舌骨骨折(ぜつこつこっせつ)
 

 
 男性では、喉の外側から、喉仏=アダムのりんご、喉頭隆起の位置が分かります。喉仏を、手の親指と人差指で、挟むように触れると、上側に、喉仏より柔らかい正中甲状舌骨靭帯があり、その靭帯を上方に辿っていくと、V状の固い骨らしきものに触れます。それが、舌骨です。


 
(1)病態

 舌骨は、喉仏=咽頭隆起の上に位置する、三日月型の小さな骨で、手足の骨とは違って、舌首の筋肉で吊るされており、ものを飲み込む、舌を動かすときに連動して動きます。ヒトは、食べるとき、言葉を発するときも盛んに舌を使いますが、舌は大きな筋肉の塊であり、舌骨と呼ばれる宙に浮いた状態の骨を基盤にして働いています。この舌骨が本来の位置から外れる、あるいは不安定になると舌の働きに影響がでます。

 人間の殆どの骨は、隣り合う骨と接して関節を形成していますが、舌骨は顎の下で宙に浮いており、他の骨と接してはいません。胸からの筋肉、喉からの筋肉、そして顎や頭蓋骨や肩甲骨からの筋肉につながっていて、それらの筋肉がお互いにの引っ張り合うバランスによって位置が決まっているのです。
 
(2)症状

 ① 舌を噛みやすくなった? ② しゃべりづらい? ③ 喉のところで呼吸が引っかかる気がする?

 こんな症状のときは、舌骨について確認してみる必要があります。

 交通事故では、とくに自転車やバイクのハンドルで喉を叩打することで、転倒した際に何かで喉を打撲したとき、剣道、空手やラグビーなど、対戦相手の竹刀や手が喉に当たること、柔道の絞め技などでも発症しています。

 喉が痛い、声がかすれる、声が出し難い、声が詰まる、押さえると痛い、食べ物を飲み込めない、首を回したり伸ばしたりすると痛い、高音が出ない、声が通らない、嗄れやすい、声が小さくなったなどの症状が出現したときは、咽頭外傷である舌骨の骨折を疑ってください。
 
(3)治療

 治療は、大学の神経耳鼻科を受診します。治療内容は、部位や程度によって異なりますが、アイシング、テーピング固定、改良頚椎カラー装着、リハビリテーション電療、回復マッサージなどが実施されています。放置した時間の経過と共に治りが悪くなります。
 
(4)後遺障害のポイント

 治療の開始が早ければ、後遺障害を残すことなく治癒しています。

 治療の着手が遅く、6カ月を経過しても、上記の症状を残しているときは、それぞれの症状に応じた検査で立証し、後遺障害を申請することになります。

 嗄声、嚥下障害、発声障害の立証は、咽頭外傷反回神経麻痺のところで詳細を解説しており、参考にしてください。
 
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