水晶体亜脱臼(すいしょうたいあだっきゅう) ⇒ 複視  

(1)病態

 カメラで言えば、レンズの役目を果たしているのが水晶体ですが、この水晶体が正しい位置からずれた状態を亜脱臼、完全に外れてしまった状態を脱臼といいます。具体的には、水晶体は、チン小帯と呼ばれる細い糸で眼球壁に固定されています。

 チン小帯のもう一方の端は虹彩につながる毛様体に付着し、虹彩の後方、瞳孔の中心に位置するように固定されているのです。水晶体が完全に支えを失って後方の硝子体の中に沈み込む、瞳孔を通って虹彩の前に飛び出たものを水晶体完全脱臼、一部の支えを失って、下方に沈んだときは、亜脱臼といいます。ズレの方向によって、前方脱臼、後方脱臼、側方脱臼などともいわれています。   ※ チン小帯

 チン小帯とは、毛様体と水晶体の間を結び、水晶体を支える働きをしています。

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 お盆休み以来、丸一日の休みが取れない日々が続きました。ましてや土日の連休などなく、コロナ以前の激務、疲れを感じた秋でした。先々週の出来事ですが、やや仕事の合間ができて、ようやく土日休むことにしました。最近は疲労の回復が遅く、寄る年波を感じるところです。この日は、天然温泉を擁したスパに朝風呂を決めこもうと、休日でガラガラのバスに揺られて9:30の錦糸町に降り立ちました。

 錦糸町と言えば場外馬券場です。この日もレースがあり、粋なハンチング帽をかぶった中高年が朝から集結しています。私は競馬はおろか、ギャンブルは全く興味がありません。一目散に楽天地ビルのエレベーター前に詰め寄りました。素早くスパのある最上階9階のボタンを押すも、何故か無反応です。もしやと思い、HPを開くと・・「設備工事で臨時休業」でした。

 朝から来たのに~(悔)、まったくドジを踏んだものです。このまま何もせずに、戻るのも癪です。とりあえず、どこかでご飯を食べようとしましたが、休日の朝なのでファーストフード店しか見当たりません。味気ない食事は嫌だなぁと諦めてかけていたところ、朝っぱらから提灯に火がともる、一軒の居酒屋が視界に入りました。学生時代のお馴染み、懐かしい「養老の瀧」です。

 たまには朝から一杯も一興でしょう。早速、のれんをくぐると、競馬新聞を手にしたおっさんがちらほら・・そうかレースのある日だから朝から営業なんだな。最近は赤鉛筆に競馬新聞ではなく、スマホやタブレット片手にワイヤレスイヤホン、当然ブルートゥース仕様で競馬をトレースしています。競馬男もデジタル化です。また、店内の各テーブルにあるモニターすべてにお馬さんが走っています。サンデージャポンが観たいけど、ここでは無駄な抵抗です。店員も当然に私を競馬客とみなしているからです。

 まったく興味のない競馬を観ながら、焼き魚ホッケをあてにエビスを一本空けました。これが、おっさんの休日か・・・貴重な休みを費やし、ふいに体験することになりました。

 

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(4)後遺障害のポイント   Ⅰ.  まぶしさ

 外傷性虹彩炎では、軽度なものが多く、後遺障害を残すことは稀ですが、虹彩離断となると、かなり高い確率で、視力低下、複視、まぶしさ、瞳孔不整形の後遺障害を残します。

 まぶしさ=羞明については、瞳孔の対光反射が著しく障害され、著明な羞明により労働に支障を来すものは、単眼で12級相当、両眼で11級相当が認定されています。

 瞳孔の対光反射は認められるが不十分であり、羞名を訴え労働に支障を来すものは、単眼で14級相当、両眼で12級相当が認定されます。 いずれも、対光反射検査で立証します。  

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 虹彩離断(こうさいりだん)  

↑ 茶目=虹彩が断裂しています

(1)病態

 交通事故の鈍的外傷により、虹彩が離断されたもので、ほとんどで、前房出血を伴います。シートベルトをクリップで挟み込み、身体をあまり締め付けない状態で運転しているドライバーを見かけますが、正面衝突でエアバッグが膨らんだ際に、虹彩離断を発症した例があります。シートベルトをクリップで挟み、ユルユルにしていたことが分かれば、人身傷害保険は無責、対人保険であっても、無責、もしくは減額とされることが確実で、勝手な自己判断は、慎まなければなりません。   (2)症状

 外力による圧力で、茶目が引き伸ばされ、引き裂かれたものと覚えてください。瞳孔は、正円をしていますが、離断した虹彩に引っ張られて、不整形となります。茶目の全周が離断すると、外傷性無虹彩症と呼んでいます。外傷性虹彩炎よりは重傷で、視力低下、まぶしさ=羞明や眼圧の上昇などの症状が現れます。   (3)治療

 視力、眼圧、細隙灯顕微鏡検査、眼底検査などが実施され、外傷性虹彩炎、高眼圧、硝子体出血、網膜剥離などの合併症の有無を確認し、治療は、散瞳薬、ステロイド薬の点眼で炎症を鎮め、高眼圧に対しては、点眼および内服治療が行われています。大きな離断では、瞳孔偏位や多瞳孔症も予想され、単眼複視や眩輝、羞明の症状が出現します。

 虹彩離断は、しばしば隅角後退を伴い、緑内障や前房出血の原因ともなっています。著しい複視、眩輝、瞳孔の不整形を生じている大きな剥離、離断では、まぶしさと視界の改善を目的に、虹彩剥根部の縫合術が行われています。   ※ 隅角検査 ・・・隅角とは、正面から見えない、角膜と虹彩の根元が交わる部分であり、細隙灯顕微鏡で検査します。隅角には、眼圧を調節する房水の排出口があり、隅角検査は、緑内障を診断する上で欠かせない検査となっています。外傷性虹彩離断では、隅角が後退するリスクがあり、眼圧亢進は、隅角後退を原因としています。   ※ 房水・・・眼内組織に栄養を運ぶ液体を房水と呼んでいます。   ※ 多瞳孔症・・・多瞳孔症=重瞳(ちょうどう)は、1つの眼球に、瞳が2つ認められることです。

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 涙小管断裂(るいしょうかんだんれつ)  

(1)病態

 まぶたの中の涙腺から分泌された涙液が過剰となったときは、それが鼻腔へ排出される経路=涙道が、人体には備えられています。涙道は、涙点、涙小管、涙嚢、鼻涙管で構成されています。目に溜まった過剰な涙は、目頭にある吸入口=涙点から吸収され、涙小管を経て眼窩下壁の窪み=涙嚢に溜まり、そこから鼻涙管を経て鼻腔へ排出されているのです。   (2)症状

 これらの経路が、外傷などで損傷を受けると涙道損傷を来します。放置すると、涙道は連続性が絶たれ、涙液の鼻腔への排出ができなくなり、涙は内眼角付近からこぼれ、頬を伝って落ちるようになります。流涙が続くことになります。

 涙液には眼球の乾燥防止と眼球や眼瞼結膜の清浄化する作用があります。流涙が生じた側では、涙液の正常な排出機能が無くなり、結膜の清浄化が損なわれ、眼脂が溜まりやすくなり、結膜炎を起こしやすくなります。結膜炎が生じると、涙腺は一層刺激され、さらに涙液を分泌するようになります。涙道の閉塞した目は、結膜炎で赤くなり、常に涙を垂れ流しながら生活をしなければなりません。

 これらの損傷は、主として、涙小管と鼻涙管で生じます。涙小管断裂は、交通事故で目頭を深く切ったときに発生しています。   (3)治療

 断裂した管の遠位・近位端を縫合して管を再建し、管内へシリコン製のチューブを挿入して管の癒着や狭窄の防止をはかります。挿入期間は損傷の程度によって異なりますが、短くて2週間、長ければ6カ月以上のこともあります。最初の治療で、管の損傷が見逃された陳旧例では、管の再建は非常に困難となります。初期治療での管の再建が大切です。

 鼻涙管損傷は鼻涙管が走行する上顎骨が骨折、骨片がずれることで、管が閉塞した状態をいいます。鼻涙管損傷では、上顎骨を適切に整復すれば管も再開通しますが、不適切な整復では閉塞したままとなり、このときは、涙嚢から鼻腔へ直接涙が排出する経路を設ける、涙嚢鼻腔吻合術が行われます。

 上記の治療で、涙道が再開通すれば、流涙は消失し、眼脂の付着や結膜炎などの付随する症状は軽快するのですが、どこででも受けられるオペではありません。交通事故による涙小管断裂では、多くの治療先で経験則が乏しく、放置されています。また、損傷が大きく、オペができないことも発生しています。   (4)後遺障害のポイント

 涙小管断裂により、1眼に常に流涙が認められるものは14級相当が認定されています。なお、涙小管断裂による流涙が両眼に残存しているときは12級相当が認定されます。ただし、流涙を残す眼や両眼が失明したときは、いずれも、流涙による等級の認定はありません。    交通事故110番では、散髪屋さんのご主人で涙小管断裂の相談例があります。彼は、左膝の高原骨折で10級11号が認定されており、これが損害賠償の基本となりました。涙小管断裂による14級相当はおまけの扱いでしたが、現実の理髪業では、涙小管断裂による、絶え間のない流涙が大きな支障となっていました。

 左膝の高原骨折による疼痛と可動域制限は、補助椅子に座ることで解決できたのですが、流涙を止めることができないので、常に、ガーゼで目を拭わなければなりません。実際に、弁護士が苦労したのは、休業損害と逸失利益の基礎収入の算出で、税務申告は、かなりな過少申告で参考になりません。現実収入を証明する証票はなく、帳簿の記載もなかったのです。

 6カ月を要して、実績の積み上げを行い、損害賠償につなげたのですが、涙小管断裂による支障を損害賠償で実現するところまで漕ぎ着けませんでした。私は、今でも、支障のれべるから、14級の評価は低すぎると考えています。   続きを読む »

 この仕事におけるマーフィーの法則ですが、何故か同じ傷病名の相談・受任が、一定期間に重なります。

 首の骨の2番目軸椎の突起部を歯突起と呼びます。折れやすい所ではありますが、それなりに珍しい骨折部位です。同時期にこの骨折の相談が相次ぎました。  本件、完全な癒合をみなかったところから、穏当に脊柱の変形に収めました。一歩間違えば命に係わる部位の骨折です。11級で済んで不幸中の幸いかもしれません。   尺骨茎状突起、歯突起、載距突起・・・突起部の骨折が多い年でした  

11級7号:軸椎歯突起骨折(80代男性・埼玉県)

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 外傷性散瞳(がいしょうせいさんどう)    想定される障害 ⇒ 羞明(しゅうめい)・・・ 普通の人がまぶしいと感じない光をまぶしいと感じる状態をいいます。

 

(1)病態

 先に、虹彩について、カメラの絞りに相当するもので、自律神経が瞳孔の散大筋、括約筋をコントロールし、明暗により眼に入る光の量を自動的に調節していると解説しています。

 交通事故で、眼に鈍的打撲を受けると、ときとして、瞳の大きさを調節する筋肉が機械的な損傷を受け、ることがあります。散大筋、もしくは括約筋の損傷により、瞳の大きさを調節することができず、瞳が大きくなったままの状態を外傷性散瞳といいます。

 時間の経過で、徐々に回復することも報告されていますが、筋肉の損傷では、現実的には、治療の方法がありません。   (2)症状

 明るいところに出ても、瞳を小さく調節することができず、まぶしさや像のぼやけの症状が出現し、散瞳が大きければ、この症状は強くなります。まぶしさから逃れるには、虹彩付きのコンタクトレンズを装用することになります。

 散瞳および虹彩根部の損傷によって外傷性の続発性緑内障を発症することも予想されます。逆に、瞳が小さくなる、外傷性縮瞳となることもあります。   (3)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 外傷性虹彩炎(がいしょうせいこうさいえん)     (1)病態

 前房は、虹彩と透明な角膜の間の部分をいい、虹彩は、前房を含む目の前側部分を言います。外傷性虹彩炎とは、打撲による茶目の部分=虹彩の炎症であると覚えてください。   (2)症状

 交通事故によるまぶた部分の鈍的外傷で、虹彩に炎症が生じると、前房出血を伴い、羞明や、流涙、強い目の痛み、充血、視力低下などの症状が現れます。虹彩炎の合併症には、白内障や緑内障、そして虹彩以外の部分への炎症の波及なども予想され、これらの合併症は視力の低下、ときには、失明に至るので神経質に対応しなければなりません。   続きを読む »

   外傷性斜視(がいしょうせいしゃし)  

  左から内斜視・外斜視・上斜視・下斜視

  (1)病態

 斜視には、内斜視、外斜視、上斜視、下斜視の4種類があります。    片目が正常な位置にあるときに、   ① 内斜視とは、もう片方の目が、内側に向いている、   ② 外斜視とは、もう片方の目が、外側に向いている、   ③ 上斜視とは、もう片方の目が、上側に向いている、   ④ 下斜視とは、もう片方の目が、下側に向いている状態のことです。    自動車や自転車、歩行中の交通事故などで、頭部、眼部に対する強い打撃により斜視となることがあり、外傷性斜視といわれています。

 眼窩底ふきぬけ骨折は、斜視を伴う代表的な傷病名です。頭部外傷、外傷性くも膜下出血では、外転神経などの視神経が影響を受け、眼球運動に障害が起こることもあります。

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 滑車神経麻痺(かっしゃしんけいまひ) ⇒ 複視     (1)病態

 眼球を内側に向け、引き続き下に向けるとき、つまり自分の鼻を睨むときに働く筋肉が上斜筋です。眼球を動かす神経の1つ、滑車神経=第4脳神経が上斜筋を支配しており、上斜筋の麻痺は、すなわち滑車神経麻痺となるのです。

 交通事故では、バイクの運転者の頭部外傷、側頭骨骨折、眼窩壁骨折を原因として発症しています。   (2)症状

 麻痺した側の眼は、内側と下側に動かないので、片方の像がもう片方の像より少しだけ上と横にずれて見える複視が出現し、階段を下りるのが困難になります。階段を下りるには、内側と下側を見る必要があるからです。しかし、麻痺が生じている筋肉と反対方向に頭を傾ければ、複視を打ち消すことができます。この姿勢をでは、麻痺していない筋肉により、両眼の焦点を合わせることができるからです。   (3)治療

 CT、あるいはMRI検査で確定診断が行われています。治療としては、上下のズレにつき、プリズムレンズの眼鏡による補正が行われていますが、これでは、傾きの補正できないのが難点です。眼の体操でやや改善が得られることもありますが、複視の根治には、上直筋の下方で、この筋肉を縫い縮める手術が実施されています。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 先週、仲本工事(享年81)さんのショッキングなニュースが入ってきました。全盛期のザ・ドリフターズについて、あまりよく知らない私でもお名前と顔が分かるほどの昭和の大スターですよね。ドリフのメンバーがまた一人いなくなってしまったのは寂しい限りです。仲本工事さん、ご冥福をお祈りいたします。

 まだ、亡くなってから日が浅いので、不謹慎と思われる方もいらっしゃると思いますが、近年、交通弱者の過失が大きくなるような事案のご相談も多く受けておりますので、仲本工事さんのケースも調べてみたいと思います。    仲本工事さんの事故現場については、ニュース等でも取り上げられており、「横浜市西区浅間町5丁目の交差点を横断中に車と接触、頭を強く打って意識不明の重体のまま運ばれて翌19日、急性硬膜下血腫でお亡くなりになった」との事です。現場をグーグルマップで確認すると、信号のない交差点で20mほど進めば、洪福寺交差点で横断歩道があるようなところでした。    【33】の場合、基本の過失割合は「歩行者30:自動車70」ですが、下記の修正要素を考慮して過失を決めていきます。

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 歳をとると朝の目覚めが良くなると聞いていました。本当かなぁ・・いつ何時でも眠れる私にとって、にわかに信じがたい説でした。

 ところが、最近は5時のアラームが鳴る15分前に目が覚めてしまいます。あと15分間、2度寝するのもどうかと思い、鳴る前のアラームを切ってテレビをつけます。マイ「朝の情報番組」は、新井 恵理那さんの笑顔を目当てにテレビ朝日にしています。ところが、その時間帯は「グッドモーニング」の放送前、おはよう時代劇「暴れん坊将軍」の終盤で、まさにマツケンが暴れまわっている場面です。恵理那さんは15分お預け、バッサバッサと悪人を切り捨てる暴れん坊将軍と、続くサブちゃんのエンディングテーマから1日が始まってしまうのです。つまり、お爺ちゃんの朝です。      さて、昨日は徳川家ゆかりの駿府城、その城内に位置する会場で静岡市でセミナー、テーマは「人身傷害保険・約款の近時改定」でした。そろそろ来年の約款も出揃ってきましたので、来年からの改定にも目を通す必要があります。約款を追う仕事は大変なのです。

 先日、初冠雪となった富士山ですが、まだ雪の帽子までは至っていません。   続きを読む »

 今までの研修会・セミナーですが、講師を拝命、あるいは自ら主催も含めると、実に74回を数えます。あるベテラン講師さんは「100回やると上手になるよ」と言っておりました。今年、徐々に再開したセミナーですが、先日は行政書士会向けでした。    今までの研修対象は、一に保険代理店さん・保険マンなど保険会社関連です。次いで弁護士先生、これも相当数ありあました。また、社労士先生向けも3回ほどありました。ところが、同じ行政書士さん向けの講師はたった一回もありませんでした。一度、打診がありましたが、会の趣旨から謝絶させて頂きました。

 いつも貧乏暇なしの事務所ですから、営業に直結しないものは敬遠しがちです。また、同業者に講釈たれる自負もなく、後進の為の研修は気が乗らないものです。今回に限っては、九州の知己となる先生からの推薦もあり、業際問題への理解が一致することから、福岡行政書士会の業務研修(web研修)を拝命しました。また、九州の他県からも注目があり、ほぼ全域に配信されたようです。それでもニッチな業務なので、せいぜい50人位?と思った接続が105人とは・・多いのか少ないのかわかりません。

 注:再生をクリックしても動画はでません(一般公開不可なので)。    ZOOMを利用した本格的なweb研修は初めてです。色々と初めてづくしでしたが、今後のセミナー展開に向けて良い経験になりました。聴講された九州全域の書士の皆様、福岡県行政書士会の皆さまに御礼申し上げる次第です。  

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 外転神経麻痺(がいてんしんけいまひ) ⇒ 複視の障害     (1)病態

 外転神経は、外側直筋を収縮させ、眼球を外側に向かって水平に動かします。眼球の運動に関わる神経は、ほかに動眼神経、滑車神経がありますが、正常な視機能を成立させるには、脳の命令にしたがって眼球を的確に動かすことが必要となります。例えば、両眼を連動させ、常に同じ視野を捉えていなければ、モノが2つに重なって見えることになり、正しい立体感も得ることができなくなります。   (2)症状

 交通事故による頭部外傷で、外転神経が麻痺すると、眼球は外転ができなくなり、正常よりも内側を向く内斜視となります。側頭骨々折、眼窩壁骨折などにより、外側直筋を断裂したときも、同じ症状となります。そうなると、両眼の視線が見たい物の場所で交わらなくなり、複視の症状が現れます。複視とは、モノが2つにダブって見えることです。

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 眼瞼下垂(がんけんかすい)と瞳孔(どうこう)の収縮          (1)病態・症状

 ホルネル症候群では、①片側のまぶたが垂れ下がり、②瞳孔が収縮して、③発汗が減少します。交通事故では、眼と脳を結ぶ神経線維が分断されることが原因で発症しています。

 眼と脳をつなぐ神経線維のいくつかは環状になっており、それらの神経線維は脳から脊髄に沿って下行、脊髄を下ったあと、胸部から出て、頚動脈のそばを通って上へ戻り、頭蓋を通って、眼に到達しているのですが、神経線維がこの経路のどこかで分断されると、ホルネル症候群が起こります。

 ホルネル症候群は、交通事故外傷による頭、脳、頚部、または脊髄の疾患、大動脈や頚動脈の解離、などが原因で発症すると報告されています。この部分は覚える必要はありません。   (2)治療

 医師は、症状が出ている側の眼に、コカインを少量含む点眼薬をさし、30分を経過しても瞳孔が広がらなければ、ホルネル症候群と診断します。その後、他の点眼薬による検査が実施され、それらの点眼薬に瞳孔がどのように反応するかを見ることで、神経損傷のおよその位置がわかります。脳、脊髄、胸部、頚部などのCT、MRI検査も必要となります。原因が特定されれば、その治療が開始されますが、ホルネル症候群そのものに対する具体的な治療法はなく、改善は、風まかせです。   (3)後遺障害のポイント   1、眼瞼下垂

 後遺障害の、まぶたに著しい運動障害を残すものとは、まぶたを閉じたときに、角膜を完全に覆えないもので、兎眼、まぶたを開いたときに、瞳孔を覆うもので、これは、眼瞼下垂と呼ばれています。

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「フットブレーキに頼った運転で起きたのでは?」

   すでにご存じと思いますが、先週の観光バス横転事故、その原因の可能性に「フェード現象」の可能性が、専門家より指摘されています。事故調査はまだこれからで、断定はできませんが、以下、日テレニュース様より引用します。

 

 静岡・小山町で観光ツアー中の大型観光バスが横転した事故で、警察が可能性の1つとして捜査を進めているのが「フェード現象」です。交通事故に詳しい専門家は「フットブレーキに頼った運転」によりこの現象が起きたのではないかと推測しています。さらに、現場となった道路の“ある特徴”に対する指摘も…。    事前の安全点検に問題はなかったといいますが、野口容疑者は「ブレーキがかからなくなった」と供述しているということです。ブレーキは、なぜかからなかったというのか…。警察が可能性の1つとして捜査を進めているのが、「フェード現象」です。   ※ フェード現象は、今回の事故現場ような長い下り坂などで起こりやすい現象です。そもそもブレーキは、摩擦でタイヤの回転を止める仕組みになっています。しかし、これを何度も繰り返すと熱が発生し、ブレーキが利きにくくなるといいます。

 <中略>   事故は富士山5合目からの長い下り坂の途中で起こりましたが、実際にこの道路を走った車の車載映像には「ブレーキの過熱に注意」と呼びかける看板が映っていました。

交通事故に詳しい交通事故鑑定人の中島博史さんは、事故現場の写真を見ながら、「急なカーブになっていますが、このカーブを曲がりきれないようなスピードでこのカーブに入ってしまったために、恐らくこの辺りでのり面に乗り上げてしまったので、車の左側が持ち上げられ、最終的には横転するような形になった事故だと思います」と分析しました。

さらに指摘したのは、“道路の色の違い”です。事故現場の写真では、真新しいように見える道路と古く見える道路との間に、はっきりとした“切れ目”がありました。

交通事故鑑定人・中島博史氏:「手前側の方が新しくて、非常によく整備されている状態です。切れ目のところから先は少し古そうで、ある程度、摩耗したり劣化したりしているところが見えます。カーブの途中で摩擦力が変わることはあり得る」

古い道路の方が摩擦力は低下するため、ブレーキの利きが悪くなった可能性があるといいます。

交通事故鑑定人・中島博史氏:「フットブレーキに頼った運転をしていてフェード現象が起きてしまって、カーブの手前で減速したかったが、ブレーキが利かず、はみ出してしまったというのが事故の原因だと思います」    また、最新の報道によると、乗客の証言では、事故の1~2分前から「ブレーキが効かない」との運転手の声や、乗務員より「シートベルトの着用を」との指示があり、スピードもかなり出ていて、カーブの際に左右に振られて乗客が悲鳴を上げていたようです。事故を回避する為に、運転手がわざと左斜面に車両を接触させて停止、あるいは減速を計った可能性も想像できます。メカニックのトラブルか、運転ミスか・・いずれにしても、今週中に事故原因の調査、第一報が入ると思います。    

   

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(3)後遺障害のポイント   ① 眼球の運動障害

 眼球の運動は、上下・内外・上下斜めの3対の外眼筋の一定の緊張で維持されています。動眼神経麻痺により、外眼筋の一部が麻痺すると、緊張状態が壊れ、反対の方向に偏位します。

 ゴールドマン視野計で注視野を測定し、注視野の広さが2分の1以下に制限されていれば、著しい運動障害として、単眼で12級1号、両眼で11級1号が認定されています。  

ゴールドマン視野計

  1、注視野

 頭部を固定した状態で、眼球の運動のみで見える範囲のことで、単眼視では各方向50°両眼視では45°となります。

 単眼、両眼の注視野の範囲は、以下の通りです。続きを読む »

 動眼神経麻痺(どうがんしんけいまひ)

 ⇒ 複視・眼球の運動障害・眼瞼下垂・瞳孔散大

 

(1)病態

 動眼神経麻痺は、眼本体の外傷ではなく、頭部外傷、脳幹部損傷や脳圧の亢進により、第3脳神経が圧迫を受け、これが引き伸ばされたときに発症するものです。

  (2)症状

 動眼神経が麻痺すると、真っ直ぐ正面を見ているときでも、麻痺が生じた眼は外側を向いており、モノが二重に重なって見える=複視を発症します。

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非該当、か・・。  

Case2 頚椎捻挫・腰椎捻挫(60代男性・静岡県) 

【事案】

自動車の助手席に同乗中、後続車に追突され負傷。直後から全身の痛み、神経症状に悩まされる。   【問題点】

事故から4ヶ月経過した時点でご相談を受けたが、通院実績が整形外科<接骨院であった。   【経緯】

ご相談を受けた時点から、整形外科中心の治療に切り替えるよう促し、症状固定日までに通院実績を逆転させることに成功する。頚椎・腰椎のMRI検査も実施し、通常通り申請することとなった。   【結果】

本件は当初から耳鼻科にも通院していたため、目眩についても後遺障害診断書を作成。しかし、その分野で医療照会が入り、審査に約3ヶ月を要したが、非該当となった。頚椎捻挫・腰椎捻挫については特に理由もなく、目眩については医療照会で得た診療録の内容を根拠に非該当を突き付けてきた。   【結論】

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 いつも後遺障害認定された実績を載せていますが、今回は「非該当」になってしまった例について、反省も込めていくつか紹介してみます。

 おそらくほとんどのHPが、こんな認定を受けました!という内容ばかりで、非該当になったことなど書かれていないと思います。需要があるかは分かりませんが、交通事故被害者にとっては目新しい記事かもしれませんので、今後も載せてみたいと思います。

認めたくないものだな・・  

Case1 頚椎捻挫(50代女性・神奈川県)

【事案】

自転車で走行していたところ、駐車場から出てきた車に衝突され負傷。直後から全身の痛み、神経症状に悩まされる。   【問題点】

今回の事故以前に頚椎・腰椎で後遺障害認定を受けていた。(1回目が14年前、2回目が10年前)   【経緯】

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