win (2)加害者側の任意保険への直接請求権の行使について (物損の場合)

 治療費等、人傷の場合には、被害者請求や人身傷害特約を利用することで早期解決できるので、直接請求権の行使は現実的ではありませんでした。しかし、「直接請求権」は約款をみてみますと、人傷だけではなく、物損にも行使できる旨が記載されています。現在では普段の生活で自動車をよく利用される時代です。自動車の修理費は、人によっては治療費や慰謝料以上に強く求められることもあります。

 物損の場合、自賠責が適用されず、被害者請求はできない。また、人身傷害特約も物損には適用されません。加害者が物損の修理費を払いたくなく(経済的に支払えない場合もあります)、しかも自分の保険会社を利用しようともしない場合、泣き寝入りしてしまいます。そこで、相手方の任意保険会社に直接請求することを約款で認め、このような場合に泣き寝入りせずに物損解決ができるようになっております。

 この点、直接請求権を行使するための要件は、前回述べた内容と同様です。

 人傷の場合と同様、その中で最も現実的な方法は、「③ 損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対して書面で承諾した場合」とみています。他方で、物損の場合、人傷の場合と異なり、賠償額の算定は比較的容易です。よって、前回述べた、「① 保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と損害賠償請求権者との間で、判決が確定した場合または裁判上の和解もしくは調停が成立した場合」の方法も理論上できそうです。

 しかし、実際に①の方法を利用するとしても、弁護士に依頼しても受任してくれない可能性があります。何故なら、物損は人傷よりも多くの場合、賠償額が低いため、結果として弁護士の報酬が低くなり、弁護士を使うことが現実的ではなくなるからです。すると、物損のみの交通事故の場合、被害者自身が裁判等をすることになることも視野に入れなければなりません(本人訴訟)。

 なお、物損額が60万円以下であれば、少額訴訟という制度を利用でき、仮にその額を超える場合でも140万円を超えないのであれば、簡易裁判所で訴訟をすることになります。いずれも、端的に言えば、事件の早期解決を図れる点で共通しております。これらの制度については、裁判所や弁護士によく相談してみてください。

 この論点を含む、物損の直接請求権については、ボスがメインブログで、ストーリーを絡めて詳しく解説しておりますので、ご参照ください。  ⇒ 「事故の相手が保険を使ってくれない」  

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win (2)加害者側の任意保険への直接請求権の行使について

 自賠責保険で、治療費等を回収する方法として、被害者請求を説明しました。上記タイトルの直接請求権とは、端的に言えば任意保険会社版の被害者請求です。つまり、交通事故の被害者が加害者の任意保険会社に直接、治療費等を請求することです。

 通常、交通事故があった場合、加害者が自分の任意保険会社に対応をお願いすることで、一括対応をすることになります。ただ、交通事故の当事者はあくまで、被害者と加害者です。加害者側の任意保険会社が勝手に被害者に治療費等を支払うことはしません。契約者である加害者から連絡がなければ積極的に支払う義務もありません。この点、加害者が「自分が悪く無い事故なのに責任を取りたくないから保険を使わないよ」と言って、被害者に治療費はおろか、加害者自身の任意保険会社にも連絡しないことがあります。

 この様な不都合を回避するために、被害者は加害者の任意保険会社に直接請求点を行使して治療費等を回収できます。しかし、直接請求権による方法はあまり現実的ではありません。治療費を被害者自身で賄うことが困難な被害者にとっては特に言えます。その原因は、直接請求権の要件の厳しさにあります。

 直接請求権を行使するための要件としては、以下の通りです(ある損保会社の約款を参考にしました)。

① 保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と損害賠償請求権者との間で、判決が確定した場合または裁判上の和解もしくは調停が成立した場合

② 被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と損害賠償請求権者との間で、書面による合意が成立した場合

③ 損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対して書面で承諾した場合

④ 法律上の損害賠償責任を負担すべきすべての被保険者について、次のア.またはイ.のいずれかに該当する事由があった場合

ア.被保険者またはその法定相続人の破産または生死不明 イ.被保険者が死亡し、かつ、その法定相続人がいないこと。    これらの中で、最も現実的な方法は、③の方法ではないかとみています。 ①の方法は、治療中で全体の被害額が確定していない状態であることから、裁判がやりづらいこと。 ②の方法は、加害者が任意保険会社を使用しないと言い張っている状況等で現実的に同意するわけがないこと。 ④の方法は、加害者が死んでしまったレベルでなければなりません。    繰り返しますが、以上の要件を満たすための手続きはとても厳しく、面倒です。これらの手続きをするのであれば、自賠責に被害者請求をする方が現実的です。最近では人身傷害保険が普及しているので、本人もしくは家族に加入がないか探して人身傷害に請求するケースが多くなりました。

 自賠責は対人事故に適用されますが、物損は適用外です。これに対し、直接請求権は物損でも利用できます。次回は、物損で自動車の修理代を回収することとからめて説明します。  

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 今回は②任意保険の場合をあげてみたいと思います。

 ②任意保険の場合、(1)被害者自身の任意保険と、(2)加害者側の任意保険、とに分けられます。

(1)被害者自身の任意保険の場合について

 被害者が契約されている保険特約で、後遺症(後遺障害)の申請前、申請中段階でお金が欲しい場合にご確認して頂きたいものとして、A:搭乗者傷害保険、B:人身傷害特約、C:無保険車傷害特約、が主にあげられます。

A:搭乗者傷害保険について  これは、簡単に述べますと、保険契約した自動車に乗っているときに交通事故に遭った場合にお金が支払われる特約です。また、これは保険会社によって傷害一時金と改名されています。死亡、後遺症(後遺障害)で等級が認められたりした場合にも支払われますが、傷害の場合、後遺症(後遺障害)で等級申請する前の段階でも支払われます。

 怪我の部位、症状によって支払われる金額が変化しますが、基本的に通院に数が5日以上になった場合に支払われます。なお、損保ジャパン日本興亜の最新の約款では、人身傷害特約内に搭乗者傷害保険の内容が収められております。

B:人身傷害特約について  人身傷害特約については、別の記事で説明しました。この特約も、保険契約した自動車に乗っているときに交通事故で死亡、受傷した場合にお金が支払われる保険です。Aの搭乗者傷害保険との違いは怪我の部位、症状によって支払われる金額が変化するわけではなく、実際にかかった費用が(支払限度額は契約で定めます。5000万円の契約が多いようです。)支払われる点にあります。

 怪我が重く、しかも、加害者が自賠責のみしか入っていない(最悪、自賠責にも入っていないこともあります)場合、実際にかかった治療費全額が手に入らない場合に大変有効な特約です。

C:無保険車傷害特約、  この特約についても、別の記事で人身傷害特約との比較の際に説明しました。これは、死亡と後遺障害に限定されますが、交通事故加害者が保険に入っていない場合や、保険に入っていても被害者への支払が不十分であったり、まったく支払われなかったりする場合に、不足分の金額を被害者自身の保険から回収するものです。Bの人身傷害特約と同じく、加害者が自賠責のみしか入っていない場合や、自賠責にも入っていない場合に有効な特約である点で共通しています。

 実際の運用も、B:人身傷害特約とほぼ同様の流れになりますので、保険会社によっては一時期、人身傷害特約と一緒になったり、独立したり、と変遷がありましたが、現在ではどちらか一方のみを適用し、もう一方は適用しないという流れが主流になっています。

※なお、近日中にメインブログで東京海上日動火災の最新約款についてボスがまとめる予定です。その中には無保険車傷害特約についても触れますので、お楽しみにお待ちください。

 人身傷害特約と無保険車特約のどちらを適用するかは、別の記事でも触れましたが、前者は被害者に過失があった場合にも満額獲得できるのに対し、後者では請求者の過失が反映されます。また、人身傷害特約の場合、多くの契約が5000万円程度であるのに対し、無保険車傷害特約の場合、基本的に2億円~無制限です。 よって、過失の有無やその重さ、怪我の重さも加味した上で、どちらを適用するのかを決めることをお勧めします。  

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win   方法としては、①自賠責保険の場合、②任意保険の場合、に分けられます。

 今回は①自賠責保険の場合あげてみたいと思います。  

① 自賠責保険の場合

 (1)被害者請求(16条請求)

 加害者が自賠責には入っていても、任意保険に入っていなかったり、仮に任意保険にも入っていたとしても、被害者の過失が大きく、相手の保険会社が一括対応してくれなかったりする場合もあります。

このような場合に、治療費が膨大になり、治療を受けたりすることが困難であることがあります。被害者が治療や交通事故による損害賠償を受けるために、自賠責は16条で被害者が加害者の加入している自賠責に対して、請求できるようにしました。

 これまでは、後遺症(後遺障害)の申請段階での説明を主にしてきましたが、後遺症(後遺障害)申請以前に被害者が実質的に治療費を回収できるようになっているのです。但し、この手続きは後遺症(後遺障害)の申請と同様、審査に時間がかかります。迅速に治療を受けたい場合には、以下の(2)仮渡金請求の方法もとることができます。   (2)仮渡金請求(17条請求)

 この請求は、賠償金支払い前に、治療費や生活費、葬儀費等が必要な被害者が請求するものです。この請求方法も、上記(1)の被害者請求と同様、加害者が任意保険に入ってない、または、被害者の過失が大きく、加害者の任意保険会社が一括対応をしないような場合に有効です。

 急ぎお金が必要なときには、以下の通り、治療中でも一時金を請求できます。(1)被害者請求と異なる特徴として、死亡や一定の傷害があった場合に、診断書さえあれば診療報酬明細書や治療費の領収書がなくても支払われるという迅速性があげられます。一定の場合に支払われる金額は、以下の通りです。

① 死亡の場合:290万円

② 傷害の場合

A:入院14日以上で、かつ治療に30日以上を要する場合や背骨等の骨折で脊髄を損傷した場合。→40万円 B:入院14日以上を要する場合や上腕又は前腕の骨折の場合。→20万円 C:上記以外で治療11日以上を要する場合。→5万円

 詳しくは ⇒ 自賠責保険の請求形態について

 仮渡金請求は被害者請求と比較して迅速に進められますが、被害状況がはっきりしている場合には、被害者請求を並行して進めることもできます。

 ただし、最近では、任意保険の特約の発展(人身傷害保険等)により、仮渡金請求を利用せずに治療費等を確保できるので請求の機会は少なくなっているようです。  

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 交通事故に遭われて被害者となった方は、まず、怪我を治せるかどうかが気になるかもしれません。しかし、それと同時に問題となるのは、治療費や収入についてではないでしょうか。

 これまでは後遺症(後遺障害)の申請で等級を得た上でのお金の得方を説明していきました。

 しかし、後遺症(後遺障害)の申請に行きつく前に費用面で満足に治療を受けられない場合もあります。

 例えば、加害者が自賠責以外の保険に入っていなかったり、最悪、自賠責にも入っていなかったりする場合(日本人であればほとんどこのような場合はありませんが、外国人の場合、未加入の者もおりました。)もあります。仮に、加害者が任意保険に入っていても、被害者の過失が大きくて一括対応してくれない場合等、治療費が賄えない場合があります。   c_y_164  怪我が軽ければ自腹でも大丈夫かもしれません。しかし、怪我が重い場合もあり、金銭的に治療が受けられず、また、もっとひどい場合、仕事ができず、収入がなくなり、ご自身の生活が立ち行かない場合もあります。

 基本的に、賠償関係は弁護士が最後(等級を獲得してから)にまとめてするものです。しかし、これらのような事情の場合、後遺症(後遺障害)申請に行きつく以前の問題です。

 これまでに説明してきた内容と一部重なりますが、次回から後遺症(後遺障害)の申請前、ないしは申請中の段階で治療費等のお金を先取りする方法ついてまとめていきたいと思います。  

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win 事前認定で等級が認められた方への朗報? その2

 根拠について

 まず、被害者が病院で治療等をして頂いた後、病院からの治療費等の請求があります。被害者は治療費等を支払い、その支払い分を加害者に請求することになります。その後、加害者は自己が加入している自賠責保険に、自賠責分の金額の範囲であれば、支払い分を請求することができます。この流れは、自賠責法上では15条に規定されております。

 これが本来の流れですが、加害者が治療費等を負担できない(または、しない)ことが多い、または被害者も治療費立替えの負担がある現状から、加害者の加入している任意保険会社にすべて対応してもらう方法があります。この方法では、治療費等の負担をこの任意保険会社に負わせ、任意保険会社も自賠責分の金額の範囲であれば、自賠責の方に負担分を請求します。

 現状では、これが一般化しており、これを俗に、「一括対応」といいます。

 被害者の多くは一括対応によって手続きが進んでいたと考えます。  以下では、一括対応を前提として、説明していきます。

 一括対応によって、ムチウチの被害者は半年通院し、その後、事前認定で等級が認められたとします。この場合でも、一括対応の状態は継続しています。ここまでですと、加害者側の任意保険会社がすべてのお金の流れを握っている状態になっています。これに対し、被害者が、事前認定で等級が認められた後、被害者請求をした場合、自賠責から等級分の金額が振り込まれる旨の説明をしました。

 これは、今までの治療費に関しては加害者側の任意保険会社が一括対応してお金を出していましたが、後遺障害(慰謝料、逸失利益)に関しては、自賠責に直接被害者が請求することになります。

 どうしてこのようなことができるのか。

 結論として、治療費に関しては、加害者請求(15条)を前提とした加害者側の任意保険会社の契約に基づくサービスであるのに対し、後遺障害に関しては被害者請求という、自賠責法(16条)に基づく権利である点で異なるからです。

 サービスを利用するかどうかは被害者次第であり、被害者は国の唯一の立法機関である国会によって制定された法律上の権利である被害者請求を行使できるのです。もちろん行使するかどうかも被害者の自由です。  

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win事前認定で等級が認められた方への朗報?

 前回に説明しましたが、後遺障害等級が認められた場合、被害者請求であれば事前認定と異なり、等級に応じた自賠責基準分の金額が自賠責から被害者に振り込まれます。

 多くの相談者からは被害者請求にて先に自賠責保険金の給付を望む声があがります。

 しかし、既に事前認定にて等級認定を受けてしまっている方もおります。

 事前認定ですと、被害者ではなく、加害者側の任意保険会社が自賠責保険金を請求する権利を得ます。

 事前認定で等級が認められた後であったとしても、等級に応じた金額を先に回収できる方法があります。その手段とは意外と知られていないのですが、事前認定後であっても、改めて被害者請求をする方法です。

 手順の流れは以下の通りです。

① 事前認定で等級が認められる。 ↓ ② その後、被害者請求で必要な書類でおなじみの「自賠責保険請求用の支払請求書」、「印鑑証明書」、を用意する。 ↓ ③ 加害者の加入している自賠責保険の窓口に被害者請求の申請をする。  c_s_j_11

 以上の流れで等級に応じた金額が即座に被害者に振り込まれます。

 結論として、事前認定で等級が認められた後でも、被害者請求が可能で、等級に応じた自賠責基準分の金額を先に回収することができます。

 何故このようなことができるのか、次回でその根拠について述べさせて頂きますが、あまり深く理解する必要もないので、読み飛ばして頂いても結構です。  

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win 交通事故の被害者にとって、どちらが望ましいか。  事前認定のメリットは手続きで必要な書類を任意社が集めてくれる点にあります。逆にデメリットとしては、申請段階での提出書類について不透明である点があげられます。他方で、被害者請求のメリットは、申請段階での提出書類については、被害者自身で回収するため、すべて把握できる点があげられます。逆にデメリットとしては、手続きで必要な書類を自ら集める手間があげられます。以上から、事前認定と被害者請求とのメリット・デメリットが逆転していることがわかります。

 しかし、被害者請求のメリットが別の点にもあります。それは、結論から言うと、申請者に等級に応じた金額が先に振り込まれる点にあります。

 被害者請求の申請者は、文字通り、交通事故の被害者です。被害者請求申請をするために、ご自身で各種書類を揃えて、自賠責調査事務所に直接提出します。その際、提出書類の一つとして、自賠責保険請求用の支払請求書があります。そこには、被害者ご自身の口座を書く欄があり、仮に後遺症(後遺障害)が認められた際には、その口座にお金が振り込まれます。

 例えば、被害者がムチウチとなり、後遺症(後遺障害)の等級が14級9号であったとします。その場合、14級の支払限度額である、最低限の逸失利益、慰謝料併せて75万円が口座に入ります。

 事前認定の場合、申請者が交通事故の加害者側の任意保険会社です。その申請をして、仮にムチウチで後遺症(後遺障害)が認められたとします。なお、等級は14級9号であるとします。その際、前述した支払限度額である75万円は加害者側の任意保険会社が自賠に請求することになります。つまり、任意社と賠償交渉が決着するまで、この75万円を任意社に握られたままの状態となります。   c_s_seikyu_8  事前認定の申請者は加害者側の任意保険会社であるため、入金の対象も被害者請求と異なることになります。

 交通事故の被害者にとっては、病院に通い続け、お仕事も休まれた方もいらっしゃいます。この状況で、申請後、すぐに75万円が振り込まれるのは、今後の交渉手続にあたっての最大の強みとなります。これは、被害者自身の生活の保障や弁護士を雇う軍資金になります。これは交渉においても良い効果をもたらします。先に被害者に75万円が振り込まれることで被害者の生活費等、金銭面でやや余裕が生まれますので、弁護士もじっくり交渉できるからです。急ぐ交渉は任意社に足元を見られ、つい、急ぐあまり裁判基準満額の80%程度で手を打ってしまう・・交渉による解決ではよくあるケースです。    交通事故に遭われた方々が被害者請求を望むのであれば、弁護士等士業者に相談してみてください。前回述べましたように、事前認定のみしかやらない方もおりますので、ご注意ください。  

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 最近、三井住友の代理店さんと弁護士費用特約についてお話をする機会がありました。三井住友さんの弁護士費用特約は契約自動車・契約者に関連する交通事故に限定した「自動車事故弁護士費用特約」と日常生活全般に適用可能な「弁護士費用特約」に分かれています。ちなみに秋からの料率改定で「日常対応型」は掛金が3900円(年額)に上がるそうです。安いのか高いのか?・・交通事故のみならず、日常のトラブル全般に適用できれば、ある意味、顧問弁護士を準備していることになります。そう考えると安いと言えるかもしれません。

 外資系損保の一部でも日常に対応した弁護士費用特約が販売されています。また、これを専用商品としている会社もあります。プリベント少額短期保険株式会社さんの「mikata/ミカタ」がそうです。1回の事件で弁護士への支払い・300万円までの補償で掛金は月額2980円です。    c_y_184  今後、弁護士保険の発売が続きそうです。国内社では損保ジャパン日本興亜さんが以下の発表を行いました。その記事を抜粋します(マイナビニュースより)。    

損保ジャパン日本興亜、弁護士費用を補償する「弁護のちから」販売

    損害保険ジャパン日本興亜(以下損保ジャパン日本興亜)は8月31日、個人の顧客の日常生活における法的トラブルを解決するための弁護士費用を補償する新たな保険「弁護のちから」を、12月1日以降保険始期契約から販売すると発表した。

○ 日常生活における法的トラブルを解決するための弁護士費用を補償する保険を開発

 これまで、日常生活における法的トラブルに備えるための保険としては、顧客が「加害者」となり法律上の損害賠償責任を負った場合の補償(個人賠償責任補償特約等)を中心に販売してきたという。顧客が「被害者」として賠償事故に巻き込まれ、加害者に十分な対応をしてもらえない場合や、遺産相続や賃貸借契約など日常生活におけるその他の法的トラブルに巻き込まれた場合には、当事者本人や家族の精神的・経済的な負担は非常に大きいものとなるという。このような顧客の負担に対する「備え」を提供するため、損保ジャパン日本興亜は国内の損害保険会社として初めてという、日常生活における法的トラブルを解決するための弁護士費用を補償する保険を開発した。

○「弁護のちから」の商品概要

・商品名:「弁護のちから」。「傷害総合保険」と「新・団体医療保険」の特約として「弁護士費用総合補償特約」を新設する。「弁護のちから」とは、同特約をセットした契約のペットネーム

契約形態:企業などを契約者とする団体契約で、団体の構成員が加入できる

・補償対象:「被害事故」、「借地・借家」、「遺産分割調停」、「離婚調停」、「人格権侵害」、「労働」(「労働」のみオプション)に関するトラブルを対象とする

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win  被害者請求の場合と事前認定の場合とで、被害者自身が回収する必要のある書類の量に差がでます。 後者の場合、これまで前者に比べて非常に楽である旨を何度も述べさせて頂きました。その楽である特徴の一つとして、回収する書類が非常に少ない点にあります。  大抵、交通事故の加害者側の任意保険会社(以下、相手方保険会社と略す)が被害者にお願いする書類はたった一つに絞られます。それは、後遺障害診断書です。残りの書類、例えば、診断書や診療報酬明細書(レセプト)事故証明書等は、既に相手方保険会社が回収しているのが通常です。何故なら、相手方保険会社は、治療費等を出す際に、自賠責保険に求償するため、どのような事故なのか、どのような治療をしたのか、どのぐらい病院に通ったのかを調べるからです。

※ 求償とは、単純に言ってしまえば、本来お金を支払う者が別にいるのに、違う者が代わりに支払った場合には、代わりに支払った者が、来支払う必要のある者に対してお金を請求することです。

※ ちなみに自賠責保険の制度は国民皆保険制度に近いものであり、被害者には、契約者に代わって自らに保険金を支払うように請求する権利(16条請求=被害者請求)があります。この自賠責保険が支払う金額は、最低限度分であり、相手方保険会社の支払いよりも優先されるものです。

 もし、交通事故の被害者がまず自分で病院に治療費を支払い、その分のお金を加害者が被害者に支払い、その後、加害者は自分が加入している自賠責保険に支払った分のお金を請求する・・・このやり方ですと非常に面倒なので、相手方保険会社がサービスとして、まず、相手方保険会社が治療費を負担して直接病院に払い、その分を自賠責保険に請求することで運用するのが普通の流れです。このことを一括対応といい、長くなってしまいましたが、最後に任意社が自賠社に一括対応分を請求することを求償と呼んでおります。

 以上から、症状固定をするまで、相手方保険会社は各種書類を集めつつ治療費等を支払い続けていくことがわかります。そして、後遺症(後遺障害)の申請の際に、最後に欲しがるのは、お医者様自身が後遺症(後遺障害)と認めた点をまとめた書類だけなのです。それが、後遺障害診断書です。

 しかし、これまで様々な相談者を見てきましたが、ここまできれいにいかない場合もありました。例えば、相手方保険会社が診断書や診療報酬明細書をすべて回収せずに、病院からの領収書のみで治療費等を支払い続けている場合もあります。(もっとも自賠責保険の傷害限度120万円を超えれば、自賠責に求償する必要がなくなるので、超えた治療費は領収書で済ますこともあります。)この点、良心的な相手方保険会社であった場合、最後にまとめて回収する場合もありますが、まったく回収せずに手続きを進める場合があります。    20121107  また、後遺症(後遺障害)の申請では、我々は画像を併せて提出しますが、事前認定の場合では、相手方保険会社がすべての画像を回収せずに申請してしまうこともありました。何故、画像を回収しなかったのか?ですが、自賠責保険のパンフレットもご覧いただければわかりますが、画像は必要書類リストに入っていないことがあり、相手方保険会社も迅速に手続きを進めていきたい思惑と、後遺症(後遺障害)が認められる可能性が低いとみていることから、画像回収に積極的になりにくいことがあるとみています。

 以上から、結果、中途半端な書類のみで申請にあげられる可能性があることになります。さらに、被害者からすると、申請するために提出した書類は何かがわからないまま申請が進みます。

 一方で被害者請求は、すべての提出書類と画像を用意するという大変な思いをしますが、ご自身の症状を必要な書類にまとめて、かつご自身の画像等、自ら必要な書類を確認してから提出できます。

 結論として、被害者にとって、一番安心できる申請は被害者請求であるといえます。しかし、書類等の回収が大変です。そこで、交通事故を専門としている等の士業の方々に被害者請求を依頼する方法もあります。 このようなことから、交通事故に遭われた方々は、なるべく早めに専門家等に相談することをお勧めしております。

※ 但し、士業者の中には事前認定のみしかやらない方もおりますので、相談される際には質問してみてください。  

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win 事前認定が多く利用されるのは何故か。

 前回説明した内容から、事前認定は、加害者側の任意保険会社が、サービスで後遺症(後遺障害)の申請をしてくれるものです。この事前認定が多くなされる理由(視点)として、以下の(1)~(4)が挙げられるとみています。これらはそれぞれ重なり合う箇所があります。   (1)交通事故被害者が手続方法を調べることにまで手が回らないこと。

 交通事故に遭われた方は、ご自身の治療で大変な思いをされています。中には治療するために通院していくだけでも体力がすり減っていく者もいます。そのような方ですと治療途中で後遺症(後遺障害)の申請方法を調べる余裕がない場合があります。そのような状況で、保険会社がサービスとして申請しますといえば、頼んでしまうことも無理はありません。   (2)交通事故被害者が交通事故での手続の流れをそもそも知らないこと。

 交通事故について調べるのは、実際に交通事故にあってからであることが通常です。そして、交通事故で大怪我をし、治療しながら交通事故の手続き等を調べることは、とても困難です。ご自身の治療で忙しい中、交通事故について調べる余裕がない方の場合、次の(3)で説明致しますが、専門の方から勧められる楽な事前認定を選択することがあります。また、調べる余裕がある幸運な方は、被害者請求と事前認定とを比較できる場合もありますが、後述する(4)であげられるように、手続きが面倒で複雑であることがわかると、やはり手続きが楽な事前認定を選択することがあります。   (3)相談した弁護士や保険会社の人から事前認定を勧められたこと。

 治療で忙しいと交通事故の手続きを調べられない方もいます。そのようなときは誰かに相談します。その際に思い浮かべやすい各交通事故の専門の方として、いつも連絡が来る加害者側の任意保険会社や、ご自身が契約している任意保険会社が筆頭としてあげられます。

 これらの保険会社がアドバイスする際に、事前認定のみを勧められることが多く、またそれしか説明されないことが多いのが現状です。そうなると、被害者にとってはその情報のみが唯一の答えになりますので、事前認定を選択することが多くなります。

 では、何故、事前認定を勧めるのでしょうか。

 理由の1つとして、保険会社の担当者が、事前認定の方法しか知らない場合が多いことがあげられます。交通事故で実際に後遺症(後遺障害)が認められるレベルの大怪我をする人の割合は、交通事故全体からすると少ないのが現状です。このことから、保険会社の担当者は後遺症(後遺障害)が認められない人の処理が大多数となります。また、その担当者は年間に交通事故の処理をおよそ100件もしています。そのような多忙な中で、被害者の一部が交通事故の後も症状が残存していると相談してきたとしても、そもそも後遺症(後遺障害)が認められる可能性が低い現状、さらに、審査するところは同じなのでどちらを選択しても結果は変わならい故、担当者は被害者にとって煩雑な被害者請求よりも、簡易な事前認定をアドバイスすることが多くなります。

 また、別の回で説明致しますが、事前認定は申請者が任意保険会社であることと関連して、任意保険会社が後に交渉しやすくなる場合があることもあげられます。そして、このような事前認定を普通とする歴史を繰り返してきた保険会社からすると、相手が無保険(任意保険に入っていない)の場合しか被害者請求はしないものだと担当者は思っています。そのような方の場合ですと、事前認定しか紹介されません。   (4)交通事故被害者にとって被害者請求の手続が非常にめんどくさいこと。

 交通事故のことについて、親切な任意保険会社の担当者や、詳しい士業者の説明によって、被害者請求と事前認定とを比較して調べることができる方も近年では増えつつあります。しかし、手続きで取得する必要のある書類は多く、また怪我の内容・症状によっては、特殊な書類も必要になることもあります。そして、被害者請求の申請者は被害者自身です。よって、交通事故に遭い、怪我で大変な思いをしており、治療で忙しい被害者はそれらの書類を回収する必要があります。常識的に考えて被害者は嫌がります。しかも、事前認定は保険会社が申請してくれるのでとても楽です。よって、仮に被害者請求と事前認定とを比較できたとしても、事前認定を選択するは無理もありません。  

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win  後遺症(後遺障害)の申請については、被害者請求と事前認定と比較して説明していきます。 c_g_a_5-118x300  被害者請求とは、端的に言えば、交通事故の被害者が、ご自身の怪我によって残存した症状(後遺症)が、等級が認められるレベル(後遺障害であること)である旨の主張を被害者自身で自賠責調査事務所に申請することです。

 自分の怪我について、一番詳しいのは医者と本人ぐらいなので、その本人(被害者)自身が申請をするのは自然な流れです。これだけ聞くと、何を当たり前のことを言っているのかと思う方が多くいらっしゃると思われます。しかし、この被害者請求は現実的には行われないことの方が多いのです。

 この点、後遺症(後遺障害)が残るレベルの怪我をする者の絶対数の割合は、交通事故全体の割合からすると多くありません。よって、後遺症(後遺障害)の申請数自体は少ないといえます。ここでは、交通事故の被害者のうち、後遺症(後遺障害)が残ってしまった者のみを前提にして説明させて頂きます。

※交通事故の発生件数  警視庁の発表によれば、平成24年は66万5,138件、25年は62万9,021件、26年は57万3,842件、と減少傾向にあり、損害保険損率算定機構(平成25年度の事業概況)によれば、交通事故による死亡者、負傷者も年々減少してきています。

 後遺症(後遺障害)の申請方法には、被害者請求の他に事前認定という方法があります。事前認定とは、通院するために治療費等を出してくれた加害者側の任意保険会社が、サービスの一環として、自賠責調査事務所に後遺症(後遺障害)の申請をしてくれるものです。後述しますが、後遺症(後遺障害)の申請方法として一番多く選択されるのはこの事前認定です。

 以上から、被害者請求と事前認定との違いとして、

 申請者が、  前者の場合は被害者、  後者の場合は加害者側の任意保険会社、  であることがわかります。

 このことのみでは単に申請者が異なるだけで別に変わらないようにも見えます。しかし、この申請者が誰であるかが、その後の交通事故被害者の行方に大きく影響してしまうことがあります。

 次回から、この申請者の違いによる観点を中心に、被害者請求と事前認定について述べていきたいと思います。  

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 人身傷害特約と無保険車傷害特約 その3

  3:人身傷害特約と無保険車傷害特約双方を使う。

 前回のまとめですが、 1:では5000万円、 2:でも5000万円を回収できますので、結論としては変化がないと説明させて頂きました。

 しかし、皆様はここで一つ疑問が出てくると思います。

 過失分は人身傷害特約で回収し残りの分は無保険車傷害特約から回収できないのか?

 本件では人身傷害特約で2500万円、残りについては、無保険車傷害特約で回収し、合計5000万円を回収できないかという流れです。この流れでは手続きも早く、交通事故の早期解決が出来そうです。では、実際にそのようなことができるのでしょうか。

 結論から申しますと、保険会社は実際の運用段階では、約款上、併用を認めない記載があり、人身傷害特約と無保険車傷害特約のいずれかしか適用を認めないようにしているところが大多数です。 c_y_39  仮に約款やホームページ等でいずれも適用できるようなことが記載されていても、保険会社の担当者はどちらかのみ適用させるか、若しくは人身傷害特約を適用させて運用していこうとします。後者は、保険会社に勤めていた方からのお話では、担当者が無保険車傷害特約を知らないからであると言われています。何故なら、担当者は無保険車傷害特約を使ったことが無く、保険会社も研修や業務で教える機会があまりないことが多いことが理由として挙げられます。

 よって、 3:人身傷害特約と無保険車傷害特約双方を使うことは現実的ではないのかもしれません。

 しかし、無保険車傷害特約は、死亡もしくは後遺症(後遺障害)が認められないと利用できないという特徴があります。  この点、交通事故の内容によっては、当初は重傷でも、腕のいい医者に巡り合うことができて、外観上完治しているような場合がありますが、目に見えない障害が残存してしまうようなケースもあります。また、治療期間が一定期間あるものの、死亡してしまったケースもあるでしょう。このように、死亡、後遺症(後遺障害)が残存するかどうかがわからない時期に保険会社が人身傷害特約と無保険車傷害特約のどちらを適用すべきかが判断できないことがあります。

 そのような場合はどのように保険会社は運用していくのでしょうか。

 元保険会社社員の方のお話ですと、この場合には、保険会社は先に人身傷害特約を適用させます。治療費(実額損害)を人身傷害特約で支払った後、後遺症(後遺障害)申請をして等級が認められた場合には、まずそのまま人身傷害特約で保険会社は運用していき、人身傷害特約の支払いで足りない分(慰謝料等)を無保険車傷害特約を適用して支払う運用をするようです。

 上記したように、無保険車傷害特約を保険会社の社員は知らないことが多く、後で気がつく場合が多いことからこのような事態が生じることもあるのです。

 前回からの比較をまとめますと、相手方加害者が保険に入っている場合には過失分、支払限度額で人身傷害特約、無保険車傷害特約のどちらが得になるのかを判断することになります。

 これに対して相手方が無保険車であった場合、弁護士の運用次第ですが、人身傷害特約、無保険車傷害特約のいずれも同額回収できますので、結論としては変化がありません。後者の場合で皆様に必要なのは、弁護士がこれらを知っているか否かを判断する力です。  

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 人身傷害特約と無保険車傷害特約 その2

   前回の記事で、人身傷害特約と無保険車傷害特約との比較を説明しました。

 今回は、以下の事例(相手方加害者が完全な無保険者である場合)から、どのように保険を使ってお金を回収するのかを検討したいと思います。

 <事例>  Aさんは自転車で横断歩道を赤信号であるにもかかわらず進み、無保険のBさんが横断歩道上でAさんをはねてしまいました。Aさんは脳挫傷で後遺症(後遺障害)が残りました。Aさんの損害額は、裁判所の基準で合計1億円になりました。しかし、Aさんにも5割の過失が認められました。  しかし、Bさんは保険に入っておらず、貯金もまったくありませんでした。そこで、幸いにもAさんには人身傷害特約(支払限度額は5000万円)と無保険車傷害特約がありました。 c_y_164  では、これらの特約をどのように使った方が良いでしょうか。  使い方としては、以下の3つに分けられると考えております。

1:人身傷害特約を使う。 2:無保険車傷害特約を使う。 3:人身傷害特約と無保険車傷害特約双方を使う。

 今回は 1:、 2:についてまとめさせていただきます。

  1:人身傷害特約を使う

 ここでは以前に説明した人身傷害特約を先に使ってから裁判で解決する流れで検討していきます。  本件事故がAさんの任意保険会社の算定基準ですと総額5000万円であったとします。その額から過失分を差し引いた2500万円が、まず人身傷害特約で出ます。その後、弁護士が裁判で決着をつけても、Bさんは無保険、無一文であるいから、仮に裁判所の基準で総額が1億円であったとして、過失分を差し引いた5000万円を請求できたとしても、金銭の回収は出来ません。  この場合、2500万円を回収して終わりそうです。  ただ、支払限度額が5000万円であり、2500万円については上記5000万円の請求権が認められたことを盾にAさんの任意保険会社に交渉する余地があります。何故なら、以前に説明しました通り、約款で裁判所の算出額を尊重する旨が記載されていることがあるからです。 よって、ここでの金額は5000万円とします。

2:無保険車傷害特約を使う

 この場合でも、本件事故がAさんの任意保険会社の算定基準で総額5000万円であったとします。過失分を差し引いた2500万円が、無保険車傷害特約で出ます。そしてBさんは無保険、無一文であり、裁判所の基準で総額1億円、過失分を差し引いた5000万円を請求しても、金銭の回収は出来ません。

 但し、懇意にしている弁護士によりますと、全額を回収できる方法もあるとのことです。  手続きの流れは簡単に言いますと、以下の通りです。

① 後遺症(後遺障害)の認定。 ↓ ② 加害者(Bさん)に損害賠償請求訴訟を起こし、確定判決を得る。  この場合、加害者が裁判を欠席したら、判決が公示されて終わります。 ↓ ③ 確定判決書を添えて自身の任意保険会社に保険請求をする。

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 任意社の意見書(もしくは情報)で被害者に等級が認めてもらえるよう推すケースが存在します。

 それでは実例(仮名)で説明しましょう。

   追突事故で頚椎捻挫となり、半年間、2日に1回の頻度で通院している被害者:又吉さんが相手保険会社:ピース損保から打ち切りを迫られています。ただし、又吉さんは詐病や心身症の問題のある被害者ではなく、有名な作家で社会的な地位もあり、収入も多く、ピース損保も乱暴な扱いはできません。

 ピース損保の担当者:綾部さんはなかなか治らず長く通院している又吉さんに「もう治療費は払えません、今後は後遺障害を申請したらいかがでしょうか?弊社も出来るだけの賠償金を提示します」と水を向けます。

 そこで又吉さんは言われるがまま、後遺障害診断書を主治医に記載いただき、綾部さんに託しました。

 綾部さんは自賠社に送達する際、「又吉さんは有名な作家です。神経症状が重篤で、後遺障害に値します」旨の情報を添えました。

 それを受けた審査先である自賠保険調査事務所ですが、もちろん、任意社の意見で左右されることなく、定型書類から厳正に審査をします。しかし、半年間に渡り被害者を見続けてきた担当者:綾部さんの意見を無視できません。大いに参考となるはずです。それが治療経緯・症状の一貫性を重視する14級9号なら最重要情報にすら思えます。

 ちなみに、自賠責の受付業務が民営化される以前の大らかな時代、センター長が調査事務所に電話して、「等級はどうなっているのか?」「なんとか○級はつかないか?」などと話をしていました。現在でも調査事務所から任意社に電話がかかってきて、「この(申請があがってきた)被害者って、どんな人?」などと聞かれることがあります。このようなやり取りは被害者請求でも同じです。何を言われるかわからない?だから「担当者とケンカするな!」と言っているのです。

・・・・

 そして、めでたく又吉さんに14級9号が認められました。綾部さんは早速、後遺障害(慰謝料+逸失利益)を加算した賠償金提示を行いました。その額は、

 通院慰謝料(567000円)+後遺障害(800000円)で合計1367000円です。

 さらに綾部さん、「即断してくだされば、上席に掛け合って150万円お支払いさせていただきます」とたたみ込みます。

 又吉さんも「100万円を超えているし、そんなものかな・・」と150万円で承諾しました。こうしてめでたく解決です。

   詳しい方はもうお解かりですね。実はピース損保、自賠責から通院慰謝料で55万円程度、後遺障害で75万円、つまり150万のうち130万円は自賠から回収できるので、任意社は20万円しか出費していないのです。このように対人担当者は、軽傷なら「自賠内で解決」、後遺障害でも「自社の支払いはちょっとだけ」が腕の見せ所です。そして本件の場合、綾部さんは又吉さんが弁護士に相談する前に急いで150万円提示、まさに火花の散るようなスピード解決を図り、成功したのです。

 もし、弁護士に赤本で計算されたら・・通院慰謝料89万円+後遺障害{慰謝料110万円+逸失利益100万円(年収500万として)}=合計 約300万円!

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 加害者側の任意保険・担当者は「常に被害者への支払いを少なくすることが仕事」「後遺障害を認められないように妨害する存在」なのでしょうか? c_y_193

 営利企業である保険会社が支払いの抑制に傾くのは当然の摂理でしょう。それでは低い賠償金で解決させれば優秀な社員となるのでしょうか?・・そんな単純なものでありません。対人担当者の成績を評価する上で、「支払い保険金の抑制」は評価が難しい項目と言えます。なぜなら、約款の規定以下の少ない保険金で示談した場合、それなりの理由がなければ倫理上、問題とされるからです。つまり、原則「約款に則り、適正な支払い」をしなければなりません。

 支払い保険金の多寡はそもそも、保険会社の基準が裁判基準に比べ極端に低く設定されていることが原因です。これは結局、自賠基準→任意基準→裁判基準のトリプルスタンダードの問題に帰結します。そうなると、賠償金を自賠責保険の範囲で解決させること、なるべく任意保険からの支払いを少なくすることは評価になるようです。

 それでは、担当者の評価で一番の項目は何でしょうか? それは”案件の処理スピード”です。担当者は毎月10件ほどの交通事故のファイルが机に置かれます。あっという間に年間100件です。つまり、毎月10件づつ解決していかなければ、どんどんファイルが溜まっていくのです。担当者が必死に「治療費の打切り」「示談」を切り出してくるのは、単純に「急いでいるから」です。

   掲題に戻ります。それでは、後遺障害申請の場合、一括社意見書なるものが必ず添付されるのでしょうか?そして、必ず被害者に不利になるようなことが書かれるのでしょうか? 

 まず、前提ですが、この書類もマル秘扱いです。表向きは「存在しない」とされても仕方ないでしょう。当然に社外秘はおろか、社内でも限定された者しか目に出来ません。顧問・協力弁護士にも見せませんし、存在すら言わないものです。だからと言って、裏の必須書類とまでは言い過ぎです。実務上、全件に添付されるわけでもなく、また、書面とは限りません。消極的な物言いですが、「被害者の詳細情報が等級審査に必要な情報となり、任意社から調査事務所へその情報伝達が遮断されることはない」、これが正解です。    明らかに軽いケガでありながら長期通院していること、賠償志向が強く詐病者と疑われるような事情、問題のある被害者・・これらの情報は必ず伝達するでしょう。これはある意味、必要な情報伝達と言えます。さすがにネットで書かれているような、恣意的・不当に被害者を貶めるような、認定を妨害することはほとんどないと思います。「絶対ない」とは言えないところがなんとも・・開示されない(存在しない?)以上、わからないからです。

 そして、昨日の最後に書きました、逆に「被害者に等級を認めてもらう意見書」も存在します。それは、障害が明白であり、気の毒な被害者である情報はもちろん、示談の際に賠償金額を盛る必要があるケースで起こります。それは、後遺障害が認められて「後遺障害保険金があった方が大きい賠償金を提示できる」ことを意味します。

 次回、わかり易く実例で説明します

 つづく  

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 自賠責保険への被害者請求、ここ10年で周知が進んだようです。昔は相手に任意保険がなかった場合、仕方なく行う作業でした。しかし、交通事故の情報がネットに溢れ返っている現在、後遺障害の申請の一手段として認知された感があります。それでも後遺障害申請の主流は相手保険会社経由で申請する「事前認定」です。

 巷の(とくに行政書士)HPを観ると、被害者請求を推進する業者は「事前認定」をすると、相手保険会社の担当者が通称”任意社一括意見書”を添付し、等級認定を邪魔する」などと解説しています。

 また、逆に「そんな書類は存在しない」と言い切っている法律家さんもおります。特に(なぜか保険会社に詳しいはずの?)保険会社の協力弁護士さんに多い傾向です。    一括意見書は存在するのか?また、意見書で被害者の等級認定を妨害しているのか? 被害者さんだけではなく、業者の皆さん必見! 真相に迫ります。   f_c_035  まず、任意保険の担当者による事前認定の事務を簡単に説明します。後遺障害の申請に必要な書類を集積し、「整理表」なる書類とともに自賠の窓口社を経由して調査事務に送達されます。特に意見書のようなものは必須の提出書類に含まれていないようです。表向きはそのような書類の存在を明言している様子はありません。

 保険会社に在籍していた時も一括者意見書なる書類をじっくり目にしたことはありません。後年、サービスセンター(支払部門)の人身担当者に直接、聞いてみました。すると、「確かに自賠の審査上、必要書類ではないけど・・特別に必要な情報として伝達事項を書面にすることはあるよ」と、やや歯切れ悪い回答。

 そもそも対人賠償の担当者は保険金支払いのルールブックである「約款」のみを傍らに置いて仕事をしているわけではありません。机の中に「任意保険算定の運用基準」のような別のルールブックが存在します。これは文字通り、約款だけでは算定できないイレギュラーな事に対処するルールです。これは、サービスセンターのセンター長、統括社員、賠償主任、対人担当者しか見ることが出来ません。もちろん、営業部門にいた私にも見せてくれません。後に研修で短期間サービスセンターに配属された際、マル秘扱いながら陰でこっそり見せてもらったことがあります。休業損害や慰謝料、逸失利益等の別計算、特別なケースの対処法が記載されていました。何事も正規のルールでは対処できないことがあるものです。まして、交通事故のような揉め事の解決には非正規のルールも必要でしょう。

 話を一括意見書に戻します。これも非正規ルールの中で存在するものです。ただし、巷の行政書士が被害者請求を煽るため、事前認定の”害悪物”として挙げるような単純なものではありません。中には「この被害者は後遺障害に該当する。理由は○○、○○・・」など、被害者に有利な情報が書かれることもあるのです!

 つづく  

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人身傷害特約と無保険車傷害特約

   無保険車傷害特約とは、簡単に言ってしまうと、交通事故の加害者が保険に入っていない輩であったり、あるいは保険に入っていても被害者への支払額を全額カバーできないような場合に、支払ってもらえない分の金額を自分の入っている保険から回収するものです。

 特に、ひき逃げや、暴走行為の被害者等、加害者がいない場合や加害者に支払能力が無い場合の事故の際に活躍する特約です。

 この点、人身傷害特約のメリット1の箇所で、加害者がいない場合や加害者に支払能力が無い場合の事故のときでもお金を回収できると説明しました。このメリットの部分は無保険車傷害保険でも重なっているといえます。そして、これまで説明してきました人身傷害特約と無保険車傷害特約との違いのひとつとして、保険会社の支払限度額が(会社によって少々差がありますが)、最高2億円、もしくは無制限であることがあげられます。この点、人身傷害特約の場合、多くが5000万円の支払限度額であるのに対して(これだけでもかなりの高額ではありますが)非常に高額のお金を回収できます。 c_y_195  皆様はこの段階である疑問を抱くと思います。

 何故高い保険料を支払ってまで人身傷害特約にも入る必要があるのか。  同じようにカバーされるのであれば、どっちか片方に入っておいて保険料を節約したほうがいいのではないか。だったら、支払額の多い無保険車傷害特約に入っておいて人身傷害特約は入らなくていいかもしれない・・・。

 ※ 統計的にみて、人身傷害特約よりも無保険車傷害特約に入っている場合が多いです。なぜなら無保険車傷害特約は対人賠償に自動担保されているからです。

 この点、無保険車傷害特約と人身傷害特約との区別については、被害者に過失があった場合に出てきます。

 前回説明した通り、人身傷害特約のメリットとして、被害者に過失があっても過失分は回収できる点をあげました。これに対し、無保険車傷害特約の場合、被害者の過失分を減額して支払われます。  過失が1割であっても、請求額が全額で1億円であればそのうち1000万円を引かれてしまいます。重篤な被害が出れば出るほど過失額も大きくなります。そして、1割や2割の過失は、前回説明しました通り、皆様がある種、常識的な運転をしていてもたまたま運悪く事故に巻き込まれてしまうこともあります。それで過失分を減額されてしまうと、重篤な被害者にとっては将来の生活そのものにも影響が大きく出るといえます。

 以上から、いくら支払限度額が多くても、最終的に回収できる金額を確保できなければ意味がないといえます。                   c_y_101続きを読む »

win メリット3:後遺障害を申請していなくても、または申請中であっても請求できる。  交通事故に遭われた方は、基本的に治療費の悩みがあります。

 修療費を加害者の任意保険会社が支払ってくれる場合には、特に悩む必要はありません。しかし、加害者が無保険の場合、被害者は加害者に治療費を請求するしかありませんが、ほとんどと言っていいほど支払ってくれません。  c_y_164  また、保険会社の対応が遅れてしまっている場合や、被害者の方も過失があり、過失のことで加害者(相手の保険会社)と揉めている場合には、相手方の保険会社が対応してくれない場合があります。

 そうなってしまった場合、お金がない被害者ですと、治療を受けられないで重症化してしまう方が出る恐れがあります。また、被害者には、交通事故に遭われた後、仕事が制限されてしまい、給料が減ってしまう方もいます。そのような方の中には、治療開始直後は貯金の切り崩し等で治療費を出せていたとしても、途中で出せなくなることもあります。

 そのようなときに、人身傷害特約を利用すれば、治療費を賄うことが出来ます。

 治療を継続してきた被害者は、完治すればいいですが、被害者の中には後遺症(後遺障害)が残存してしまう方もおります。そのような被害者は後遺障害の申請をする必要が出てきますので、主治医に症状固定して頂くことになります。  症状固定後に申請手続きに移りますが、これら手続きには時間がかかります。そしてその間はお金が入らない状態になります。  この点、人身傷害特約は、後遺症(後遺障害)が認められようと認められないとにかかわらず、支払われます。

 そこで、人身傷害特約を利用して、自賠責分(最低額)の通院慰謝料や休業損害分を先に請求することが出来ます。

 ただ、後の賠償交渉等を視野に入れている被害者もおります。 そのような方の場合、賠償交渉等を含み、手続き(特に計算)が複雑になりますので、先に人身傷害特約を使う必要性があるような方にお勧めします。

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win  人身傷害特約の支払額は、ある損保会社の約款によれば、以下のようになります(基本的に保険会社はこの内容で共通しています)。

A、まず、その任意保険会社が定めた額を支払うこと。

B、そして、賠償義務者がいて、しかも判決・裁判上の和解で出された損害賠償額が上記額を超えていた場合、その基準が社会通念上妥当(常識的)であれば、その基準により算出された額とすること。

 つまり保険会社は、消費者と契約をして、なるべく安い金額で済ませようとしますが、裁判所の出した金額であれば、その額を尊重するため、裁判等で出た基準での金額にしようとしているのです。早い話、知らなければそれまでなのです。

sanma  もちろん、任意保険会社が定めた人身傷害特約の額の方が裁判等で出てくる金額よりも低いものです。保険会社は営利企業ですので、損しないよう、まず相場よりも低い額で提示し、その額で交通事故の被害者がOKした場合には、示談されたので、その額で交通事故は解決したものとされてしまいます。そこで、皆様は弁護士を依頼して交渉してもらい、裁判等での解決を望むと思います。実際には、弁護士が裁判基準の額を請求すれば、保険会社は無駄な裁判等を嫌うので、交渉による解決で終わり、実際に裁判等を行わないケースもあります。

 ただし、被害者ご自身に交通事故の発生について過失があった場合、その分は損害賠償額から引かれます。人身傷害特約は過失があっても支払われるのですが、上記それぞれの支払額から、以下のように算出できます。

(例) ...

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