肩関節の可動域制限:10級10号が認定された、Dさんの例もチェックしておきましょう。
段落
本 文
解 説
結 論
自賠法施行令別表第二第10級10号に該当するものと判断します。 結果は最初に書かれます。
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肩関節の可動域制限:10級10号が認定された、Dさんの例もチェックしておきましょう。
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自賠法施行令別表第二第10級10号に該当するものと判断します。 結果は最初に書かれます。
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「肩関節が半分以下しか挙がらなくなった」=10級10号のつもりが、なぜか14級!に・・・分析してみましょう。関節可動域制限の神髄へ接近します。
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本 文
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結 論
自賠法施行令別表第二第14級9号に該当するものと判断します。 結果は最初に書かれます。待つこと2か月、Cさんのもとに自賠責保険の等級認定表が届きました。ずばり、昨日の解答です。では、実際の文章を見てみましょう。 <結 論>
自賠法施行令別表第二第14級9号に該当するものと判断します。 <理 由>
左肩腱板損傷に伴う左肩関節の機能障害につきましては、提出の画像上、棘上筋に高信号が認められますが、後遺障害診断書に記載されているような高度の可動域制限を生じるものと捉え難く、しかしながら疼痛や治療状況等も勘案すれば、将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることから、「局部に神経症状を残すもの」として別表第二第14級9号に該当するものと判断いたします。 これを見て、Cさんはひっくり返りました。「ええっ!α先生は10級が獲れるって言ったじゃないですか!なんで14級なんですか!」 Cさんに責められたα先生も面目を潰され、「おかしい!これは自賠責保険の横暴な判断です、異議申し立てしましょう!」と息巻いています。 このようなやり取りをよく目にします。しかし、一方では10級が認められる被害者さんもいるわけで・・・。
Dさんは買い物の帰り自転車で走行中、交差点で一時停止無視の自動車に衝突され、転倒、救急車で搬送されました。レントゲンを撮ったところ、鎖骨の遠位端(肩関節と接する部分)が折れていました。担当した医師は「整復するには手術が一番ですが、手術痕が残るでしょう。」と判断しました。しかし、傷を残したくないDさんの希望が強い為、医師はクラビクルバンドで固定し、適時XP(レントゲン)で骨の癒着具合を観察していきました。
その後、主治医は適切な治療とリハビリを続けましたが、Dさんは左腕が半分までしか挙がりません。右肩に比べ、見た目でわかる程、痩せて筋肉が落ちています。Dさんは9カ月リハビリを続けましたが、完全回復を諦めて症状固定することを考えていた矢先、秋葉事務所を紹介されました。
秋葉のアドバイスは・・・「可動域が2分の1になっただけで、簡単に10級は認めてくれませんよ。可動域制限は骨折や靭帯・軟骨損傷の部位・程度、そして骨折後の癒合具合の良し悪しや変形・転位の有無、靭帯損傷の回復具合から判断されます。それらの前提から矛盾のない、納得できる可動域制限なら認めます。
まず全XPを精査します。とくに、受傷直後と症状固定時期が重要ですが、すべての画像提出は必須です。さらに、いくつかの医証を補強します。MRI検査を追加し、肩腱板、肩鎖靭帯の損傷などを解明し、診断名として診断書に記載していただきます。そして筋萎縮の程度も追記、外貌写真も添付しましょう」と続けました。
肝心の関節可動域は屈曲100°、外転80° です。(内転、伸展、内旋、外旋も計測しました)
以上βさんの指示に従い、自賠責の申請を行いました。・・・結果は以下に全文掲載します。
自賠法施行令別表第二第10級10号に該当するものと判断します。
続きを読む » Cさんは原付バイクで通勤中、並走の右折車の巻き込みにより、左肩から転倒しました。レントゲンを撮ったところ、幸い骨折等はありませんでしたが、左肩と左膝の打撲でしばらく通院となりました
リハビリを続けていますが、3か月経っても左肩の痛みが治まらず、左腕が半分位しか挙がりません。主治医に訴えたところ、「肩腱板を痛めているかもしれないねぇ・・・まぁリハビリを続けてみましょう」と困り顔です。
そしてそのまま6か月目、相手の保険会社も「打撲・捻挫なんだから・・・そろそろ治りませんか?」と治療費の打ち切りを迫ってきました。しかし、相変わらず痛みが残っていて腕は挙がりません。
Cさんは不安になり、ネットで検索した後遺障害申請専門を謳う行政書士α先生に相談しました。そのα先生は、「肩腱板を痛めているのならMRIを撮って器質的損傷を明らかにすることです」と力説し、先ほどの主治医の協力のもと、MRIを実施しました。
結果、「T2にて棘上筋に高信号、棘上筋損傷」との所見を得ました。
そして、肩関節の可動域 屈曲90° 外転85° の測定結果を診断書に記載しました。
α行政書士は得意満面、「これで腱板損傷が立証できました。関節の可動域が2分の1以下に制限されていますので、〇級〇号が獲れますよ!」と予想しました。 さて皆さんも一緒に考えて下さい。Cさんは何級が取れたのでしょうか? ヒント→ 肩の後遺障害 2 答えは明日(つづく)
14級9号の文例を分析します。 調査事務所の調査結果について、自賠責保険窓口会社(名)で文章回答がなされますが、大量処理の為、テンプレート(文章のひな型)を少し改造して作成している様子がわかります。
段落 本文 解説 結 論自賠責保険における後遺障害には該当しないものと判断します。 結果は最初に書かれます。
理 由
前 段
頚部が重だるく、左手先までシビレがある。重い物が左手では持てない等の頚椎捻挫後の症状については、 これは主に後遺障害診断書の自覚症状に書かれていることを抜粋しています。また医師の診断内容を抜粋することもあります。
中 段
続きを読む »<結論>
自賠法施行令別表第二第14級9号に該当するものと判断します。 <理由>
頚部が重だるく、左手先までシビレがある。重い物が左手では持てない等の頚椎捻挫後の症状については、提出上の頚部画像上、本件事故による骨折等の明らかな外傷性変化は認め難く、その他診断書等からも、症状の裏付けとなる客観的な医学的所見に乏しいことから、他覚的に神経系統の障害が証明されるものとは捉えられません。 しかしながら、治療状況等も勘案すれば、将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることから、「局部に神経症状を残すもの」として別表第二第14級9号に該当するものと判断します。 Aさんは14級9号が認められました。赤字の部分は先日の<理由>に続く後段です。画像や診断がはっきりしなくても、「局部に神経症状を残すもの」と推定された結果です。つまり症状を信じてもらえた?ということです。ではもう一つのケースを。
この方も同じく停車中、追突を受け、首を痛めました。痛みがひどいのでその日のうちに病院へ。そこで頚椎捻挫、腰椎捻挫の診断を受けました。翌日から職場に出社しています。やはり首の痛み、腰の痛みがひどく、市内の総合病院でXP(レントゲン)を撮っていただきましたが、骨には異常ないそうです。この総合病院へは月に1回通院し、あとは土日も開いている近所の接骨院で治療を進めました。
・・・6か月を超過する頃、相手の保険会社は治療費の打切りを執拗に迫ってきました。Aさんに同じく、仕方がないので症状固定とし、腰に比べてよりひどい頚部痛の残存を訴えた後遺障害診断書を医師に記載してもらいました。通院日数は40日を超えた位でした。そして同じように後遺障害等級の申請を行いました。
待つこと40日、「結果」が文章で届きました。今度は最初から全文を読んでみましょう。 <結論>
自賠責保険における後遺障害には該当しないものと判断します。 続きを読む »
毎回被害者さんに説明しています、「自賠責保険における後遺障害申請の流れ」を復習しましょう。 自賠責保険の契約手続きは通販を除く、任意保険会社と交わします。多くの場合、自動車購入時、車検時に自動的に契約しますので、任意保険ほど「契約した!」感はありません。
交通事故の被害者が後遺障害を負った場合、相手の自賠責保険にまず等級の申請を行います。
申請ルートは相手の任意保険会社を介した「事前認定」、被害者側で行う「被害者請求」に大別されます(稀に「加害者請求」、「仮渡金請求」もあります)。この申請書類は自賠責保険の引受会社・担当窓口に送られます。そこで提出書類のチェックを行い、不足・不備がなければ、「損害保険料算出機構」の下部組織である「自賠責損害調査事務所」に送致、そこで審査されます。
そして結果は窓口である自賠責保険会社に戻り、そこから申請した被害者に通知がなされます。この通知は自賠法 16 条の 4 で「文章回答」が義務付けられています。
自賠責側から見ますと、以下4段階となります。
契約事務→保険金請求受付事務→審査は別機関→支払、認定結果通知事務
自賠責保険は平成14年4月に国土交通省の管理運営を外れ、民営化されました。しかし昔も今も調査・審査業務は調査事務所です。上記の流れの通り、窓口業務を民間=損保会社が行うシステムの整備がなされた事、これが民営化の実質的な内容です。
明日から実際の「文章回答」を載せます。今日の日誌はそのシリーズのプレリュードのつもりで書きました。被害者はもちろん、この業界の皆さんも興味津々、自賠責保険の回答パターンを特集します。一緒に考察しましょう。
昨日の日誌では私の仮説を書きました。では(財)日本損害保険協会のデータで検証します。まずは10年前の分析結果をみてみましょう。
※ 抜粋 「加害者側からみた年齢層別事故の特徴」
事故の確率:年齢別免許保有者数と事故惹起者との関係
よく若者や高齢者は事故を起こしやすいといわれるが、実際にこれを確認するために、加害者年齢層ごとに免許保有者に占める事故件数の割合(事故の確率)を求めた(表1-1参照)。
その結果は次のとおりであった。
(1) 16~19歳までの免許保有者数は約177万人で、全年齢に占める割合は2.36%に過ぎないが、免許保有者に対する事故件数の割合は全年齢の平均1.19%に比べ、2.98%と極めて高い。(2) 加害者の年齢層別にみると16~19歳が加害者となる割合が最も高く、次いで20~24歳、25~29歳の年齢層の順となっており、これらの層が平均を引き上げている。
(3) 65歳以上の高齢者についてみると、3つのいずれの年齢層も全年齢の平均1.19%を下回続きを読む »今週の『サンデー毎日』誌上にて、自動車保険の改定と無保険車の増加の関連性について触れていますが、以前日誌で既述したように、「いずれ(新しいノンフリート等級制度に)慣れてくる」と思いますので、記事のコメントほどの深刻さは感じていません。日本全体の自動車登録台数が平成21年より減少局面に入っています。つまり車に乗る人、買う人が今後も減り続けることになります。したがって極端に無保険車の「率」が上がらない限り、無保険車の「数」は増えません。 この「率」と「数」の関係を意識しないと、間違った分析となります。 では「率と数」の面から「高齢者ドライバーの増加」を見てみてみましょう。
昔は80才のお爺ちゃんが運転なんて・・・と考えられていましたが、今や珍しくありません。急激な高齢化社会に伴い年代別ドライバーの分布は変化しています。当然、高齢者の事故が増加することになります。保険会社はそれを理由として60歳以上の掛金の値上げを検討しています。今後の料率改定で一番安い掛金帯である「35歳未満不担保」を「35歳以上60未満」とすることは必至です。つまり「60歳以上」は別枠に・・高齢者帯の値上げです。
10年前まで若年層のドライバー特有の無謀運転による事故が多かったのですが、比して近年高齢者の事故が増加しているのでょうか?結果として、値上げするほど高齢者の事故が多くなったでしょうか?保険会社の言い分を正確に分析してみましょう。
超スピードの高齢化で人口ピラミッドが変化したこと、つまり若者に対する高齢者の比率が上がったことは事実です。さらに若者の自動車離れによる、若年層ドライバーの数自体が低下したことも明らかです。数字上、高齢者ドライバー人口と高齢者による事故「数」は増加しました。しかしだからと言って年齢層別の事故比率は上がっていないはずです。これが本質的論点なのです。
保険会社の一番の悩みは「35歳未満不担保」の安い掛金の契約者が増加と同時に、「全年齢担保、21歳未満不担保」の高い掛金の契約者の減少が進行しているのです。これでは全体の収保(掛金の合計)の大幅な低下となってしまいます。 建前 「高齢者の事故が増えたから、高齢者は値上げします」
本音 「掛金の安い「35歳未満不担保」が増えて、掛金の高い「全年齢担保、21才未満不担保」が減ったので、全体の掛金収入が減ってしまいました。したがって35歳未満不担保の一部を値上げして全体の収益減少の修正をします」 これが私の分析です。明日はそれを裏付ける損保協会のデータを掲載します。
暑いです。冷房の効いた研修室に入ると眠気との戦いになります。どんなに多忙でも睡眠時間を削ってまで仕事をするのは下策と思っています。しかし時間がいくらあっても足りないです。事務の堆積が止まらない!!!困ったもんです。
さて、昨日は秋から(正確には来年から)自動車保険のノンフリート等級の改定についての研修会です。JA(農協)を除く、ほぼすべての保険会社が改定を決めています。久々の全社一斉変更です。
この改定の大筋はノンフリート等級=無事故割引等級の見直しです。今までは無事故の実績で毎年一つ一つ等級が上がっていき、事故で保険を使うと3つ下がる内容が基本でした。しかし事故を起こす人は全く起こさない人に比べ常習性が高く、3つ下げるだけでは公平性が保てないそうです。したがって翌年、無事故の人は「無事故等級:〇級」に、事故で保険を使った人は「事故あり等級:〇級」で評価します。つまりノンフリート等級が2つの割引体系になります。「事故あり等級」は「無事故等級」に比べ、極端に掛け金が上がります。公平性は全体で担保するものですが、結局、保険会社の収益を改善することが急務なのだと思います。
大きな改定ですが、数年で慣れてくるものと思います。しかし事故で保険を使った場合、値上がり幅が大きいと、次の懸念が挙げられます。
1、少額の事故では保険を使うことを避ける。
保険を使わずお財布から修理費等を支払う。自分の損害(車両保険)なら自己判断で良いですが、対人・対物など相手への補償の場合、保険使用をためらうことによって起こる当事者間のトラブル増加が心配です。
2、翌年の掛け金が高くなるため、保険継続を断念する。
やはり任意保険の加入率の低下は避けられないと思います。無保険車の増加は社会不安の増大です。
3、無事故の優良ドライバーの囲い込み
通販系の保険会社は事故経験ありのドライバーを基本的に謝絶する方針です。事故を起こした契約者への継続を謝絶する傾向に拍車がかかるように思います。すると国内損保会社に事故ありドライバーを引き受ける負担が増加し、当然収益に影響を受けます。顧客への優良なサービスが提供できる国内損保の地盤沈下が進むかもしれません。
今後、このような改定が進んだ結果、ますます引受方式がアメリカ式アンダーライティング化するかもしれません。保険会社にもドライバーにとっても自由競争の時代です。詳細はまた特集し、報告したいと思います。
保険営業時代、自転車通学の学生が多い高校に対し「自転車総合保険」の団体募集に力を入れていたことがあります。
これは自転車搭乗中の自身のケガ、相手への賠償がセットになったものです。相手への賠償はつまり「個人賠償責任保険」の事です。自動車保険で言うところの「対人賠償」、「対物賠償」にあたります。自転車でも歩行者や他の自転車、はたまた自動車へ損害を与え、賠償義務を負うことがあるからです。最近でもワイルドな子供さんが止まっている自動車の側面に衝突し、ドアをへこませました。幸いご自身にケガはなかったのですが、修理費15万円を請求されました。これに対し個人賠償責任保険で対応、修理費を支払いました。近年自転車が加害者となる交通事故も多く、個人賠償責任保険も必ず入っておきたい保険の一つです。
タイトルの「自転車総合保険」は一部損保を除き、現在ほぼ販売しておりません。団体ならともかく、一人一人に契約を勧めるには掛け金も安く、採算が合わない保険なのです。したがってご自身のケガの補償は普通の傷害保険等で賄うとして、個人賠償責任保険を別に確保する必要があります。傷害保険や火災保険に特約として付帯する方法がポピュラーですが、多くの損保が自動車保険にも付帯可能としています。家族全員に適用されますので、家族に自転車を乗る人がいる場合、漏らさず付帯することを勧めます。掛け金も最高3000万円補償で1200円くらいです。
← トルコのカッパドキアにて。
ツーリング中のスナップ。
この時は海外旅行保険に個人賠償責任保険を付帯しました。
ワイルドだろう?
杉ちゃんより10年早くからこのスタイルだぜぇ
償いの為の賠償保険(対人賠償保険・無保険車傷害特約)
・・・裁判となったら判決された賠償額を払います。
契約する際、定額補償を約束した傷害保険(人身傷害特約)
・・・契約時に定められた金額、基準にて支払います。
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再開します。
傷害保険として自社基準で支払いたい「人身傷害保険」。各社約款の修正、その前に運用基準の明示に入りだしました。
A、後遺障害を伴わないケガについてはこちらを優先適用します。 人身傷害の支払基準は約款にほぼ明示されています。各社対人賠償の基準に準じていますが、その対人賠償と同じく、後遺障害を負った被害者に対する逸失利益の計算などは約款上、「被害者の障害の部位・程度、年齢、職業、現実収入等を勘案して決定します」としています。したがって担当者がそれらを考慮して決定するのです。この決定に関わる細かなルールを運用基準(影の支払基準)としています。私も会社のサービスセンター(保険金支払い係)研修の際、この「運用基準を見せて」とお願いしましたが、「これは社員でも担当以外は見せられない」と拒否されました。これは保険の自由化後の現在でもマル秘ファイルであることは変わりません。 対人賠償や人身傷害の積算(損害額の計算)の際、この運用基準は用いられます。逸失利益だけではなく、慰謝料や休業損害、その他多肢にわたるはずです。支払保険金の削減が至上命題である担当者にとって、この運用基準の中で保険会社有利に計算することで支払額の抑制が容易に可能となります。
さらに無保険車による受傷で自分の任意保険に請求する際、「後遺障害を伴わないケガについては人身傷害保険で」とのルールが運用基準に存在し、それを証券、パンフレット上にも明示したと推察できます。無保険車傷害特約を請求する際、各社口をそろえて「人身傷害保険で支払います」と回答し、「人身傷害が優先です!」との社内ルール(運用基準か?)を押し出してくることからそう思うのです。一方、契約者が請求したい特約を自ら選べないのはおかしな印象を受けます。
もっとも後遺障害を伴わないケガの場合、3000万円を超えるような損害はほとんどありえません。実際の運用上、的を得たルールです。しかし、無保険車の相手に対し、後遺障害が残らないケガでも裁判をする場合もありえます。判決された賠償額について、相手の支払い能力がないため、自分の任意保険会社に請求するとします、その場合「後遺障害がないのでAのルールを適用します。したがって任意保険会社の基準で支払います」となり、裁判の判決額は払えない事になります。
これでは困ります。やはり両保険が併存して契約されている限り、永遠にこの問題が付きまといます。
そして、先進的に約款改定を行う東京海上、損保ジャパンは、思い切った修正をしたのです。
つづく
昨日は日米・交通事故賠償の土壌の違いを挿入しました。アメリカでは保険会社の独自基準より、代理人弁護士による裁判基準が幅を利かせているのです。州によっても差がありますが、被害者が直接、保険会社と示談し、保険会社の基準額で解決することは一般的ではないのです。対して日本は某損保会社の数字を見ると84%が保険会社対被害者、もしくは保険会社対保険会社の示談で解決しています。
84%・・・つまりこの国の交通事故賠償はほとんどが保険会社主導なのです。裁判や弁護士の交渉なんて、めったなことでは起きない少数例と言えます。かと言って、アメリカの「訴訟社会」を礼賛しているわけではありません。なんでもかんでも紛争を拡大し、賠償金を吊り上げ、自らの収入UPを考えている弁護士が多いアメリカはぞっとします。しかし日本の極端な「保険会社主導社会」が健全なのでしょうか。
「保険会社主導社会」、これをどう判断するか?
保険会社=「紛争の拡大・高騰化を防ぎ、社会秩序の安定に寄与している」
被害者=「保険会社の囲い込みに蹂躙されている」
この立場を違えた評価はどちらが真実なのか、それとも陰陽、2重の側面なのか・・・
保険会社にとって自社基準で支払う事が当たり前であると同時に、裁判規準などとんでもない話なのです。弁護士を介さず、自社の対人賠償の担当者で示談をしたい、無保険車障害特約は使わずに人身傷害保険で支払いたい、このように自社基準での「囲い込み」が至上命題となります。
無保険車傷害特約シリーズ、ついに核心に近づいてきました。
つまり無保険車傷害特約と人身傷害保険はその出自(誕生の経緯)と併存(途中から人身傷害保険が輸入され、1つの保険に2つとも含まれた)から、日本の賠償基準がダブルスタンダード(裁判基準と保険会社基準)で、その両者の乖離が極端(支払い保険金が何倍も違ってしまう)であることを大々的に示してしまったのです。そして何より、どちらに請求するかによって支払い基準の差でたいへんな損得が生じてしまう!
これに気づいた保険会社は約款の修正に入りだしました。
いよいよ自動車保険最大のタブー、多くの論点に紆余曲折しつつも収束に向かいだします。 つづく
アメリカの自動車保険事情を簡単に言いますと、訴訟社会であるが故、賠償保険が絶対的に必要です。そして無保険車が多く、ぶつけてきた相手が十分な保険に加入している、もしくはしっかり補償をしてくれるなど、まったく期待していません。移民も多い多国籍国家なので、日本と違い他人への信頼度が低いと言えます。したがって自身の補償保険も必須です。
加入率ですが、都市部では70~80%、一方地方は加入率も当然低く、30%を切る州もあります。これは州によって最低保険の加入額や関係する法律に違いがあることが一因です。
<一般的な内容>
■ Liability Coverage(≒自賠責保険)
日本のように自賠責保険加入が車検の絶対条件としていません。それに代わる制度として自動車の登録・更新制度があります。更新料(Renewal Fees) の支払いとともに、スモッグチェック証明書(Smog Certification)、自動車損害賠償責任保険(Liability Insurance) に加入していることを証明するもの(evidence)を提出しなければなりません。多くの州で2年更新です。
この強制保険には最低補償額が設定されており、それに満たない運転者には罰則で対処しています。カリフォルニア州では対人は、事故1件、1人の死傷に対し15,000ドル。2人以上に対して30,000ドル。対物として5,000ドルです。
■ Bodily Injury Liability (対人賠償)
自動車事故により他人を死傷させた場合に、医療費や休業補償をするものです。相手が死亡する、後遺障害を負った場合、十分な額が必要です。
保険シリーズは堅い話が続くので疲れますね。今日は少し休みましょう。
「人身傷害は自動車保険自由化の目玉商品としてアメリカからやってきました」。話の節々にアメリカがでてきますが、そもそも日本の自動車保険の内容について多くが、自動車社会を先行するアメリカの保険制度の流用です。ここでアメリカの保険を語りだすと脱線して元に戻らなくなる危険があります。これはテーマを変えて別の機会にしたいと思います。
私も保険会社に入社した頃、アメリカの保険制度を少々勉強しました。そして会社のお金で短期ですがアメリカ研修の経験があります。ニューヨーク、ナッシュビル、ロサンゼルスの3都市滞在でした。 ロスでは比較的日本の代理店制度に近い(正確に言いますと日本が真似たのですが)、ステートファーム社の代理店を訪問しました。ここでは数年後に来る金融ビックバンと保険の自由化について、アメリカ、ドイツを例にとり、話を聞いてきました。人身傷害保険を知ったのはこの頃です。
続きます。
先週「(無保険車傷害特約の)裁判基準」か「(人身傷害保険の)保険会社基準」と書きましたが、これは正確ではありません。約款上、無保険車傷害特約も人身傷害保険もそれぞれに保険会社の支払い基準が記載されています。
しかし、過去私が携わった、もしくは承知している無保険車傷害特約の請求は3件ですが、すべて保険会社は裁判で決まった賠償額を(渋々)支払いました。対して人身傷害特約の請求では「約款に書かれた基準で!」とかなり強硬です。この二つの保険の支払対応にはかなり温度差があります。
なぜでしょう? これは自動車任意保険の誕生の秘密にさかのぼります。やや私の推論も含みますがお聞きください。
加害者の賠償責任の肩代わりにより、交通事故被害者の救済を果たし、社会の安定を目指す。・・・このような社会的ニーズから自動車任意保険の販売は認可されました。社会的責任の強い商品であるからこそ、発売当時は「全社同じ内容、同じ掛け金、同じ支払基準」で販売されました(これは平成10年の自由化で撤廃されました)。その政府の認可に至る過程で、以下のような理屈が浮上しました。
「対人賠償の掛け金を払って被害者の救済に備える契約者が、もし逆に保険を掛けていない(支払い能力もない)相手の自動車事故で被害にあったら?」
⇒「自分は相手に対して補償を備えているのに、無保険車に被害を受けて補償が得られない。これは不公平ではないか!」
⇒「では対人賠償をかけている人にも救済が図れるよう、自動的に無保険車傷害特約を適用しましょう。」
これは保険に「公平の原則」という崇高な理念が織り込まれているからです。
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前日まで続いています「補償がだぶってしまう」保険・特約を表にしました。
契約車 搭乗中
他車 搭乗中
歩行中 自転車 他の交通機関
保険金 計算方法
重複 払い
人身傷害保険〇
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