肩腱板損傷(かたけんばんそんしょう)    まずは、肩腱板周辺の構造から。肩関節は骨同士が軟骨で接する関節面が小さく、腱板と呼ばれるベルトのような組織が上腕骨頭の大部分を覆うようにカバーしています。そのため、肩は自由度が高く、自由に動かせることができるのです。腕を持ち上げるバンザイでは、腱板は肩峰、肩甲骨の最外側や靱帯からなるアーチの下に潜り込む仕組みとなっています。アーチと腱板の間には、肩峰下滑液包=SABがあり、クッションの役目を果たしています。   (1)病態

 肩腱板は、肩関節のすぐ外側を囲む、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋肉で構成されています。このうち、交通事故による傷害ということでは、圧倒的に棘上筋腱の損傷もしくは断裂となっています。これは、事故にあい、転倒した際に、手をついた衝撃で肩を捻ることが多いからです。

 棘上筋腱は上腕骨頭部に付着しているのですが、付着部の周辺がウィークポイントとなっており、損傷および断裂が非常によく発生する部位となっています。

左が部分断裂、右が完全断裂の図です

 腱板の断裂では、激烈な痛みと腫れを生じます。特に、肩を他人に動かされたときに、特有な痛みが生じます。部分断裂の場合には、腕を伸ばし、気をつけの姿勢で、ゆっくり横に腕を上げていくと肩より30°程度上げたところで痛みが消失します。完全断裂のときは、自分で腕を上げることはできず、他人の力を借りても、疼痛のため肩の高さ以上は上がりません。医師は、肩が挙上できるかどうか、肩関節に拘縮があるかどうか、肩を挙上したときに肩峰下に軋轢音があるかどうかをチェックし、棘下筋萎縮や軋轢音があれば腱板断裂と診断しています。断裂が存在する場合には、XPでは、肩峰と上腕骨頭の裂陵が狭くなり、MRIでは骨頭の上方に位置する腱板部に白く映る高信号域が認められます。

 また、断裂がある場合に、肩関節造影を行うと、肩関節から断裂による造影剤の漏れが認められます。エコーやMRIにおいても断裂部を確認することができます。なお、腱板は肩峰と上腕骨頭の間に存在し、常に圧迫を受けているので、年齢と共に変性する部分もでてきます。    肩腱板損傷にまつわる年齢変性との関係 👉 肩腱板損傷の認定、過去記事から 発端編    続きを読む »

 これは10年以上前の認定と比べて、という前提になりますが、関節の可動域制限による機能障害の認定は、より、画像を精査した上での認定になったと思います。以前は、該当する診断名と後遺障害診断書の可動域の数値から、容易に12級や10級が認定されていたと思います。鎖骨を例にとると、その肩関節の可動域制限は骨折等の痛みが長く続いた結果、動かさない事による関節拘縮を原因とするものです。多くの場合、それは半年~数年で回復が見込めます。対して、自賠責保険の考え方は、「物理的に曲がらなくなった」ことを、画像から判断します。そもそも、生涯治らないものが後遺障害なのです。この点、ひと昔前に比べ、厳密な判断を徹底しているように思います。

 本件も遠回りの認定となってしまいました。今後も、機能障害の認定について、より慎重な判断が求められると思います。

審査精度が向上しているとも言えます   

非該当⇒14級9号:鎖骨骨幹部骨折(40代男性・埼玉県)

  【事案】

自転車で走行中、左方から右折してきた車に衝突され受傷。初回申請で後遺障害申請をするも、結果は非該当であった。   【問題点】

骨癒合は良好であったが、抜釘後も疼痛と肩の可動域が回復せず、屈曲・外転ともに12級レベルの数値となった。ひどい骨折であったため、可動域制限も認定される可能性があると踏んで、初回申請を実施したが、わずか2週間ほどで門前払いの非該当となった。 【立証ポイント】

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 同じ治療内容でも、使う保険制度や状態によって、治療費の値段は変わります。一般常識から外れることですが、これは医療業界の常識です。

 医療費は点数で計算します。注射が〇点、レントゲンが〇点とし、点数を加算して治療費は決まります。健康保険では1点=10円、労災は1点=12円と、公的保険の金額は、ほぼ全国的に決まっています。ただし、第3者行為の傷害、多くは交通事故になりますが、これは自由診療の扱いになります。自由ですから1点をいくらで設定しても良いことになります。平均すると20円が多いようです。つまり、多くは健康保険治療の2倍ということになります。

 交通事故で自身に過失がある場合、最後に過失分を差っ引かれますから、治療費が高額ですと手元に入る賠償金が減ることになります。そこで、健康保険や労災の使用で治療費を圧縮すると、手取りの賠償金が増える結果になります。まず、それがスタンダードな考えかたです。

 ところが、自由診療はあくまで自由、第3者行為でも健保並みに10円程度の設定をする院が存在しました。本件はその例で、非常に珍しいことだと思います。立証の内容は基本通りの作業でした。   治療費の安い病院?  

12級13号:脛骨近位端粉砕骨折(60代女性・埼玉県)

【事案】

自転車で歩道を走行中、駐車場から発進してきた自動車に衝突され、受傷した。直後から強烈な神経症状に悩まされる。   【問題点】

こちら側にも過失が出るため労災の適用を促したが、職場の理解が得られなかった。また、ひどい骨折だったため再生治療を勧められるが、どこまでを交通事故として面倒みてもらうのかについての線引きも重要な項目であった。   【立証ポイント】

治療費について確認したところ、なんと自由診療報の方が労災治療よりも安い?という珍事が判明したため、自由診療での一括対応とした。

抜釘後にMRI検査を依頼し、関節面の欠損及び外側半月板損傷が明確に立証できたため、ご本人・主治医と相談し、症状固定とすることとなった。主治医から「今回の手術は土台作りであって、将来的には人工関節になるだろう。」という説明もあったため、後遺障害診断書の見通し欄にその旨を記載していただき、万全な診断書が完成した。今回は画像所見が明らかであるため、わずか1ヶ月で12級13号が認定された。  

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 近時の認定例をUPします。それぞれ、毎度の14級9号認定ですが、それぞれにストーリーがあります。確実な医学的証拠のない、打撲・捻挫・挫傷の認定こそ、それを立証する事務所の実力が問われます。さらに、「人」が審査するものですから、「運」も影響すると思うところです。       身も蓋もない事を言いますが・・まぁ、そういうものです。    14級9号:頚椎捻挫(50代男性・東京都)   14級9号:頚椎捻挫(30代女性・静岡県)   続きを読む »

 真夏、それも気温37度の病院同行は体力を奪われます。先日は珍しく土曜日朝の病院同行で修善寺へ。昨日の静岡市は38度を超えたと言うので覚悟していましたが、伊豆半島に入ると気温は少し下がります。時間帯も早いので駅の気温は33度位でしょうか。修善寺駅は霧吹きが設置されていました。サクサク医師面談を終え、帰路につきました。

 インバウンドの旅行者も多く、賑わっていました。ここ1か月、完全な休日をとっていないように思います。夏休みはもうすぐです。頑張りましょう!  

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 申請する段階まで調査を進めれば、たいてい認定等級が何級であるかはわかります。それは、高次脳機能障害の場合、ほとんど外したことはありません。ところが、本件は5級を想定して作業を進めてきたのですが3級の結果に。認定後は食い違った内容の精査となりました。なぜ、3級に押し上げることができたのか・・。

 また、認定後の問題もありました。今までは、すぐに保険金を振り込んできたものですが、今年から3級以上の精神面での障害は、後見人の設定が必要になったことです。ただし、裁判所の判定は「保佐人」に留まりますので、困ったことになったのです。そのようなイレギュラーはありましたが、これも対応して無事に支払いを受けました。

 残された課題は、認定予想を外した事への検証、新しいルールへの対策・・・つまり、弊所の仕事は結果オーライでは終わらないのです。   自身の過失が大きい事故で困っている被害者さんは多いはずです。  

3級3号:高次脳機能障害(70代男性・埼玉県)

【事案】

自転車で交差点に進入したところ、自動車に衝突される。頭部を強打し、軽度意識障害がある中で救急搬送され、脳挫傷、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、後頭骨骨折の診断が下された。   【問題点】

依頼者の過失が大きく、相手方保険会社からの一括対応が見込めなかったため、健康保険での治療が必須であった。過失や年齢のことも踏まえると、自賠責への請求で終わる可能性が極めて高く、救急搬送先からも早期の転院を迫られていた。   【立証ポイント】

事故2日後にご相談をいただき、今後のプランを説明。その後、弊所での面談を経て、入院先への訪問や医師面談を実施した。医師面談後、ご家族と2手に分かれ、1組はご本人と転院先へ、一方と弊所は市役所へ出向き、健康保険の手続きや破損したベンチ(市管理)の補償手続き等を済ませた。

高次脳機能障害の立証では、画像所見・診断名はクリアしていたが、意識障害が微妙なラインであった。しかし、性格変化や遂行能力、記憶力の低下等が出現していたため、国内最高峰の病院を紹介し、紆余曲折を経てなんとか受診できることとなった。検査の結果、知的機能が全般的に低下しており、中程度の高次脳機能障害であることは立証できたが、家族が一番困っている「幼児退行」については検査で立証することができない。そこで、日々の様子を写真や動画で残していただき、そのデータをUSBに収録し、添付資料として提出した。

こちらとしては、5級が認定されてくれれば勝利ラインと思っていたところ、自賠責窓口会社より「3級3号認定」の連絡があり、一同大喜びだったのだが、ここから思いもよらない事態が発生した。それは、自賠責の規定が変更となり、3級以上の認定では、後見人設定をしなければ自賠責保険金を送金することができないというものだった(事理弁識能力の問題であるため、脳に異常がなければ後見人は関係ないと思われる)。確かに中程度の高次脳機能障害ではあるものの、後見人を選定するほどの状態になく、裁判所の判断は「保佐人」とのこと。そこで、自賠責窓口の担当者に保佐人選定でも保険金を支払ってもらえるよう談判し、保佐人の手続きを進めることとなった。依頼人のご家族は、稀に見る優秀且つ円満だったため、保佐人設定の手続きはスムーズに終了し、保佐人からの再請求によって保険金がすんなり支払われた。

今回は依頼者の過失が大きいため、全てこちら側で行わなければならないという事態はあったものの、初動対応と早期の道筋作りによってご家族から大変感謝される解決となった。

 

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 本日はセミナーと被害者さんの面談で甲府へ。駅前の気温計は37°でした。この夏、先が思いやられます。

 南口は信玄公ですが、北口広場は信虎公の像です。      腰を掛ける度に水分補給でしのいでいます。

 夜は懇親会にて佐藤共々、ご馳走になりました。ありがとうございました。    スケージュールを消化し、終電で東京に戻ります。明後日は病院同行で、(本日38℃まで上がった)静岡へ。夏の病院同行は体力勝負です。    

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 秋葉事務所では見込み薄い等級申請のご希望に対して、消極的です。いえ、むしろ、止めるように言う事もあります。それだけ、後遺障害の認定が無理な件に対して、無駄な時間とお金を使ってほしくないと考えています。原則はそうですが、年に数回、ご自身の納得の為に受任することがあります。

 それは、可能性は低くとも、完全に医療調査が成されていない、必要な検査が漏れている、つまり、正しく申請されなかった件です。これに対しては、9回裏まで投げ切っていないと表現しています。やるべきことをやっての等級で解決を図るなら良いのですが、中途半端な申請とその結果を受け入れてしまうと・・心残りの原因になります。その為に再請求をすることがあります。これは、解決後の気持ちの整理につながります。

 昨日は久々にそのような相談でした。可能性は低くとも0%ではありません。必要な事をやり切って解決へ向かいたいと思います。交通事故は、被害者さんにとって一生に1度の惨事です。その解決に向けて、時にはロスタイムも必要な時があると思うのです。  

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 これは今に始まった事ではないですが、医師と円滑にコミュニケーションをとる、つまり、人間関係が良好であることが、損害賠償上でも大事です。

 まず、医師も人間ですから、様々な性格の方がいるものです。当然に、「合う合わない」があると思います。ただし、後の損害賠償において、最も重要な後遺障害診断書を記載頂くのですから、人間関係を良好にしなければなりません。後遺障害診断書とは、医師が記載したくない書類第一位です。懸命に治そうと思って治療にあたるも、治せなかった証明書の記載となるので、その気持ちを理解すべきと思います。

 医師面談の際、その医師の態度で、それまでの被害者さんとの関係がわかります。上手く行っていない場合、こちらの仕事の難易度はうなぎのぼりです。逆に関係が良いと、スムーズに事は運びます。被害者さんのコミュニケーション能力も、交通事故解決の要素になると思います。

 よく、「菓子折り差し入れて」なんてアドバイスをすることがあります。    

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 胸鎖関節脱臼(きょうさかんせつだっきゅう)

  (1)病態

 胸鎖関節は、鎖骨近位端が胸骨と接する部分で、「肩鎖関節脱臼」において説明した肩鎖関節の反対に位置しています。胸鎖関節脱臼の発生原因としては、衝突や墜落などで、肩や腕が後ろ方向に引っ張られた際に、鎖骨近位端が第1肋骨を支点として前方に脱臼するケースが最も多いと言われています。肩鎖関節脱臼に比べて非常に発生頻度の低い脱臼です。   (2)治療

 完全脱臼で肩甲骨の骨折など重度の場合は手術対応で、ワイアーなどで固定します。骨がズレてしまう転位がなければ、そのまま保存療法になります。   (3)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 肩鎖関節脱臼(けんさかんせつだっきゅう)

 鎖骨骨折に並び、秋葉事務所では認定例が豊富です。別途、実績ページをご覧下さい。     (1)病態    肩鎖関節とは鎖骨と肩甲骨の間にある関節のことです。転倒の際に手をついた時や、バイクで正面から衝突(ハンドルを握ったままで前方から強い衝撃を受けた)時に好発します。鎖骨が折れなかった場合に起きている印象です。肩鎖関節の脱臼によって、鎖骨と肩甲骨をつなぐ肩鎖靭帯が伸びてしまうことになり、鎖骨の遠位(肩側)が上に出っ張ってしまいます。これをピアノキーサイン(※)と呼びます。視認すればわかることですが、症例に慣れていないのか、町の整形外科では見逃されることが多々あります。    見逃された例 👉 12級5号:肩鎖関節脱臼(60代男性・神奈川県)   ※ 突出した部分を指で押すと浮き沈みするので「ピアノキーサイン」といいます。

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 八丁堀にオフィスを移転して、この夏で6年が経ちました。付随して、秋葉の住処として近隣のマンションを借りましたが、本日こちらの更新手続きも済ませました。あっと言う間の6年です。

 この仮の住処にもすっかり慣れたものです。オフィス街なので土日は静かですが、平日は賑やかです。このマンション1階やその四方に飲食店があります。遅くまで酔客の賑わいがあったものですが、コロナ中は閑散、コロナ後も22:00には閉まるようです。17時にオープンしたとして、2巡目3巡目のお客さんが来ないのかと思います。コロナが2次会の風習を駆逐した印象を持っています。

 さて、住みやすいマンションですが、集合住宅ゆえの困った問題はどこも共通です。ゴミの分別を頑なにしない人、階段・踊り場でのたばこのポイ捨て・・注意する張り紙が毎度に貼り替えられていますが、この2つは中々に改善しません。人が見ているところはしっかりしますが、見ていないと道徳心が薄れるようです。道徳心は己を美しくするものです。こればかりは内面の問題ですから、立ち入ることは難しいと思います。仮に注意しても、逆ギレされますので。集合住宅、人が集まって生活している場ならではの難しい問題はあります。  

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 任意保険に未加入で走行している自動車は、この30年間ほぼ変わらず20%前後とのことです。警察や損保協会の統計はあくまで確認できた範囲なので、実態として20%は多少前後すると思います。10年続けていた交通事故相談会では、参加10名の被害者さん中、1名は無保険車の被害の相談でした。実感としては、5台に一台(無保険車)の信憑性を感じています。

 さて、無保険車の加害者さんは、その後、しっかり賠償に応じてくれるものでしょうか。秋葉は学校卒業以来、損保時代を通じて30年以上、交通事故に携わってきました。人身事故に限りますが、加害者の方が謝罪の訪問やお見舞いにきたことは数度ほどで、電話が0~1回が関の山です。ちなみに、数度の謝罪の2回は秋葉のお客様がたまたま、無保険の自動車で人身事故を起こしたケースです。そう、秋葉が促し、同伴して謝罪に行きました。

 無保険の加害者さんは、のらりくらりと対応し、結局は電話連絡が途絶えます。せいぜい、自賠責保険の請求書類が送られてきて、「(被害者に対し)それで請求して下さい」。その後、やはり連絡は途絶えます。責任感など、どこ吹く風です。多くの場合、謝罪の言葉すらないものです。考えて下さい、任意保険に入らず運転している人ですよ・・自分が加害者になるなど微塵も考えていないので、責任を感じることや責任を果たす義務感が非常に薄いのです。したがって、自らのお財布を開いて、治療費や慰謝料を支払うなど極めて稀なことです。経験上、秋葉が同伴した2件以外、みたことがありません。統計が難しく、明確に数値化できませんが、2~3%ではないかと思っています。

 だからこそ、自らを守る保険を完備することです。自動車保険で言えば、人身傷害保険、車両保険、弁護士費用特約などでしょうか。

 では、加害者は何故、せめてもの謝罪をしないのでしょうか? 加害者の心情を考えると、人間の嫌な面を実感することになります。それは、交通事故の自責感に耐えられない、単に面倒、自分は悪くいない運が悪いだけと自己擁護・・実に身勝手な理屈ばかりなのです。被害者さんが訴える「加害者の誠意」など、そんな期待はほとんど裏切られるのです。残念ながら、それが30年の結論です。

 被害者さんにとって許せない事です。しかし、人間とはそんなもの、どこか割り切った感覚で解決まで進めるしかないと思っています。    

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 高次脳機能障害は、周囲からはっきりわかる障害ではないことがあります。些細な能力低下はしばらく観察しなければわかりません。易怒性など性格変化、嗜好の変化、易疲労性などは、ケガをする前の患者に会っていなければ、事故前後の違いはわかりません。このような、前提がありますので、高次脳機能障害の専門医は、家族からの聴き取りなどを経過的に丁寧に行い、障害の診断・評価を進めます。

 しかし、脳外科のお医者さんは、脳血管障害やクモ膜下出血で倒れた患者さんを救うことが仕事です。したがって、脳の出血が止まり、普通に話して歩いている患者さんに対しては、「次は念のため3カ月後に画像を撮りましょう」と、経過観察になります。脳の器質的変化がない限り、障害はないと考えています。お忙しいのか、家族の訴えにも耳を貸しません。高次脳機能障害は、守備範囲を外れるものなのです。

 ところが、一緒に暮らしている家族は違います。退院して戻ってきたお父さんの変化を目の当たりにします。最初は、「大ケガだったからそのダメージのせいで・・」と、徐々に治る期待を持ちますが、お父さんの変化が半年~1年も続く場合、後遺症が残ったと判断して良いと思います。それでも、事故前のお父さんを知らない主医師は、「次は半年後、念のため来て下さい」と、ほとんど治療終了とされます。脳外科医のすべてに、高次脳機能障害の知識が必ずしも備わっていないことを実感します。    現在、担当している高次脳機能障害のご依頼者様から、まさにその例が出現しました。現在の医師に相談しても詮無きこと、さっさと転院させて、専門医に診てもらうよう段取りしました。案の定、専門医は本人に次いで、家族から症状・変化を聴き取り、追加のMRI検査と神経心理学検査の指示をしました。これで、障害の立証と認定のレールに乗せた感があります。他方、一体どれだけの高次脳機能障害の患者さんが見逃されるのか・・不安は尽きません。

 

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 秋葉事務所は医療調査が主ですので、(事故の)原因調査はめったにやりません。先日は早起きして、事故現場へ。事故状況の調査と言うよりは、自動車の動きをスピード別に再現するものです。動画と写真、それぞれの撮影に2時間程かかりました。

 保険会社側の調査員・アジャスターは、その目的別に3つに大別されます。自動車の修理費を調べる通称、アジャスター。医師面談等を通じて被害者のケガ・治療状況を調べる医療調査、事故現場の実調などから事故状況を調べる原因調査、です。

 弊社の依頼主は保険会社ではなく、被害者です。物損アジャスターとしての業務ですが、被害車両の金額は工場が見積もりしますので、介入の場面はほとんどありません。事故状況の調査(原因調査)ですが、近年、グルーグルマップのストリートビューで事故現場を確認できますので、基本的な事故状況の把握は大変楽になりました。双方の言い分が食い違えば、まず保険会社側が動きます。その保険会社の調査内容に疑義が無ければ、被害者側で動く事は少ないものです。詳しく踏み込む場合、弁護士が刑事記録を開示するなどして、賠償交渉に備えます。

 やはり、保険金の多寡に最も影響のある医療調査こそ、人身事故の被害者側に常に必要な調査であると考えます。一方、死亡や重傷案件では、事故状況次第で過失割合が決まりますので、原因調査も重要な仕事になるのです。

 

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 本日は横浜セミナー、企業の顧問をしている弁護士先生をお招きして、主に会社内でのパワハラについて解説頂きました。      ハラスメントの定義から、事例、対策まで・・やはり、旬のテーマです。質問が多く、盛況な勉強会となりました。

 Y先生は、「法律問題以前に、日頃の人間関係が大事で、信頼やコミュニケーションから回避するもの」と述懐しました。もめ事を法律で解決することは、それこそ最終手段です。ハラスメントが起きないような職場環境にすべく、社員全員の日常の心構えや努力が必要と思いました。    

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 覚悟はしていましたが、今年の値上げラッシュは自動車保険に及びそうです。理由は、自動車の修理費、その原材料の高騰に保険会社も悲鳴を上げているとのことです。確かにその原因自体を否定しませんが、一方で、大手3社は過去最大級の純利益を上げていることも指摘されています。

 保険の掛金は、料率算定機構の調整により、利益が上がると下がり、利益がでないと上がるものです。今回の値上げはその原理に反しているのです。そう単純な話ではありませんが、消費者には、説得力を欠く値上げ説明に聞こえると思います。    <共同通信さまより引用>

自動車保険料、3年連続引き上げ 26年に、物価高で修理費増

 損害保険各社でつくる損害保険料率算出機構が、自動車保険料を算定する目安となる参考純率を引き上げる方針を決めたことが24日、分かった。損保各社は2026年以降の保険料に反映する見通しで、引き上げは24年から3年連続となる。物価高による修理費の高騰に加え、新型コロナウイルス禍で減った交通量が回復し、事故が増加したことが影響した。

 一方、3社が発表した24年3月期連結決算はいずれも純利益が過去最高だった。円安を追い風に海外事業の収益が伸び、保有株式の売却も利益を押し上げた。

 純利益は、東京海上HDが前期比85.7%増の6958億円、MS&AD・HDが75.0%増の3692億円、SOMPO・HDが約16倍の4160億円。売上高に当たる正味収入保険料も増え、ビッグモーターによる保険金不正請求問題や企業保険のカルテル問題の影響は限定的だった。

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 自転車やバイクと自動車の交通事故で、自転車等に乗っていた被害者が転倒して、手・肘・肩などを打撲したとき、その衝撃が鎖骨に伝わり、鎖骨骨折を発症します。車同士の場合には、追突、出合い頭衝突、正面衝突では、シートベルトの圧迫で鎖骨が骨折することもあります。

 秋葉事務所での骨折案件では一番多く、上肢の骨折に限ってはおよそ60%は鎖骨です。鎖骨にまつわる数々のドラマは、別途、実績ページをご覧下さい。   (1)病態

 鎖骨の横断面は、体の中央部から外側に向かって三角形の骨が、薄く扁平しています。三角形から扁平に骨が移行する部位が鎖骨のウィークポイントであり、鎖骨骨折の80%が、かかる部位で発生しています。この部位は、より肩関節に近いところから、遠位端骨折と呼ばれています。

 その次の好発部位(よく発生する傷病)は、肩鎖関節部です。肩鎖靱帯が断裂することにより、肩鎖関節は脱臼し、鎖骨は上方に飛び上がります。   (2)治療

 鎖骨骨折の治療は、その折れ方によって、手術でプレート固定か、外固定による保存療法が選択されています。胸を張り、肩をできる限り後上方に引くようにして、クラビクルバンドを装着、固定します。一般的には、成人で4~6週間の固定で、骨折部の骨癒合が得られます。

 ⇐ 一般的なプレート&スクリュー固定術   続きを読む »

(1)エピローグ 肩関節の構造

 鎖骨骨折、肩の腱板断裂等、傷病名ごとのご説明をさせていただく前に、まず、肩関節の構造について解説します。

 肩関節は上腕骨と肩甲骨、さらには鎖骨からなります。また、それらに付着する各種軟部組織により構成されています。軟部組織には筋肉、腱、靭帯、滑膜、関節包、滑液包などがあります。

 骨だけで肩関節を見ると、丸い上腕骨頭が肩甲骨の窪みにひっついているだけで、肩甲骨は鎖骨につり下げられるように連結し、他方で、肋骨に乗りかかっているだけの頼りなげな構造となっています。

 このように、肩関節は、上肢に自由度の高い運動範囲を与えていますが、その自由度を確保するために不安定な状態にあるといえ、外傷の衝撃により、骨折や脱臼を起こしやすい関節構造となっているのです。これらの不安定性を補う必要から、肩関節は、関節唇、関節包や腱板によって補強されています。

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 宮城県の鳴子温泉郷もお気に入りで、たまに2~3泊で逗留します。東北はそれなりに遠路ですが、東京から古川の新幹線は2時間、そこから陸羽東線で40分、接続が良いと東京のマンション玄関から宿まで3時間を切ります。鳴子温泉は何と言っても泉質の多彩さ、宿のグレードも幅広く、懐の広い温泉地です。そして、温泉宿の多くが駅から徒歩圏内、これは結構珍しい温泉地と思います。たいてい、駅からバスに乗り換えるものですので。

 JR鳴子温泉駅が中心地で、大型ホテルや老舗宿が連なります。一駅前の鳴子御殿湯駅から川渡温泉駅までは個性的な湯治宿が点在し、泉質も独特です。ただし、鄙びたどころか廃屋寸前の宿もあり、宿泊客はそれなりの覚悟が必要です。15年前は鳴子温泉駅から川渡温泉駅まで、温泉に立ち寄りながら、てくてく歩きました。

 鳴子駅から一つ先は中山平温泉、ここはぬるぬるアルカリ泉です。駅は無人駅、周辺に飲食店もコンビニもない、普通の田舎町です。鳴子温泉駅北口からバスで江合川を遡上すると、鬼首温泉です。ここでは有名な滝つぼが温泉の宿があります。鬼首地区は未湯なので、いずれ駅からレンタカーで訪問したいと思います。

 さて、今年は猫さん宿へ再訪。ここは鳴子御殿湯駅からわずか100mなのです。旅館と言っても、素泊まりの湯治宿ですので、実際にご病気の方がおります。最近は家族、あるいは一人でゆっくり過ごす方が増えたそうです。確かに、周辺観光の拠点と言うよりは、宿に入りびたりで何もしない、ひたすら湯に浸かる事がデフォルトのようです。

 まず、スーパーまで食材を買い出し、料理は基本、厨房で行います。冷蔵庫、コンロと電子レンジ、食器や調理具は揃っていますので、ほとんど手ぶらでOKです。 湯屋はほぼ一人、独泉状態です。何度も湯に浸かり、猫ちゃんと遊びます。飽きてもテレビやWiFiがありますので、退屈はしません。注意点としては、廊下がギシギシ鳴るので、忍び足で歩くこと、夜のテレビは音量を下げる事でしょうか。ゆる~い合宿生活、だらしなくも充実したものです。  

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