少し古いニュースですが、昨年秋に厚労省から掲題のミスが報告されました。ちょうど、労災セミナーのレジュメを作成していましたので、改めて取り上げたいと思います。

 かつて、「消えた年金」が大問題になったことがありますが、当然、労災でもさもありなん、と思います。私も3年分の厚生年金の加入記録を見事に消されました(怒)。

 実際、労災請求の現場では、従前から「労災はできるだけ使わないように」と会社側が労災請求に消極的な姿勢を感じています。使われている側・社員も、会社に逆らってまで請求はできません。それが、パート・アルバイト、契約社員なら尚更です。構造的に労災はアンタッチャブルなのです。では、手続きを助けてくれる業者や士業の先生が望まれますが・・肝心の社労士先生は会社側から顧問料をもらっている、言わば会社側の立場です。会社の意向に逆らって従業員を助けるわけがありません。もちろん、福利厚生に理解ある社長、つまり、従業員を大切にしている企業であれば、顧問の社労士先生にお願いしていただけます。しかし、このような企業は少数ではないかと思っています。

 今回、問題となった休業給付の手続きも、まぁ面倒なもので、特別給付を知らない人も多い。一部上場企業ならまだしも、会社側の事務員が不慣れな書類作成に右往左往、社労士の先生の多くも会社の要請無くば、まして無償では手伝いません。そして、昭和のお役所体質は改善したとはいえ、厚労省職員の信じられない電子的なミス・・・やはり、誰かが、手続き面で目を光らせる必要があります。今のところ、交通事故絡みならば私達がそれを担っていますが・・。

 人は基本的にミスをするものです。二重三重にチェックをする必要があり、請求側=民間の自助努力として、労災事故で苦しむ被害者を救済する体制も望まれると思う次第です。、  

休業補償27億円、処理ミスで1.1万人分支給遅れ 厚労省

  厚生労働省は7日、休業中の賃金を補償する労災保険の休業給付と休業特別支給金について、約1万1千人分(総額約27億8千万円)の支払いが遅れていると発表した。職員のシステムの誤操作が原因。同省は14日までの支払いを目指すとしている。

休業給付と休業特別支給金は労働者災害補償保険法に基づき、業務上の負傷などで労働ができない場合、休業4日目から支給される。支給額は休業1日につき賃金相当額の8割程度。

同省によると、6日に担当職員が会計システム上で支給に関係ない事務処理をしていたところ、誤操作で支給に関するデータを消去。本来は7日または10日に支給予定だったが、ほとんどが復元できず、予定通りの支払いができなくなった。

会計システムの操作は通常、複数人でチェックする体制だった。同省は誤操作の理由を検証し、再発防止策を検討する。

これまでに支給の申請者から支払いの遅れに関する問い合わせの電話が100件以上寄せられているといい、ホームページに問い合わせ先を公表するなどして対応している。同省担当者は「発表が遅れ、多大なご迷惑をおかけして申し訳ない。適切に対処していきたい」としている。 <日本経済新聞 平成30年9月7日>  

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 今月末、行政書士試験の発表があります。秋葉事務所のスタッフさんや内定者さんの結果がでます。悲喜こもごもと言ったところでしょうか。

 私も10年前の平成21年1月に資格を取得しました。登録して事務所を開設したのはその年の6月でした。当時はまだ保険代理業が主業で、初年度は行政書士業としての売上はほとんど無く、保険業の域をでない事務所でした。その後数年を経て、保険代理店を地元の仲間に任せ、行政書士事務所に専念することになりました。都内に事務所を移転した頃です。では、完全に行政書士単独事務所になったかと言うと、そうでもありません。交通事故業務一本で突っ走っておりますので、他の行政書士業務、例えば許認可の代理申請は業務経験なしです。行政書士事務所を名乗りながら、行政手続きに連なる業務の経験は10年間数えるほどです。行政手続き以外ですと、昨年1年間ではわずかに相続2件、契約書作成1件程度でした。業務は交通事故に関する医療調査と保険手続き、これで10年間食べてきたと言っても過言ではありません。

 それでも、事務所を構えて10年、人並みの感慨を持つものです。今後は、私の手を離れて独立する後進の成長が楽しみでもあります。それはまだ数年先になりそうですが・・。

 基礎作りの10年を終えましたが、次の10年の目標を目指し、チーム一丸で取組んでいきたいと思います。6月にはささやかですが、10周年の会でも催そうかと思います。

 旧越谷事務所のプレート(現在も東京事務所に掲げています)

 

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 おかげさまで、年初から社員・バイトさん共に面接が続いております。この数年、あまりに求人が実らないことから、業を煮やしたハローワークさんや求人会社さんから、待遇面など広告の表記について色々とアドバイスを頂きました。それはとても参考になる意見で、なるほどと思うことばかりです。しかしながらですが、弊所の仕事は世間にそれほど周知されたものではなく、採用の第一条件は「この仕事をしたい」といった動機面です。

 これまでも、動機面から門を叩いてきた面接者しか採用できなかったと思っています。その方達は共通して、条件面など見ていないに等しく、業務内容”被害者側の医療調査”に興味を示してきました。逆に、行政書士に受かった、もしくは勉強中で行政書士事務所の求人を探している方達は、勘違いの応募に思えました。行政書士での実務経験を積むため・・これは弊所ではかないません。行政書士の主業である許認可などやっていないからです。それは、HP上に表記しています。

 行政書士事務所の求人は全国でも数件レベル、ほとんど無きに等しいものです。行政書士試験の合格者は実務経験なく、直ちに独立独歩を迫られます。これは業界全体の特徴でもありますが、行政書士は医師や弁護士のような修習制度がありません。理由は、業務の難易度はもちろん、その責任の重さも含め、軽易な職種だからと思います。行政書士の一般的な業務はマニュアル・雛形を購入すれば、ほとんど事足ります。(もちろん、歴戦の書士ならではのプロフェッショナルな技術は別物ではありますが。)一般的に資格合格=即、独立事務所開業なのです。

 もし、親戚に建設会社がある、前職の繋がりで仕事を確保できるなど、コネをバックに独立ならば生計の目処が立ちますが、それ以外の合格者が行政書士事務所を構えて食べて行くのは、相当のリスクが伴います。恐らく、裸一貫でベンチャー企業を立ち上げる覚悟と才能がなければ無理かと思います。およそ90%の行政書士は自宅外に事務所を持たず、家の応接間に電話1本、事務員は奥さん、このような体制が普通なのです。自宅外事務所を持ち、事務員を雇用できる書士の多くは、司法書士や税理士、社労士事務所と併設です。これは他士業に付帯して仕事が発生する、行政書士ならではのメリットを活かした結果です。それだけ、行政書士業を主業として生計を立てることは大変なのだと思います。専門学校、通信教育、出版会社等、あまたの資格産業が「行政書士で独立開業!」「行政書士で年収1000万!」「誰でも努力次第で成功!」などと、(行政書士を目指す人達の出費を煽って)甘い夢を喧伝していることに気付くべきです。

 弊所についても、医療調査・保険手続きを主業としていますので、併設事務所の形に近いと思っております。行政書士は余るほどおりますが、交通事故被害者の調査業、被害者救済業はかなりニッチな存在です。何度も繰り返し書きましたが、弁護士事務所だけでは手の及ばない救済業務が山ほどあるのです。一部の弁護士先生の理解から、その業務の委託を受けておりますが、まだまだ世間一般に浸透したものとは言い難いものです。したがって、入所希望者の皆様に対しては、新しい仕事を開拓する気概を要求したいのです。現在、弁護士の影を恐れつつ、こっそり賠償交渉に手を出して、裏で小ずるく報酬をせしめる従来の非弁・交通事故行政書士が死滅しつつあります。このような環境下、新しいメンバーとは、弁護士法に触れずむしろ弁護士から歓迎され、被害者救済に不可欠な存在を目指し、業界の10年20年先へ視線を共にしたいと考えています。  

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 これはどの業種・仕事にも言えますが、そこそこ経験を積んで自信を持つと、つい、結果を見切ってしまうことがあります。もちろん、経験に裏打ちされた「読み」から仕事の判断をすることは必要です。しかし、私達の仕事の結果は審査側の判断に委ねられるのですから、「読み」はあくまで予想に過ぎません。本件の認定は最初から難しいと思っていました。当然、再請求も結果は厳しいと覚悟しました。しかし、予想に反して後遺障害が認定されました。このような読み違いが最も生じる申請は、ずばり、神経症状の14級9号です。

 打撲捻挫で治療が長引いた場合、その多くは被害者感情からくる「大げさ」、保険金狙いの「詐病」、あるいは「心身症」による症状の遷延化が疑われます。これらを排除した真の症状に苦しむ被害者を、自賠責は症状の一貫性・信憑性から判断します。骨折のように明確な画像もなく、医師の診断が数値化できない、このような審査に自賠責保険の調査事務所の判断もぶれると思うのです。その点、もっとも読みづらい後遺障害と言えます。

 私達も年に数件、認定等級の予想を外すことがあります。その度に、経験や知識だけで軽率に判断してはいけないことを再確認させられます。

 本件は、抜群の戦功から今年、二階級特進(つまり昇給)の佐藤が担当しました。

   私、佐藤も4年目、仕事に自信がでてきましたが・・ゆえの慢心を戒めなければなりません  

非該当⇒併合14級:頚椎・腰椎捻挫(50代女性・千葉県)

【事案】

自動車に搭乗中、急な右折で専用レーンに割り込んできた車に衝突される。直後から頚腰部痛のみならず、手足の痺れ、頭痛、めまい等、強烈な神経症状に悩まされる。

【問題点】

相談時には既に8ヶ月が経過しており、相手保険会社に治療費を打ち切られた後だった。さらに、MRI検査が未実施、受傷機転も軽微な接触、事故も物件扱い、初診が事故から2日後・・・マイナス要素がいくつも絡んでいた。できるだけ全てを取り繕い、後遺障害申請を試みるも結果は非該当であった。

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 受任する何年も前で、事故とは無関係であっても、既に負った後遺障害(既存傷害)、これも十分に検証する必要があります。

 なぜなら、自賠責保険の後遺障害審査では、事故で生じた後遺症から、既存の後遺症が差し引いて等級認定をします。この判断を加重障害と呼びます。当然、事故前の障害は、後の賠償交渉で相手側の主要な反論材料にされます。当該事故による障害(賠償金)から、元々の障害分を差し引く・・大変難しい判断になりますが、ある意味、自賠責の加重障害のルールで明確化できます。賠償問題の解決に一定の合理的な考え方として重宝されるのです。

 本件の場合、事前の調査で既存障害の実態を把握したつもりでしたが、加重障害を想定できませんでした。結果は、政府の保障事業(引き逃げや無保険車による被害者を国が補償)の等級認定があったことが加重障害判断の決め手になりました。その点、依頼者様にはもちろん、自賠責保険・調査事務所に長い期間の調査負担をかけてしまったと反省しています。

政府の保障事業だったとは・・  

3級3号・加重障害:高次脳機能障害(80代男性・埼玉県)

【事案】

歩行中、自動車に衝突される。頭部を強打し、意識不明の状態で救急搬送、急性硬膜下血腫、脳挫傷の診断が下された。

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 続いて、1下肢における足関節の機能障害と変形障害の二つを立証した件です。

 弊所の実績ページをご覧になればおわかりと思いますが、下肢のあらゆる骨折の経験が蓄積されています。経験上、診断名から等級の予想がつきます。本件でも併合11級に収めるべく、「何をどうすべきか」計画的作業はお手の物です。とくに、腓骨の癒合不良は医師も歩行・日常生活に深刻な後遺症を残すものではないと、治療上軽視します。自賠責保険でも多少の変形では等級を認めませんが、それでも骨が癒合しない偽関節となれば、「長官骨の変形」=12級8号に合致します。

 本件のように骨折が複数に及ぶ場合、自賠責のアドバンテージを活かし、等級を一つ引き上げることが望まれます。これこそ経験の差がでるところではないかと思います。    多発骨折の場合、多くの被害者さんが等級を見逃していると思います  

12級7号:足関節内顆開放脱臼骨折、12級8号:腓骨遠位端粉砕骨折(50代女性・埼玉県)

【事案】

歩行中、バイクに衝突される。全身を強く打ち、下肢の多発骨折。救急搬送され他の地、すぐに手術が施行され、2ヶ月以上の入院を余儀なくされた。

【問題点】

足関節は抜釘手術を行わないことが決まっていた為、主治医は立証作業にそこまで協力的ではなかった。また、治療努力の成果もあり、可動域もどんどん回復していった。 対して、腓骨は癒合進まなかった。

【立証ポイント】

骨癒合も進んだ頃合いで病院同行し、まず、足関節の3DCTと両足関節が比較できるよう、同時に写るようなXP撮影の依頼を行った。その後、後遺障害診断では、可動域計測に立ち会い、12級の基準値であることを見届けた。後遺障害診断書が完成したが、診断名と可動域数値に不備があった為、修正依頼を実施して完璧な状態に仕上げてから申請した結果、狙い通り12級7号認定となった。

一方、腓骨はレントゲン画像をみたところ、骨折部にわずかの空隙があり、偽関節(くっつかなかった)となっていた。プレート固定している為、安定性は確保されており、医療的なアクションを起こすことはないが、医師に丁寧に説明して長管骨の変形欄に追記いただいた。過去の経験から自賠責は腓骨変形に関する等級認定に厳しい印象だか、偽関節の画像打出しを添付してアピールしたことから、こちらも狙い通り12級8号認定となった。結果、併合11級に収めて、連携弁護士に引き継いだ。

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 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。    さて、昨年も多くの認定結果が蓄積されました。年始からシリーズで、30年中の未投稿案件を紹介したいと思います。

 最初は醜状痕です。ご存知の通り、書面審査を原則とする自賠責保険では、その例外として面接による審査が行われます。弊所で事前に計測していますのでほとんど等級は読めていますが、やはり、人が審査するもの、微妙なジャッジで左右されることもしばしば。本件は明らかに被害者寄りの計測・認定をして下さいました。醜状痕の判定に関しては、「自賠責は優しいな」と感じることがあります。 私も面接に立ち会ました

9級16号:顔面線状痕、14級5号:下肢醜状痕(50代女性・埼玉県)

【事案】

歩行中、バイクに衝突される。全身を強く打ち、多発骨折、顔面にも傷を負った。 続きを読む »

 今年の御用納はおでんでした。八丁堀界隈にも小粋なおでん屋さんがあります。席数わずかなので予約必至です。今年も社員のおごりでした。ごっつあんです。

   今年は色々と精神的に消耗する仕事が多かったように思います。他事務所から難しい案件が集中しました。例え弁護士であっても、すべての先生が後遺障害の調査・立証に精通しているわけではなく、被害者さんから経験不足を見抜かれてしまったようです。結果として、他事務所が手をこまねいていた、もしくは既契約先を見限って、一定数の被害者さんが秋葉事務所に辿りつきました。わざわざお切替え頂いたことは、技術・実力が評価されたのですから名誉なことだと思います。

 しかし、経営面からみれば激しい消耗戦にさらされることになります。難しい問題のない平易な案件は、それ程交通事故の経験がない事務所であっても、まぁ合格点の解決まで進めることができます。一方、重大・重傷事故、立証が困難なケガを伴う事故の場合、成果より経営効率を優先する事務所では限界があり、それこそ事務所・担当者の経験と技術の差が如実となります。それらは大変に手間がかかり、神経をすり減らす業務になります。つまり、費用対効果の低下は、事務所の体力を奪うことになるのです。

 来年からは労働法の改正があり、「働き方改革」が叫ばれています。諸々の改定を簡単に言えば、「働く時間を減らせ!」でしょうか。昭和から平成への一番の変化は、右肩上がりの経済の終焉と言われています。今後、日本全体において劇的な経済発展が見込めないことから、個々の労働時間を減らしてワークシェアリング、賃金も物価も上昇せず、結果として安定的な経済力の後退を見据えているように思います。かつての栄華を誇った西欧諸国は日本のGDPより低く、労働時間も突出した日本より少ないものです。諸々の意識調査でもお馴染みの結果ですが、それでも人々の幸福度・満足度は日本より高いのです。先例や歴史に学べば、日本全体が”何事もそこそこの繁栄”、更には”物質的価値から時間的価値”へ、価値観の転換を迫られているのかもしれません。

 翻って私共の事務所ですが、例え困難な事案であろうと被害者救済の推進力はいささかもセーブすることはありません。仕事の質を落とすことのない成長を目指せば、長期的な視野と日々のルーティンの徹底が欠かせません。目先の利益を度外視した長期間の経営計画と、効率に流されない堅実な仕事によって、世の中に必要な存在であり続ける・・これは今までも実践してきたと思います。そこに、更なる創意工夫を加えるためにも、わずかの余裕が必要と思う次第です。それは、一にも二にも人材です。新人の発掘と、自身を含めた社員の成長が鍵でしょうか。そして、次年度からは他士業への連携をより広げていくことも含みたいと思います。

 「時代や環境に即すること、それでも譲れないこと」、「効率を求めること、時には非効率ながら突き詰める姿勢」、これら二律背反する目標を追う事は厳しい道です。それでも、交通事故被害者さん達の「納得」を仕事の到達点とすれば、自ずと打開できると考えています。

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 人工股関節置換術とは、損傷した股関節面を取り除き、人工関節に置き換える手術のことを言います。字の通りですね。人工関節は、金属製のステム(大腿骨軸の代わり)とボール(大腿骨頭の代わり)、ソケット(寛骨臼の代わり)、その内側にライナー(軟骨の代わり)で出来ています。メーカーや人工関節のタイプ、パーツ等によって様々ですが、チタンやコバルトクロム合金、ステンレス、セラミックス、ポリエチレンが一般的です。この軟骨部(ライナー)が摩耗してしまうため、60代未満の方は、再置換術施行の可能性もありますが、人工関節の性能向上により、摩耗しにくくなっている為、一生入れ替えなくても問題ない、若しくは一部のみの入れ替えで済む時代が来ているようです。 ※ ソケットとステムには、骨との親和性が高いとされるチタン合金、ライナーとボールにはポリエチレンとコバルトクロム合金の組み合わせが摩耗に強いものとして使用されているようです。    また、固定方法には大きく分けて「直接固定方法」、「間接固定方法」の2種類があります。 「直接固定方法」とは、大腿骨内部に空洞を作り、そこに人工股関節を挿入します。この場合に使用される人工関節の表面には特殊な加工が施されており、骨の成長によって結合がより進んでいきます。 「間接固定方法」とは、骨セメントと呼ばれる固定剤を人工関節と骨の隙間に流し込み、固定させます。骨の成長を待たずにしっかりとした固定性が得られることなどがあります。

※ どちらの方法が良いかは分かりませんが、直接固定方法が主流のようです。

 このように人工股関節置換術は、非常に高度な医療技術が必要です。また、交通事故においては「因果関係」について、非常に厳しくみてきます。一瞬の判断によって、事故の解決や今後の人生が大きく左右されます。ぜひとも慎重なご判断をお願いしたいと思います。  

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高次脳機能障害の性格変化については、医師が高次脳機能障害の専門的な知見を持たない限り、非常に見逃されやすい症状と前回述べました。

その理由として、以下の(1)~(3)等があげられます。   (1)かかりつけ医がいない限り、事故後病院に運ばれてからはじめて医師に会うことが多く、事故前の患者の性格を確認できないことが多いこと。   (2)事故後の患者を診て頂いても、現状の性格が事故前と違うのかどうかを確認することは、高次脳機能障害に知見の深い病院や医師でない限りあまりないこと。   (3)高次脳機能障害の患者は、性格変化の症状を自覚することはほぼ無く、患者自ら医師に訴えることはあまりないこと。また、不思議なことに、就労不能レベルではない程度の性格変化の場合、家族の前でしか症状が現れず、医師や近所の方々に会う場合には普通に接することができる患者もいます。よって、患者から医師に対して症状を訴えることはあまり期待できません。 そこで、性格変化の症状を必要になってくるのは、家族、特に同居している家族からの報告です。事故前と事故後の性格の違いを判断でき、さらに、医師や病院関係者、近所等の他人に対しては症状が出ないことがあるため、性格変化の症状を一番認識できるのは家族だけなのです。     高次脳機能障害によって性格が変わってしまった場合、これに対する治療方法は、投薬方法があげられますが、効き目は人によってバラバラです。また、投薬以外にできることはあまりありません。このことから、一部の医師は、性格変化について、日常生活に大きく影響しない場合は重く受け止めて頂けないことがあります。この点、性格変化が加齢等によるものであれば、やむを得ないこともあるかもしれません。

他方で、交通事故の場合ですと、保険会社に治療費を請求するため、あるいは後遺障害申請をするため、診断書に性格変化まとめて頂く必要があります。

しかし、短い診察時間で性格変化は表出しづらく、「臨床上大したことない」「診断書に書く必要がない」等、まじめに取り合ってもらえないことがあります。肝心の医師が高次脳機能障害に対して理解して頂かないと、意味がありません。このような医師にあたってしまった場合、性格変化について立証する手段としては、(1)専門医の紹介状を書いて頂き、専門医の診察を受けること、(2)家族からの「日常生活状況報告」として日常のエピソードと共に性格変化の内容についてまとめてから後遺障害申請をすること、の2点があげられます。

専門医や高次脳機能障害について知見の深い病院であれば、家族から性格が変わったことを報告されると、診断書やカルテにまとめてくれます。また、性格変化で日常に影響が出る場合も専門的なアドバイスももらえますので、保険手続面や後の裁判面だけではなく、今後の日常生活を送る上でも、症状をメモ等にしてまとめておくことをお勧めします。また、医師は診察中忙しく、逐一報告しても聞いて頂けないことが多いこと、本人の目の前で性格が変わったことを報告するのは躊躇いがあることが多く、これらの事情からも、メモにしておけば医師に渡して報告が出来ますので、その方面でもお勧めします。  

なお、弊所では専門医にお連れすることだけではなく、やはり家族からの本人の状態・症状を確認し、かつ、家族には常日頃、気付いた点をメモにまとめるようにアドバイスしています。というのも、上記(1)(2)はいずれも重要であるため、後遺障害申請時に使用する日常生活状況報告をまとめる際に極めて有効な手がかりになるといえるからです。

交通事故に遭われた方はご自身で治療努力することは当たり前のことですが、高次脳機能障害で自分ではどうしようもない状況になってしまった場合、最後に助けてくれるのは信頼できる家族である、と言えます。    

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高次脳機能障害の認定に必要な3要件として、① 事故後の意識障害、② 頭部外傷による脳挫傷等、脳外傷による画像所見があること、③ 事故後の症状、があげられます。

この内、③の要件は、記憶障害や言葉が出てこなくなった等のように一見してわかりやすい症状から、わずかに計算ミスしてしまうことや、少し注意力が落ちた等、注意深く確認しないとわからない症状まであり、様々です。

注意深く観察すれば専門の医師や専門の言語聴覚士の検査中に確認できるものもありますので、弊所では専門の検査ができる病院や専門医がいらっしゃる病院で診察を受けるために、紹介状を主治医に書いて頂いたり、通院先で検査が可能であれば、必要な検査のお願いをしたりすることがあります。

しかし、中には医者でも言語聴覚士でも気づきにくい症状もあります。

その一つとして、性格変化があげられます。

性格変化も内容は様々で、例として、易怒性、易疲労性、飽きっぽくなる(注意障害等)、幼児退行、等があげられます。

易怒性とは、性格が怒りやすくなることです。ひどい場合には、就労不能レベルになりますと、病院関係者まで怒鳴り散らして大暴れします。もっとひどい場合には、他者を殴ってしまうこともあります。   易疲労性とは、少し作業するだけであっという間に疲れ果ててしまうことです。事故前は活発で明るい人が、事故後、とても大人しくなり、外出もしなくなるケースもあります。

飽きっぽくなる(注意障害等)とは、家事や仕事の作業中に、全く別の作業をしてしまうこと等を指します。その結果、すべての作業が中途半端になってしまって、何も終わらなくなることもあります。わかりやすいのは、例えば、ある場所を掃除中に、途中で全く別の場所を掃除し始めてしまい、かえって散らかってしまうようなケースがありました。

幼児退行とは、性格が子供っぽくなったことを指します。成人女性が事故後、周りを気にせず(男性の前であっても)、服を着替えてしまうような羞恥心の欠如のケースや、わがままになって周囲を困らせる場合、面談中に飽きて遊んでしまう場合等、様々です。

上記した症状以外にも性格変化のバリエーションがあります。これら性格変化が事故後生じた場合、高次脳機能障害の症状として、等級認定を検討する必要があります。

しかし、この性格変化については、医師が高次脳機能障害の専門的な知見を持たない限り、非常に見逃されやすい症状といえます。詳しくは次回のブログで述べます。  

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 近年、悪質・危険な運転者に対する罰則強化のために、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(略称:自動車運転死傷処罰法)が、平成26年5月20日施行されました。従前の過失運転致死傷罪とは別物になったのです。

 交通事故で他人を傷つけたとしても、それは故意犯=「わざとではない」ので、殺人罪に比べてはるかに軽い罪に扱われてきました。確かに、飲酒運転や悪質な運転で被害にあった人にとって、「過失によるもの」など受け入れがたく、故意犯に近い厳罰を求める声が強かった背景があります。早速、内容を確認してみましょう。

 

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 年末です。飲みの席が多いこの季節、注意したいのは飲酒運転です。罰則強化の影響で違反者・摘発数は減少傾向です。それでも、今年は元アイドルグループの飲酒ひき逃げ事故など、飲酒運転をする人は一定数いるものです。

 近年の改正で処分・処罰の範囲が広がっています。まずは、飲酒運転者の基準について復習したいと思います。  

(1)飲酒ドライバー

   ちなみに、元M娘のYさんは、報道によると0.58mg/1ℓが検出されたそうです。つまり、上表0.15mgの4倍と言うわけです。体質の個人差や体調の影響があるにせよ、昨夜の酒が残っていた?などの言い訳はできない数値なのです。 続きを読む »

  (4)外分泌機能と内分泌機能の両方に障害が認められる場合

 服することができる労務が相当な程度に制限されると考えられるところから、9級11号が認定されています。   (5)膵臓損傷では、膵臓の切除術が実施されることが一般的ですが、 術後は、腹部にドレーンが挿入され、膵液の漏出に対応しています。

 膵液は、脂肪、蛋白、炭水化物を分解するための消化酵素を含んだ液です。 重症の膵液瘻では、多量の膵液漏出があり、電解質バランスの異常、代謝性アシドーシス、蛋白喪失や局所の皮膚のただれ、びらんが生じ、膵液ドレナージと膵液漏出に伴う体液喪失に対しては、 補液、電解質を供給するなどの治療が必要となります。つまり、このレベルでは、治療が必要であり、症状固定にすることはできません。

 しかし、軽微な膵液瘻で、治療の必要性はないものの、難治性のものが存在しているのです。これが続くと、瘻孔から漏れ出た膵液により、皮膚のただれ、びらんを発症します。 軽度な膵液瘻により、皮膚にただれ、びらんがあり、痛みが生じているときは、局部の神経症状として12級13号、14級9号のいずれかが認定されています。  

※ 代謝性アシドーシス  ヒトが生存していくには、体内の酸性とアルカリ性を、良いバランスに保たなければなりません。 これを、酸塩基平衡と呼ぶのですが、具体的には、ph=水素イオン濃度が7.4の状態です。 酸は、酸性、塩基は、アルカリ性、平衡は、バランスをとることなのです。 pHの数値が7.4以下となると、酸性に傾く=アシドーシス、以上では、アルカリ性に傾く=アルカローシス状態となります。 酸性の物質が体内に増えればアシドーシスとなるのですが、アルカリ性の物質を大量に喪失しても、酸性に傾きます。

 ひどい下痢で、アルカリ性の腸消化液を大量に喪失すると、pHは酸性に傾く、アシドーシス状態となり、 皮膚は弱酸性、腸液はアルカリ性ですから、下痢でお尻がヒリヒリするのです。ヒリヒリは、ただれることですが、医学となると、びらんと難しく表現するのです。

  (6)膵臓全摘、糖尿病型でインスリンの継続的投与が必要なもの

 交通事故では、不可逆的損傷も予想され、上記はあり得ます。交通事故で肝臓が破裂し、修復が不能のときは死に至ります。ところが、胆嚢や膵臓の破裂では、全摘術が行われているのです。

 膵臓全摘で生存するには、インスリン注射を継続しなければなりません。 ...

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(3)膵臓の内分泌機能の低下    経口糖負荷検査により判定します。

① 正常型 膵損傷後に障害を残さないものであって、

 空腹時血糖値<110mg/dlかつ75g OGTT 2時間値<140mg/dlであるもの

② 境界型 膵損傷後に軽微な耐糖能異常を残すもの

 空腹時血糖値≧110mg/dlまたは75g OGTT 2時間値≧140mg/dlであって、 糖尿病型に該当しないもの

③ 糖尿病型 膵損傷後に高度な耐糖能異常を残すもの

 空腹時血糖≧126mg/dlまたは75g OGTT 2時間値≧200mg/dlのいずれかの要件を満たすもの。要件を満たすとは、異なる日に行った検査により2回以上確認されたことを要します。

 内分泌機能の障害による後遺障害の認定基準

① 経口糖負荷検査で境界型または糖尿病型と判断されること。

 インスリン投与を必要とする者は除かれています。

② インスリン異常低値を示すこと。

 インスリン異常低値とは、空腹時血漿中のC-ペプチド=CPRが0.5ng/ml以下であるものを言います。

③ 2型糖尿病に該当しないこと。

 上記3つの要件を満たせば、内分泌機能の障害として、11級10号が認定されています。   ○ 経口糖負荷検査

空腹時血糖値および75gOGTTによる判定区分と判定基準 続きを読む »

 本日は都内近県の親しい事務所さんが集まっての忘年会でした。内輪の会ながら、4弁護士事務所のご参席を得て、近況、最近のニュースなど、話がはずみました。    その日は、例の「あおり運転に危険運転致死傷罪が適用されるのか?」の一審判決がでました。当然、真っ先に話題となりました。判決文をまだ詳しく読んでいませんが、あおり運転で高速道路で停車させた行為を、危険運転致死傷罪の範疇とするか、それとも別の罪状とするのか?、また、危険運転致死傷罪を適用するにしても、準用的な解釈・適用とするのか?なども検討できそうです。法律家の意見が分かれる、非常に注目すべき判断でした。ご存知の通り、真っ向から危険運転致死傷罪が適用、懲役18年となりました。

 私は今までに交通事故を通じて、それこそ50人近い弁護士先生と一緒に仕事をしてきました。新しい事件のたびに思いますが、弁護士先生でもそれぞれ意見が分かれることです。法律家それぞれの解釈の違いは別として、法律とは、見方で、立場で、検討の仕方で、時代背景で、感情で、結論が違ってしまうものなのでしょうか。

 法律には解釈の問題があり、幾多の事件に法適用がそぐわなくなれば法改正となります。何事も答えは一つではなく、簡単に白黒・勝ち負けを付けることは拙速かもしれません。事実は一つでも、解釈は人それぞれです。人には色々な考えがあり、必ずしも自分の意見が通るものではありません。これは、多様性を容認するスタンスに通じると思います。自身を振り返ると、知識が増えたことで、つい結論を急でいると思います。何かと固定概念が邪魔になっているとも自省するところです。来年は少数意見を含め、多様な意見を丁寧に聴いて、思考の包容力を磨いていきたいと思います。

 ご参加された諸先生方、お忙しい中ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。     あとそれから、

 引越し以来、素っ気無かったエントランスに絵をかけました。「19世紀のパリ」でしょうか。

 

 もちろん、クマさん達、今年も大活躍です。

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 後遺障害は(1)切除、(2)部分切除、(3)内分泌機能の低下、と3分します。   (1)膵臓が切除されると、外分泌機能が障害され、低下することが通常とされています。 膵臓の部分切除がなされており、上腹部痛、脂肪便および頻回の下痢など、 外分泌機能の低下に起因する症状が認められるときは、 労務の遂行に相当程度の支障があるものとして11級10号が認定されています。

※ 脂肪便とは、消化されない脂肪が便と一緒にドロドロの状態で排出されるもので、 常食摂取で1日の糞便中、脂肪が6g以上であるものを言います。   (2)膵臓周囲のドレナージが実施されるも、部分切除が行われていないときは、

①  CT、MRI画像で、膵臓の損傷が確認できること、

②  上腹部痛、脂肪便および頻回の下痢など、外分泌機能の低下に起因する症状が認められ、かつ、PFD試験で70%未満または、糞便中キモトリプシン活性で24U/g未満の異常低値を示していること、

 上記の2つの要件を満たしているときは、11級10号が認められています。

 また、他覚的に外分泌機能の低下が認められる場合として、血液検査で血清アミラーゼまたは、血清エラスターゼの異常低値を認めれば、11級10号が認定されています。  

※ PFD試験=膵臓の外分泌機能検査

 膵臓は2つの異なる働きをしており、1つは、食物の消化に必要な消化酵素、炭水化物を分解するアミラーゼ、 蛋白を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼなどを含んだ膵液を12指腸に分泌する外分泌機能です。 2つ目の作用は、血糖を下げるインスリンと血糖を上げるグルカゴンを血液中へ分泌して、血糖を調節する内分泌機能です。

 PFDは、膵臓の外分泌機能検査法の1つです。薬剤を服用後、6時間尿を採取する方法ですので、体に負担はかかりません。 膵臓の外分泌機能が低下するような病気で、異常値、低値を示します。 この薬剤は小腸から吸収され、肝で化学変化を受けた後、腎から排泄されます。 したがって、膵外分泌機能の低下以外に、小腸における吸収低下のある場合、 肝機能や腎機能低下のある場合にも、尿中の値は低下します。

 早朝空腹時排尿後に、BT-PABAというPFD試薬500mgを水200mLとともに服用します。開始6時間後の尿を全部集め、尿量を測ります。 採取した尿の一部を使って、尿中PABA濃度を比色測定し、尿中PABA排泄率(%)を計算いたします。正常値は71%以上です。  

※糞便中キモトリプシン活性測定試験

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1、膵臓の働き

 膵臓はおたまじゃくしのような形で、胃の後ろに位置する長さ15cmの臓器で、消化液を分泌する外分泌機能とホルモンを分泌する内分泌機能の2つの機能を有しています。 膵液は、膵管を通して十二指腸内へ送られ、糖質を分解するアミラーゼ、たんぱく質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼなどの消化酵素、核酸の分解酵素を含んでいます。また、膵臓のランゲルハンス島細胞からは、ブドウ糖の代謝に必要なインスリン、グルカゴン、ソマトスタチンなどのホルモンが分泌されています。

 インスリンは、血液中のブドウ糖によりエネルギーを作るのですが、インスリンの不足、働きが弱くなると肝臓・筋肉・脂肪組織などの臓器でブドウ糖の利用や取り込みが低下し、血中のブドウ糖が増えることになり、血液中の血糖値が高くなります。 逆に、血液中の糖が低下すると、グルカゴンが分泌され、肝臓に糖を作らせて血糖値を上昇させます。 インスリンとグルカゴンによって、血液中のブドウ糖の量が一定になるように調節されているのです。 膵臓は、食物を消化し、ホルモンによって糖をエネルギーに変えるという、2つの働きを調節する役割を果たしているのです。

 膵臓は胃の後面の後腹膜腔に位置しており、前方向からの外力では、損傷されにくい臓器です。 損傷を受けたとしても初期に診断することは難しく、膵臓液が腹腔内に漏れて激しい腹痛を訴えるようになってから膵臓損傷が疑われています。 とは言え、日本では、交通事故による膵臓の損傷が増加しています。 バイク、ワンボックスの軽四輪では、ダッシュボードやハンドルなどで腹部を強打することにより、損傷しているのです。 事故直後は、おへその上部に、軽度の痛みを訴えるのみですが、時間の経過で、痛みは強くなり、背部痛、吐き気を訴え、実際に嘔吐することもあります。

 血液検査により、膵臓の酵素の1つ、アミラーゼの血中濃度がチェックされています。 一度正常化した値が、再び上昇するときには、膵臓損傷が疑われます。主膵管損傷を伴う膵臓損傷は、造影CTにより診断されています。 所見が明確でないときは、12時間後に再度、造影CTを行うか、内視鏡的逆行性膵胆管造影が実施され、確定診断がなされています。 主膵管損傷を伴う膵臓損傷に対しては、膵臓摘除術が選択されています。  

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 膵臓損傷を語る前に、膵臓の病気で代表的な膵炎から基礎知識を学びたいと思います。膵臓だけではなく、他臓器の損傷後に発症した患者さんがおりました。(内容はメディックノート様より引用)  

1、膵炎とは?

 膵炎には、急性膵炎と慢性膵炎があり、急性膵炎は何らかの原因でアミラーゼなどの膵臓の酵素が活性化して膵臓の組織にダメージを与える病気のことです。一方、慢性膵炎は長い間、膵臓に小さな炎症が繰り返されたことで徐々に破壊され、膵臓の機能が著しく低下する病気です。

 急性膵炎と慢性膵炎はどちらも男性に多く発症し、発症の原因はほぼ共通していますが、症状や経過は大きく異なります。

2、発症の原因と症状

○ 急性膵炎

 もっとも多い原因はアルコールの多飲によるもので、全体の約40%を占めます。次に多いのは胆石が膵管と胆管の合流部にはまりこんだもので、女性の急性膵炎に多いです。原因不明のものも約20%あります。そのほかには、内視鏡検査や手術などが原因となる医原性のもの、腹部外傷、膵臓や胆道の奇形、高脂血症、感染症などが挙げられます。

 急性腹症のひとつであり、症状は重症度によって大きく異なります。みぞおちから背中にかけての断続的で強い痛みが起こり、吐き気や嘔吐、発熱などの症状が続きます。また、重症になると、腹膜炎を併発し、腸管の運動が麻痺するために高頻度で腸閉塞が起こり、ショック状態となるため、全身状態としては、頻脈や血圧低下、出血傾向、呼吸障害などがみられ、非常に重篤な状態へ移行します。また、膵臓の組織が壊死えしを起こすため、膵臓から遊離した脂肪と血中のカルシウムが結合して低カルシウム血症を呈することがあります。また、慢性膵炎が急激に悪化すると、急性膵炎のような症状が現れることもあります。   ○ 慢性膵炎

 もっとも多い原因は急性膵炎と同じくアルコールの多飲によるもので、男性では70%を占めています。原因不明のものが約20%で、女性の慢性膵炎の約半数は原因不明の特発性とされています。そのほかには、胆石などの胆道系疾患、高脂血症、腹部外傷、奇形など急性膵炎と共通した原因となります。

 症状は発症してからの時間によって異なります。発症してから10年ほどは、主な症状はみぞおちから背中にかけての痛みであり、飲酒や脂肪が多い食事を食べた後にひどくなるのが特徴です。また、発症後10年以降には腹痛は軽減しますが、膵臓の機能が低下し、消化酵素やインスリンなどのホルモンの分泌が次第に減少します。このため、脂肪が消化されず、脂肪便や下痢、体重減少などがみられ、インスリンが正常に分泌されないことで糖尿病を併発します。慢性膵炎はしばしば急激に悪化することがあり、その場合には急性膵炎と同様の症状が現れます。   3、検査・診断

 膵炎の診断にはCT検査が有用です。そのほかにも補助的な診断や全身状態を評価する目的で、血液検査や他の画像検査、消化酵素やホルモンの分泌能を評価する検査などが行われます。

○ 画像検査

 造影剤を用いたCT検査がもっとも有用な検査です。急性膵炎では、膵臓の腫れや周囲の炎症がみられ、慢性膵炎では膵管の拡張や膵石がみられます。腹部超音波検査やMRCP検査なども膵管や膵石の状態を確認することができますが、第一に選択されるのは造影CT検査でしょう。また、もっとも簡便に行えるレントゲン検査では、腸閉塞や膵石を確認することができ、急性腹症の場合には緊急的に消化管穿孔などとの鑑別が行える検査です。   ○ ...

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