交通事故外傷で回復の進行を阻むものに「浮腫」があります。浮腫とは簡単に言うと「むくみ」です。原因はリンパの滞りで、一般的にはさまざまな内臓疾患(心臓・腎臓・肝臓・甲状腺の異常、血管・リンパ系の循環障害、悪性腫瘍)の兆候と言われています。また局所性浮腫の原因には深部静脈血栓症等があります。

 リンパ液の流れは、筋肉のポンプ作用と外部からの刺激に委ねられています。重力にまかせて下肢には流れていきますが、下肢から上に戻りにくいのがリンパの特徴です。交通事故で下肢を骨折して長期間ギブス固定を続けた、骨癒合が得られるまで動かさず安静にした・・・すると下肢の筋肉を使う頻度が減るのでリンパの流れが悪くなり、浮腫を併発します。

 浮腫が受傷後も長く残存する場合、痛みからリハビリの進行を妨げてしまいます。その結果、筋肉が減ってしまうと、さらにむくみやすくなるという悪循環に陥ります。浮腫は男性より女性に多くみられます。これは筋肉量の差がある為です。早期のリハビリで下肢の筋肉を鍛える必要があります。またむくみのある部位は冷えますので、血液循環も悪くなり、ますますむくみがひどくなります。これを防ぐには冷やさないこと、具体的にはお風呂で温めることが推奨されています。

 浮腫が直接、後遺障害と認められることはありませんが、リハビリを阻害するものとしてやっかいな存在です。骨折後の関節可動域制限の残存にも一定の影響、原因となるはずです。しかしながらら自賠責保険は関節可動域制限の原因を「本人のリハビリ不足」とばっさり切り捨てます。骨癒合が良好であるにも関わらず、高齢や浮腫の併発でリハビリが十分にできなかったために、関節可動域制限が残存した・・・このような原因であっても自賠責の審査基準に阻まれます。浮腫の併発で障害がより残存した場合、これは個別具体的な症状として評価されるべきと思います。現状では訴訟上での主張になるかと思います。

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 本日は膝関節専門医の初診に被害者と同行しました。

 傷病名は腓骨近位端骨折とそれに伴う内側半月板損傷、外側側副靭帯の損傷です。

  

 まず受傷時のMRIの読影です。骨折の形態、半月板や靭帯の損傷具合についてものすごいスピードで解明し、説明を頂きました。腓骨は顆上部の横骨折、脛骨に骨挫傷があること、外側側副靭帯の損傷は炎症、浮腫の残存・・・メモを取る私も目が爛々と輝いていたと思います。

 続いて自覚症状を聞き取り、ROM(関節の可動域)の確認、内半・外反テストを行い動揺のレベルを測ります。専門医のすべてに共通していること、それはとにかく早い!よどみなく流れるように診断が続きます。「う~ん」と腕組みして考え込む医師とは隔絶した能力を見せます。    続きを読む »

 今日は横殴りの雨で、傘をさしていてもスーツがびしょ濡れでした。雨風に桜の花びらも交じり、まさに春の嵐!

 東京の桜は散ってしまいましたが、今月も長野、甲府出張にて開花に当たりそうです。だから出張はやめられません。

 さて先日、食道、胃の不調から病院で胃カメラ検査をしてきました。特に痛みがあるわけではないのですか、さすがに若くないので、多少の違和感でも心配です。銀座のど真ん中にある、とてもおしゃれな病院で、女医さんや看護師さんもとても丁寧で親切でした。いつも仕事で訪問する整形外科とは大違い(?)です。

 初の胃カメラですが、検査中モニターで視認できます。医師の説明を聞きながら進めますが、質問したくても口はふさがれています。「綺麗なサクラ色ですよ~」などと褒められて複雑な心境です。  さて、肝心の結果ですが、胃潰瘍の中レベルが検出されました。より詳細に言うならば「逆流性胃腸炎」から発症しているようです。特に重度ではないので、お薬で完治するようです。問題なのは生活習慣の改善です。食事の時間が超不規則、寝る前に食事をとる、睡眠不足、ストレス、過度の飲酒、これらはご法度だそうです。なかなか難しい課題ですが、健康管理もプロの仕事、「しっかり守ります、先生」と言って病院を後にしました。

 毎度、被害者の皆様から医療写真の提供、協力をいただいておりますので、たまには自らも写真公開します。

← 〇の部分が赤く炎症を起こしています。

 交通事故被害者が痛み止めのロキソニンを服用した際も、胃壁が荒れることがあります。ムコスタを同時に服用するのは胃壁の保護・修復のためです。ムコスタはそもそも胃潰瘍のためのお薬です。

 ← 声帯 

 数年前、風邪をおして4ステージを歌ってひどく喉を潰したことがありました。ボイストレーナーによるとELTの持田香織さんが声を壊したときと同じ症状とのこと。ポリープがあるかも?と思っていましたが、写真のように大丈夫のようです。

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 本日、苦い結果を受け取りました。

 手指のしびれが深刻な被害者さんです。過去3つの病院でそれぞれ「手根骨骨折」、「頚椎捻挫による末梢神経障害」、「肩腱板損傷」と診断され、しびれの原因が特定されない状態ながら、一番重い後遺障害等級が取れそうな「肩腱板損傷」を主訴として別の事務所に委任し、申請を行いました。14級9号は認定されたのですが、しびれは評価されませんでした。その後、手の専門医を受診、「手根管症候群」が新たに判明し、その評価を求めて異議申立をしました。ここまで受傷から2年以上経過しています。  結果は前回同様14級9号、「手根管症候群」は一切無視されました。

 さて、調査事務所はなぜ異議申立てを認めなかったのでしょうか。

 まず、いくつかの病院でしびれの原因が間違っていた、もしくは特定できていなかったことが挙げられます。これは被害者に非はないことですが、そのような状況であるにもかかわらず漫然と治療してきたことは責められます。医師も人間ですから間違えることもあり、また症例の経験から医師によって違う診断を下すことがあります。そのような時は専門医に早くから受診し、しかるべく検査をした上で、確定診断に漕ぎ着け初回申請に臨むべきです。症状固定日以後、ましてや受傷から2年も経ってから専門医の受診をしても遅すぎるのです。自分のケガを治すのに一番努力しなければいけないのは当然ながら被害者自身です。

 本件の審査について調査事務所はこう考えます。「ははぁ、「肩腱板損傷」で12級が取れなかったので、今度は「手根管症候群」ね、次は「胸郭出口症候群」で来るぞ。」・・・このように被害者が保険金目的で傷病を取り上げてきているものと疑うのです。申請ごとに傷病名が変わるようでは、あたかも「後出しじゃんけん」と思われてしまいます。実際は単に診断力のない医師に症状を見逃され続けただけであってもです。これでは被害者がかわいそうです。しかし傷病名がコロコロ変わる、受傷から1年以上たってから新しい傷病名がでてくる・・・このような被害者は間違いなく疑われます。昔から「李下に冠をたださず」と言われているように、不自然な治療経過をしてはいけないのです。                                         私もできるなら時間を巻き戻してなんとか助けてあげたいと思います。しかし治療経過は厳然たる事実として残り、仮にそれが間違っていたとしても、医師は自らの診断権に基づいて下した診断の誤りをそうは認めません。    被害者には病院の選択と治療の努力が求められます。厳しいようですがこれが現実です。  

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 病院同行というよりは、病院開拓的要素が強い2件でした。山梨でリハビリ設備が充実している病院を見つけました。

 最近の整形外科もリハビリに力を入れているところが多くなりました。西洋医学的な電気治療、ホットッパク、牽引などに加え、針やマッサージを取り入れている病院もあります。外傷性頚部症候群の症状も個人差があります。投薬や理学療法を続けても効果が今一つの方も多くいます。東洋医学的な処方が選択にあることは、患者にとって治療選択の幅が広がりますので、心強い限りです。 症状が収まらないと、ついつい東洋医学的なものを求めて、接骨院や整骨院、針鍼灸に通院しがちだからです。実際、針やマッサージの方が効果的な患者もいると思います。 

 忘れてはならない事・・・

「接骨院・整骨院は後遺障害を残すような重篤な患者の初期治療をするところではありません」

偏見、もしくは断定的な意見ですが、少なくとも自賠責の調査事務所はそう判断しています。

西洋医学的な観察を必要としない患者、急性期を過ぎた慢性疼痛の緩和を目的とする患者・・・線引きが曖昧ですが、接骨院・整骨院が必要な場面は他にあると思います。 なかなか収まらない神経症状に悩まされる交通事故被害者に、これを説明し続けなければなりません。・・それも全国的に!

★Haさん、Hiさん、お土産ありがとうございました!!

  石和温泉駅、またしても湯には浸かれず・・

明日は仙台!

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 昨日、カルテの保存期間を5~7年と曖昧な書き方をしましたので、少し説明を加えます。

 保存義務と期間は医師法に定めれています。

<医師法> 第24条(診療録の記載および保存) 第1項 医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。 第2項 前項の診療録であつて、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、5年間これを保存しなければならない。

 1項で記録義務、2項で保存義務が明記されています。町の病院では5年きっかりで処分しているようです。大病院だとカルテは地下の文章室などに保管されており、割と長めに保存されています。文章係に聞くと「当病院では7年間保存しています」と答えが返ってきました。なぜか7年と病院内で規定されている病院に出くわします。いずれにしても保存スペースが限られていますので、長い期間の保存は敬遠気味です。

 さて、このカルテも遅ればせながらデジタル化の波が押し寄せています。「電子カルテ」、導入が進んでいます。今週訪問した病院でも導入が決定、文章科の職員の仕事もシステムオペレーターとなります。英語、独語まじりの複雑怪奇な文字を解読する手間が省けて、私達は大歓迎です。将来あの達筆が見られなくなる?のは寂しいですが。

  

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 昨年の医師面談数は約200件、うち新規の医師にお会いしたのが80名ほど。そのなかで面談を拒否された医師は3名です。

 数字からみると96%強の面談率なので、面談拒否はレアケースと言えます。

 本日は珍しく面談拒否の医師でした。病院の姿勢というより医師の判断での拒否です。

 面談を拒否する医師の拒否理由ですが、多くは「患者以外の第三者の介入を断る」もしくは「診断中なのでお断り」です。この判断は診断権を持つ医師なら当然の権利です。したがって面談をしていただけること、これはありがたいことになります。もっとも正式な面談ではなく、患者の付き添いをお願いすることが大多数です。これは時間的にご迷惑をかけるわけではないので、96%の医師は特に問題なく許可となります。

 医師は患者を治すことが仕事です。それ以外の保険であるとか、賠償であるとか、これらに医師は関与したくないのです。そのような原則がある以上、昨年の96%の医師の皆様に感謝です。 

 と、ここまでは優等生的発言。

 実際、面談を拒否する医師は、単に「面倒」、「患者以外の第三者に対処できない」、「独自の哲学に凝り固まっている」、「ごう慢」・・・等々、あまり評価できるものではありません。やはりと言いますか、この医師達の評判ですが、病院内でも事務方や患者から批判をよく耳にします。病院外(保険会社、調査会社)からも良いことを聞きません。総じて難しいタイプの方が多いようです。

 したがって気にしてはいられません。被害者の診断書をしっかり仕上げて頂くことが、私たちメディカルコーディネーターの仕事です。面談叶わずとも他に方法はあります。年間200件も医師面談していれば、様々な対処が身に付くのですよ。

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 本日の病院同行は脛骨骨幹部骨折の被害者。骨の癒合は順調ですが、足首の背屈(上に反らす)ができません。脛骨(すねの骨)の中間あたりが折れたのに、なぜ足首が曲がらなくなるのか?

 そこでの医師との会話・・・

秋葉:「先生、脛骨骨幹部が折れた場合、足関節に影響を及ぼすことは考えられますか?」

主治医:「骨折の影響で周辺の軟部組織も損傷を受けているケースもあります。神経麻痺や関節の硬縮、関節の隙間の狭小化も考えられます」

秋葉:「患者さんは足を反らすと関節がぶつかって曲がらないと言っています。先生のおっしゃるとおり、これは関節の隙間の狭小化、関節裂隙(かんせつれつげき)に問題があるのではないでしょうか?」

主治医: 「ではXPで確認してみましょう・・・・・やはり狭くなっている可能性はありますね。」

秋葉: 「先生、脛骨の下方転位、足関節の軟骨損傷どちらでしょうか?」

主治医: 「両方考えられますね。でもそこまで突き詰めないと保険はおりないの?脛骨骨幹部骨折でも十分説明はつくし、そのように診断書に書いてあげるよ。」

秋葉: 「先生、保険会社は『脛の骨が折れて、癒合も良好なのに、足首の可動域制限が起きるはずがない』と考えます。証拠として画像や検査結果を示す必要があるのです!」

主治医: 「XP(「レントゲン)の画像だけではだめなの?」

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 骨折にもさまざま種類・形態があります。癒合後の変形や転位の予断ができることが、交通事故外傷を扱う者の必須条件です。

 交通事故相談の場面で単に「足の骨折です」と言われても何も予断できません。そこから足のどの部位?、どの骨?、どのような折れ方?、どのような処置としたか? 質問が続きます。

 それと当然ながら主治医の読影(レントゲンやCT、MRIを診て診断すること)が最初の判断材料となります。しかし骨折の正式な診断名も医師によってニュアンスが変わります。例えばわずかな圧迫骨折を骨挫傷(骨の表面に傷がつく程度)と判断することもあります。さらに癒合後の評価も医師の主観に左右されます。例えば変形癒合です。わずかな変形でも変形と評価する医師もいれば、「これ位は変形のうちに入らない」と判断する医師もいるわけです。では後遺障害の審査において、変形癒合か否かの判断をする場合、主治医の診断が絶対であるか?・・答えは「否」、あくまで調査事務所の判断、より詳しく言えば調査事務所の顧問医の判断に委ねられます。

 したがって後遺障害診断書に主治医が「脛骨の変形癒合」と記載しても、それだけで審査の決め手にはなりません。この医師の判断の違いによって涙を呑む被害者も少なくないのです。    医師の診断の違い、主観については致し方ないにしても、どの医師が診ても明らかに変形癒合なのに、診断書に記載してくれない場合は困ります。医師は骨がきれいにくっつくように努力した故に、「わずかな変形など認めたくない」、このような意思が働くことも想像できます。その場合、熱心に医師を説得し、感情を排した診断を仰ぎます。これも私たちメディカルコーディネーター(MC)の仕事です。  逆に微細な骨折を主治医が骨折と診断したが、自賠責調査事務所の回答は「骨挫傷」(←写真:矢印の黒ずんだところ)ということもよくあります。この場合、被害者に障害等級に過度な期待を持たないよう戒めます。そのためにもMCは読影能力を磨かねばなりません。

 私の読影結果は自賠責の判断とよく一致します。平素ご指導をいただいている先生方のおかげですが、まだまだ勉強不足です。精進を続けねばなりません。

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 先日の出来事ですが、いつもご指導いただいている整形外科医から、ご指摘(ぼやきかな)を受けました。

医師: 「最近、弁護士からの診断書等の依頼が増えているのですが・・・どうも一方的に『診断書を書いて下さい』、『意見書をお願いします』等々、的が絞れてない依頼が多いです。何が必要なのかわからなくて困っているのです。」 秋葉: 「先生、すみません」 (私が謝ることではないですが・・)

医師: 「いえ、秋葉さんは具体的な請求、最小限の依頼なので、こっちの負担もなく助かります。」

 物腰柔らかい先生なので、このような言い方ですが、これは明らかに苦言です。

 またお世話になっている他県の先生からも・・

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本日の病院同行は、足関節の骨折です。

 初回の相談時に「どこが折れたの?」と質問しても、「足首の骨折です」と返答され、本人も具体的にどこが折れたのかわからないようです。この部位の後遺障害を予断する場合、まず3つを検証します。

1、可動域制限 2、変形 3、神経麻痺

 関節部の骨折はやっかいで上記3つのうちどれか、もしくは3つ全部、障害が残り易いと言えます。そこでさらに踏み込むためには具体的に6つ聞き込みます。

1、脛骨、腓骨、距骨、踵骨のどれが折れたのか?

2、折れた部分は骨幹部、遠位端? 遠位端であれば外顆部、内顆部、それとも前後?

3、骨折の状態は亀裂?開放?粉砕?剥離?、そして固定方法は?現在の癒合状態は?続きを読む »

 被害者さんはもちろん、医療調査、病院同行を業としている方に知ってもらいたい事を。

 骨折等、交通事故外傷で後遺障害が残った場合、その部位が関節であれば、その関節の可動域に制限が起きることがあります。その制限の程度はどのくらいか?これを「関節の用廃、関節の著しい障害、関節の障害」と3段階に重篤度を判定します。これは医師、もしくは理学療法士(PT)、作業療法士(OT)がゴニオメーターと呼ばれる分度器で計測します。この計測で保険金が決まります。この角度によって数百万円もの差が生じることがあります。したがって間違えて計測されるわけにはいかないのです。

 ← ゴニオメーター 

 しかし経験上、半分くらいが不正確な計測方法、いい加減な目見当で計測されていると思います。まさか医師や専門家が間違えるはずが・・と皆思います。しかし断言します。日本整形外科学会の基準通りに正確に計測されることは少ないのです。

 これは整形外科の医師から聞いた話ですが・・・「医大時代、さらっと見ただけでよく勉強していない。試験にも出てこない。これを専門的に勉強するのはPT、OTで医師は専門ではない」と。医師は教科書にでている計測方法を見たことがある程度で、実習をしているのはPT、OTのみです。私も仲間と練習したり、何人もの障害者を計測した「実習」の結果マスターしたのです。したがって実習経験もない医師は自己流の計測になりがちです。実際、計測方法は一つではなく、2~3種存在します。  勉強熱心な医師は、臨床の場で専門書を見ながら正確に計測する実践を積んでいます。しかしこのような医師は少数と覚悟しなければなりません。

 では専門家であるはずのPTやOTの先生なら安心でしょうか?もちろん正確な計測方法を熟知しています。資格取得の試験にもでてくる内容ですし、なにより実習を積んでるからです。しかし油断はできません。

 普段、PT、OTの先生はリハビリで患者の機能回復訓練を行っております。リハビリ室で「はい、今日は少し頑張って曲げてみましょう」と言いながら、患者の膝をぎゅーっと曲げています。これは訓練なので、患者は痛くても頑張らなければなりません。訓練、リハビリであれば当然の場面ですが、困ったことに後遺障害の計測の時においてもぎゅーっと曲げる先生がいるのです。

 後遺障害診断における計測値はエンドフィール(関節終端感覚)と呼び、痛くて「もう曲がりません!」と感じるところを限界としています。ですので機能回復訓練のように頑張って痛みに耐え、限界を超えて曲げたところではないのです。なぜなら日常生活で痛みをこらえて限界まで曲げることなど通常生じないからです。このエンドフィールが障害の生じる角度なのです。これを勘違いしている医師やPT、OTの先生も多いのです。

 計測では2つの値を測ります。

① 自動値・・・患者が自分の意志で曲げる限界点

② 他動値・・・補助者が手を添えて曲げる限界点

関節可動域制限では、機能障害は②の他動値で判定します。神経麻痺の場合、例外的に自動値で判定します。続きを読む »

 事故で相当の外傷が無いのに神経性麻痺となり、上肢または下肢、あるいは四肢が動かなくなる患者がいます。またケガは完治しているのに症状が変わらない、むしろ麻痺はひどくなる。昨日の年間ランクで「心因性ジストニア」は8位に甘んじましたが、今後上昇株の事故外傷「難病・奇病」の一つです。

 多くは外傷性頚部症候群のカテゴリー、頚部神経根症による末梢神経障害と思われます。頚部から手指までしびれが残り、手の感覚異常、握力低下となります。しかし腕が全く動かなくなるのは頚髄損傷のレベルです。どうにも症状が重すぎる。そしてどんどん悪くなっていく。これは心因性と考えられます。

 人間の心(精神)が体に強い影響を持っていることは多くの臨床実験でも解明されています。自分が病気だと思い込み、その思い込みが強ければ強いほど、本当に体が悪くなります。「動けない」と思えば本当に動かなくなるのです。これは交通事故など第三者の加害行為で、理不尽な被害を受けた患者が、強い被害者感情と結び付いたためと想像できます。長期にわたる痛みや加害者側の保険会社や医師の冷たい対応も相まって、精神的に追い込まれます。普通、受傷直後がもっとも重篤で日ごとに軽快するのがケガの常識ですが、このような周囲の無理解の影響で心身ともにどんどん病んでいくのです。

 体はそれほどひどい症状ではない、痛みやしびれはそれほどでもない、ケガはほとんど治っている、ちゃんと体は動くはず・・・

 そこで思い出すのが「クララとハイジ」です。

 クララの病気は下肢麻痺です。偏食と閉じこもりがちのせいか、ビタミンD不足の「くる病」と思われます。

 医師の治療でもう治ったはずとされていますが、本人はまだ立てないと思っています。事実、立てないのです。

 男性視聴者も病弱美少女に萌え気味です。それに業を煮やしたのか、主役の天然元気少女ハイジがクララを叱責します。ある意味、超無神経なハイジが・・・

「クララのバカっ! 何よ意気地なしっ! 一人で立てないのを足のせいにして、足はちゃんと治ってるわ、クララの甘えん坊! 恐がり! 意気地なし! どうしてできないのよ、そんな事じゃ一生立てないわ! それでもいいの? クララの意気地なし! あたしもう知らない! クララなんかもう知らない!」

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 遅れがちの日誌も追いついてきました。

 さて今年を振り返る時期です。今年もたくさんの交通事故相談会に参加しました。正確な集計データは年明けに発表しますが、ざっと数えただけでも30回、一回平均12人としてもおよそ360人の被害者さんとお会いしたわけです。

 ほとんどの被害者は何らかの解決策を講じて前へ進ませます。しかし、どうにもこうにもらちがあかない被害者さんもいます。それは謎の重症、因果関係のはっきりしない症状を訴える患者です。この方たちのほとんどが骨折や入院などの重症事案ではなく、むち打ちや打撲捻挫を契機として、受傷から日を追うごとに悪化し、ひどい症状に陥ります。当然、加害者側の保険会社は詐病(うその病気)、心因性(心の病気)として、冷たい対応に切り替わります。保険会社だけではなく、病院ももてあまし気味、さらに自らの職場や家族にとっても困った存在に陥ります。

 

そこで心因性?と疑われる、今年の被害者、難病・奇病 年間ベスト10

 

1 MTBI 脳の傷病名もなく、些細な衝撃で脳障害を訴える… 今年、堂々の1位を獲得! 不定愁訴を訴える患者はすべてMTBIと診断する医師の活躍のおかげか?この業界での勢いはAKB48並み。 2 脳脊髄液減少症 ムチ打ちで脳の髄液が漏れた! 続きを読む »

 最近鎖骨の脱臼、亜脱臼の相談が続いています。多くは胸鎖関節ではなく肩鎖関節の脱臼です。

今日の病院同行もGradeⅡの被害者さんです。まずこのGradeとは

 

 

分類

肩鎖関節の脱臼は3段階に分けられます。これをtossy分類とよびます。

Grade1 靱帯の軽度の損傷のみで捻挫と同様、明らかな脱臼はない。 Grade2 肩鎖靱帯の損傷があり、亜脱臼位 を呈する。 Grade3 肩鎖靱帯損傷に烏口鎖骨靱帯の損傷が加わり、完全脱臼位を呈する。

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<トランス・コスモス健康保険組合の発表から>

 保険者代表として参加したトランス・コスモス健康保険組合の美山博邦常任理事は、捻挫の症状で柔道整復に1年間通ったり、医師の診断よりも負傷部位が増えるなどの不自然な事例を報告した上で、「『手技』や『後療』の定義を明確にするほか、長期施術の実態について明らかにしてほしい」と訴えた。さらに、「国は、『給付は保険者の義務』としているが、払い過ぎた保険料の回収は『保険者の義務』としていて、保険者の財政が保護されない」と指摘し、国の姿勢を批判した。 JCOAの医療システム委員会の山根敏彦委員は、医業類似行為の広告の実態を報告。「交通事故治療」とうたっているケースや、雑誌に広告か記事かが分からないような形で文章が掲載されているケースなどを問題視した。山根氏は、柔道整復が広告に掲載できない例として、

(1)「各種保険取扱」をうたうこと

(2)「交通事故」「労災」「生活保護」を記載すること

(3) 料金を広告すること              などを挙げた。

 その上で「厚生労働省にも、しっかり監視するように申し入れた。違反する広告を見た場合、県の担当部局や保健所に通報するのが良いのでは」とアドバイスした。山根氏は、柔道整復師の療養費の適正化の動きが出てきたことを踏まえて、「今後はあん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費が、大きく増えていく可能性がある」との危機感も示している。   <解説、意見>

 各種保険適用は×であっても、慢性的な腰痛にも親身に施術してくれる整骨院・接骨院や針鍼灸・マッサージは一定の治療機関として、その存在は欠かせません。しかし、昨年私の実家の近所に「マッサージ無料!」の広告がドンと掲示された接骨院が開業しました。チラシにも「マッサージ30分無料」とあります。それを見た父が試しに行ってみたようです。何故か健康保険証持参で。そして、お財布からは広告通りお金は払わなかったのですが、しっかり健康保険の提示を要求され、健康保険から施術料を請求したようです。(この院、後に閉院となりました)    「どこが無料やねん!」 思わず関西的な突っ込みをしてしまいました。    このような例から、柔整師の保険請求にはモラル的な問題が散見されます。とにかく柔整師の施術料請求にはトラブルが頻発しています。このエセ無料マッサージ、しかも、急性期としての治療など必要ない患者に対する施術料は、皆の健康保険の掛金から捻出されているのです。医療費の健康保険財政の問題はその支出の増大から国家の一大問題です。やはり不正・不当な請求に対しては厳しい監視が必要です。    背景には・・・「2000年から2010年にかけて柔道整復師が2万人近く増えて、5万428人となったことなどを報告。」・・・増えすぎた柔整師と競争の激化が背景にあると思います。もちろん素晴らしい技術と精神を持った先生もたくさん存在しますが、技術・モラルの低下傾向も指摘されます。それは3年間半日程度通学しただけで80%が合格する試験制度にも問題の温床があると言えます。準医療行為とはいえ、人の生命・健康にかかわる仕事なのですからそれなりの重みは必要ではないでしょうか。

 とくに交通事故受傷者で自賠責保険での施術に対しては、柔整師は医師の診断・治療を経てから指示・紹介のある患者を受けもつ・・現状、この連携体制が徹底されていないように思います。柔整師は応急処置以外では疼痛の緩和が主目的のはずです。整骨院・接骨院が医師の紹介状なしに、急性期の患者の施術(少なくとも健保、労災、自賠責を使った)をすれば罰則、にまで厳しくすべきではないでしょうか。これですべてが解決するとは思えませんが、各種保険に対して、医師の初期診断や紹介状で保険治療の判断が付与されれば、無駄な保険利用の施術には抑制が効くはずです。

 

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JCOAの自賠・労災委員会の山下仁司委員長は、医療機関と柔道整復の受診(受療)形態について、4パターンに分類しています(少し補足を加えてあります)。

(1)柔道整復にかかった後、医療機関にかかる「経過後受診」

事故と後遺症の関連性が不明なままに、患者が後遺障害診断書の依頼のために病院に再診に来るケースが「悪質」と指摘し、「施術証明書を、診断書と同様に扱う警察があるのが問題を大きくしている」と指摘。

(2)柔道整復の前後に医療機関にかかる「なか飛ばし」

 損害保険会社が推奨しているケースもあると言い、「診断書に『医業類似行為での施術には同意していない』旨を明記すればトラブルは避けられる」とした。

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【質問】  MRI検査をすべきとのご教示ありがとうございます。主治医に相談したところ、「閉所恐怖症はないですか?」と聞かれました。私は閉所恐怖症なので、検査できるか不安になりました。どうしたらよいでしょうか?

【回答】

 MRIは筒状のトンネルに入り、30分もじっとていますので、確かに苦痛です。しかし最近国産メーカーで解放感のあるマシンが開発、普及が進んでいます。日立メディコの製品で開放型と呼ばれています。ちなみに大手フィリップス社も開発・発売しています(2億円らしい)。  難しい説明を避けますが、MRIは磁気を体に通し、体の成分が磁気に反応する様子を写します。したがってトンネル型は大きい円形の磁石の中に入り、磁気の中に体を通すイメージです。対してオープン型は、より強い磁気を体の一部に放射して写しこみます。

 医師に開放型(オープン型)を導入している病院の紹介を受けるとよいです。もし探せなければ私からも紹介可能です。

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 昨日は六本木相談会で、10名の相談者を担当させていただきました。弁護士、メディカルコーディネーター、行政書士、保険調査員、各分野のプロフェッショナルが総力をあげて対応しました。

 今回珍しい事例がありました。それは舟状骨骨折とTFCC損傷が右手首に同時に受傷、そして左手首にTFCC。手首の受傷では小指側を痛めるTFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷:さんかくせんいなんこつふくごうたいそんしょう)、親指側を痛める舟状骨骨折のどちらかのケースになりますが、両方が併発しているケースは初めてです。また舟状骨は破裂骨折をしており、2か所の亀裂を確認しています。この場合、癒合状態が後遺障害の程度の大きなポイントになります。

      

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