外傷、挿管など)、他の問題(たとえば心理的外傷、言語の障壁、併存する医学的問題)あるいは穿通性脳外傷などによって起きたものであってはならない。  

(解説)  この定義が出発点です。WHOではこの臨床診断において高次脳機能障害とは区別しています。  いわゆる脳震盪 < MTBI < 高次脳機能障害 のような位置づけでしょうか。  ではこの定義、区別をもってして完全に臨床判断できるのか?委員会では慎重に意見を重ねています。

 明日に続きます。 

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 昨日は病院3軒はしごです。検査につぐ検査!その間も携帯は鳴りっぱなしです。

その電話でもっとも絶句した件を。なんと、主治医が捕まってしまった!の巻です。

その医師とは先日面談し、来月には症状固定し後遺障害診断書を書いていただくよう、打ち合わせは済んでいました。

被害者 Tさん 「先生大変です!」

秋葉 「どうしました?」

Tさん 「今病院に行ったら休診というか休院なんです、先生が捕まっちゃって!」

秋葉 「? えっ、何でですか?」

Tさん 「ひき逃げして警察に拘留されたみたいです。看護婦の話では今回2度目で、そもそも無免許・無車検みたいです」

秋葉 「(絶句)ダメだこりゃ・・・しょうがないです。転院して下さい。保険会社にはその旨連絡して下さい」

Tさん 「はい。 新聞にもでてましたし、朝のテレビでみのもんたさんに呆れられていました」 続きを読む »

委員会における確認事項から。 「脳機能の客観的把握」・・・つまり神経心理学検査について。

 高次脳機能障害の提出書類の中で、

日常生活報告書・・・・ご家族の観察を報告します。つまり患者側の申告と評価です。

神経心理学検査・・・・医師による客観的な判断のもとになる数値。

 この位置づけを理解して下さい。患者側の訴える日常生活での変化、困窮点が客観的な検査と一致してはじめてその障害が顕在化されたといえます。

 私が把握しいている検査を一覧表にしました。今委員会のレポートで触れられた検査名を赤字にしています。

検査名

結果

①スケール(HDS-R)

  長谷川式簡易知能評価       

各30点

HDS-R 20以下  

MMSE 23以下 

それぞれ認知症の疑い

② ミニ・メンタルステーツ

(MMSE)

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 スカイプって? 簡単に言うとパソコンを使ったテレビ電話です。相互にスカイプに登録すれば世界中どこでも通話0円です。

 近日、協力行政書士、弁護士間でスカイプのネットワークを構築します。 これにて行政書士→弁護士の連携について即時、相談者の目の前で3者の打ち合わせが可能になります。

 続いてスカイプによる交通事故相談を計画しています。交通事故の被害者さんもスカイプを使えば、訪問しなくても顔を見ながら無料交通事故相談が可能となります。

 スカイプ無料交通事故相談の実施について近日グループで一斉展開します。

          今日はこのお知らせだけで日誌を埋めます。明日から「高次脳機能障害の新認定システム」を再開します。

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【事案】

助手席搭乗中、スリップした前車が自車の前方を塞ぎ、高速道路上で激しく衝突したもの。

【問題点】

自身の契約する損保会社の支援が無い中、治療打ち切りの話があった。重いものを扱う仕事をしているため、自覚症状である上下肢の痺れが労働に負荷をかけており、万が一にでも後遺障害等級の認定を外すことは出来ない状況。主治医は治療のプロであり親切であるものの、損害賠償・立証を意識して行動している様子は感じられない。

【立証のポイント】

無料相談として栃木県最北部に訪問したものの現地で弁護士特約利用不可と判明。着手金の準備等後回しで、同日、医師同行から何から何までリスク度外視一発勝負。医師の人柄を確認(これは特に重要)・MRI及び神経学的所見の精査依頼・衝撃の強さを証明する事故状況調査を依頼者との連携でスムーズに進行させ、頚腰部併合14級の認定を受けた。

(平成23年12月)

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【事案】

自動車走行中、前車の追い越しをかけた際、前車が急に右折した為接触、路外逸脱したもの。

【問題点】

頚部から手指にかけてのしびれが深刻であった。しかし仕事を休むことができず、症状の軽減が進まないばかりか、週1程度の少ない通院日数では後遺障害を残すものとは到底思えなかった。過失割合においても事故証明書上、甲(責任が重い方)となっており、おまけに物損事故扱いだった。そして8か月が経過、保険会社の打ち切りは至近に迫る。

【立証のポイント】

後遺障害申請に向けて「非該当から14級認定へ」残り2か月の逆転計画を実行。 症状の軽減を図るためと治療実績のため、思い切って有給1か月を取って集中的な治療をしてもらう。並行して神経症状について主治医の協力のもと綿密な検査を進める。さらに申述書で「前半少ない通院→集中通院」の経緯について詳細説明を加え、説得力を加える。

結果14級獲得。充実した立証作業を完遂した価値ある14級と思う。

何級であろうと被害者には重大な問題。基本に立ち返る仕事でもあった。

(平成23年12月)

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