銀ブラではなく、銀座サク(サクサク歩いて通勤)    最近、運動も兼ねて最寄りの八丁堀駅よりも3つ前の銀座駅で降りて、歩くようにしています。猛暑のおかげで、事務所に到着する頃には汗だくになっていますが、たまに吹く風が心地よく、今後も続けられそうです。さて、今回は通勤中によく目にする歩行者VS自動車の事例についてまとめてみます。

 危険な場面に遭遇することが特に多いのは、「信号のない横断歩道」です。(下の写真は私が普段から横断している交差点です。)  

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(4)後遺障害のポイント   ○ 受傷機転と予想される症状

 交通事故では、眉の部位や耳介後部の強い打撲などで、頭蓋底骨折が発生しています。車VS車では側面衝突、バイク、自転車では、転倒時に強く打撲することで予想される骨折です。頭蓋底骨折のみの傷病名であれば、意識障害もなく、高次脳などの深刻な後遺症を残しません。

 しかし、視神経損傷では、視力低下、調節障害、めまい・失調・平衡機能障害、聴神経損傷でも、難聴、耳鳴り、嗅覚や味覚の脱失、めまい・失調・平衡機能障害などの症状が出現し、日常生活で大きな支障を残すことになります。 めまいの検査の定番は眼振検査です   ○ 必要な検査

 骨折であっても、デコボコで厚みの薄い骨が、パリンと亀裂骨折しているに過ぎません。頭蓋底骨折の最大の問題点は、この傷病名が見逃されることが多いことです。救急搬送先が単なる整形外科で、レントゲンしか撮らなかったら・・この傷病名の発見は絶望的です。

 事故現場、搬送先病院で、サラサラした水が、耳や鼻から漏出していないか確認することです。この訴えがあれば、CTもしくは眼窩部のMRI撮影で頭蓋底骨折を発見できるかもしれません。   ○ 見逃された場合

 頭蓋底骨折が見逃されてしまった場合です。事故後に、めまい、失調、平衡機能障害、視力低下、調節障害、難聴、耳鳴り、嗅覚や味覚の脱失症状が見られるときは、被害者やその家族が、頭蓋底骨折を疑わなければなりません。

 その立証は、受傷から2~3カ月以内に、眼窩部のターゲットCT撮影を受けることであり、最新鋭のCT、HRCT(ヘリカルCT)による眼窩部のターゲット撮影まで行えば完璧です。頭蓋底骨折が立証されていれば、めまい、失調、平衡機能障害、視力低下、調節障害、難聴、耳鳴り、嗅覚や味覚の脱失症状は、その症状・程度に応じて、神経症状や感覚器の障害として3~14級の6段階にて評価されます(各部位の等級表、実績ページをご参照下さい)。

 

(5)交通事故110番に寄せられた相談、その失敗例?    ① 医師の協力が得られなかったケース

 大学生が、バイクを運転して直進中、対向右折車と出合い頭衝突、左方向に飛ばされ転倒しました。救急搬送された治療先で、XP、CT撮影を受け、診断書には、左鎖骨遠位端骨折、左橈骨遠位端骨折、頭部打撲などの傷病名が記載されています。

 左鎖骨は保存療法で、左橈骨遠位端骨折に対しては、オペによりプレート固定が行われました。本人の訴えは、左鎖骨および左手関節の痛み、強いめまい、耳鳴り、難聴です。それらの症状から、頭蓋底骨折を疑診した家族は、眼窩部のターゲットCT撮影をお願いしたのですが、医師はその必要はないとして拒絶、そのままとなりました。

 医師は、診断権を有する、プライドの高い人達です。素人の患者側から、「○○検査をして下さい」などと、治療上の指図を行えば、大きく嫌われ、往々に拒絶されます。町の個人開業医はCT設備がないことが普通で、他院に紹介状を書くだけの”お金にならない検査”は積極的ではありません。話のわかる医師もおりますが・・。

 米つきバッタの如く、低姿勢でお願いすることになりますが、意味が通じないこともあります。こんなときは、日常的に医師と面談を繰り返し、治療先のネットワークを確保している私共に頼って下さい。先の例では、高次脳機能障害の立証で、日頃から交流のある治療先と医師を紹介、その治療先に同行して、HRCTによる眼窩部のターゲット撮影を受け、頭蓋底骨折を立証しました。毎度、苦労が絶えません。 続きを読む »

頭蓋骨の底面となる頭蓋底は、脳を乗せている、上のイラストで赤い太線の部分です。

 

(1)病態

 頭蓋底は、厚さの異なる骨が、でこぼこ状に形成されており、多くの孔が開き、視神経、嗅神経、聴神経、血管などが出入りする複雑な構造となっています。眉部の打撲、耳介後部の打撲などで、頭蓋底骨折は発生しています。

 パンダ目症候群やバトルサイン(※)が見られるときは、診断の補助になりますが、XPやCTでは骨折の診断が困難なことが多く、やはり、診断の決め手は髄液漏の事実で確定されているのが実情です。髄液漏とは、頭蓋底骨折により、耳や鼻から脳脊髄液が漏れ出てくる状態で、耳なら髄液耳漏、鼻であれば髄液鼻漏と呼ばれています。

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(1)病態

 震盪とは、激しく揺れ動かすという意味で、脳震盪は回転加速度による衝撃により揺さぶられると生じると考えられています。画像で損傷部位が特定できない脳損傷は「びまん性」と定義されており、脳震盪は”脳損傷のない”軽度の病態と区別されています。

 交通事故では、歩行者や自転車と自動車の衝突の衝撃で、被害者が気絶したが、ほどなく、むっくり起き上がり、周りが安堵しているイメージです。軽度な脳損傷であっても、脳震盪を繰り返すと、将来、パンチドランカーのようなダメージが出てくることが明らかとなっており、受傷直後は、深刻に対応すべき傷病名です。

 フルフェイスのヘルメットでバイクを運転中、交差点で自動車と出合い頭衝突し、投げ出された被害者に、事故後のCTに画像所見は得られないものの、重篤な見当識障害、記憶障害などの高次脳機能障害が出現し、MRIのT2スターでびまん性軸索損傷、脳表面の広範囲の点状出血が確認され、後遺障害として2級1号が認定されたことも複数回経験しています。脳は、直接的な打撃でも損傷しますが、回転加速度による衝撃により揺さぶられることで損傷します。幼児を執拗に揺さぶって、急性硬膜下血腫で死亡させた幼児虐待例も新聞を騒がせています。脳は、揺さぶりの衝撃に弱いことを覚えておいてください。   (2)症状

 脳震盪では、頭部に加えられた衝撃により脳細胞が一時的に機能を停止したのか、あるいはその一部が損傷されるかして、一過性の意識障害を発症します。症状としては、受傷時の記憶喪失=健忘が起こるため、受傷当時のことを思い出せません。日付や場所、周囲の人のことが分からない見当識障害や意識消失が見られます。大半は、健忘だけが残り、その他の脳の機能異常は認められません。

(3)診断と治療

 6週間程度で脳神経伝達物質の代謝は正常化するので、経過観察だけで正常に回復します。頭痛や嘔吐があれば、安静、点滴、対症療法として鎮痛薬や吐き気止め薬などが処方されます。

 失われていた記憶の一部はもどりますが、怪我をしたときのことは思い出せないのが普通です。ただし、大部分で、その後に記憶障害が後遺症として残ることはありません。

 受傷時に意識障害があったときは、脳震盪が疑われます。頭をぶつけた子どもに対して、医師や看護師は、「すぐ大泣きましたか?」 と質問しています。これは、意識障害の有無を確認しているのです。すぐ泣いて、念のために撮影したCTで出血がなければ、脳震盪自体は心配ありません。

 交通事故で、脳震盪と診断されたが、休まずにラグビーの試合に出場、タックルを受けて気絶した?これは、大変危険で、最初の脳震盪の症状が残っている状態で、再度衝撃を受けたときは、セカンドインパクト症候群を発症し、死に至ることや重篤な後遺障害を残すことが報告されています。   ※セカンドインパクト症候群、SIC

 頭部に外傷や打撲などの衝撃を受け、脳震盪を発症した後、時間が経過しないうちに再び頭部に衝撃を受けることで発生する症状のことで、脳に損傷が生ずるリスクが高まり、より重篤な症状を呈することが報告されています。脳震盪のレベルは、①失神を伴わない軽度、②失神がしばらく続く中等度、③失神が比較的長く続く高度に分け、検証されています。  ① 軽度では、一過性の意識消失で、バランス感覚の消失や見当識障害などを伴い、②③中等度以上では、頭痛が持続し、四肢のしびれ感や吐き気のほか、健忘や記憶障害を伴うことがあります。  アメリカでは、中学の女子サッカー選手に多く脳震盪が見られることで、成人に比べて衝撃の大きいヘディングを10歳以下の選手に禁止することをアメリカサッカー協会が公表しています。また、ラグビー選手が脳震盪となったとき、3週間は試合に復帰せずに様子を見ることをアメリカ神経学会から勧告されています。日本においても、全日本柔道連盟が、脳震盪を起こした柔道選手に対し、2~4週間の練習休止を求めています。脳震盪を起こして頭痛や吐き気などが持続するときは、検査結果で異常が認められなくても、1週間は、安静にして経過観察をすべきです。   (4)後遺障害のポイント

 脳震盪では、2週間以上の安静、スポーツの禁止を守っていれば、後遺障害を残すことはありません。      次回は様々な障害が懸念される・・ ⇒ ⑤ 頭部外傷 頭蓋低骨折  

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(1)病態

 交通事故では、軽い衝突事故で、多くは、歩行中の子どもに発生しています。皮下血腫、帽状腱膜下血腫、骨膜下血腫、いずれも、広義には、たんこぶです。

 頭皮は、表面から順に皮膚→皮下組織→帽状腱膜→骨膜で形成され、その下に頭蓋骨があります。たんこぶであっても、血腫の部位により、皮下血腫、帽状腱膜下血腫、骨膜下血腫に分類されます。たんこぶは、皮下血腫であり、帽状腱膜下血腫や骨膜下血腫は、子どもに多い、特殊なたんこぶで、帽状腱膜下血腫、骨膜下血腫となると、やや大きく、触るとブヨブヨしており、触るとその部分が陥没しているかに感じますが、決して、頭蓋骨の陥没骨折ではありません。   (2)症状

 打撲部の痛みを訴え、みるみる腫れてきます。直後に大泣きしたときは、重大な脳損傷の可能性は低く、安心できる状況です。反対に、暫くボーッとして意識が朦朧としているときは、病院に走らなければなりません。   (3)治療

 放置しておいても、自然に治癒しますが、帽状腱膜下血腫、骨膜下血腫では、特に子どもでは、血腫の吸収が不良で、1週間位経過しても、逆にブヨブヨと溜まってくることがあります。そんなときは、小児科を受診、穿刺して水様の血腫を吸引すれば、治癒します。   (4)後遺障害のポイント

 たんこぶ三兄弟で、後遺障害を残すことはありません。

 昔、祖母が頭を打った時に「たんこぶが出たら安心だよ。たんこぶがでないと危ないんだ。」と言っていたのを思い出しました。確かに、たんこぶの出ない脳内出血(硬膜下血腫、硬膜外血腫、クモ膜下出血)なら、処置が急がれます。    次回も軽傷? ⇒ ④ 脳震盪  

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 頭部外傷のシリーズにて、てんかんを集中的に取り下げています。脳を原因とするてんかんは「症候性てんかん」の診断名がつきます。交通事故による外的な破壊=高エネルギー外傷からも多くみられます。    最後にまとめ・総論と後遺障害について。 <総論は医療情報のトップサイト、メディカルノート様から引用しました>   (1) 概要

 症候性てんかんとは、腫瘍しゅようや脳出血、脳梗塞などの脳疾患が原因となり生じるてんかんのことを指します。てんかんは、脳の慢性的な病気のひとつであり、脳の神経細胞に異常な電気的興奮が起こることで、けいれんなどのさまざまな発作を繰り返す病気です。

 症候性てんかんは後天的に発症するものが多く、すべての年齢層で生じる可能性があります。特に、近年では高齢者の症候性てんかんが多くなっており、発作時の転倒による骨折などが問題となっています。   (2)原因

 症候性てんかんは、脳の異常によって生じます。小児の場合には、先天性の脳奇形や出産時の低酸素脳症、脳内出血などの障害が原因になり、成人の場合には、脳梗塞や脳内出血、くも膜下出血などの脳血管障害、腫瘍しゅようなどの脳の器質的な病気が原因となります。小児から高齢者まで共通する原因としては、頭部外傷や髄膜炎、脳炎などの感染症が挙げられます。

 これらが原因となって脳に障害が加わると、神経細胞が異常興奮を生じることがあります。その結果、けいれんなどてんかん特有の発作が引き起こされます。    (3)症状

 てんかんには、大脳半球の一部のみに電気的興奮が限局している部分てんかんと、両方の大脳半球に電気的興奮が生じている全般てんかんがあります。症候性てんかんは、部分てんかんがほとんどです。

 脳の異常がある部分によって、生じるてんかんも異なります。それぞれ側頭葉てんかん、前頭葉てんかん、頭頂葉てんかん、後頭葉てんかんと呼びます。側頭葉てんかんと前頭葉てんかんが多いとされています。

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   先の宮尾氏の実例、その詳細と顛末、そして教訓は以下の通りです。てんかんはそれなりに珍しく、相手損保も不慣れです。重傷例では、毎度のことですが、被害者さんは相手損保の対応に唯々諾々ではなく、よくよく考えて自ら判断し動く必要があります。   【宮尾氏の実例】外傷性てんかん2級1号

 この事故は、1995-3、大阪の郊外で発生しました。被害者は39歳の男性です。4トントラックの荷台から運転席後部のはしごを伝って道路に降りる際、通りかかった2トントラックのバックミラーに跳ね上げられ、頭部から路面に落下しました。

 加害者は後日に出頭しましたが、事故現場から逃走、いわゆるひき逃げ事故でした。傷病名は、脳挫傷・急性硬膜下血腫・頭蓋骨陥没骨折で、搬送先の病院でただちに開頭の上、骨片と血腫の除去、硬膜修復術を受けました。さらに、2カ月後に頭蓋骨形成術を行う極めつけの重篤でしたが、順調に回復し1995-6には退院までに漕ぎ着けました。

 通院で左半身不全麻痺の猛烈なリハビリ訓練中の1995-10、最初のてんかん発作を発症したのです。意識喪失・尿失禁を伴う大発作です。この直後から、大阪大学医学部付属病院脳神経外科に転院、再入院となりました。病院では脳神経外科と神経内科が共同で治療に当りましたが、この被害者は症状固定の1999-5までの5年間にわたって苦しみ続けました。

  私が彼を担当したのは、1998-12です。すでに事故から4年が経過していました。損保は、例によって休業損害の内払いを停止し、打ち切り攻勢です。治療は、労災保険の適用を受けていたので、私は労災保険の特別支給金の申請を急ぎました。12月中の支給は間に合いませんでしたが、翌年の1/末に振込みがなされました。特別支給金は、給与の20%に相当する金額です。損保から、休業損害の内払いを受けていても申請すれば支払われる労災保険独自の恩典なのです。しかし請求そのものは、2年で時効が成立するのです。

 この被害者ですが、97、98年分は支給を受けたのですが、95、96年分、金額にして168万円は、時効成立により棒に振ってしまったのです。入院直後に治療先で、「治療費を労災保険の扱いにしてほしい!」 と懇願したのは相手損保です。その手続きを担当したのは、損保から依頼を受けたリサーチ会社です。「知らなかった?」 と言えば、それまでのことですが、大変やるせなくなりました。

 もう一つあります。治療費は、初診の病院が労災保険の扱い、大阪大学医学部付属病院が健康保険の扱い、大阪大学医学部付属病院が指定した被害者の自宅近くの治療先はなんと自由診療の扱いです。どうして、そんなアホなことが?「転勤による担当者間の引き継ぎがうまく機能しなかった?」 相手損保の言い訳です。払わなくてもいい治療費を120万円も支払って、その後に20%の過失相殺を押し付けてきたのです。怒る気力も萎えてしまったのを、はっきりと覚えています。拒否したことは言うまでもありません。

 泥縄の損保でしたが、1999-5、被害者と家族の同意を得て、症状固定を選択しました。被害者も弁護士に依頼し、後遺障害部分について、被害者請求の委任請求を実施したのです。等級認定までに5カ月を要しましたが、結果、2級1号が認められました。自賠責保険で2590万円を受領したのです。

 この傷病の被害者の家族が気をつけなければならないのは、発作の回数にこだわるだけでなく、性格変化・人格低下について日常生活で十分なチェックをすることです。性格変化・人格低下は日常生活の中でよほど注意をしていないと見落としてしまうものなのです。私は仕事で、「小学校2年生程度の知能・情緒」と診断された、被害者の対応をなんども経験していますが、難しい政治や経済も普通に話し、どこから見てもごく普通の一般人が多いのです。なにかの決断に迫られたときに大きな段落に落ち込むとのことですが、分かりやすく表現すれば、なにから、なにまで小学校2年生ではないということです。

 先の被害者は受傷から症状固定までに5年を要しました。てんかん発作を多発しておりましたので、やむを得ないと判断されます。これほどの外傷性てんかんを経験したのは30年間でたったの1回だけですが、発作に至らないものはそれこそ無数に経験しています。一般的に外傷性てんかんの症状固定は遅れがちであるとの印象を強く持っています。特に子どもさんの交通事故では、8年間のフォローも珍しくありません。しかし等級認定基準を理解すれば、賠償上の打ち切りは、もう少し早く持っていくのがポイントです。

 つまり抗痙攣剤の内服は積極的な治療ではないのです。1カ月に1回程度の脳波検査と抗痙攣剤の内服を8年も続けたとしても、脳波が安定すれば、治癒したことになり、後遺障害部分の評価は0円になるのです。交通事故そのものは、加害者の不注意を原因として発生するものが大半です。しかしこうむった被害の回復は、被害者自身の力でつかみ取っていくものです。加害者や損保の対応に憤っているだけでは、何も前に進みはしないのです。私の持論ですが、ここのところは大変重要な示唆を含んでいるのです。

 先の被害者は、2001-5、示談金9000万円で円満解決となりました。自賠分と併せて1億1590万円となりました。これ以外に労災からは月額30万円の障害年金が支給されており、これは一生涯続きます。今後も治療を継続していくのですが、それは労災保険が負担してくれます。てんかん発作の爆弾を抱え、就労のめどは全く立っていませんが、家族4人が生活できる基盤だけは確保できました。      てんかんのまとめ・後遺障害 ⇒ 続きを読む »

(4)後遺障害のポイント

 被害者側が注意すべきは、発作の回数に注目するのではなく、性格変化・人格低下の高次脳機能障害を、日常生活でつかみ取ることです。性格変化や人格低下は、被害者本人には自覚がなく、よほど注意していないと見落としてしまうことになるからです。    交通事故110番の宮尾氏によると、宮尾氏は保険調査員時代に「外傷性てんかん2級1号」を経験しています。以下、その経験則から、4段階の症状に分けて対策を提案しています。   【事案】歩行中、自動車に跳ねられ、頭蓋骨陥没骨折となった39歳会社員男性の件。神経心理学的テストの結果は、IQレベルで小学2年生程度の知能・情緒でした。治療先には、10回以上同行しており、季節・出来事・子どもの話も、普通にやりとりがあり、どこから見ても一般人でしたから、神経心理学検査の結果には、その低得点から非常に驚きました。専門医より、「今後、重大な判断や決断で、大きく(数値が)落ち込むことが予想される。」と説明を受けました。   ① 脳波上に、てんかん波を示す棘波=スパイク波が認められないとき

 脳波上、大きな異常が認められなくても、予防的に抗痙攣剤の内服が指示されることが大半です。脳波上の異常が確認されないときは、てんかん発作を発症する可能性は、基本的にはありません。予防的に6カ月程度の抗痙攣剤を内服し、3カ月ごとに脳波検査を受けます。脳波上、異常がなければ、内服を停止、さらに3カ月ごとに2回の脳波検査を行って、治療終了です。後遺障害等級が認定されることはなく、将来、てんかん発作を発症することもありません。   ② 脳波検査で、境界波ですねと言われたとき

 脳波検査で、α波や徐波が認められるときは、主治医より、上記の説明がなされます。やはり、抗痙攣剤を内服し、3カ月ごとに脳波検査を受けます。脳波検査で、異常波が消失した時点で、内服を停止し、さらに、3カ月ごとに2回の脳波検査を行って、変化がなければ、治療は終了します。後遺障害等級が認定されることはありません。   ③ てんかん発作はないが、脳波検査で、てんかん波=スパイク波が認められるとき

 ここから、後遺障害等級の対象となるので、治療先を選択してフォローしなければなりません。抗痙攣剤を内服し、3カ月ごとに脳波検査を受けます。内服をキチンと守って、過激な運動を控えていれば、まず、てんかん発作の心配はありません。

 てんかん波の終息時点で、抗痙攣剤の投与量を少なくしながら、さらに、3カ月ごとに脳波検査を続け、2回の脳波検査でてんかん波が認められないときは、内服を停止、さらに、3カ月ごとの脳波検査でチェック、私の経験則では、治療を完了するのに、約3年、最大で5年があります。

 長期間に定説はありませんが、一般的に閉鎖的外傷で5年以内、開放性外傷では10年以内とされています。長期であっても、必ず、脳波は正常に復帰するので、過剰な心配は必要ありません。   続きを読む »

 てんかん発作は、今まで受任した頭部外傷の中に一定数見られました。最大の問題は、再発作への警戒から症状固定日が遅れることです。ご本人ご家族にしてみれば、再発作に怯える毎日です。症状固定に進め、解決することに躊躇してしまうのです。  てんかんは論点が多く、3回にわけて解説したいと思います。   (1)病態

 頭部外傷後のてんかんの初期発作は、統計上は、約75%が1年以内となっており、開放性脳損傷は、閉鎖性脳損傷に比較すれば外傷性てんかんの発生頻度が著しく高く、陥没骨折後の発作頻度は、約30%と報告されています。

 専門医は、口をそろえて「2年間の観察と投薬、そして定期的に脳波検査」としています。   (2)症状

 外傷で、脳の実質部に残した瘢痕は、手術による摘出以外、消去することはできません。この瘢痕部から発せられる異常な電気的信号に、周辺の正常な脳神経細胞が付和雷同して大騒ぎをしている状態を、外傷性てんかん発作といいます。発作は、とき、ところを構わず、突然、発症しますが、時間的には、ほとんどが2、3分で終わります。

強直性全身痙攣発作

 

 発作には、大発作、焦点発作、精神運動発作がありますが、発作を繰り返すことにより、周辺の正常な脳神経細胞も傷つき、性格変化や知能低下の精神障害をきたします。高度になると痴呆・人格崩壊に至ります。

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 今日から頭部外傷をシリーズで掘り下げます。まずは、脳損傷に結び付く、頭蓋骨骨折から。  

A :陥没骨折  B:線状骨折(亀裂骨折)

 

 頭蓋骨は、身体の他の部位の骨が関節を形成したり、重力に対して体を支えたりしているのとは違って、脳を格納し、脳を守る容器としての役割を果たしています。頭蓋骨骨折は、見過ごすことのできない外傷ですが、すべてが重症化するのでもありません。

 ポイントは、頭蓋骨骨折に伴って、脳損傷を発症しているかどうかにあります。頭蓋骨骨折の衝撃で、脳損傷をきたすことも多発していますが、損傷に至らないこともあり得ます。逆に、頭蓋骨骨折がないときでも、びまん性軸索損傷などの重篤な後遺障害を残すことがあります。ここに立証側の着眼点を置くべきでしょう。

 頭蓋骨骨折には、以下の3つの病態があります。

 ① 線状骨折 ・・・文字通り骨にひびが入る。≒亀裂骨折。

 ② 陥没骨折 ・・・頭蓋骨が内側に凹んでいる骨折

 ③ 頭蓋底骨折 ・・・頭蓋骨の底辺部の骨折    今回は①と②を解説します。 ③ 頭蓋底骨折は、頭部外傷 ⑤ 頭蓋底骨折 Ⅰにて集中解説します。   ① 頭蓋骨線状骨折

 直接的な衝撃で、頭蓋骨に線状のひびが入った状態です。亀裂骨折との診断名を目にすることもあります。頭蓋骨は、脳を守る格納容器であり、線状骨折そのものが、手術の対象になることはありません。しかし、線状骨折するほどの衝撃を受れば、脳に対する影響が大きく問題視されるのです。XP撮影で線状骨折が診断されたときは、頭部CT検査が行われ、脳損傷の有無が確認されています。

 また、深刻な脳障害に至らずとも、頭痛やめまい、諸々の神経症状が残存することがあります。    線状骨折からめまいを発症した実例 👉 続きを読む »

「いつの間にか、渋っ!」

 先日、お客様の自転車保険を調べていたところ、au損保の自転車保険に加入しているとの事だったため、久々にHPを確認しました。これから相手方に後遺障害の請求をするのですが、認定された場合にはご自身加入の保険からも一時金が出るかもしれないと説明していたのですが、なんと!後遺障害保険金の補償範囲が縮小されていました。      ~au損保 HP参照~

<後遺障害保険金>

① 保険開始日が2017年10月1日以降のご契約

 事故によるケガのため、事故の発生の日からその日を含めて180日以内に後遺障害等級第1~14級のうち、第1~7級に掲げる保険金支払割合(100%~42%)を適用すべき後遺障害が発生した場合

(注)後遺障害等級第1~7級限定補償特約がセットされています。   ② 保険開始日が2017年9月30日以前のご契約

 事故によるケガのため、事故の発生の日からその日を含めて180日以内に後遺障害等級第1~14級に掲げる保険金支払割合(100%~4%)を適用すべき後遺障害が発生した場合    以前はムチウチを除く14級9号や醜状痕(14級~9級)でも保険金がおりたのですが、重度な後遺障害が生じない限り保険金を受け取れなくなってしまったのです。

 確かに掛金のわりに補償が充実していたこともありますが、自転車事故が日々増加し、後遺障害保険金の請求が多かったことが理由ではないかと思います。

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 この記事は数日遡って書いていますので、本日、関東に梅雨明け宣言が出たことも、今週が6月の観測以来、最悪の猛暑日の連続であることも知っています。例年にない急激な気温上昇に人間の対応力、体温調整力とでも言いますか、まったく追いつきません。体調不良どころか、熱中症での救急搬送、高齢者の死亡は連日続くと思います。    人間はじめ、多くの動物は急激な温度変化が苦手です。クマムシのように、灼熱から冷凍まで耐えられる生き物は少数です。生き物の体は繊細なのです。ところが、急激な温度変化や高温状態が続いても、歳と共にそれを感じる感度が鈍ります。実は、統計上、熱中症での救急搬送は炎天下より、家の中が多いそうです。暑ければ、水分を意識的に取ることは必須ですし、クーラーはなくとも、水を浴びるなど対策がとれようものです。が、感度が鈍っているであろう高齢者は、高温が体を蝕んでいることに気付くのが遅れます。だからこそ、ご家族ご親戚はじめ、近隣の人も独居老人に気をかけてもらいたいと思います。ちゃんと暑さ対策をしているのか、本人より周囲が注意してあげるべきでしょう。

 私は家に祖母がいました。祖母は寒がりでしたが、暑さには強かった印象です。真夏でも夕方には窓をしっかり閉めてしまいます。「暑くないの?」と聞くと、「窓が開いていると物騒でしょ、誰かに見られるし」と言います・・(のぞいた人は、おばあちゃんでがっかりすると思いますが)。     お年寄りの温度センサーの低下は温泉でも感じるところです。湯温が45度を超えると、たいていの若者は入れません。もはや、我慢比べ、罰ゲームの類です。ここでも、高齢者は抜群の耐性を発揮します。高温の浴槽には必ず、地元のお年寄りが占拠しています。いくさ場に臨むような険しい表情で、じっくりと湯に耐えています。熱くて悲鳴を上げる若者を傍目に、まるで「若者は根性がない」と言わんばかりです。

 このような温泉の構図は各地で見られます。そのような代表の温泉が、有名な栃木県那須の「鹿の湯」です。ここの男湯は温度別に6槽の湯舟が並びます。一番高温は右奥の48度です。以下、1~2度ごと下がって、一番手前左で、およそ42度位でしょうか。ここからチャレンジして、だいたい44度で挫折する人が多いようです。ところが、地元の長老達は48度槽の周囲に陣取り、砂時計を傍らに置き、4人ほどが一斉に浸かり1分、また、呼吸を合わすように一斉に上がります。これを数度繰り返します。まるで、熟練の刀鍛冶が業物を鍛えているかのようです。よそ者がこのルーチンを崩す、つまり、途中から入ったり出たりすると、「湯が乱れる #」と怒られます。      私も十数年前に挑戦、この長老達に果敢に挑みました。手前の浴槽から浸かり、徐々に48度槽へ。この時の気分は、難敵を倒しながら6重の塔を昇っていくブルース・リーです。45度位までなら楽勝でしたが、47度槽に浸かるさい、周囲のおじさんから「お兄さん、大丈夫?」と声をかけられました。若年者が立ち入れない領域に差し掛かったのでしょう。この温度になると熱いを通り越して、足の爪に激痛が襲い、それは爪をはがされるような痛みです。(「こんなところで根性だしてどうするんだ?」)と自問が始まります。確かに誰に誇ることもない、意味のない、愚行でしかありません。しかし、ここでやめたら、負け犬の人生です。引くわけにはいきません。

 そして、長老が囲う48度槽に割り込みました。湯煙の隙間から怪訝な表情の長老達、(「若造、やめておけ」)と、この湯場(結界?)ではテレパシーのように、無言でも意思が伝わってきます。そして、合図はなくとも呼吸を合わせるかのように一斉に浸かる。爪の痛みは最高潮、皮膚は低温火傷の恐怖、硫化水素(硫黄臭)に麻痺されるのか思考能力は失われ・・この1分は10分、いえ、永遠にも思えてきました。     ついに、鹿の湯48度槽を攻略しました。(「よくやったな」)最奥の長老の顔にやや笑みが見られたのは気のせいでしょうか。湯場を出て、蛇口にかじりつくように一心不乱に水を流し込みました。ほどなく、太ももに赤い斑点がいくつも浮かび上りました。激戦で刻まれたこの紋章は、家に着くまで残ったのです・・・。    すみません、本題から大分それました。 那須の長老達に熱中症の危険を感じます。猛暑中は周囲のお年寄りに気を配りましょう。  

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 数年ぶりに山梨県の石和温泉駅に降り立ちました。今回の病院へは10年ぶりの同行です。    

 駅前に足湯があり、以前はよく時間調整に利用していました。机がありますので、足湯に浸かりながら、電話や簡単な事務ができます。奥に見えますイーオンで、足湯用のタオルとお弁当を買いこんで準備万端です。飲食は禁止なので、足湯外のベンチで食べます。休憩も仕事もできる、長閑な駅前なのです。    9年前の様子 👉 I see you ♪ (足湯)    今日の病院は予約時間通りで、列車の接続もよく、足湯タイムなしで東京に戻りました。新宿からの特急、あずさ号とかいじ号は2年前から全席指定席となっています。行楽シーズンでなければ、だいたい空いています。

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 本日の病院同行は、朝・夕のダブルヘッダー、一日に2院は久々です。埼玉と神奈川で、それ程遠方ではなく、難なくこなしました。東京の中心に事務所を置いたメリットを活かしています。

 とくに午後の整形外科は、今まで私が同行した数百軒に及ぶ整形外科の中でも高評価でした。まず、交通事故治療に慣れていらっしゃるよう、患者へ治療はもちろん、的確な対応をしてきたようです。そして、症状固定の診察でも、神経学的所見をしっかりとって、的確に診断書に落とし込んでいます。

 一方、多くの医師は、自賠責の後遺障害の認定基準が知らされていないことから、独自の診断になりがちです。それは、臨床上の判断ですから間違いではありませんが、賠償上の見地とは微妙にズレます。つまり、必要な所見が漏れる、無駄な記述、的外れな観察などです。そして、スカスカな記載はまだましな方で、余計なことを延々と書き込む傾向です。

 何故、私共が病院同行を行い、診断書の記載に立ち会い、医師と折衝するのか・・・それは、不正確、不完全、不明瞭な診断書を排する努力の一環なのです。的確な診断書こそ、審査側が欲する情報と思います。無駄なく正確が一番、そこに、誇張や患者が有利になる誘導などの余地はありません。

 診断書は交通事故被害者の運命を左右する、最初の証明書なのです。だからこそ、積極的に介入する必要があるのです。それを保険会社任せにすれば、右から左へ、何ら内容を精査することなく、事務的に審査に回されます。これが、後に再請求(実態より低い等級が認定されて、異議申立)が必要となる理由の一位です。

 また、弁護士や業者に任せても、その経験や力量の差がもろに出ます。知識や経験が乏しければ、何級を想定して、どの検査を追加し、どのような記載が望まれるか、これらが分からないと思います。多くは書かれてから内容を精査しているようですが、一旦書かれた内容を医師に修正させることはかなりの難行です。できれば、書かれる前に手を打つべきです。しかし、病院同行・医師面談は簡単ではありません。知識と実践の積み重ねにより身に付ける特殊技術です。そのような技術の研鑽が、つい数年前から交通事故に取り掛かった弁護士・行政書士にあるか疑問です。    業者選びの問題はさて置き、まずは、医師の交通事故外傷への理解と知見が問われます。今回の医師は★★★でした。実は、秋葉事務所では、首都圏を中心に全国の個人開業医・整形外科、数千軒の情報・評価リストを、12年以上記録し続けています。このデータは、新たな被害者さんの病院選びに大きく寄与しています。これこそ、他者に抜きんでる実力と自負しています。

   

 

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 弊所は、平素から高次脳機能障害を見逃さないよう、頭部外傷のあった被害者さんをよく観察し、慎重に立証作業を進めています。しかし、頭部や脳にに外傷があったとしても、まったく症状がないこともあります。私達は丁寧に、障害が無かったことを確認するまでです。

 一方、審査側である自賠責保険は、平成12年に高次脳機能障害について、いくつか改定をしました。見逃されやすい障害であるからでしょうか、新システムの一環として、「疑わしい案件」については積極的に調査をすることにしました。今までも、頭部外傷の件に対して、数々高次脳審査の打診を受けてきました。「高次脳的な症状はないので、大丈夫ですよ。ご親切にどうも」と回答しています。本件でも数度に渡って打診がありました。

 このような、審査側からの調査打診・・他の障害ではみられません。神経系統の障害、とくに頭部外傷による高次脳機能障害はそれだけ、見逃されやすい障害なのだと思います。

こういうところに自賠責の親切心を感じます  

併合14級:頚椎・腰椎捻挫(60代男性・埼玉県)

【事案】

自動車にて直進中、右方より信号無視で交差点内に進入してきた車に衝突され負傷。直後から頚腰部痛、両手の痺れ等、強烈な神経症状に悩まされる。

【問題点】

治療途中に慢性硬膜下血腫が見つかったため、その後のリハビリ頻度が減ってしまった。また、側頭部に裂傷があったが、髪の毛と耳で隠れてしまう箇所であるため、等級認定には結びつかない可能性が高かった。

【立証ポイント】

受傷初期から対応できたため、治療先を整骨院から整形外科に変更していただいた。通院先の医師との折衝や検査依頼等については、弊所のアドバイスに従い独力で進めた。事故から半年後に症状固定とし、スムーズに後遺障害申請が実施できた。

本件は、軽度の意識障害(JCS1桁・健忘もあったが、翌日には意識清明)があったため、自賠責調査事務所から再三にわたって、高次脳機能障害の審査が打診されたが、ご本人にそのような症状が全くなかったため、何度もお断りしてムチウチの審査に絞っていただいた。通院回数は少なかったが、事故態様が「大破」に分類される事案であり、軽度の意識障害もあったことから、何ら問題なく14級認定となった。  

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3、血管の損傷による障害    ○ 内腸骨動脈損傷(ないちょうこつどうみゃくそんしょう)

① 病態

 赤丸部分の腹大動脈は、左右2本の総腸骨動脈に分岐し、総腸骨動脈は、内腸骨動脈と外腸骨動脈に分かれています。内腸骨動脈は、骨盤の後方部分に分布しており、骨盤骨折による血管損傷では、大量出血につながります。さらに、豊富な側副血行路がはり巡らされており、破綻した血管からの出血は容易にとめることができません。

 骨盤骨折の死因の50%は、出血であると報告されており、骨盤腔内の出血で出血性ショックを引き起こし死亡する例も、珍しくありません。   ② 症状

 骨盤骨折により、骨盤内の血管や臓器が損傷されると、出血斑や血尿、血便などのほか、低血圧や意識障害などの症状が出現します。   ③ 治療

 輸液・輸血にもかかわらず、血圧が上昇しないときは、ただちに内腸骨動脈造影を実施し、スポンゼルコイルを使用し両側内腸骨動脈の根元から血管塞栓術が行われています。   ※ 出血性ショック

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○ 男性の生殖器の損傷・障害    男性では、勃起障害が多く見られます。勃起障害は、泌尿器科におけるリジスキャンRによる夜間陰茎勃起検査を受けて立証します。夜間の勃起も計測しますので、2泊~3泊の入院が必要です。それなりに大変な検査で、実施できる病院と診察できる医師も限られます。

 完全なる検査はリジスキャン検査です。他の検査として、会陰部の知覚、肛門括約筋のトーヌスおよび球海綿反射筋反射による神経系検査、プロスタグランジンE1海綿体注射による各種の血管系検査があります。以下に図示・説明します。これらの検査により、勃起を支配している神経の損傷を立証しなければなりません。原因がわからず、とりあえずバイアグラが処方されている方もおりました。薬で改善するのであれば、心因性(勃起不全)かもしれません。  

1、会陰部の知覚

会陰部とは、俗に蟻の門渡りと呼ばれる外陰部と肛門の間に位置していますが、肛門の周囲を針で刺して痛みがあれば正常とされています。

 

    2、肛門括約筋の随意収縮

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2. 骨盤輪内に収納されている臓器の損傷    骨盤輪の中には、S状結腸、直腸、肛門、膀胱、尿道、女性では、これらに加えて、子宮、卵巣、卵管、腟が収納されており、消化管は下腸間膜動脈、女性性器は卵巣動脈と子宮動脈、泌尿器系は内腸骨動脈により必要としている酸素と栄養素が供給されています。   ○ 排便障害

 骨盤骨折に合併するS字結腸・直腸の損傷ですが、人工肛門の造設などの重症例はなく、経験則では、程度は様々ですが便秘を残すものが圧倒的です。S字結腸に外傷があって、その結果、便秘になったものが対象で、便秘を残すものについては、肛門括約筋を支配している骨盤神経もしくは下腹神経に損傷が認められることが条件となっており、これは、直腸肛門機能検査を受けて立証します。その上で、排便回数が週2回以下の頻度で、恒常的に硬便であれば、11級10号の認定がなされています。

 9級11号は摘便(手で肛門から便をかき出す)が条件ですから、重度の介護状態が想定されます。この場合、介護等級である別表Ⅰの第1号1級、2級1号に内包されることになります。単独の9級11号認定は未経験です。

 逆に頻便(便意がしょっちゅう、便の回数が1日数度、単なる下痢ではない)の場合については、13級11号「臓器の障害」に属します。臓器の13級は、各臓器のちょっとした不具合をこの認定に当てはめています。    13級11号:胸腹部臓器の機能に障害を残すもの     以下は、排尿、排便、尿漏れの3点セットが認定された例です。

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ストラドル骨折・マルゲーニュ骨折、恥骨結合離開・仙腸関節脱臼における後遺障害のポイント>    不安定型の骨盤骨折が癒合不良となった場合、具体的には変形(文字通り形が変わってくっついた)や転位(ズレてくっついた)、もしくは偽関節(くっつかなかった)となれば、変形の12級5号となります。また、これら癒合不良に派生する後遺障害と内臓損傷、神経損傷における障害は以下の3つが想定されます。   ○ 骨盤骨折自体に関するもので、疼痛、股関節の可動域制限、骨盤の歪みによる下肢の短縮

○ 骨盤輪内に収納されている臓器の損傷・神経損傷による障害

○ 内腸骨動脈などの血管の損傷による障害    以下、骨盤骨折から派生する後遺障害を解説します。  

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