さて、人身傷害特約の約款改定も触れないわけにはいきません。東京海上の発売から16年、もはや個人契約自動車保険には80%以上付帯されています。発売当初、「夢の実額補償」「過失があっても全額補償」と謳われた保険でした。

   特約について詳しくは ⇒ 人身傷害特約のおさらい

   しかし、実額補償と言っても日本では保険会社の計算する賠償金と裁判の相場ではものすごい開きがあったので、様々な矛盾、問題が噴出しました。

 その一つは、  

「人身傷害はあらかじめ保険会社が支払い基準を定めた傷害保険である」  sanmaつまり保険定食?

 これに対して、「人身傷害特約に裁判基準の賠償金を請求できないか?」

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 それでは、無保険車傷害特約の支払い基準が、人身傷害特約のように「保険会社の基準が絶対!」とせず、裁判の判決・和解の額を認める余地があるのか、つまり元に戻ったのかを確認しましょう。(わかり易くするため、加筆、修正、省略を加えています)  

無保険車傷害特約

第8条(損害額の決定)

(1)損害額は、被保険者が第2章(保険金を支払う場合)(1)のいずれかに該当した場合の、次の区分(①~③)ごとの、それぞれ普通保険約款別表3に定める損害額算定基準に従い算出した金額と自賠責保険等によって支払われる金額(注1)のいずれか高い金額の合計額とします。

① 傷害

・・治療が必要と認められる状態であること。

② 後遺障害

・・後遺障害が生じたこと。ただし、同一事故により被保険者が死亡した場合を除きます。

③ 死亡

・・死亡したこと。

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c_y_164  多くの方は「無保険車傷害特約の約款が独立した?、だから何?」と思うでしょう。しかし、相談会にやってくる被害者さんで、「相手が任意保険に加入していないので困った・・」は決して少なくない相談なのです。これは私たちのような被害者救済を生業とするものとって座視できない問題なのです。  

<無保険車傷害特約をおさらい> 

 保険に入っていない、保険が足りない、支払い能力のない加害者やひき逃げ等で相手が不明の場合、自ら加入の保険が代わりに支払います。契約自動車に乗っているとき、歩行中や自転車、他の車(任意保険に入っていない)に搭乗中でも適用されます。  契約本人はもちろん同居の親族全員が対象となります。契約自動車に搭乗中の事故であれば他人もOKです。  死亡、後遺障害の場合に限定されます。実額を補償をしますが、限度額は会社によって最高2億円、もしくは無制限です。  

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 損保ジャパン自動車保険、平成26年7月改訂で「無保険車傷害特約」が人身傷害特約の約款から離脱しました。

 長らく対人賠償特約に含まれていた(つまり自動担保)「無保険車傷害特約」が、対人賠償の約款から切り離され、人身傷害特約に吸収されたのは2年前のことでした。しかし以前の記事で指摘したように、損保側も自ら矛盾と混乱を理解したのでしょうか・・やはり支払い基準を無理やり人身傷害特約に合わせようと、同じ約款に組み込んだのは失敗だったと思います。

 結局、同特約は対人賠償の約款に戻らず、独立した条項になりました。迷走していた「無保険車傷害特約」はついに独立を果たしたのです。   yjimageU3E33L9F  こんな感慨にふけっている行政書士は日本に私だけかもしれません。興味ある方は「そして無保険車傷害特約は吸収された」を読んで下さい(長いシリーズですよ)

 まずは証券からそれぞれクリックしてご確認を、  

2年前の人身傷害特約への吸収

e8a8bce588b83続きを読む »

 交通事故による人身被害件数は年々減っていますが、自転車による加害事故はやや増加しています。相談会でもよく相談が寄せられます。相手が自転車の場合、相手に個人賠償責任保険の加入があるかが一番のポイントと思っています。今日は基本事項についておさらいしましょう。  

〇 個人賠償責任保険とは、個人が日常生活で他人(第三者)に対してケガをさせたり、モノを壊してしまったりした場合に損害賠償責任が生じた際に適用される保険です。賠償金の交渉については、保険会社による示談代行付きの保険が一般的となりました。

(例) ・ベランダで植木鉢を落として通行人に激突させてしまった場合。 ・買い物途中に、誤って商品を落として破壊してしまった場合。 ・子どもが遊んでいて誤って友達をケガさせた場合。 ・ペットが通行人にケガをさせた場合。 ・アパートの水漏れ事故で階下の部屋に損害を与えた場合。 ・自転車走行中、人や自転車・自動車に衝突してケガ、損害を与えた場合 等々 3170969

★ あくまで、日常生活での事故を対象としているものですので、業務中の事故等は対象外で、例えば、自転車による加害事故でも蕎麦屋の出前中の事故は施設賠償保険の適用とされます。  

〇 個人賠償責任保険は、通常、他の保険の特約となっています。

 何故なら、単体での販売であると、保険会社が元を取れず採算が合わなくなるからです。掛金は最高1000万円の補償でも年間1200円程度なのです。    ご自身の火災保険、自動車保険、傷害保険等の特約の有無をチェックして下さい。尚、個人賠償責任保険特約付きの自動車保険を解約すると、自動車保険と同時に、個人賠償責任保険もなくなることになります。解約の際には注意が必要です。  

〇 この保険の(一般的な)対象者は、単純に言うと、契約者本人とその家族です。

 家族の例として、契約者の夫や妻、子、その他の同居している親族(三世代で住んでいる祖父祖母等)、生計を一つにする別居の未婚の子 ※(仕送りを受けて一人暮らし中の学生さん等)、等々があげられます。このことから、家族の一人が加入するだけで、そのほかの家族も大体カバーできてしまうことが多いのです。

 したがって、家族中の保険に特約として加入されていないか探す必要があります。見落としがちなのは年会費を伴うようなクレジットカードです。これにもひっそり1000万程度が加入されているケースがあります。  

※ 別居の未婚の子・・・この別居の未婚の子とは、通学のために別居に下宿している子などが代表例です。しかし、学生に限らず、独身の40歳OL一人暮らしも範囲に入ります。このOLさんが東京で交通事故でケガをして、なんと!九州の実家の親の保険が使えるケースが有り得るのです。

 「別居の未婚の子」に年齢制限はありません。婚姻歴無のみが条件です。一度結婚し、離婚して独身になってもダメです。ですので18歳で結婚し、19歳で離婚バツ1となった人は、未成年であっても「別居の未婚の子」から外れます。なんか腑に落ちませんが、保険約款が民法の「成年擬制」の条項に準じているためと思われます。

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 なぜ、保険会社は弁護士費用特約(以下、弁特)にあえて細かい条件を付けたり、制限を加えるのでしょうか?

 先日の研修会で弁護士先生から様々な情報が上がりました。やはり不道徳な請求が後を絶たないようです。保険会社は単に払い渋りの体質で意地悪をしているわけではありません。私は請求側が「弁特を荒らした」結果と思っています。

 シリーズのおまけに研修会で聞いた1例を紹介します。  

 ある大手法人弁護士事務所に所属のβ先生が物損事故の依頼を担当しました。請求額はわずかな修理費等です。少額の依頼でも弁特がある故、事務所は引き受けたようです。本来、獲得額と弁護士報酬の兼ね合いを考慮し、費用倒れに近い案件は引き受けません。弁特があるから受任しましょう、という姿勢です。

 本件の依頼者は熊本県です。そのβ先生は東京事務所に在籍ながら、熊本まで3回飛行機を使って宿泊し、その交通費、宿泊費などの経費及び、成功報酬はタイムチャージ(業務の処理時間で報酬を計算)で請求しました。報酬の総額で獲得額を超えたはずです。もし弁特がなかったら、依頼者はこの無駄使いのような依頼を頼まなかったはずです。

 このβ先生、きっと熊本旅行がしたかったのでしょう。本件は典型的な「弁特の濫用」例として、事務所名および弁護士名が損保間で実名でさらされています。現在、その事務所は損保各社から厳しい支払いチェックを受けています。自業自得ですが、その事務所で真面目にやっている弁護士や事務員は気の毒ですね。  

 弁特は言うまでもなく被害者にとって非常にありがたい補償です。大事にしなければなりません。保険会社の弁特払い渋り、厳格化を責めるより、法律家側の不道徳な請求を問題視すべきです。

 現状、弁特の請求に対し特に抵抗なく支払われている事務所と(保険会社側から支払いを少なくするための)弁護士対応とされている事務所に二分しているようです。   kurokawa私も黒川温泉に行きたいわい!

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 先日に続き、弁護士費用特約(以下、「弁特」と略)もう一つの追加条項をみてみましょう。東京海上日動さんを例にとりましたが、今後、他社も類似条項を追加すると予想します。  

行政書士への報酬は明確に制限

 これまで弁護士費用等補償特約(日常生活)で補償していた「行政書士または司法書士による保険会社に提出する損害賠償請求のための書類作成費用」については補償の対象外とし、自動車に関する補償をご契約いただいている場合に限り、自動付帯される法律相談費用補償特約(上限10万円)で補償することとします。  

<解説>    行政書士に対して制限が加わると予想したことが現実となりました ⇒ 過去記事 

   ご存知の取り、弁特は発売後すぐに支払い対象を司法書士、行政書士に拡大しました(国内社に多く、外資・通販の多くは非対象)。しかし代理権を持たない、もしくは制限のある両資格について何をどこまで支払えるか?特に行政書士については、保険会社担当者又はセンター長の裁量により対応・解釈がバラバラでした。これは仕方のないことです。そもそも弁護士・行政書士間の業務範囲そのものに議論があるのです。これでは保険会社も迷いますよね。

 以前、損保ジャパンの担当者に行政書士に対する弁特の支払い範囲を訊ねたところ、「法律相談費用(10万円)までは担当者の判断で割と寛容ですが、本費用は要検討でしょうか・・」と歯切れ悪く答えました。特約の明文化を待たず、今までも多くの行政書士が10万円制限を受けていたようです。

 対して弁護士の報酬に対しては保険会社と弁護士会が申し合わせをしたLAC基準が存在します。また、LACを通さなくても多くは旧日弁連基準を相場としてきたようです。このような申し合わせを行政書士会から働きかけるのは困難と思います。まず先に業務範囲の線引きを弁護士会としなければなりませんが、そのような積極的な動きは皆無です。やはり交通事故における行政書士のスタンスはその権限からあくまで補助的です。

 しかし保険会社の示す制限について私は好意的に受け止めています。なぜなら、先日の「非常識弁護士」以上にめちゃくちゃな報酬請求をしている行政書士の話を多く耳にするからです。報酬自由の原則があるにせよ、自賠責保険の請求書の代書だけで弁護士並の報酬を設定している先生が多いのです。やはり報酬に見合った仕事、依頼者が納得する仕事が求められます。そして「弁特があるから契約を」=依頼者さまはお金がかからないのだからとりあえず契約をしましょう・・このような契約勧誘は不健全ではないでしょうか。  

 弊所の依頼者さまは弁特加入の有無、さらに弁特からの支払い額如何で依頼を躊躇しません。すべての依頼は病院同行や検査誘致、診断書・画像分析等、専門性を評価いただいた結果です。資格云々を評価しているわけではありません。弁護士事務所からの依頼についても同様で、常に技術的に高度な調査業務が期待されています。そこには弁特の有無など考慮している場合ではない被害者の窮状があるからです。   20140508  20140508_3続きを読む »

 今年の秋、10月から各損保会社は自動車保険の約款改定を行います。昨年のノンフリート等級改定に比べれば細かな改定ですが、以前から要望が高かった弁護士費用特約もその対象です。以下、東京海上日動さんの内容を抜粋します。支払い内容についてより具体的な条項が加わった印象です。  

弁護士費用等補償特約(日常生活)の改定

   弁護士費用を算定する場合において、一般的にはその費用算定の対象に含まれない以下a.b.の額に対する費用は、弁護士費用等補償特約(日常生活)の補償の対象外とします。  

a.保険金の受取人が損害賠償請求を行った額のうち、補償を受けられる方の過失により減額された額  

b.損害賠償の額のうち、既に保険金の受取人が受領済みの額  

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<解説>

 a.の内容は「依頼者側の過失割合により減額された賠償金分は報酬計算の対象金額ではないですよ」とのことです。報酬とは相手から勝ち取った金額からのボーナスですから、常識的にa.の通りですよね。  また、仮に自身が契約している人身傷害特約に「過失減額された分を請求・補てんしたとしても、この補てん額は弁護士の交渉で獲得した金額ではない」と念を押されそうです。

 b.の内容は、「依頼者側がすでに相手の保険会社から受け取ったお金や、自身が加入している人身傷害特約から受け取った保険金は報酬計算の対象から引いて下さい」との意味です。これらは弁護士の介入に関わらず支払いが受けられたお金なので、弁護士の仕事の成果ではなく当然に差し引くことになります。

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 相変わらずJAさんの認定はキビシイです。誰が見てもおかしな判定を異議申立で正しました。

  【事案】

歩行中、後方よりの自動車に撥ねられ、頭部と首を受傷。数日後、慢性硬膜下血腫を併発、またCT検査で頚骨の椎弓骨折が判明。幸い予後の経過よく、手にしびれを残すも仕事・日常生活に復帰する。

【問題点】

相談のきっかけは相手保険会社であるJAから140万円ほどの示談金提示があり、「この数字で示談して良いのか?」見て欲しいとのこと。後遺障害等級は14級9号。ケガの重篤度と残存する症状から、「これはないな」と直感。

【立証ポイント】

椎弓骨折と頭部の内出血、つまり器質的損傷がある上、しびれなど自覚症状も重篤であること。これでなぜ12級とならないのか憤慨。早速、主治医と面談、再検査等を踏まえ、周到に医証を収集し異議申立。依頼者さんは穏やかな人柄で、「14級でもいいですけど・・」と謙虚。しかしあるべき結果、12級13号の認定に変更させる。

続いて連携弁護士に引き継いだ。しかし弁護士の請求額とJAの回答は桁が違うほど相容れない。したがって紛争センターにて逸失利益の赤本満額獲得を争点に戦う。弁護士は秋葉から引き継いだ「異議申立で明らかとなった障害の原因、経過、程度」を理路整然と主張。画像所見を突きつけ、JAの見解、JA顧問医の意見書を一蹴。このように医学的考察を踏まえた交渉を続けた結果、見事、満額の慰謝料はもちろん、67歳まで満額の逸失利益を勝ち取る。金額は1500万を超えた。最初の140万提示はなんだったのか。

後遺障害等級を軽く判断されたら大変なのです。そして後遺障害に精通した弁護士が妥協なき交渉をしなければ、なめた金額で示談させられる現実があります。

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 骨折箇所が多く、それぞれ等級が付いても、併合のルールでそれほど等級が上がらないことがあります。14級はいくら認定されても14級まで。12級以上が複数認定されても上位等級に一つあがるだけ。8級が二つ以上なければ2等級上位併合しません。1~2か所の受傷で9級認定された被害者に比べ、3つ以上のケガで等級が付いたものの同じ9級止まりの被害者はそれなり苦痛も多く、同じ等級でも公平に思えないことがあります。これは後の損害賠償で弁護士が等級以上の苦痛の程度を主張することになります。  

事案】

 バイクで直進中、交差点で左方より一時停止無視の自動車と衝突、左橈骨遠位端骨折、左尺骨開放骨折、肩甲骨骨折、第一胸椎横突起骨折、右腓骨外顆骨折、第7頚椎骨折、肋骨骨折、鼻骨骨折となる。骨折箇所の多さでは過去1、2位の多さ。  

【問題点】

 骨癒合は概ね良好ながら、ここまで折れると体幹バランスの異常、様々な神経症状が残存する。具体的にはめまいやふらつき、体幹の傾斜、頭痛、軽度の顔面神経麻痺と嗅覚障害もあるよう。これらを評価する等級は12級13号が限度、さらに本人の生活上の問題から早期に症状固定し、職務復帰を急ぐことになった。  

【立証ポイント】

 可動域制限を正確に計測するのみ。まず手首10級+肩関節12級で上肢は9級を確保。嗅覚について、専門医の診断では事故との因果関係に疑問はあったが、これだけのケガなので14級の認定は得た。その他の部位について、可動域は正常値レベルに回復、さらに癒合良好のため神経症状も12級に届かず。このように上肢以外は14級のオンパレード、あと一つ上位併合させることができなかった。しかし本人が解決を急ぐため、即弁護士に引き継いだ。  私としては回復も認定等級も中途半端な印象が残った案件であった。 pics260

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<Bパターン>  中居さんの説明を聞いても「断じて保険は使わない」「草薙さんと示談しない」「念書も交わさない」と稲垣さんがすべて拒んだら・・・駄々っ子のように手に負えません。もう裁判か調停するしかありません。草薙さんから委任を受けた香取弁護士は最後まで責任を全うします。つまり訴訟に進めました。

 この場合、修理費30万の請求ですので、手続きが簡単で即日判決、便利な「少額訴訟」を行います。  

少額訴訟について (裁判所のパンフレットから抜粋)

• 1回の期日で審理を終えて判決をすることを原則とする,特別な訴訟手続です。 • 60万円以下の金銭の支払を求める場合に限り,利用することができます。 • 原告の言い分が認められる場合でも,分割払,支払猶予,遅延損害金免除の判決がされることがあります。 • 訴訟の途中で話合いにより解決することもできます(これを「和解」といいます。)。 • 判決書又は和解の内容が記載された和解調書に基づき,強制執行を申し立てることができます(少額訴訟の判決や和解調書等については,判決等をした簡易裁判所においても金銭債権(給料,預金等)に対する強制執行(少額訴訟債権執行)を申し立てることができます。)。 • 少額訴訟判決に対する不服申立ては,異議の申立てに限られます(控訴はできません。)。

 民事訴訟のうち,60万円以下の金銭の支払を求める訴えについて,原則として1回の審理で紛争解決を図る手続です。即時解決を目指すため,証拠書類や証人は,審理の日にその場ですぐに調べることができるものに限られます。法廷では,基本的には,裁判官と共に丸いテーブル(ラウンドテーブル)に着席する形式で,審理が進められます。  

 香取先生はこの制度を利用、即日、判決書をゲットしました。ちなみに稲垣さんは欠席しました。 

 続いて香取先生はその判決書を東京ダイレクト損保 中居氏に提出し、あらためて「直接請求権」を行使しました。約款上、中居さんは速やかに判決書通りの金額を支払いました。このように直接請求権のおかげで回収が確保されたのです。裁判に勝っても相手が逃げて行方をくらまし、さらに強制執行をかける財産がなければ、結局、取りっぱぐれとなってしまいます。

 最後まで稲垣さんは逃げ続けましたが、こうして稲垣さんの意思に関わらず保険は使用され、来年の掛金はUPしました。ちなみに東京ダイレクト損保にとっても面倒な契約者となった稲垣さん、来年の更新は稲垣さんが拒む以前に東京ダイレクトから更新謝絶と予想します。    最後に

 問題の本質は「来年の掛金が上がるから保険を使いたくない」身勝手な加害者の存在です。昨年秋からの改定でノンフリート等級(無事故割引)が変更され、デメリット等級(前年事故の等級)の掛金が半端なく上がるようになりました。したがって今シリーズのような事例は多くなるかもしれません。    「直接請求権」、被害者はもちろん、交通事故に関わる業者は知らなければならない約款条項です。

 

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 お待たせしました。直接請求権の行使によって、事例の草薙さんと香取先生は修理費の支払いを受けることができたのでしょうか?多くは以下Aパターンで解決します。     <Aパターン> tel13

香取弁護士:「私どもは東京ダイレクトさんに直接請求を行います。約款〇ページに書いてありますよね?」

東京ダイレクト損保 担当 中居氏:「(うっ、そうきたか・・)わかりました。しかし約款上、裁判や調停での結果が必要です。もしくは弊社契約者である稲垣さんと草薙さんの間で示談が成立するか、草薙さん側が稲垣さんへ請求をしない旨の念書の作成が必要です。」

香取先生:「当人同士の示談は無理でしょう。また、草薙さんは稲垣さんへ修理費を請求するつもりはありません。したがって念書はいつでも差し出しますよ。ここまで来たら中居さん、稲垣さんを説得してくださいよ。でないと進まないでしょ? 稲垣さんが拒否したら仕方ないですが法的手段、つまり裁判をしますよ。」

中居氏:「わかりました、稲垣さんと相談します。」

 

 こうなると、東京ダイレクトの中居さんは稲垣さんを説得するようになります。  

中居氏:「相手は弁護士をいれてきました。本気のようです。ただし稲垣さんへは直接請求しないことの念書を草薙さんから取れば保険で払えますよ。もっとも念書などなくても稲垣さんが保険を使うと一言いえば、弊社は交渉と支払いに進めますけど・・」

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 直接請求ができることと、保険会社がすんなり支払ってくれることはイコールではありません。

 約款の(2)を解説します。事例に乗っ取り、一つ一つ確認していきましょう。

 

(2)当会社は、次の①から④までのいずれかに該当する場合に、損害賠償請求権者に対して(3)に定める損害賠償額を支払います。  ただし、1回の対物事故につき当会社がこの対物賠償責任条項および基本条項に従い被保険者に対して支払うベき保険金の額(同一事故につき既に支払った保険金または損害賠償額がある場合は、その全額を差し引いた額)を限度とします。

 「直接請求されたと言っても、支払いには条件があります」とのことです。以下の①~④のどれかが条件です。「ただし」以下の後段の意味は「正当な金額までですよ」です。

 事例で説明します。香取弁護士に修理費の見積もりを突きつけられた東京ダイレクト損保の中居氏、仕方なく事故対応に応じました。しかし約款上①~④のいずれかに該当しなければ払わないと応答してきました。     ① 保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と損害賠償請求権者との間で、判決が確定した場合または裁判上の和解もしくは調停が成立した場合

 東京ダイレクト損保は「稲垣さんと草薙さん(代理人 香取弁護士も含む)との間で裁判をしていただき、判決か和解、もしくは簡易裁判所での調停が成立したなら払います。」との意味です。なんだ結局、裁判が必要なの?と思いますが、この条文で保険会社への回収の見通しがつくことになります。   

② 被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と損害賠償請求権者との間で、書面による合意が成立した場合

 「稲垣さんと草薙さんの間で示談が成立した場合、支払います。」との意味です。かなり可能性の低い条件です。そもそも事故状況が食い違い、稲垣さんが逃げに回っている事件です。  

③ 損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対して書面で承諾した場合

 草薙さんが稲垣さんに対して「僕は稲垣さんに一切修理費を請求しません。」と念書を交わすことです。しかし本件のもっとも深い部分、ここでは稲垣さんの意図ですが、本当は自分に責任があると感じながら ⇒ 来年の保険の掛け金が上がるのが嫌 ⇒ 保険を使わないで逃げ切ろう、ではないでしょうか。するとこの念書のやり取りに発展するのかは微妙です。  

④ 法律上の損害賠償責任を負担すべきすべての被保険者について、次のア.またはイ.のいずれかに該当する事由があった場合 

ア.被保険者またはその法定相続人の破産または生死不明

イ.被保険者が死亡し、かつ、その法定相続人がいないこと。

 つまり加害者、ここではア:稲垣さん破産で支払い能力0となった、イ:稲垣さんが死んでしまった・・仕方ないので東京ダイレクトが草薙さんの修理費を支払います。との意味です。この条件は保険会社の社会的役割の美徳ですね。

   明日は最終回、事例の解決を見届けましょう。草薙さんは修理費を得ることができたのか?

 

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 長い前置きとなりましたが、自動車任意保険の直接請求権について語りましょう。(昨日までのシリーズを読んでない方は読んでから戻って下さい)

 まずは約款から1項=(1)と2項=(2)、3項=(3)を抜き出します。この条文の骨子となるのは(1)項と(2)項です。  

第8条(損害賠償請求権者の直接請求権)

(1)対物事故によって被保険者の負担する法律上の損害賠償責任が発生した場合は、損害賠償請求権者は、当会社が被保険者に対して支払責任を負う限度において、当会社に対して(3)に定める損害賠償額の支払を請求することができます。

(2)当会社は、次の①から④までのいずれかに該当する場合に、損害賠償請求権者に対して(3)に定める損害賠償額を支払います。ただし、1回の対物事故につき当会社がこの対物賠償責任条項および基本条項に従い被保険者に対して支払うベき保険金の額(同一事故につき既に支払った保険金または損害賠償額がある場合は、その全額を差し引いた額)を限度とします。

① 保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と損害賠償請求権者との間で、判決が確定した場合または裁判上の和解もしくは調停が成立した場合

② 被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と損害賠償請求権者との間で、書面による合意が成立した場合

③ 損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対して書面で承諾した場合

④ 法律上の損害賠償責任を負担すべきすべての被保険者について、次のア.またはイ.のいずれかに該当する事由があった場合

ア.被保険者またはその法定相続人の破産または生死不明

イ.被保険者が死亡し、かつ、その法定相続人がいないこと。

(3)前条およびこの条の損害賠償額とは、次の算式により算出された額をいいます。

「被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額」-「被保険者が損害賠償請求権者に対して既に支払った損害賠償金の額」  

<解説>

 保険特有の用語のままではわかり辛いので、人物にあてはめて読んでみます。

(1)対物事故で稲垣さんが草薙さんの自動車の修理をしなければならなくなったとき、草薙さんは稲垣さんが加入している自動車保険「東京ダイレクト」に、契約の限度額と稲垣さんが負うべき責任を限度に修理費の支払を請求することができます。

 つまり、「稲垣さんが保険を使わないと言っているので、当社は対応できません」と言った東京ダイレクトの担当者:中居氏の対応は、草薙さんが直接請求権の行使をした段階で約款違反となります。

 では草薙さんの代理人である香取弁護士はこの直接請求権の行使によって、すんなり修理費を勝ち取ることができるのでしょうか?それは(2)項の条文にかかっています。これは明日に続きます。  

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 途方に暮れる草薙さん、いくつかの法律事務所に相談しましたが、電話の段階で「30万円請求の物損事故?」ではどこも相手にしてくれません。なぜなら経済的利益が30万円程度の事件では弁護士事務所も利益が薄く、仮に20万円ほどの報酬で受任しても、「相手が保険を使ってくれない=回収の見込みがない」と敬遠してしまうのです。そして加害者が保険を使ってくれない、だから保険会社も対応しない、という相手保険会社の対応に一様に納得しているようです。”交通事故に強い”と喧伝している弁護士も「相手が保険を使わないなら修理費の回収は難しい」との回答です。

 それでも無料相談会を開催しているジャーニー法律事務所を訪れました。そして対応した弁護士・香取先生から目からうろこの回答を聞きました。  

草薙さん:「やはり相手の稲垣さんに法的手続きを取るしかないのですか?それでも30万円は取れないのでしょうか?」

香取先生:「相手の稲垣さんに法的手段をとって請求することは可能ですが、やはり回収の問題があります。そんな面倒なことをしなくても、保険会社の東京ダイレクトに請求しましょう」 

草薙さん:「えっ、でも稲垣さんは保険を使わないと言っていますし、東京ダイレクト担当者の中居さんも『契約者が保険を使わないと言っているので対応しません』と取り付く島なしなんですよ。」

香取先生:「この場合、保険約款上の直接請求権を行使します。つまりあくまで東京ダイレクトに請求をします」

草薙さん:「直接請求権?初めて聞きますが、それは何ですか?それで何とかなるのですか?」

香取先生:「損害賠償請求権者、本件では草薙さんですが、事故相手の保険会社に直接請求を行うことが約款上、認められています。その請求に対し、一定の条件はありますが、保険会社は対応せざるを得ないのです。支払いに対してはやはり稲垣さんの同意が必要ですが、ひとまず交渉の窓口を開かせ、中居さんに稲垣さんを説得させる効果はあります。」

草薙さん:「では、今までの”稲垣さんが保険を使わないなら、東京ダイレクトは動かない”・・これは間違っていたのですか!」

香取先生:「中居さんがとぼけていたのかどうかはわかりませんが、保険会社の担当者も弁護士も困ったことに直接請求権を知らないのです。 手続きですが、あくまで東京ダイレクトに修理費の請求書を突きつけ、『保険約款 第〇条(損害賠償請求権者の直接請求権)にもとづいて請求を行います』と通知します。おそらく30万円程度なら保険会社も支払いを検討するはずです。ここで稲垣さんの同意が得られないと支払い拒否の回答をしてきたら、稲垣さんに法的手段を講じると揺さぶりをかけます。ここで稲垣さんが折れて結局、保険使用に進むはずです。」

草薙さん:「それでは、香取先生、是非お願いします!」

香取先生:「報酬は多くいただけませんが、お受けしましょう。」  

 さてようやく請求の目途が立って一安心の草薙さんですが、なぜ紆余曲折したのか、問題は「直接請求権」につきます。これを説明する場合、実例を踏まえずに約款解説しても何のことやら?になってしまいます。

 前置きが長くなりましたが、明日は「直接請求権」について解説します。

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<ケース> (以下、仮名)

 草薙さんは自動車同士の衝突事故に遭いました。自動車の修理費を相手の稲垣さんに請求しなければなりません。しかし、お互い事故状況の説明が食い違い、稲垣さんは責任を認めません。

 仮に自分(草薙さん)に多少の過失があったとしても、相手(稲垣さん)の責任が大きい事故です。稲垣さんの車は古くキズだらけで、今更修理するまでもない損害です。しかし、草薙さんの車は買ってから一年未満のピカピカ、フェンダーのへこみの修理費は30万円です。

 幸いお互い自動車保険(任意保険)に入っています。草薙さんは保険会社の交渉に委ねることを稲垣さんへ提案しました。それでも稲垣さんは責任はないの一点張りです。警察への届け出が済むと、稲垣さんは現場から逃げるように走り去ってしまいました。

 やはり当人同士ではなく、保険会社同士の交渉でなければ進みません。まず自分の加入している太陽損保に事故報告し、稲垣さんへは東京ダイレクト損保にコンタクトをとるよう電話で伝えました。これで保険会社の交渉になると思いきや・・・(以下 電話での会話)

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太陽損保 担当者 木村:「本件担当の木村と申します。稲垣さんも東京ダイレクトに事故報告をあげていただけませんか?保険会社同士での話し合いで進めたいと思いますが。」

稲垣さん:「俺は悪くない。そっち(草薙)が突っ込んできた事故です。」

木村:「まぁ、とにかく東京ダイレクトの連絡先を教えてくれませんか。」  

なんとか電話番号を聞き出し、木村氏は東京ダイレクトの担当者 中居氏に電話をしました。」  

木村:「本件を担当します木村です、よろしく。ぶっちゃけ判例タイムス〇ページの10:90ではどうすか?」

中居:「ちょっと待って下さい。稲垣さんからの事故状況報告と違っています。また稲垣さんは自分に責任はないと言っています。稲垣さんのオーダーを確認して折り返します。」  

それから3日  

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支給される期間

   傷病手当金が支給される期間は、支給開始した日から最長1年6ヵ月です。これは、1年6ヵ月分支給されるということではなく、1年6ヵ月の間に仕事に復帰した期間があり、その後再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合でも、復帰期間も1年6ヵ月に算入されます。支給開始後1年6ヵ月を超えた場合は、仕事に就くことができない場合であっても、傷病手当金は支給されません。  

支給される傷病手当金の額

 傷病手当金は、1日につき被保険者の標準報酬日額の3分の2に相当する額(1円未満四捨五入)が支給されます。標準報酬日額は、標準報酬月額の30分の1に相当する額(10円未満四捨五入)です。給与の支払があって、その給与が傷病手当金の額より少ない場合は、傷病手当金と給与の差額が支給されます。

(例)標準報酬月額300,000円(標準報酬日額=10,000円)の場合 1日につき10,000円×3分の2=6,667円(50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上1円未満の端数は切り上げる)  

資格喪失後の継続給付について

 資格喪失の日の前日(退職日等)まで被保険者期間が継続して1年以上あり、被保険者資格喪失日の前日に、現に傷病手当金を受けているか、受けられる状態[(1)(2)(3)の条件を満たしている]であれば、資格喪失後も引き続き支給を受けることができます。ただし、一旦仕事に就くことができる状態になった場合、その後更に仕事に就くことができない状態になっても、傷病手当金は支給されません。  

傷病手当金が支給停止(支給調整)される場合

(1)傷病手当金と出産手当金が受けられるとき

 傷病手当金と出産手当金を同時に受けられるときは、出産手当金を優先して支給し、その間、傷病手当金は支給されません。ただし、すでに傷病手当金を受けているときは、その支給額分だけ出産手当金から差し引いて支給されます。

(2)資格喪失後に老齢(退職)年金が受けられるとき

 資格喪失後に傷病手当金の継続給付を受けている方が老齢(退職)年金を受けているときは、傷病手当金は支給されません。ただし、老齢(退職)年金の額の360分の1が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。

(3)障害厚生年金または障害手当金が受けられるとき

 傷病手当金を受ける期間が残っていた場合でも、同じ病気やケガで障害厚生年金を受けることになったときは、傷病手当金は支給されません。ただし、障害厚生年金の額(同時に障害基礎年金を受けられるときはその合計額)の360分の1が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。また、厚生年金保険法による障害手当金が受けられる場合は、傷病手当金の額の合計額が、障害手当金の額に達する日まで傷病手当金は支給されません。

(4)労災保険の休業補償給付が受けられるとき

 労災保険から休業補償給付を受けている期間に、業務外の病気やケガで仕事に就けなくなった場合は、その期間中、傷病手当金は支給されません。ただし、休業補償給付の日額が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。  

参考文献:全国健保協会パンフレットより抜粋  

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 病気やケガで会社を休んだとき、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。現在、依頼者さんの傷病手当手続きをお手伝いしています。せっかくの機会ですので、勉強がてら数回にわたり続けます。    被害者に給付される様々な制度を漏らさず活用することが大事です。交通事故の解決とは、専門家とは、利用できる制度すべてに精通していなければなりません。

 

支給される条件

 傷病手当金は、次の(1)から(4)の条件をすべて満たしたときに支給されます。

  (1) 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること

 健康保険給付として受ける療養に限らず、自費で診療を受けた場合でも、仕事に就くことができないことについての証明があるときは支給対象となります。また、自宅療養の期間についても支給対象となります。ただし、業務上・通勤災害によるもの(労災保険の給付対象)や病気と見なされないもの(美容整形など)は支給対象外です。  

(2) 仕事に就くことができないこと

 仕事に就くことができない状態の判定は、療養担当者の意見等を基に、被保険者の仕事の内容を考慮して判断されます。  

(3) 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと

 業務外の事由による病気やケガの療養のため仕事を休んだ日から連続して3日間(待期)の後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。待期には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれるため、給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。また、就労時間中に業務外の事由で発生した病気やケガについて仕事に就くことができない状態となった場合には、その日を待期の初日として起算されます。

※「待期3日間」とは?

 待期3日間の考え方は会社を休んだ日が連続して3日間なければ成立しません。 連続して2日間会社を休んだ後、3日目に仕事を行った場合には、「待期3日間」は成立しません。  

(4) 休業した期間について給与の支払いがないこと

 業務外の事由による病気やケガで休業している期間について生活保障を行う制度のため、給与が支払われている間は、傷病手当金は支給されません。ただし、給与の支払いがあっても、傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されます。  任意継続被保険者である期間中に発生した病気・ケガについては、傷病手当金は支給されません。  

参考文献:全国健保協会パンフレットより抜粋  

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c_g_a_5-118x300 16条請求とは自賠法(強制保険である自賠責保険のルール、被害者に有利な内容です)16条の定めによった保険請求の方法のことで、一般には「被害者請求」と呼ばれています。交通事故で後遺障害が残るようなケガの場合、被害者にとって絶対に検討すべき手続きです。最近は交通事故に力を入れている弁護士も被害者請求を推進するようになってきました。しかし、後遺障害の認定は相手の保険会社に任せる「事前認定」がまだ多くを占めています。受任しながら「事前認定」を看過している弁護士もまだ多数派です。    何度も双方のメリット・デメリットを語ってきました。

 ⇒ 事前認定 or 被害者請求

   この記事を読んでいただければ、双方のメリット、デメリットがご理解いただけると思います。被害者の立場とすれば、できれば16条請求が望ましいはずです。しかし楽なケースとやたら面倒なケースに分かれます。    治療費などを加害者側保険会社が「自由診療で一括払い」(病院に直接、自由診療の治療費で払ってくれる)してくれれば、その損保会社の担当者は自賠責に求償する必要から診断書・診療報酬明細書を病院から取得、所持しています。被害者はそれら申請に必要な診断書類、および事故証明書のコピーをもらうことによって、ほぼ書類は揃います。(画像の貸出しは微妙、拒否されることがあります)  しかし健保、労災が絡む件、一括払いを拒否された件は絶望的に面倒な手続きを強いられます。その労苦とは・・・  

1、健保、労災で治療費を確保した場合、あらためて病院に通院期間の自賠責用診断書・診療報酬明細書をお願いしなければなりません。  診療報酬明細書については病院はすでに健保・労災に発行しており、2重発行はできないと拒むケースが多くなります。診療報酬明細書とは病院にとって治療費の請求書なので、すでに健保・労災に提出して費用が精算されていれば、再び発行はできない・・・これは筋が通っています。ちなみに健保・労災は受け取ったこの明細書に従って病院に支払い後、被害者に過失がない、もしくは少なければ自賠責保険に求償することがあります。

 この書類の流れを説明できる法律家は少なく、病院の医事課の事務員や健保・労災の担当者も自分の所管する事務以外は把握していません。損保の人身担当者が一番詳しいと思います。

  2、従って、1で診療報酬明細書が入手できねば、健保・労災に診療報酬明細書の開示請求を行う必要が生じます。開示請求には開示申請、開示決定、謄写請求など、数段階の手続きが必要です。手間となにより時間がかかります。通院期間が長く、量が多いと開示決定に2~3か月待たされることがあります。  

3、病院によっては、健保・労災で治療した患者に対して、1の自賠責用の診断書の記載すら拒みます。その場合、病院の事務方、医師へ説得が必要です。  

4、画像の収集。病院によっては極度に画像の貸し出しを嫌います。またCD等の買取なら500円~2000円で済みますが、なかにはXPフィルム(レントゲン)のコピーを1枚1000円で売る病院も存在します。最近も骨折が多かった被害者さんは220枚も買わされるはめになり、22万円+消費税を支払いました。CDに焼ける設備がありながら、院内のルールだそうです。こうなると病院の悪意を感じます。

  5、これらの手続きに際し、患者本人ではない場合、同意書(しかも期限3か月以内を要求されることも!)が必要であることはもちろん、病院によっては「郵送不可」「患者本人のみ対応」「文書料金の振込み不可、窓口で現金払いのみ」など無駄に厳しいルールを盾に非協力的な対応も珍しくありません。なにより、事情をよく解っていない医事課(文書課)の事務員に説明、理解を得なければ進みません。

  

 このように書類・画像の収集が複数の病院に及べば、被害者はヘトヘトになります。交通事故被害者は複数の病院に行きやすく、先月は9か所!も通院した被害者がおりました。もしこれらの手続きを弁護士が受任したら、弁護士だけでなく事務所の事務員も事務の洪水と、病院はじめ健保、労災との折衝で消耗してしまいます。やはり「事前認定」を是認する弁護士の本音は「楽したい」ではないでしょうか?

 秋葉事務所ではこれらの手続きを弁護士から依頼され、ぶつぶつ愚痴を言いながら収集を進めています。6月はなんと病院16か所、労災開示1、健保開示2、そこから診断書、画像類で毎日大型事務所並の文章が行きかっています。(いつかその事務処理方法をマニュアルにしようと思っています。)

 医証収集のプロである以上、避けられない事務、ここで泣き言を言っては保険会社の人身担当者に笑われてしまいます。彼らも日々、自賠責への求償のため、医証の収集に忙殺されています。頑張らねばなりません!  

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自転車に衝突され負傷した時の慰謝料請求先は個人賠か施設賠償保険

 

近年、自転車による加害事故のニュースが目立つようになり、自転車事故の被害者からの依頼が多くなってきました。

 

秋葉事務所は自転車事故によるケガの場合も後遺症の等級をキッチリ獲得します

 

その後はキッチリ裁判基準満額の慰謝料を獲得できる弁護士へ引継ぎます。

 

 

自転車は道路交通法上、軽車両とされており、自転車での加害事故でも自動車と同じく損害賠償責任を負います。

当然ですが自動車には自賠責保険の加入義務があり、ほとんどに自賠責保険がついています。また走っている車の80%は任意保険が付保されています。

 

しかし、自転車には自賠責保険のような強制保険の制度はありません

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「交通事故被害者救済」がスローガン! 病院同行に日夜奔走しています。解決まで二人三脚、一緒に頑張りましょう。

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