3年前に「隠れ特約」として記事にした「年齢条件不適用特約」を再度取り上げます。この特約は(例)から説明しないといけません。

(例)「35歳未満不担保」のお父さんが契約していた自動車に、18歳になって免許を取った息子さんが年齢条件の変更をしないまま運転、人身事故を起こしました。この場合は契約ルール上、年齢条件違反となり、保険は使えません。しかし、この車に被害に遭った被害者にとって保険の契約違反など関係なく、補償が得られず困ってしまいます。そこで、一定の条件下、保険会社が対人・対物について支払いをOKとするものです。

 過去記事 ⇒ 「隠れ特約」 c_y_170 この記事を書いたのは3年前のゴールデンウィークでした。この特約、相変わらず周知されていません。元々、掟破りの特約であるゆえ、保険会社の隠しておきたい心情も理解できます。しかし、実務上、被害者が強く主張しないと黙っているような対応がみられるのです。いくら表面化したくなくても「バレるまでしらばっくれる」姿勢に非難は避けられないでしょう。そもそも被害者救済の措置ですから。  

 この特約の解説前に、年齢条件について復習しましょう。

○ 全年齢担保    = 免許があれば何歳でもOK

○ 21歳未満不担保 = 21歳以上が保険の対象     ・・・ 18~20歳の運転事故は保険が出ない

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 本判決は自賠責保険の勉強に大変役立つケーススタディとなります。

(注)現在、福井地裁の判決内容を精査していませんので、推測含みな解説となることをご了承下さい。

  2、わずかでも責任がある可能性があれば賠償責任を負う?

 一見、責任がないかに見えた対向車は、「自分にまったく責任がないと証明できない限りは自賠法上、賠償責任を負うべき」と司法判断されました。

 この点、まずは自賠法第3条を復習しましょう。  

第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

   この条文から自賠責が支払われる3要件が規定されています。  

① 自動車の運行について過失がなかったこと   ② 被害者または第三者(運転者を除く)に故意・過失がなかったこと   ③ 自動車に欠陥がなかったこと    損害賠償を法律面で論じるなら、民法の不法行為から「被害者が立証責任を負う」こと(過失責任主義)が原則となります。つまり、「証拠は被害者が探して突きつけなければ、加害者は弁償しないで済む」ことを意味します。しかし、自賠法では逆で上の3要件=「加害者が自分に責任がないことを証明しなければ、賠償義務を負う」ことになり、立証責任が被害者から加害者へ転換されています。これは自賠責保険の理念である被害者救済の精神が反映されたもので、ほとんど無過失責任(≒無条件で責任を追う)に近いものです。

 したがって、本判決は一見、非のない対向車であっても、「クラクションやハンドル操作で衝突回避ができた可能性がまったくなかったとまでは証明できない⇒わずかながら責任の余地が存在する」と判断されたのです。   c_y_21  常識で考えると勝手にセンターラインを越えて突っ込んできた自動車に対して、「避けないほうが悪い」となれば納得のいかないものです。また、民法上も過失割合に応じた責任を負うこと(仮に回避措置の可能性があったとして、おそらく10:90程度)になり、責任は10%以下となるでしょう。しかし、自賠責保険(自賠法)では被害者を手厚く保護するのです。

 「過失減額」から如実に表れています。

  被害者の過失割合   後遺障害・死亡    傷害 7割未満 ⇒ 減額なし ⇒ 減額なし 7割以上8割未満 ⇒ 2割減額 ⇒ 2割減額 8割以上9割未満 ⇒ 3割減額 ⇒ 2割減額 9割以上10割未満 ⇒ 5割減額 ⇒ 2割減額

   実際、わずか10%程度の責任でも自賠責が支払われて助かった経験が少なくありません。

 実例⇒ほとんど自分が悪い事故ながら、自賠責保険から補償を得た

 この実例は過失減額すらなく、相手の自賠責から100%(4000万円)が支払われました。

 自賠責保険を熟知している私からすれば、福井地裁の判断は決して特異な判決ではないのです。しかし、尚、意見があります。それは次週に・・

 つづく  

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 被害者に手厚い自賠責ですが、手厚すぎる?との批判が起こりそうな判例がでました。本件、自動車保険(任意保険、自賠責保険)について、非常に勉強になる論点が含蓄されています。

 まずは以下、福井新聞の記事(引用)をご覧下さい。  

「もらい事故」でも賠償義務負う 福井地裁判決、無過失の証明ない

 車同士が衝突し、センターラインをはみ出した側の助手席の男性が死亡した事故について、直進してきた対向車側にも責任があるとして、遺族が対向車側を相手に損害賠償を求めた訴訟の判決言い渡しが13日、福井地裁であった。原島麻由裁判官は「対向車側に過失がないともあるとも認められない」とした上で、無過失が証明されなければ賠償責任があると定める自動車損害賠償保障法(自賠法)に基づき「賠償する義務を負う」と認定。対向車側に4000万円余りの損害賠償を命じた。

 遺族側の弁護士によると、同様の事故で直進対向車の責任を認めたのは全国で初めてという。

 死亡した男性は自身が所有する車の助手席に乗り、他人に運転させていた。車の任意保険は、家族以外の運転者を補償しない契約だったため、遺族への損害賠償がされない状態だった。対向車側は一方的に衝突された事故で、責任はないと主張していた。

 自賠法は、運転者が自動車の運行によって他人の生命、身体を害したときは、損害賠償するよう定めているが、責任がない場合を「注意を怠らなかったこと、第三者の故意、過失があったこと、自動車の欠陥がなかったことを証明したとき」と規定。判決では、対向車側が無過失と証明できなかったことから賠償責任を認めた。

 判決によると事故は2012年4月、福井県あわら市の国道8号で発生。死亡した男性が所有する車を運転していた大学生が、居眠りで運転操作を誤り、センターラインを越え対向車に衝突した。

 判決では「対向車の運転手が、どの時点でセンターラインを越えた車を発見できたか認定できず、過失があったと認められない」とした一方、「仮に早い段階で相手の車の動向を発見していれば、クラクションを鳴らすなどでき、前方不注視の過失がなかったはいえない」と、過失が全くないとの証明ができないとした。  (福井新聞社)

c_y_21    対向車にしてみればとばっちりの事故です。この交通事故から、保険の適用上の重要論点2つを検証します。   1、自分が契約している任意保険、自賠責保険は自分(の被害)に対して免責となるのか?

 自賠・任意ともに契約者である自分に対して賠償保険は適用となるのか?知人とはいえ、この事故の最大の責任者は運転者のはずです。運転を代わった知人は加害者となります。この自動車に付いていた任意保険及び自賠責保険は契約者自身が被害者となった場合にも適用できるのでしょうか?

 まず自賠責ですが、そもそも賠償保険は「他人」に対して償うものです。いくら加害者にとっては他人であっても、自賠責の契約者自身が被害者であれば他人性は否定されます。  また、おそらく亡くなった被害者は同乗の運転者と知人で、同じ目的地に向かっていると推測しますので運行供用者となるはずです。運行供用者は自賠責の賠償対象から外れます。

★ ...

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 重傷事案です。立証作業は丁寧に進めれば目標等級に届くものの、本件最大の問題は労災の不使用です。さらに運転者は同僚なので自動車任意保険の対人賠償は「同僚災害免責」となってしまいます。まず基本通り、全画像を確保・精査し、可動域計測を正確に実施した。続いて自賠責に被害者請求、等級を固めた。その後は以下の文章通り。加害者や保険からの賠償金より、労災の年金支給が最大のターゲットとなります。被害者救済業とは「等級認定」と「賠償金の獲得」だけでは終わらないのです。

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7級相当:脛骨・腓骨・第2~5趾リスフラン関節脱臼骨折(60代男性・千葉県)

【事案】

現場への移動で自動車に同乗中、高速道路で追突事故となった。自動車の前部は潰れ、しばらく自動車から脱出できない状態になってしまった。腰椎は破裂骨折、右下肢はダッシュボードに挟まれ、脛骨骨幹部、腓骨骨頭を骨折した。さらに、第2~5中足骨を骨折、リスフラン関節部脱臼を伴った。 緊急入院し、それぞれ手術で骨折部を固定した。1年にわたるリハビリでなんとか杖をついて歩けるようになった。

【問題点】

本人は「治るまで症状固定はしない」と、仕事へ復帰する執念をもっていた。しかし、腰の可動は失われ、右足へ全体重の荷重は困難であれば現場仕事は無理である。後遺障害の認定へ向けて切り替えるよう説得を続け、納得した上で依頼を受けた。 続きを読む »

 いくつか非接触事故の受任経験があります。相手を避けるために転倒した場合、相手がそのまま行ってしまえば最悪、自爆事故とされます。また、相手がそれなりに責任を感じていた場合でも20:80の事故であれば、非接触を考慮し10%の修正が加わって30:70となることが多いようです。まして、相手が歩行者や自転車の場合は大変です。相手に個人賠償責任保険の加入があるかないかがポイントとなります。

 最近、兵庫県で自転車の賠償保険加入が義務となったニュースがありました。義務化について是非の議論はありますが、自転車の賠償能力が担保されることは良いことです。

 本例は後遺障害の立証が主役ではありません。相手自転車の個人賠償保険から賠償金を勝ち取った好取組です。  

12級13号:足関節外顆骨折 訴訟認定(30代男性・埼玉県)

【事案】

バイクで交差点を青信号で直進中、信号無視の自転車が横断してきた。それを避けようと転倒し、右足関節の外顆を剥離骨折、後距腓靭帯を損傷、手関節もTFCC損傷の疑いがあった。

【問題点】

相手は自転車で、なおかつ非接触の事故であり、まったく賠償交渉の進展がないまま相談会に参加された。外傷についてはCTやMRIを撮っておらず、診断名があやふやで後遺障害が絞りきれなかった。まして、自賠責保険のような申請先がなく、そのまま相手加入の個人賠償責任保険への請求なので難航が予想された。

【立証ポイント】

同時並行して連携弁護士に個人賠償保険社への交渉を依頼した。非接触による過失減額が争点となったが、それ以上に後遺障害の残存が問題となった。それについては主治医と面談し、MRIの追加検査とリハビリ記録を精査するなど進めたが、微妙な所見に留まり、医証をまとめるのに苦慮した。

結局、訴訟に発展し、足関節は12級13号の賠償となった。後遺障害の立証は今一つであったが、非接触事故で相手自転車から1000万円超の賠償金を取ったことは評価できると思う。  

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 丸1日~2日、電話にも出ずに集中しないと書けないのです。補助者に命じてひな形を改造するような仕事はできません。魂込めて書き上げているのです。(お待たせしているNさま、Sさま、もう少しです。)

 そのような中、本日、難易度Sクラスの異議申立 成功の知らせが届きました。これで今月は難しい案件2連勝、励みになります。「よくぞ被害者の窮状を汲みとってくれた!」、自賠責保険並びに調査事務所の皆様に感謝です。  

 さて、異議申立で勝負を決めるものは・・・

 新しい医証を提出すること に尽きます。  

 99%は追加医証で決まります。有用な医証が得られないのであれば、諦めるよう説得します。無駄な時間と費用をかけて欲しくないからです。私は「ダメ元で申請しましょう」のような仕事は嫌いです。お引き受けした以上「必勝」で臨みます。  

 そして、きわどい勝負の最後の一押しは

 訴えに信ぴょう性を持たせる熱意 と思っています。

    何故なら、客観的な検査結果から必ずしも実情を示す数値がでないことがあります。画像も不明瞭であればお手上げです。それでは訴える症状はすべてウソなのか・・このような時、治療過程や症状の一貫性からある程度、推論していただける余地があるとみています。これはおなじみの14級9号「神経症状を残すもの」のポイントでもあります。

 やはり、まず自覚症状ありきなのです。ウソや大袈裟を排除し、いかに被害者の窮状を訴え、証明するか・・片手間に体裁を整えるような仕事ではありません。魂を削るような作業なのです。故に、商業ベースとはならず、全面的にお引受けできないのです。    pb290918  作業中はデスク周りが戦場と化します

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 昨日は埼玉の損害保険代理店協会の支部会にお招きいただき、「交通事故・後遺障害」をテーマに2時間、研修講師を務めました。

image1   30名の代理店店主及び営業マンの皆様の集まりです。普段から交通事故の最前線で活躍している代理店さんですが、後遺障害はめったにない大事故、やはり距離感があります。それでも、今後、顧客様への対応強化につながる内容です。概ね好評価を頂くことができました。これを機に具体的な案件の相談が続くと思います。  今回のような研修・セミナー形式も良いですが、私の真骨頂は代理店様の事務所にのりこんでの店内研修です。お客様に対面している1人1人の担当者様に訴えかけていきたい内容だからです。

 終了後の懇親会では代理店様から色々な悩み、本音を聞くことができました。実はこれが非常に心に響くことばかりで、真っ先に今週末の弁護士研修会に活かしたいと思っています。   続きを読む »

 後遺障害の申請方法は主に「事前認定」と「被害者請求」に二分します。「事前認定」は加害者側に任意保険があり、一括対応(治療費を病院に支払ってくれる)していれば、その流れで後遺障害診断書を任意保険会社に託して申請を進めます。任意保険会社が書類を集めて、自賠責調査事務所に申請してくれるので非常に楽ちんです。対して、自ら申請書類を集積し、チェック・修正を経てから申請する方法が被害者請求です。

c_g_a_5 どちらの方法であっても審査するところは同じなので、「結果は変わらない」と保険会社は言います。そのように思っている弁護士さんも少なくないようです。一理ありますが、他人に証拠を集めさせ、内容を吟味せずに提出されることに不安がないわけありません。まして、その他人とは被害者になるべくお金を払いたくない保険会社です。  そもそも両者の認定方法に差はあるのでしょうか?統計数字を目にすることができませんが、提出書類がまったく同一であれば、ほぼ100%同じ結果のはずです。審査結果を左右するのは、いかに正確な症状の記録を入手するか、それらを漏えいなく集積するかです。それを実現するのはどちらの申請方法がベターなのか・・それが答えです。    さて、本例は同乗者二人に14級が認められたケースです。その二人はそれぞれ「事前認定」、「被害者請求」と申請方法を違えました。顛末は・・。  

14級9号:頚椎棘突起骨折、頚椎捻挫

【事案】

高速道路で渋滞停車中、後続車に追突された。衝撃が強く、CT検査で第六頚椎の棘突起骨折が判明した。大事に至らずも、頚部の痛み、左上肢のしびれが継続した。

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 毎回、相談会で相談者へ弁護士費用特約(以下、弁特と略)の加入有無を確認しています。国内損保は画一的でほぼ同じ約款です。東海さんは法律相談費用(10万円限度)が自動付帯(最初から保険に含まれている)であること(⇒過去記事②)、これは心配ありませんが、三井住友さんは特約を日常生活全般への事故と自動車事故に分けていること(⇒過去記事①)、労災事故を免責としていること(昨日の⑩)、これについては注意が必要です。

 それでは各社、独自色を強めている通販系の弁特はどうなっているのでしょう。毎度、内容を調べるのも面倒なので、各社の最新約款を確認、一覧表にしてみました。赤丸は昨年以降(2014~15の改定)で修正された点です。やはり、国内社のように画一化傾向です。

 何かと支払いが辛い印象のアクサさんとチューリヒさんは対象を弁護士だけではなく、行政書士に広げましたね。でも、「行政書士には10万円までですよ!」と厳しいんだろうな。別にいいけど。  

会社名

法律相談費用(10万円)

司法・行政書士への適用

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「三井住友さんの弁護士費用特約に気になる点が一つ」の巻

c_y_184 お馴染みの弁護士費用特約(以後、弁特と略)、今更内容の説明は割愛します。既に昨年秋の約款改正を取り上げたましたが、その改正の前から三井住友さんの約款で気になる1項目がありました。約款の内容は以下の通りです。昨年から2件ほどこの免責事項で弁特が使えない件に出くわしました。まずは免責事項を・・  

第4条(保険金を支払わない場合)

(2)当社は、次のいずれかに該当する損害に対しては、弁護士費用保険金を支払いません。

⑤労働災害により生じた身体の障害。ただし、ご契約のお車または親族等所有自動車の正規の乗車装置(注14)またはその装置のある室内(注15)に搭乗中に生じた事故による身体の障害を除きます。    わかり易く解説しますと、労働災害、つまり「業務中や通勤上の交通事故(歩行中、自転車搭乗中、他)の場合、弁護士費用特約は使えません。」ということです。労働災害のケガでも自動車に乗っている時(マイカー通勤、業務中の私用自動車搭乗中)であれば特約を使えますが、何故か歩行中、自転車の労災事故はダメなのです。

 業務中の事故、例えば「自転車で新聞配達をしている配達員が超過勤務等、会社に責のある事故でケガをした場合、会社に対する賠償請求」については特約の性質上、弁特の対象ではないことは納得できます。しかし第三者行為、つまり会社とは関係ない自動車にぶつけられてケガをした場合は明らかな損害賠償の対象者が存在することになります。ここで労災の補償が得られたとしても、当然に加害者への賠償請求が生じます。加害者へ労災から治療費・休業損害の求償があろうとなかろうと、です。

 他社の免責(保険が使えない)事項はどうでしょう?薬物・飲酒運転など常識的に「これはダメだな」と思う事が各社同じ文章で記載されています。何故、三井住友さんだけ、労災事故に弁特の使用に制限が加わるのか理解に苦しみます。全社確認する時間がないのですが、少なくとも3メガ損保で本規定があるのは三井住友さんだけです。

 確かに労災を使えば、治療費や休業損害など一定の補償を確保することができます。しかし、慰謝料は相手から取るしかありません。特に後遺障害が残れば、その慰謝料はもちろん、逸失利益など労災の支払い以上の賠償請求が増大する可能性があります。つまり、「労災の障害給付金がでたのだからいいでしょ」というわけにはいきません。十分に賠償交渉の余地はあるのです。相手が無保険であれば、より賠償交渉の必要性が増します。そこで弁護士を使って交渉を進めるにも「残念ながら労災事故なので弁特は使えません」となるのです。

 まさか、弁特を使用したいがため、労災に請求せずに普通の交通事故とする?そんなバカなことはできません。実態は労災を請求しないだけで、約款上の「労働災害」に違いありません。  または、次のようなケース、「第続きを読む »

 自賠責の共同不法行為に関する質問です。最近はネットのみならず、治療先からもにわか知識のアドバイスで振り回される被害者が多いようです。本件はその一例です。(内容は一部脚色しています)  

Q) 後方からの追突された事故で、被害車両に同乗していました。首の痛みから接骨院で半年以上、施術を続けています。接骨院の先生から、「後方から追突してきた車両だけではなく、同乗していた車両の自賠責保険も使えるかもしれない。現在、施術料は200万円ほどですが、自賠責が2枠使えれば限度額120万円の2倍=240万円まで大丈夫ですよ!」と聞きました。この先生は先日、施術料を相手保険会社からの打切りされてしまったのですが、自賠責に請求すれば大丈夫と言っています。本当に240万円まで請求できるのでしょうか?

tutotu 二台による事故だが・・

A) 順番に整理しましょう

1、被害車両の同乗者は双方の自動車による被害者で、双方の自動車に過失がある事故であれば共同不法行為が成立します。したがって、先生の言うように傷害支払い限度額120万円×2=240万円の支払い枠を確保できます。

2、本件の場合、被追突で明らかな0:100であれば、同乗自動車の運転手にはまったく責任がないことになります。被害者救済志向が強い自賠責保険でもさすがに過失0の相手には請求できません。

3、仮に同乗車に責任が5%でもあれば有責(ただし傷害支払いは20%減額)となります。その場合、96万円+120万円=216万円の支払い枠が確保できます。

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 自身も交通事故を扱う業者である以上、同業者の事を書くのは非紳士的で躊躇します。そう言いながら座視できないこともあるのでついつい・・被害者に警鐘を鳴らす意味で勇気をもって一つ取り上げます。

 取り上げる例は、交通事故業務の薄利多売化とでも言いましょうか、それが理にかなったものでれば正当な業務なのですが・・・  

 後遺障害・被害者請求の代理を行う行政書士は一時期のピークを境に減少傾向にあると思います。HPの数も頭打ち、下り坂のように思います。それは弁護士が等級認定に積極的になってきた背景があります。一昔のように「14級は相手にしない」や「等級が取れてから来て下さい」との対応では他事務所との競争に後れを取ってしまうからでしょう。地方ならいざ知らず、都市圏ではそんな宣伝を打つ弁護士事務所はありません。その結果、隙間産業的に14級を扱ってきた行政書士は次の販路を求め、後遺障害のない軽傷案件に目を向けだしたようです。やはり、後遺障害を残すような重傷は全体の5%程度、95%は数か月以内の通院で完治する軽傷者なのです。

 さて、以前も軽傷事案を業者に依頼する価値があるかを検証したシリーズをUPしました。

 ⇒ 軽傷事案の解決  (時間のある方は参照して下さい)

 検証の結果、3か月ほどの通院であれば保険会社との示談で妥協も止む無し、と結論しました。確かに保険会社の基準は裁判等の基準額に比べ、一様に低いものです。しかし自賠内で収まるような軽傷事案は、弁護士の交渉によって費用・時間をかけるほどの増額幅はないのです。それでも商才巧みな行政書士は弁護士費用特約から10万円を引っ張って、無理矢理に自賠責保険に被害者請求することを提案します。

 相手が無保険で困っているなど例外的なケースを除き、任意社の提示を蹴ってまで120万円以内の傷害案件で被害者請求をすることに何の意味もありません。そもそも行政書士は法的に代理交渉ができないのですから、任意社の提示に対する増額効果など期待できません。

 最近見かけたHPにはびっくりさせられました。「任意保険会社が30:70の過失割合により、3割減額した賠償提示をしてきた場合、その提示をのまずに、被害者請求で全額を獲得しましょう」と相談を募っている記事を見かけました。軽傷事案、条件的には自賠責の120万円で収まる損害であれば、任f_c_034意保険会社は過失減額をせずに自賠責基準にて100%の提示をします。なぜなら、自賠責の傷害支払いは厳密な過失減額を適用しません。(被害者に70%の過失でやっと2割減額です。)通常、担当者は任意基準で過失減額した数字と過失減額ない自賠責基準の数字を比べて多い方を提示してきます。(そうしないと、示談後、自賠責に求償したときに被害者に払った額より多く回収され・・任意社は不当利得を得てしまうからです。)したがって、ケガの損害が120万以下で、相手の過失が大きく、相手側に任意社が存在する場合は自賠責に被害者請求する意味などありません。このような悪質な宣伝は「不道徳<虚偽広告による詐欺」に近いと思います。

 断言します。(任意)保険会社の賠償提示は絶対に自賠責を上回ります。    それなりに交通事故業務歴がある先生ですので、まさかこのような基本的な事を知らないはずはありません。受任が減って食い詰めた結果、このように被害者をだましてまでも売上げが欲しいのでしょう。弁護士費用特約を支払う保険会社はいい迷惑です。本当に悲しくなります。知らない先生ですが、思い切って抗議しようと思ったくらいです。

 また、接骨院・整骨院と提携している行政書士であれば、さらに不透明感が募ります。わざわざ任意社を避けて自賠責に請求?・・任意社に施術料の支払いを渋られている院を助ける行為にも見えるからです。

 このような不毛な業務を行政書士に依頼するのはいかがなものでしょうか?単に行政書士の懐を利するだけの行為です。そして任意会社(の弁護士費用特約)に不当な出費を強いる結果となります。

 まぁ、これを反面教師として、この機に自賠責の積算について補助者に教授した次第です。

 どのような業種でも競争は良いものです。業者間の切磋琢磨は依頼者へより良いサービスの提供につながります。しかし食い詰めた業者はこのような無茶な営業を打ってくることもあります。行き過ぎた商魂が被害者の二次被害にならないか心配です。本例は弁護士費用特約を請求される任意保険会社の受難ですが・・。  

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搭乗者傷害保険の合流

 シリーズのおまけに搭乗者傷害保険の合流に触れます。これは約款を確認するまでもなく、証券で一目瞭然です。(↓ クリック) 26.7証券 kai3

 このように搭乗者傷害保険が人身傷害特約に組み込まれました。しかし、2年前に無保険車傷害特約が組み込まれた時のように、支払い基準の問題は生じません。搭乗者傷害保険は「1日通院5000円」(日額払い)や「捻挫が1部位で50000円」(部位症状別払い)と最初から明確に金額が約束された「傷害保険」だからです。今回も約款上、人身傷害の特約として、傷害(入通院)と死亡・後遺障害について、それぞれ約款で支払い額が明記されています。そして人身傷害に重ねて付保するか否か、選択可能な特約となっています。 続きを読む »

c_y_1 長いシリーズで語ってきたように、人身傷害は完成された保険とは言い難く、発売以来、約款をこまめに修正してきたものです。今後も裁判の判例を受けて改正される可能性があります。また、各社が独自色を強めて補償内容のオプションを増やすことも予想されます。

 それでも今夏~秋の約款改定で、訴訟基準と人傷基準の運用区別が定まったように思います。「裁判をすれば裁判基準で保険金を算定します。訴外交渉、斡旋、調停で決まった金額ならば、それが赤い本・青い本などで計算された金額であってもそれは採用せず、人傷基準で算定、支払い金額を決めます」・・これが保険会社のスタンダードな見解となるようです。これにて約款の整合性は高まったかもしれません。

 しかし、

 日本では交通事故で裁判をすることは稀で、損保会社の統計を見ると、交通事故の96%が訴外交渉による解決なのです。裁判をしなければ裁判基準の恩恵に預かれないことは道理として、被害者が裁判外で相当の金額を勝ち取るためには艱難辛苦を避けて通れません。それは直接交渉に限らず、紛争センターの斡旋や調停において、自らの時間とエネルギーを犠牲にして臨むこともあるでしょう。もしくは弁護士を利用すれば軍資金の出費が伴います。そのような苦労や犠牲、出費を避ければ、保険会社の計算する賠償金で納得しなければならい構造です。  それが被害者と加害者(側保険会社)の交渉による結果であれば、お互いが納得したこと、つまり民事上、何ら問題はありません。しかし、「安心の実額補償」「夢の全額保障」と謳われ、自ら掛金を払って加入した保険の場合はいかがでしょう。相手との交渉で納得のいく金額を勝ち取ろうとも、いざ過失分の請求では、自分が加入していた保険の基準に縛られる・・これは決して筋の通った話ではないと思います。また、それを回避するために、わざわざ人傷へ先に請求する、裁判を強行する、保険会社に約款を曲げて支払いさせる・・実に気持ち悪い。  自己の損害を補てんすべき保険金が、裁判基準か保険会社基準のどちらに成るのか?ダブルスタンダードの問題は、もはや「対相手保険会社」だけではなく、「対自分の加入している保険」となってしまったのです。

 やはり、保険商品は契約者にとって納得感があるもの、公平性のあるもの、でなければならないと思います。個人的には約款『保険金の決定』に(2)の規定を加えることで、約款に遊びを持たせ、契約者・人傷社間の公平性をキープすべきと思います。これが理想の約款です。↓  

第6条 損害額の決定 (理想)

(1)損害の総額は当社の基準で算定します。

(2)相手からの回収金、もしくは相手との交渉で決まった総損額が(1)の金額を上回る場合、弊社と相談の上、(1)の規定に関わらず、その金額を総損害額とみなします。  ただし、自損事故の場合、相手からの回収金がない場合は、この限りではない。

(3)裁判での判決や和解の場合、(1)(2)の規定に関わらず、その金額を総損害額とみなします。    これであれば、難しいこと抜きに「契約者の権利を害さない=損害の全額回収」が果たせます。まさに「夢の全額補償」の達成です。これは私の考えたオリジナルのアイデアではありません。かつて無保険車傷害特約:支払い保険金の算定の条項で書かれていたことです。無保険車傷害保険の支払い保険金を決定するにあたっては、(1)当社の基準 ⇒(2)契約者と話し合い ⇒(3)裁判の結果、保険金はこの3段階の算定方法で規定されていたのです。最新の約款から(2)”話合い”が無くなってしまったのはいかにも寂しい限りですが・・。

 (2)の後段、但し書きは「自分で事故ったら人傷基準でね」という意味です。人身傷害に助けてもらう立場としては、「自爆事故のケガも裁判基準でちょうだい!」はさすがに図々しいと思いました。 続きを読む »

 このシリーズ、ようやく核心にたどり着きましたが、もう少しお付き合い下さい。

 前回のように、保険会社は自ら人身傷害の約款を破った支払い運用をする時があります。人身傷害は発売以来「あらかじめ保険会社が支払い金額を決めた傷害保険」としていますが、この建前はぐらつくことがあるのです。

 最近の例でも・・自転車搭乗中、自動車にひき逃げにあった被害者さんの例

 この被害者さんはS〇Iさんの自動車保険に加入していました。その人身傷害から治療費、休業損害が支払われたので大助かりです。さらに腰椎捻挫で12級の後遺障害となったので、その慰謝料・逸失利益を請求しましたが、提示された保険金が少なく不満でした。そこで、連携弁護士に依頼、保険会社に請求したところ、ほぼ赤い本の金額を払ってきました。無保険車傷害保険からならまだしも、人身傷害から(人身傷害基準で支払うといった)約款を無視して大盤振る舞いです。(この担当者さん、大丈夫かぁ?)このようなことがたまにおきます。   c_s_seikyu_12 だから、前回の裁判基準をゲットするための策(3)「駄々っ子作戦」を推奨するのです。もちろん、「絶対に自社基準でしか払いません!」と対応され、まったく折れない担当者もおります。しかし、物わかりのよい優等生ではだめです。保険金請求、時には「気合」が必要です。

   約款の支払い基準を強硬しない、約款もちょこちょこ修正する・・どうして人身傷害はこのように支払いが曖昧なのでしょうか?それはアメリカ生まれの輸入品を日本向けに加工した、人身傷害の誕生に遡ります。原因を分析してみましょう。  

Born in the USA

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 裁判で解決すれば裁判基準、交渉で解決では人傷基準、約款通りこれをスタンダードとされるわけにいきません。いくら約款で定めても、おかしいものはおかしいのです!3策目は駄々をこねると保険会社が折れる、言わば「駄々っ子作戦」です。この例から約款が絶対でないことを感じ取って下さい。  

3、過失分を裁判基準でくれなければ保険金請求訴訟するぞ!

 これも良く使う手です。加害者側(賠償社)に賠償先行し、交渉で解決させました。続いて過失分(200万円とします)を人傷社に請求した時、人傷社から「弊社の算定基準では100万円です」と約款を示した回答がきます。この約款を素直に受け入れてしまう弁護士が多いのです。しかし、約款を盾に主張する人傷社のyakuza担当者に、「うるせぇ、約款がおかしいんだよ!200万くれないと保険金請求訴訟するぞ、法廷で決着付けようや!」、このようなヤクザ口調はいけませんが、優等生のように納得するのではなく、約款無視 上等、強硬に裁判基準での差額を請求します。この結果、多くのケースで人傷社は「上席と相談した結果、今回は特別に契約者保護の為に200万円支払います」となるのです。もちろん、平成24年6月「人傷基準差額説」判例(過失分は人傷社の基準で払っていいよ)を持ち出し、人傷社が本気で争ってくる懸念があります。しかし私の知る限り、人傷社は自社の約款を曲げても、折れて支払ってくるのです。その額が数十万から2、3百万程度であれば、保険会社センター長の鶴の一声で払ってしまうのでしょう。やはり「裁判から逃げている」のではないかと思います。sanma保険会社はいくら約款で規定しようと、ある種の後ろめたさを持っているのかもしれません。続きを読む »

 損額の全額を訴訟基準で得るために弁護先生がとっている3策を続けましょう。

20090608  

2、訴訟するしかない

 以下、3パターンで痛い目にあったことがある弁護士さんがとる方法です。最初から依頼者(被害者)に過失が見込まれるなら、損害の全額を訴訟基準で確保するために訴訟をするしかない、という結論になります。   

zonbi-jinshou続きを読む »

 少し間が空いてしまいました。このシリーズは一回一回とてもエネルギーを使います。できれば主要損保会社10年間の約款をすべて確認したいのですが、それをやったら半年かかってしまいます。とりあえず損Jを中心に、東海他数社を確認しながら進めています。不正確な記述あれば、後戻りしてちょこちょこ修正していこうと思います。

 さて、昨日まで主要な問題点を明らかにしました。現在、連携している弁護士の先生方がこの状況でどう対処しているかを紹介します。題して「訴訟基準をゲットするための3策」。  

1、人傷先行

 「差額説」判決の根拠となった、代位(求償)の規定、「被保険者または保険金請求権者の権利を害さない範囲内で」を生かし、先に人身傷害にせっせと請求します。とくに高額となる後遺障害の慰謝料と逸失利益を事故相手(賠償社)に請求する前に、人身傷害から確保します。まずは人傷基準とはいえ、自身の過失関係なしで100%を得ることができます。自身の過失が大きければ大きいほど威力を発揮します。

 そして、次に相手側に賠償請求します。それが裁判となれば当然、交渉や斡旋機関で解決しようとも賠償金を得て、その内から先に人身傷害特約で得た分を返します。その際、「契約者の権利を害さない範囲で」返せばいいので、以下のように訴訟基準の損害全額1000万円を確保し、それを超える300万円を人傷社に返せば済むことになります。

保険会社 加護 人傷先行続きを読む »

 またしても人身傷害・約款の壁で、矢口さんは全額の補償が得られません。    損保ジャパンでは既に平成21年から、第8条『保険金の計算(3もしくは後段)』でこの規定(以下6条(3))を盛り込んでいました。損保ジャパンは人傷先行後の求償について、裁判となった場合限定で「訴訟基準」で払う事を早くから規定していたようです。  そして、26年7月改定ではこの規定を第8条『保険金の計算』から第6条『損害額の決定(3)』に移転させました。この条項移転によってより積極的に、賠償先行+訴外解決の場合は「人傷基準差額説」と規定したことになります。  また、この条項移転を好意的にとらえれば、「賠償先行でも裁判で決定した総額なら、差額は訴訟基準で払います」となります。

 こうして「人傷基準差額説」vs「訴訟基準差額説」の回答、つまり、人傷先行か賠償先行かで支払い保険金に差がでる問題について、「それは請求の前後ではなく、あくまで裁判するか否か次第」としました。ようやく保険会社からの(少なくとも損保ジャパンからの)見解・解決が提示されたと言えます。    このシリーズ、約款の不備を指摘したかったのですが、逆に保険会社の(約款の)周到さに感心させられました。まるで保険会社の掌にあった孫悟空の気分です。   

第6条 支払い保険金の決定(3)

 わかり易いように略=( )を加えています  (総損害額は当社の基準で計算しますが)それにかかわらず、賠償義務者があり、かつ、賠償義務者が負担すべき法律上の損害賠償責任の額を決定するにあたって、判決または裁判上の和解において、(当社の)規定により決定される損害額を超える損害額が認められた場合に限り、賠償義務者が負担すべき法律上の損害賠償責任の額を決定するにあたって認められた損害額をこの特約における損害額とみなします。  ただし、その基準が社会通念上妥当であると認められる場合に限ります。  

 これは「TUG損保と後藤弁護士間で裁判になった場合に限って、その総損害額を認めます。」と解します。つまり逆を言えば、総損害額の決定は裁判での和解・判決を除き、人傷社(加護火災)の算定基準で計算することになります。本件はTUG損保と後藤弁護士の交渉による総損害額なので、加護火災はあくまで自社基準でしか払えないと言うのです。しかし、この交渉でまとまった金額は「赤い本」基準で計算された裁判基準の額です。「たら、れば」ですが、裁判をやればほぼ同じ賠償額が予想されます。そもそも「訴訟基準差額説」の「訴訟基準」とは形式(実際に裁判をやった結果)なのか、実質(赤い本等で計算された額)なのか議論があるところですが、少なくとも約款では「形式である」ときっぱり明言しています。  

 ・・保険会社がいくら約款を明確化しても、やはり納得がいきません。後藤弁護士は交渉ながら裁判基準を勝ち取った素晴らしい成果をあげたにもかかわらず、裁判で決まった額ではないが故に、人身傷害の全額補償が受けられない。こんな理不尽が交通事故賠償の現場では多発しているのです。私はこれが人身傷害における最多発の矛盾問題、人傷基準ハザードと思っています。    zonbi-jinshou  続きを読む »

 人身傷害特約は「安心の実額補償」「夢の全額補償」との宣伝で輸入された保険自由化の目玉商品です。

 「実額補償」とは、契約時に決められた死亡で1000万円、入院1日10000円、の定額ではなく、実際の治療費や休業補償、逸失利益や慰謝料の相当額が計算されて払われることです。「全額補償」とは自分に過失があって、相手から全額の補償が受けられなくても、差し引かれた過失分を人身傷害が払ってくれることです。そりゃ、代理店時代に初めてこの保険の説明を聞いた時は「いい保険が出たものだなぁ~」と感じ入っていました。

 しかし、「実額」とは言ってもあくまで保険会社の基準で計算されること、そしてそれは裁判などで用いられる基準に比べて著しく低いことが、後に様々な問題・矛盾をもたらしました。その結果、宣伝とは異なり「全額」の補償が受けられないことが起きるのです。

 いよいよシリーズも最終局面に突入です。矢口さん&後藤弁護士と加護火災、最後のバトルです。(何度も言いますが、登場する個人・組織名は架空です)  

人身傷害特約は自分の過失分も出る保険なのに何故?

     矢口さんは自動車で走行中、交差点で出合頭の衝突事故でケガをしました。腕を骨折し、半年後、後遺障害12級の認定を受けました。そして弁護士の後藤先生に交渉を依頼しました。20140507benngosi

 後藤弁護士は「赤い本」で計算した損害額を請求、TUG損保と交渉しました。結果、TUGは請求額のほぼ全額を飲みました。過失割合については判例通り矢口さん20:相手80です。TUGは後藤先生と裁判をやっても結果は変わらないと踏んだのでしょう。TUG損保は800万円の賠償金の支払に合意しました。

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