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 ある相談者は腰の痛みを訴えていました。診断書を確認したところ、当初は腰部打撲等と診断され、その後CT画像を撮影し、結果、仙骨骨折と診断されていました。診断当初から腰から臀部にかけての痛みを訴え、CT画像撮影は事故から少ししか経過していませんでしたので、12級13号ないしは14級9号が認められそうでした。

 前回の例と異なり、相談段階で画像CDを用意できたので、画像確認をしてみました。

 仙骨部分をXP画像で確認すると、尾底骨部分が曲がっているようにみえました。尾底骨部分は人によっては通常よりもまがっていることがありますので、これのみでは判断できません。   c_g_sp_8  その後、CT画像を確認してみました。

 尾底骨部分に他の部分と比較すると、「骨傷」が確認できました。しかしながら、骨折しているようにはみえませんでした。3DCTも確認しましたが、やはり骨折箇所は見当たらず、骨折レベルには至っていない状態でした。

 尾底骨部分の疼痛は後遺障害等級が認められにくいため、結論として14級9号が認められる可能性がわずかにあるのみでした。    前回の例を含めて、お医者様は治療に役立つかどうかで検査や画像をみますので、後遺症(後遺障害)の立証については初めから考えていません。治療上必要か否かで観ております。前回の例では、骨折していなかったのですが、痛みはその箇所にあるため、投薬治療して痛みを抑えていました。本件の例も同じく、リハビリができない箇所である上に治療上痛みを止めるために投薬するしかない場合です。

 医師が後遺症(後遺障害)を認めたとしても、診断を立証できる程度の証拠を提出する必要があります。 とある医師は自分が検査内容や後遺症(後遺障害)を決めるものであると言っておりましたが、実際、申請しても後遺症(後遺障害)が認められない(非該当)場合が多くあります。医師は後遺症(後遺障害)の立証を知る方は非常に少ないです。お詳しい医師が近くにいれば心強いですが、極めて稀です。

 月に1回行っている相談会では、主に後遺症(後遺障害)での立証に必要な情報をお教えできますので、もしよろしければご参加ください。    

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win  

 タイトルのみでは意味不明かと思いますので、具体例をあげつつ述べていきたいと思います。以下の例は実際にあった相談内容です。  

<例1> 相談の際、診断書を拝見しました。

 診断名に「骨折」と記載されていました。相談者の痛みの部位と医師から説明を受けた骨折部位とが一致していると考え、後遺障害診断書に疼痛及び画像所見を記載して頂くことにしました。

 相談当日には画像を持参されなかったので、後日、画像をすべて収集し、実際にみてみました。しかしながら、骨折したと説明を受けた箇所をいくらみても骨折しているようには見えません。事故当日の画像から最後に撮影された分すべてを見ても骨折箇所がわかりませんでした。  c_g_a_6 実際に後遺障害診断書を依頼する前に骨折箇所を主治医(個人で経営されている整形外科)に質問してみました。主治医は改めて画像をみてくださいましたが、そもそもどこなのかよくわかっていないよう様子でした。主治医によると、骨折については紹介元の病院で診断されており、ここではリハビリのみを頼まれていた、とのことでした。

 やむを得ず、紹介元の病院に依頼者と共に行き、骨折しているかどうかを確認すると共に、念のため画像も撮影しました。そこでは当時依頼者を診察して下さった医師は他の病院に移ってしまい、他の医師に診て頂くことになった。その結果、骨折箇所がなさそうであること、さらに、最初に撮影した画像を診ても、骨折箇所は不明であること、さらに、大元の医師は単に「骨折の疑い」と記載していることがわかりました。

 結論として、最初に診察した医師は骨折していると直接診断しておらず、紹介状や依頼者の口頭説明等で伝言ゲームのように骨折していることにされてしまったようです。

 依頼者は怒っており、訴えたいようなことを言っていました。しかし、骨折していたのに骨折を見逃したのであれば医療過誤になりうるといえますが、骨折していないのに骨折と診断されたことについては、依頼者に損害が発生しているわけではないので、訴えるだけ無駄です。依頼者をとりあえず説得して保険手続きを進めることにしました。

 しかし、痛みについては嘘ではなさそうでした。骨折が原因であったと考えていれば治療すればいずれ良くなると思えますが、今回では痛みの直接の原因が最後で不明になってしまい、より不安になってしまった依頼者には気の毒なことになってしまいました。  

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 年間100人に及ぶドクターとお会いしています。お医者様と言っても同じ人間、色々な性格の先生がいらっしゃいます。何の商売でも中身は人間です。

 さて、本日、同行した整形外科の先生は、以前から良い評判を聞いておりました。本日お会いして、噂以上と感激しました。膝を受傷した被害者さまが手術を終え、リハビリのために選択した個人開業医です。

 まず、受付の事務の方はにこやかで親切です。リハビリ室は明るく、理学療法士の先生は、常に患者に言葉をかけながら熱心に作業、技術の高さをうかがわせます。看護師さんも明るくキビキビ動き回っています。

 そう、これらは”良い病院”の特徴です。

 そして、いよいよ院長先生の診断です。扉を開けて名刺を出すと、立ち上がり会釈をして受け取ってくれました。このような礼儀正しい医師は100人に2~3人です。

 そして、肝心の診断ですが、まず、説明がゆっくり丁寧、MRI画像を示して患者の理解を促しています。そしてなんと、触診で前病院には記載のなかった、「後十字靱帯損傷」を診断、ストレスXPを実施していました。本来、膝の動揺性を診断するにあたって、「ストレスXP」は私達がしつこく熱心に先生にお願いして、ようやく実施されるものです。それを初診時から・・!

 人格を備えたドクターは、診断力も兼ね備えているケースが多いように思います。病院全体のホスピタリティ(本来、病院の語源)が高い病院は、このように優れたドクターが存在しています。私達の仕事は、”被害者さんの為になる”よい病院を見つけることでもあります。

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 行列ができることがうなずけます。    

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 交通事故の相談で重傷者のお話を聞くことがありますが、診断書を確認すると、時折事故から期間が空いてから診断されることがあります。

 重症であれば普通、直ぐに痛みや症状を医師に相談し、真っ先に検査をして診断されるはずです。それでも何故、後になってから怪我がわかるのでしょうか。相談者に確認すると、他の部位の治療を優先していたからという理由がよくあげられます。確かに、怪我の部位や重さによっては優先順位が下がる場合もあります。 例えば、腕を骨折している他、頭蓋骨骨折・脳挫傷をしている場合、一命をとりとめるため、頭部の治療を優先し、その他の骨折部位については後回しになることがあります。しかし、それはあくまで命に係わったり他に治療を集中しないと取り返しがつかない可能性があったりする例外的な場合です。

 相談者の中には通常見逃さないような場合ばかりでした。何故このような事が起きてしまったのでしょうか。後に病院同行で医師からお話を伺ったり、相談者のお話しを伺ったりしているうちに、以下のようなことが主な理由としてあげられそうです。

 ① 部位が専門家でないと明らかにならない場合で、担当医師の専門ではなかった場合。

 ② 相談者が主な症状で頭がいっぱいで他の症状を我慢していた場合。

 ③ 事故の後に怪我をした場合。

 ①の理由の場合  この主張はよくあることですが、後遺症(後遺障害)の申請では理由になりません。何故なら、症状を訴えれば、通常の医師であれば専門医に紹介して治療をするよう指示するはずだからです。仮に医師が紹介もせず原因不明のままにするようなことがあればすぐに転院を考える必要があります。

 ②の理由の場合  結論として、我慢する必要はないので、しっかり医師に伝えてください。①の理由と同様、後遺症(後遺障害)の申請では理由になりません。 何故なら、重傷といえるレベルの怪我の痛みは通常我慢できるものではなく、気づかない方がおかしいからです。それでも期間が空いてから症状を訴えて診断されると、事故と関係ない怪我ではないかと保険会社や調査事務所が疑ってしまいます。

 ③の理由について  時折、事故と関係ないのに事故で怪我したことにしようとする相談者がおります。そのような詐欺まがいのことをなさると、保険会社は、後遺症(後遺障害)はおろか、治療費の支払いをも打ち切ってきます。仮に事故と関係ある他の怪我の治療費であってでもです。また、後遺症(後遺障害)の申請で、事故で生じた怪我の申請をする場合でも不利に働く恐れがあります。決して嘘はつかず、この場合は我慢して下さい。  

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 接骨院・整骨院は柔道整復師の資格者で営業しています。もう、20年も前から健保や自賠責への不正請求はもちろん、過剰な施術費の請求で保険会社から嫌われています。

 優れた手技を持ち、多くの患者を救っている先生も存在する中、大変残念に思っています。

 もちろん、医師・病院でも不心得者がおります。しかし、健保扱い停止や逮捕される柔道整復師の数は医師の比ではありません。つまり、どうしようもない位、不正者・犯罪者が多すぎるのです。

 一昨年から危惧していた通り、不正な接骨院・整骨院で施術を受けたばかりに、とばっちりを食っている被害者さんの相談が増えてきました。代表的な例は以下の通り、

1、通っている院が、保険金詐欺で逮捕されて ⇒ 保険会社の一括払いがストップ

2、通っている院が、健保から調査が入って ⇒ 健保の使用がストップに

3、通っている院の不正が発覚して ⇒ 審査中の後遺障害が「非該当」となった?

4、弁護士・行政書士に紹介された院に通った ⇒ 後遺障害が「非該当」となった?    1と2は犯罪に巻き込まれたので、不運としか言いようがありません。ただし、通院日の水増しなど、「知らなかった」では済まされず、患者もグル=共犯とされる可能性はあります。保険金詐欺は重罪です。

 3と4は後遺障害の審査上の判断なので、一概に院のせいとは言えませんが、明確な所見のない、むち打ち14級などは症状の「信用性」が認定のポイントです。今まで多くのむち打ち14級の案件を見てきましたが、おかしな病院・接骨院等に通っていた被害者さんは、明確な骨折や重傷事案を除き、等級審査上、圧倒的に不利に感じています。

 最近、目に付くのは4、のパターンです。これは弁護士・行政書士と接骨院等が提携・顧問など、商売上の繋がりが拡大したことと無縁ではありません。提携によって法律家と院が相互に患者の紹介を行っています。これ自体は何の問題もないのですが、後遺障害等級の審査上、接骨院等での施術では、症状の深刻度は低く判断されます。自賠責調査事務所はもちろん、保険会社はあくまで医師の診断、治療実績を重んじます。やはり、症状が長引いている被害者さんは、医師の診断の下で治療・リハビリを進めた方が安全なのです。   c_g_a_7 また、接骨院・整骨院では診断書が書けませんので、提携先の院を紹介しつつも、整形外科の受診も月1、2回はキープさせる方法があります。これで、後遺症の審査に備えることができて安心?なのでしょうが・・これも自賠責はお見通し、ある調査事務所の担当者はブログで「アリバイ作りの診察」と断言、やはり、悪い印象を持っているようです。

 これは、医療機関と柔道整復の「並行受診」と言い、骨折等の患者を診る場合、医師と院が正しい連携治療を結んでいれば、問題ありません。しかし、自賠社や任意社は、法律家が絡んだ連携関係を、それを誇示した派手なホームページからほぼ把握しています。

 数年前であれば、この「並行受診」でも、それなりに神経学的所見があれば、なんとか14級9号は認められていました。しかし、むち打ち患者の多くは神経学的所見に乏しいものです。したがって、「並行受診」は大変不利な印象を持っています。最近の相談者さんで、「○○弁護士に紹介された整骨院に通い、等級は大丈夫と言われたのですが・・非該当になりました(泣)」がちらほら出始めました。非常に残念です。病院でリハビリをしていたら、認定されたであろう被害者さん達だからです。医師に後遺障害診断書を書いて頂くための、「アリバイ作りの診察」は、もう通用していないのです。

 すると、この交通事故専門、被害者救済を謳っている弁護士は、大変罪な事をしていることになります。

 商売上の安易な提携・顧問関係を院と結んでいる法律家さんは、未だ、この事実を直視できていないのでしょうか。道徳心を持った、そして、手技としての技術が高い院との連携であれば、当然に被害者さんの為になります。しかし、各県で毎月複数の院が処分を受けている今、かなり危険な連携と言わざるを得ません。だからこそ、心ある法律家は医療者との距離をしっかりと保っています。

 今後も問題の噴出が続き、法律家と接骨院・整骨院の連携ブームは、被害者の怨嗟の声を残して、いずれ収束すると思います。    

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win  通常のレントゲンではわかりにくい骨折箇所を見る場合や、関節等骨組みが複雑になっている箇所の骨折や脱臼を見る場合等で有効な画像がCT(Computed Tomography)です。   20140508_3  長管骨のような長い骨の真ん中を骨折したようなわかりやすい骨折であればレントゲン画像でも骨折部位は確認できます。  これに対し、通常のレントゲンではわかりにくい骨折箇所を見る場合や、関節等骨組みが複雑になっている箇所の骨折や脱臼を見る場合等で有効な画像がCTがあげられます。

 交通事故相談会等で怪我の内容によってはCTを撮ることを勧めています。また、最近の士業者のHPでもCTを撮ることを勧めている記事が多く見受けられます。

 HPや電話、相談会でのアドバイス通りに医者にCTを依頼する方もおりました。しかし、医者によっては、撮る必要はないと言う場合、レントゲンで確認できるから撮らない場合、等を理由にCTを撮ってくれない場合があります。

 前者の例の場合、自分の病院にCTが無いから撮れないことが理由となっている場合がありますので、患者がCTを撮れる紹介先を医者に示し、なるべく負担を軽くするようにしてみてください。後者の例の場合、医者によってはレントゲンのみで細部にまで至る骨折箇所を確認できる方もおりますが、保険手続上では医者以外の者も審査しますので、レントゲンよりも骨折状況が確認しやすいCTの方が良い場合が多いです。理解のある医者の場合、撮って頂けますが、どうしても取らないと言い張る医者もおります。

 そのような場合にまでCTを撮らなければならないのでしょうか。

 結論として、審査する上で細部に至る骨折状況を確認できるレントゲンであれば、大丈夫です。何故なら、CTは治療上骨折箇所を確認する上で撮るものですが、それはレントゲンでは確認しきれない場合があるからです。この点、CTでなくてもレントゲン上確認誰が見ても確認できるのであれば治療上はもちろん、また保険手続上でも審査に影響はありません。よって、CTでなくても大丈夫な場合があります。  20151214_1続きを読む »

win  以前、大結節骨折について触れました。その際、触れた棘上筋についてまとめたいと思います。

 棘上筋とは、肩の腱板の一部で、肩の上下運動のメインとなる筋肉です。棘上筋が断裂した場合、肩の外転運動の可動域に影響がでる可能性があります。棘上筋の断裂は、完全に断裂している場合だけではなく、部分的に断裂している場合もあります。完全断裂の場合、縫合手術を行う場合があります。部分的な断裂の場合であれば、手術ではなく、三角巾で外固定し、安静にする方法がとられる場合があります。  20141126_2  肩の可動域制限が後遺症(後遺障害)として残存するか否かは、断裂具合によります。完全に断裂していれば肩をあげる筋肉が損傷しているので、主に外転運動での可動域制限が生じます。一方で部分的な断裂の場合、程度によっては可動域制限が生じないこともあります。その場合には、14級9号、12級13号のいずれかが認定される可能性があります。

 以上から、治療方針にしても後遺症(後遺障害)手続きにしても、いずれにしても画像を撮る必要があります。

 棘上筋は筋肉ですので、レントゲン画像上でははっきり写りませんが、MRI画像であれば棘上筋が写ります。これで断裂具合を確認できます。なお、前回の大結節骨折でも述べましたが、棘上筋に衝撃を受けて、そのバネのような筋肉に引っ張られることで介達外力タイプの大結節骨折をしていることがあります。骨折により骨片が残り、痛みが続いているかもしれませんので、(3D)CTも撮る必要がある場合もあります。

 しかし、医者の中には、レントゲンのみで棘上筋等の腱板損傷を診断する場合があります。ある医者によると、肩峰と骨頭の間が通常より狭くなっていることを指摘して腱板(棘上筋)損傷を勘で診断?する場合があります。しかし、腱板等を専門的に診察している医者はMRIを撮った上で慎重に診断していました。

 我々は医者がMRIを撮らずに棘上筋損傷を診断した場合には気を付けるようにしています。当然ですが、「勘の診断名」など自賠責は認めてくれません。ちなみに、今までお会いした専門性を持ったお医者様は様々な検査をした上で慎重に診察しております。  

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win  ある2人が横断歩道を歩行中に、信号無視した運転手がその歩行者をはねてしまったとします。歩行者のうちの一人(Aさん)は、腕を骨折しました。もう一方の歩行者(Bさん)は、幸い骨折はしませんでしたが、肩を痛めてしまいました。

 AさんもBさんも共に腕が上がらなくなったと主張しております。    関節可動域制限の等級はAさんとBさんのどちらに認められるのでしょうか。

 交通事故の相談者の中には、肩や肘、膝や足首等の関節が交通事故以前よりも動かなくなったことについて相談される方が多くおります。

 確かに、交通事故による衝撃で骨や筋肉、靭帯が損傷する場合があります。その際、関節が動かなくなるほどのダメージを負う被害者をこれまで何人も見てきました。しかし、その関節可動域の制限が後遺症(後遺障害)として認められるか否かの判断は傷病名や被害者の主張のみを見たり聞いたりしただけではできません。

 被害者のお話しを信じていないわけではありませんが、物事には「常識」というものがあります。自賠責の調査事務所に限らず、弁護士やその他士業、保険会社、その他の方々が何かを判断する際の寄る辺となる「常識」が存在しております。交通事故の怪我も同じです。

 骨折をするほどの衝撃を身体に受けた場合、治療を始めたときには関節が動かなくなっても不思議ではありません。しかし、その原因は骨折したことなのでしょうか、それとも単純に痛みにあるのでしょうか。それらは画像で判断する必要があります。

 例えば、上記Aさんの画像(XPやCT)を確認したところ、上腕骨(二の腕の部分)の骨幹部(骨の真ん中)が折れていることがわかったとします。事故から半年後、Drが再び画像を確認してみると骨が癒合しており、特に偽関節や骨片が残っていないことがわかりました。それでも腕が上がらないとAさんは訴えていたとしても、これだけでは関節可動域の制限による等級はほぼ認められないでしょう。

 何故なら、骨が折れた箇所が、関節の動きを制御する部分やそれに近い所ではなく、二の腕の骨の真ん中が折れたからです。この部分が折れたとしたら、痛みがしばらく残ってもおかしくはありません。ただし、骨が綺麗にくっついており、骨や筋肉が問題なければ、腕は「常識」的にみれば動くはずです。このような場合、可動域制限では後遺症(後遺障害)は認められず、疼痛等によって後遺症(後遺障害)が認められる可能性があります(上記のようにきれいに骨が癒合していれば、等級は14級9号が限界です)。

 一方で、Bさんの画像(XPやMRI)を確認したところ、肩の腱板を損傷していることがわかりました。Aさんの場合と異なり、関節部分の怪我です。事故から半年後、Drが再び画像を確認してみると肩腱板損傷の所見が残存しており、かつ、Bさんは腕が上がらないと訴えております。このような場合、後遺症(後遺障害)の等級は所見があるので12級13号が認められる可能性がありますが、それ以上に可動域制限(12級6号)でも等級が認められそうです。下図のように断裂が明白なケースです。   20141126_2  しかし、腱板損傷があったからといって、確実に可動域制限が起きるわけではありません。例えば、Bさんの肩腱板損傷の度合いが、完全に断裂しているレベルであった場合、腕が上がらなくなっても不思議ではありません。一方で、損傷が数ミリであるレベルの場合、痛みは確かに認められそうですが、実際に腕が上がらないレベルまでの怪我とは言いにくいことがあります。

 以上から、関節可動域については、骨折しているから、靭帯損傷をしているから等傷病名の判断だけではなく、どの部位の怪我なのか、怪我の度合いはどうなのかを画像上で総合的に判断し、常識的に関節が動かなくても無理がなければならないのです。可動域制限で申請される際にはご注意ください。

 また、過去に可動域で等級がとれると判断して受任した結果、認められなかった弁護士を見たことがあります。弁護士やその他士業者に依頼する際には、なるべく画像を見ることができる事務所であるのかどうかを確認してみてください。  

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win 糖尿病と交通事故について

 まず、頚椎捻挫(ムチウチ)の症状として、代表的なものは首の痛みや痺れ、手の痺れ等があげられ、ひどい場合には、疲れやすくなる方もおります。この点、糖尿病の症状にも同じような症状があります。交通事故の被害者の中には、元から糖尿病を患っている方もおります。このようなことになってしまうと、医者でも糖尿病によるものなのか、交通事故によるものなのかの区別は非常に困難です。よって、事故以前から手の痺れ等があったのではないかと保険会社は疑ってしまい、治療費を出し渋る場合もあります。仮に治療費が出たとしても既往症とみなされて後遺障害を否定されやすいのが現状です。

 次に、MRI画像を確認してみたところ、後縦靭帯骨化症であったことが判明した場合について説明していきます。

 後縦靭帯骨化症とは、椎体の後面に着いている靭帯が骨化(骨に変性する)する病気です。この骨化した靭帯が脊柱管の狭窄を起し、脊髄や神経根を圧迫すると、手足の痺れ、首の痛みを起します。部位が胸椎や腰椎の場合(頚部に比べ小数ですが)は背中・腰の痛みが生じます。最悪、運動障害も生じる可能性があります。  症状が重い方は手術(圧迫している骨を削る除圧や、除圧後に骨移植やプレート・スクリューで固定する固定術)の必要があります。後縦靭帯骨化症を患ってしまう原因については複数の要因が関与しているのではないかという見解がありますが、明確な原因については不明で、国の特定疾患(難病)に指定されております。ただ、その要因として、肥満や糖尿病等の生活習慣病があげられます。やはり、これまでの相談者で後縦靭帯骨化症を患っていた方の一部は糖尿病を患っておりました。   c_byo_k_8  糖尿病や後縦靭帯骨化症を患った方であっても、症状が出てこなかった場合もあり、交通事故に遭ってからはじめて手のしびれや首の痛みが生じることもあります。しかし、後縦靭帯骨化症の症状はその原因でもありうる糖尿病の症状も重なっており、同じくムチウチの症状にも重なっております。    このような交通事故被害者の症状は元々の疾患であったとして、保険会社は交通事故による症状と見ない場合もあります。保険会社と医師に、「交通事故の後になってから症状が現れた」ことを説明すれば治療費は出してくれるかもしれませんが、手術代の話が出ると打ち切りを迫ったり、最終的に後遺症(後遺障害)を否定されることもあります。仮に等級(このような場合は多くは14級9号)が認められたとしても、後に弁護士が交渉する際に事故との因果関係で争われますので、交渉がしっかりできる弁護士を選ぶ必要があります。

 以上から、糖尿病やそれによる後縦靭帯骨化症を患ってしまうと、いざ交通事故に遭ってしまった暁には他の交通事故被害者よりもとても不利な状況に置かれてしまいます。糖尿病の方々は、交通事故に遭わないよう、普段の生活に十分気を付けて頂く必要があります。もっとも、気をつけていても事故の被害に遭うわけですが・・。

 糖尿病は万病のもとであると同時に真の症状の目くらましにもなってしまうのです。  

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win  糖尿病とは、インスリンの作用がうまくいかず、高血糖状態になってしまう病気です。インスリンとは、血液中のブドウ糖を筋肉や肝臓などへ取込んで血糖を下げてくれるホルモンです。

 糖尿病は、以下の4つに大きく分類されます。

①1型糖尿病  これは、インスリンを合成する膵β細胞が、免疫異常等によって破壊されてしまうことで発症する糖尿病です。多くは子供がなるものですが、中には成人で発症することもあります。

②2型糖尿病  ①1糖尿病と異なり、これは遺伝的な体質や生活習慣病(高カロリーの食事の取りすぎ、運動不足等)等が原因でインスリンの分泌作用が少なくなったり、働きが悪くなったりして発症する糖尿病です。多くは中高年以降で発症しますが、近年では若年者の発症も増加しております。

③妊娠糖尿病  これは、妊娠中に女性ホルモン等が原因でブドウ糖の処理能力が困難になって発症する糖尿病です。基本的に、出産後には正常に戻ります。

④その他疾患に伴う糖尿病  遺伝子の異常によるもの、他の病気によるもの、アルコールの過剰摂取による膵臓の破壊によるもの、等があげられます。

 これらの糖尿病のうち、日本の糖尿病患者の約95%は、②2型糖尿病です。

 糖尿病の症状として、代表的なものは、

・のどが渇くこと ・尿の量・回数が多いこと ・体重が減少すること ・易疲労性、 ・手足の痺れがあること、 ・目がかすむこと、 ・性機能の不全  等があげられます。

 症状の現れ方は、1型糖尿病の場合は急に発症ずるのに対し、2型糖尿病はゆっくり発症するため、気が付かないまま病気が進行してしまう点にそれぞれ特徴があります。    交通事故に遭われた方の中には、既に糖尿病にかかってしまっている方もおりました。糖尿病の症状は、頚椎捻挫(ムチウチ)や後縦靭帯骨化症の神経症状と重なることがあり、事故による症状であるのか否かの判別が非常に難しいことがあります。    次回は、糖尿病患者が交通事故に遭った場合の立証の厳しさについてまとめていきたいと思います。  

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 開放骨折の場合は、骨が皮膚の外に出てしまいます。これは骨の中にばい菌が入り、感染を起こす可能性が非常に高くなります。処置はデブリードマンと言って、傷口はおろか骨までガリガリ削るように洗浄します。それで一安心ではなく、その後も骨折部位に直接にプレートや髄内釘を接触させた結果、感染を起こし化膿性骨髄炎を引き起こす可能性を残します。ひどいと切断の可能性も予想されます。  kaihou開放骨折のガステロ分類  感染症はMRSA(methicillin‐resistant Staphylococcus aureus メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)と呼ばれ、抗生物質が効きづらいので、開放骨折の場合は医師から最も警戒されます。   met  ○ 黄色ブドウ球菌は、基本的に弱毒菌のため、私たちの抵抗力がしっかりあれば、特に重症化することはありません。 MRSAはこの黄色ブドウ球菌の仲間で、性質は黄色ブドウ球菌と一緒ですが、耐性遺伝子を持っており、抗生物質が効きにくくなっています。その為、治療が思うように進まず、患者の抵抗力だけが頼りになる場合が多いのです。重症化すると敗血症、髄膜炎、心内膜炎となり、骨髄炎などに陥って死亡する事もあります。   ○ 緑膿菌は土壌・水中・植物・動物(ヒトを含む)などあらゆるところから分離される常在菌で、ヒト・動物はもちろん、植物にも病気を起こすことがありますが、その病原性は低く、抵抗力のある人はデブリ洗浄で傷口をきれいにすれば、通常は発病することはありません。   続きを読む »

 本日の病院同行は、脳外傷で意識が回復しない被害者さまです。眼球運動はややあるものの、動くこと、話すこと、表情を表すことがまったくできません。意思疎通不能、完全介護状態です。最近は使われていない言葉ですが、植物人間の状態になります。  df7df77d

 事故受傷からもうすぐ3ヶ月、急性期治療はもはや成すすべもなく・・現時点の所見を主治医にご家族と共に伺いました。主治医は「意識が戻るなど、少しでも改善する可能性は0ではないが、ほぼ例がない」と断言しました。それでも家族は「はい、そうですか」と簡単に受け入れることはできません。「なんとか・・わずかでも・・可能性があれば・・どんなことでもします・・お父さんの意識を戻すことはできませんか」何度も何度も医師に食い下がります。医師はその言葉を一つ一つ丁寧に受け止めますが、やはり答えは限りなくNOなのです。家族の顔に疲労と絶望が入り混じった陰が差します。

 映画「レナードの朝」のような奇跡が起きればよいのですが、奇跡はあくまで奇跡です。最近ではミハエル・シューマッハが覚醒した例(脳損傷による昏睡状態からおよそ5ヶ月で覚醒した)が有名です。

 続いて、私は転院の打合せ、必要な診断書、その他必要な事務について医師や事務方に働きかけて現場の調整を図りました。家族だけでこの難局を乗り切るのは相当にヘビィです。

 そして、帰りに被害者さんへ直接、挨拶をしました。ご家族と共に大声でしっかりと話しかけます。聞こえているかどうかはわかりません。しかし、漫画のブラックジャックで、”植物状態の患者の心が生きていて、実は周囲の会話をすべて理解していた”話がありました。私はそれがどうしても頭から離れないのです。

  「お父さん、秋葉と申します。色々とお手伝いさせていただいています。長いお付き合いとなりますが、今度ともよろしくお願いします!」 さらに、

「もし、聞こえていたらまばたきを2回して下さい!」

   すると、なんとなくまぶたが動いたような(!!!)偶然かもしれません、しかし、それだけでも家族にとっては希望です。これからもこのような声がけをご家族は続けていくと思います。

  (追補)  勉強のため随行した今月入所の新人(補助者)にはよいOJT、いえ、人生経験になったと思います。言葉は要りません、これがMC(メディカルコーディネーター)の仕事なのです。  

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 以前、同業の先輩先生に「正確な後遺障害診断書を書いていただくために、気心通じている整形外科に誘致するか、できるだけ通院先で書いていただくか」について意見交換をしました。

 その先輩先生は「なるべく通院中の病院で」と断言しました。”自然が一番派”でしょうか。一方、医療機関との連携を誇示している(弊事務所もそうですが)先生は、気安い病院へ転院させて医証を仕上げることを売りとしています。確かにこれは楽な道です。毎回、未知の病院・医師と折衝することは大変な緊張を強いられます。

 では、私達の姿勢を言いましょう。ずばり、”無形の位”です。柳生新陰流の奥義です。これは剣をだらりと下げて、一見構えをとりません。ノーガード戦法が思い浮かびます。この奥義は先に形を決めず、相手に応じて”後の先”を取る事です。”後の先”とは剣道では”出小手”、ボクシングではカウンターに例えられるでしょうか。

nogerd  どんな医師であっても誠意をもって説明すれば、それなりの診断書は上がります。より積極的に、関節可動域の測定や検査に立ち会うこともあります。また、面談せずとも手紙で診断書依頼、記載事項を訴えることもよく行います。患者に事前に説明して医師へ伝達することもあります。それでもどうしてもこの病院に通ってはいけないと判断した時は転院させます。それは全体の5%に満たない珍事です。

 医師との折衝にはおよそ10パターンもの手段を駆使します。つまり、”無形の位”とは臨機応変を指すのです。どのような相手、状況であっても最善の対応をすることです。例えば、「医師面談は有効か無効か?」など、方法論を議論しているようではアマチュアです。どちらが正しいかではなく、「この場合、どちらを選択するか」がプロの判断です。所詮、目的は間違いのない等級認定、方法は単なる手段に過ぎません。

   医療立証の業務に熟達した者は”無形の位”を会得しています。

 弊事務所では、新人を教える際、何をもって免許皆伝とするか・・この”無形の位”が出来るようになった時と判断しています。ワンパターンで対処する仕事はビジネス効率としては有効でしょう。これはマニュアルの作成・実行で済むからです。しかし、被害者からはもちろん、弁護士事務所、保険会社、病院、交通事故に関わるあらゆる機関から信頼を得るメディカルコーディネーターはマニュアル人間では勤まりません。

 どのような仕事でも臨機応変が望まれます。残念ながらこれが出来る人と出来ない人に分かれます。その人の資質に大いに負託するからです。それでも、少なくともこれができなければ、私達の仕事は単なる「交通事故ビジネス」に成り下がるでしょう。

 来週は珍しく転院ミッションが控えています。   

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 用語説明です。

 病院や介護施設における医療介護情報提供書のことを指します。入院中の患者の治療や経過、検査結果など、すべての診察内容の記録を要約したものであり、別の機関への申し送りを円滑に行うため、看護サマリーや退院サマリーなど様々な種類があります。  診察内容の記録の要約ですが、具体的には退院後、転院後の患者への処置を指示したものや、検査結果の数値及び説明などが書かれることがあります。  

 検査先の病院と診断先の病院を結ぶ、このサマリーが後遺障害の立証上、大変重要な書類となります。高次脳機能障害の場合は特に治療や診断をする病院と検査を行うの病院が違うことが多くなります。検査先の病院で行った神経心理学検査等の資料を回収し、診断先の主治医に託すことになります。この橋渡しはメディカルコーディネーターが担うことになります。    今日の病院同行でも、まず担当医 → OT(作業療法士)の説明 → CT(臨床心理士) → ST(言語聴覚士)と 院内を被害者家族と共に面談、各担当に「サマリーをよろしく!」と言って回りました。

 本件も高次脳機能障害の客観的なデータを確保しました。材料の揃った状態でシェフに料理をオーダー、つまり、後は主治医に診断書を記載していただくのみです。

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 10回にわたり下肢実績を投稿しましたが、続いて上肢、とくに手首~上腕を特集してみましょう。

 まずは読影力が光った実例です。繰り返し言っていますが、治療を目的とする医師の読影と後遺障害を立証する私たちの読影は視点が違います。診断書を医師任せにした結果、多くの被害者は後遺障害を取りこぼしていると危惧しています。被害者さんは相談先を選ぶ際、その法律家が画像を観ているのか否かはもちろん、できれば読影力を推し量るべきと思います。「主治医に診断書を書いて来てもらって、内容を精査してから審査に提出するから」としか言わない相談先は不安ですよ。

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併合11級:橈骨遠位端粉砕骨折(40代男性・神奈川県)

【事案】

バイクで渋滞の2車線道路の間を走行中、左側の自動車が急に車線変更したため衝突、右手首、左手甲を骨折したもの。その後、1年の通院を経て症状固定前に相談会に参加された。

【問題点】

まず画像である。粉砕骨折した橈骨を確認、骨折の割に癒合状態はまずまず。続いて可動域の計測をしたところ4分の3制限を計測。以上から12級6号を予断したが、これではあまりにも普通の対応。数多くの相談先から私たちを選んでいただいたが、期待に応えることができたのか?何か物足りなさを感じた。

【立証ポイント】

相談会後、画像を改めて読影したところ尺骨の茎状突起部が骨片化していることに気付いた。もちろん診断名はない。これは以前にも経験したパターン。早速、主治医に面談し、指摘したところ「あ、確かに骨片化しているね。これは手首に深刻な影響はないけど、診断名が必要なの?」と。そこで、後遺障害診断書に「尺骨茎状突起部骨折、癒合不良、骨片化」と改めて記載、長管骨の変形欄に「イ ...

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 下肢の未投稿実績はまだ残っていますが、キリがいいのでシリーズはここまでにします。最後は、そのまま申請したら併合11級であったであろう案件を一つ引き上げた仕事です。等級一つでも数百万円賠償金が膨らみます。特別に私に依頼下さった弁護士先生&被害者さまの期待に応えることができました。

kaihou  本件はガステロ分類タイプⅢA(真ん中)

併合10級:脛骨・腓骨近位端骨折・下肢醜状痕(40代男性・神奈川県)

【事案】

ツーリング中、後続バイクの追突で転倒、右下肢の脛骨・腓骨を開放骨折。創外固定、受傷部の皮膚移植を施行。その後、危惧していた感染症を併発し、治療は2年以上を要した。既に弁護士に委任も、症状固定を前に後遺障害の医証まとめに特化した依頼を受けた。

【問題点】

重傷で苦しんだ以上、等級の取りこぼしは許されない。できうる最大の等級獲得を検討した。脛骨・腓骨が近位端骨折であるゆえに膝関節の可動域制限12級は余裕で立証できる。醜条痕も見ての通り。しかし、本件の問題は足関節の可動域制限の原因であり、その究明が必要であった。

【立証ポイント】

主治医と共に改めて読影を行い、脛腓骨・骨頭部の交差部の癒着が原因であると結論、それを診断書に落とし込んだ。足関節の機能に腓骨頭の可動が影響することを学んだ。これで膝関節と足関節でそれぞれ12級7号を確保、11級相当とした。

次に、実際に動かして検証してみた

続いて醜条痕を写真撮影、別紙にて詳細に大きさを計測・記載、万全の医証で提出した。その後、醜状痕の面接には念のため弁護士の立会いをお願いした。

結果、醜状痕でも12級相当をゲット、併合10級にまとめた。これがお金を頂くプロの仕事。  

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 昨日の記事から専門用語を解説します。それと専門医から最新の治療情報を。

  ※1 デブリ洗浄=デブリードマン、デブリードメント、略してデブリと呼ばれます。感染、壊死組織は 正常な肉芽組織の成長の妨げとなるため、は創傷外科治癒において最初の処置です。  開放骨折の場合、傷口を洗うような生ぬるいものではありません。骨折面のゴミや骨片を洗浄・除去するにとどまらず、骨と骨髄をゴリゴリ削り取ります。感染症のリスクを低くするため、なるべく多めに組織を除去する必要があるのです。したがって骨の癒合・再生は遅くなります。  

※2 イリザロフ法=1951年、ロシアの医師ガブリル・イリザロフが初めて実施しました。人工的に骨を切り、創外固定器(通称、イリザロフ)をつけます。 そして、外から1日1mmぐらいのペースで骨の隙間を広げていきます。その間、骨の自然治癒力により隙間が修復され伸びていくわけです。最近ではケガ(下肢の短縮障害)だけではなく身長を伸ばす手術としても知られています。原始的な方法ですが脚を伸ばすには最も効果があります。 c_g_l_26

★ 最新知識

 本日、専門医の面談にて、感染症の監視のためのPET検査があり、これが有用であることを聞きました。開放骨折では感染症を防ぐことが基本中の基本です。PET検査は一般にガン検査に用いられますが、この専用PET検査はまだ一般的には流布していないようです。

pet_001続きを読む »

 現在、下肢の重症案件を数件お預かりしています。下肢の骨折の中でもやっかいなのは開放骨折です。これは骨折部が皮膚を突き破り、外に出てしまった骨折を指します。人体の内部での骨折と違い、骨の内部にゴミやばい菌が入ってしまうからです。 kaihou 過去記事 ⇒ 開放骨折のガステロ分類  治療は骨の整復の前に、骨の開放部のごみや骨片を綺麗にする必要があります。洗浄と言うより、骨や骨髄までゴリゴリ削り取る作業です。ばい菌を残さないために組織ごと、多めに削り取らなければなりません。したがって骨の癒合が大幅に遅れてしまうのです。これを「デブリ洗浄」(※1)と言います。  そして、ばい菌が暴れださない様、血液、骨髄の監視が続きます。昨年、ようやく解決した被害者さんは受傷から1年後になって感染症となり、せっかく骨も傷口も塞がってきたのに、再度切開し、感染部をデブリ洗浄しました。また整復のやり直しです。おかげで症状固定まで3年を要しました。

 現在も感染症の危険を抱えた、開放骨折の依頼者さんを3人お預かりしています。治療費を支払う保険会社との折衝、長期的に診てくれる病院・医師の確保で奔走することになります。場当たり的で何もできない病院には早く見切りをつける必要があります。また、相手保険会社からしっかり治療費を確保しなければなりません。保険会社としては長期かつ手術が数度伴うので健保の使用を強く要請してきます。しかし、病院側は健保使用により、イリザロフ法(※2)など特殊治療、入院期間の縛りなどの治療内容の制限がなにかと妨げになるので困ります。自由診療による治療費の利益(=健保の2倍以上)だけの問題ではないのです。  このような周囲の思惑が絡み、うかうかしていられないのです。色々な調整、交渉が必要となりますので、ここはメディカルコーディネーターの真骨頂です。

 交通事故の解決では、この前半戦が重要となることがしばしばあります。重度の骨折の被害者さんは早期に専門家を確保して下さい。賠償問題は後回し、まずは自らの足で再び歩くことが目標です。

※1~2は明日解説します。  つづく 

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 今朝は新幹線で宇都宮、先ほど帰宅。ここ数日の医師面談から・・

 事前に「怖い先生」「厳しい先生」と聞いていました。しかし、毎年200回以上、医師面談をしていれば、どんな先生であろうと今更びっくりはしません。本件も実際にお会いして、お話をした結果、すんなり診断書の記載を了解していただけました。修正・追記も了解いただけました。特に難しい先生とは感じませんでした。

 やり取りはわずか3~5分です。医師は多忙で患者の診断に分刻みですから、だらだら話をすることを嫌います。理路整然と要望を伝え、無駄を極力排した折衝としなければなりません。医師も人間、色々なパーソナリティーがあって当然です。私達、メディカルコーディネーターの「コーディネーター」とは調整役という意味です。あらゆる相手・条件・場面でも調整し、まとめ上げるのがプロの仕事です(たまに失敗もありますが)。

 中には上手く医師と折衝して診断書を記載依頼できる患者さんもいるでしょう。しかし、現実は患者さんが医師と上手に話をまとめることは難しく、特に口下手な患者さん、遠慮がちな患者さん、気の短い患者さん、いずれも上手く交渉ができません。多くは、医師のとの相性で運命が左右されてしまうものです。結果として良い診断書が仕上がりません。やはり、少なからず専門家の手助けが必要です。交通事故賠償の世界では、メディカルコーディネーターは潜在的に望まれている、隠れた仕事と思います。人知れず頑張らねばなりません。

 診断書の記載依頼、これは書類のやり取りだけでは埒が明きません。医師にしっかり説明・申告しなければ、不正確で内容の乏しいものとなります。それで等級を取りこぼしては泣くに泣けません。医師面談が決め手となることが多いのです。

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