自賠責の後遺障害審査で非該当、もしくは想定より低い等級しか認定されなかった・・納得のいかない被害者さんは、異議申し立て(再請求)を検討します。相談の一定数は異議申し立てとなります。    さて、異議申し立てに関するノウハウですが、ネット情報は玉石混合ながら、多くに一致しているポイントはこれです。  

 新しい証拠を提出すること

   新しい医証が提出されて初めて、もう1度、審査・調査する必要が生じるのです。前回、提出した内容での審査は終わっているのです。前回と同じ書類を再提出して、「もう1度よく見てくれ!」「前回の判断は間違っている!」とまくし立てても、自賠責側は基本的に聞く耳を持っていないのです。確かに、微妙な判断で左右される障害の場合、再検証による認定内容の変更はあります。しかし、それはレアケースと心得えるべきです。

 認定結果に諦めがつかず、毎年のように異議申し立てをしている人もいるようです。まるで、ライフワークです。何度、同じ書面で勝負しても無駄でしょう。また、新たな診断書、新たな検査結果を追加したとしても、既提出の診断内容を覆すほどのものでなければ、これも同じことです。総じて、”初回申請で勝負を決められなかった不利”を噛み締めることになります。

 相談会では、他事務所に再申請を依頼したものの失敗したケースから、その異議申立書を目にすることがあります。よく出来ているものもありますが、一方、費用をとっていながら疑問を持たざるをえない書面も目にします。失敗例から学ぶ、ではありませんが、残念な例を挙げたいと思います。   ○ 誰でも「すごく痛い」と言います

 被害者が自らの症状を切々と語ります。いかに、後遺症で苦しんでいるか・・。審査側も人の子、確かに感じ入ることはあるかもしれません。しかし、自賠法に則り、他覚的所見(医師の診断)から導き出される症状・数値が基準を満たさなければ、無駄となります。

 多くの被害者は、感情をぶつけるだけの異議申し立てを、永劫に繰り返すことになります。 ○ 弁護士は医師ではありません

 ある弁護士の書面ですが、医学書から学説を引用し、自賠責判断が間違っている事をつらつら書きつづっています。緻密な分析はまるで研究医、文章は裁判の準備書面のように構成されています。さすが大したものだと感心しますが、これではダメです。自賠責側も顧問医がおります。自賠責でも2度目の申請ともなれば、顧問医が分析・判断することになります。それが、弁護士の分析と一致していれば可能性は開けますが、それだけでは足りません。

 そもそも、弁護士は医師ではありません。自賠責の顧問医は、被害者を実際に診ている主治医の新しい意見、専門医の診断書、検査結果を付せば、真剣に検証するでしょう。それらを欠いた、医師ではない素人の分析など、いくら論理的に文章を積み上げても、「新たな証拠」にはならないのです。

 論理的に積み上げた分析は、ジャッジする第3者(=裁判官)が存在する訴訟での手法です。自賠責の審査はあくまで片面的審査です。自賠責側と意を同じくしなければ、等級は覆りません。自賠責を論破してドヤ顔?実に弁護士らしい陥穽に落ちてしまうのです。   ○ ...

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 ここまで毎度のごとく、人身傷害をディスってきました。裏を返せば、発売当時、保険に関わる者すべてが「本当にいい保険がでたものだなぁ」と大歓迎の保険だったのです。  

「夢の全額補償」 と 「安心の実額補償」

   「夢の全額補償」とは、自身の過失に関わらず、損害の全額が支払われる、しかも、相手との示談を待たず、支払ってくれる・・保険の常識を覆すものです。三井住友さん、あいおいニッセイ同和さんはこれを捨て去りましたけど。

 「安心の実額補償」とは、死亡で○○万円、通院1日あたり○○円と、保険金額が決定している状態で契約する従来の保険ではなく、治療費や休業損害を実費で支払うことです。これによって、充実した補償が得られるはずですが、問題は、慰謝料や逸失利益といったものまで保険会社の基準で計算されてしまう点です。

 人身傷害は元々、アメリカのNo Fault保険をベースに日本版を開発したものです。訴訟社会のアメリカでは、交通事故も当然に長い争いとなり、少なからず訴訟に発展します。No Fault保険は、相手との示談を待たずに、当面の補償が得られる画期的な保険なのです。ただし、No Fault保険には慰謝料や逸失利益は含まれません。この部分は簡単に決まるものではなく、多くは交渉や訴訟の末に決まるものです。その金額も人によって差が莫大です。よって、保険会社が安易に自社基準で決定するに馴染まないのです。ところが、日本の人身傷害は、これらを入れてしまった・・これが、支払保険金算定の問題(訴訟基準差額説、人身傷害基準差額説)として残ってしまったのです。

 私は、人身傷害はその商品開発自体に問題があったと思っています。

 実は、保険会社の立場も理解できるのです。保険会社はそもそも人身傷害を補償保険として売りたかった、ところが勢い余ってか、慰謝料や逸失利益など賠償保険と重なる項目を混ぜてしまった・・。

 それでも、事故の責任が100%自分にある事故や自爆事故の場合、今までは補償保険である自損事故保険のみ、あとは、自身で加入している傷害保険や共済しか頼れなかったところ、人身傷害で治療費や休業損害が実額で確保でき、さらに、自分が悪いのにも関わらず、慰謝料や逸失利益など賠償的なものまで払ってくれる・・これは画期的なことです。

 また、事故の加害者が無保険で(あるいは、最悪の無自賠)あっても、人身傷害で保障されるのです。無保険の加害者はたいてい支払能力がありません。今までは相手の自賠責、あるいは政府の保障事業への請求が残された手段でした。被害者は苦労して、その手続きをするしかなかった・・しかし、人身傷害が(裁判で勝ち取る額より低いとはいえ)慰謝料や逸失利益を払ってくれるのです。

 つまり、この2ケースの場合、人身傷害は被害者を助ける新たなセーフティーネットになったのです。その大恩ある保険会社さんに向かって、「慰謝料・逸失利益を裁判基準で払って」は、図々しいにも程があると思います。

 私が提唱しているのは契約者・保険者(保険会社)双方にフェアな契約、納得のいく支払基準にして欲しいことです。

 やはり、加害者が存在する場合、相手が無保険の場合、自損事故の場合、支払基準を分けるわけにはいかないでしょうか。

 それは、以前の記事 ⇒ 人身傷害特約 支払い基準の変遷 ⑱ 最終回 誰がために金は成る?  

第6条 損害額の決定(理想)

(1)損害の総額は当社の基準で算定します。

(2)相手からの回収金、もしくは相手との交渉で決まった総損額が(1)の金額を上回る場合、弊社と協議の上、(1)の規定に関わらず、その金額を総損害額とみなします。  ただし、自損事故の場合、相手からの回収金がない場合は、この限りではない。

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 現在、人身傷害の支払基準は各社、一応の落ち着きをみせたようです。

 平成24年2月の最高裁判決「裁判基準差額説」を受けて、敗訴となったあいおいさんがいち早く約款を現在に近い内容に改定し、各社もそれぞれ知恵を絞って(?)、人身傷害基準での支払で済ますように工夫した結果です。他の2グループを復習します。   ○ 東京海上日動さん

なお、賠償義務者があり、かつ、判決又は裁判上の和解において、賠償義務者が負担すべき損害賠償額がこの人身傷害条項の別紙の規定と異なる基準により算定された場合、であって、その基準が社会通念上妥当であると認められるときは、自己負担額(被害者の過失分)の算定にあたっては、その基準により算定された額を(2)の規定(=人身傷害の支払保険金)により決定された損害額とみなします。    私が読んだ保険約款でもっとも難解な文章です。弁護士先生も理解に苦しんでいます。

 この条項で、「人身傷害を先行し、後に裁判で勝ち取った額から返す分は、裁判で決まった総額を基に計算します」と、裁判基準差額説に適応させましたが、判決で宮川判事が宿題とした・・「人傷か賠償か、請求の順番で被害者が得る保険金が変わるのはおかしい」という問題は解決していません。完全にスルーされています。事実、この数年間、連携弁護士はがいくつかの事案で、賠償先行の末、人身傷害に被害者の過失分を請求したところ、「上の規定は求償の場合であって、賠償先行し、そこで決まった裁判基準額を丸々払う規定など約款のどこにもありません」とはねつけられています。約款解釈ではそうなりますが、これは約款の不作為であって、納得できないものです。   ○ 三井住友さん

第5条(損害額の決定)

(2)賠償義務者がある場合には、保険金請求権者は、(1)の区分(=傷害、後遺障害、死亡)ごとに<別紙)(=人身傷害支払基準)に定める基準により計算された金額のうち、賠償義務者に損害賠償請求すべき損害に係る額を除いた金額のみを当社が人身傷害保険金を支払うべき損害の額として、当社に請求することができます。

 太字は、つまり、自身の過失分を指します。私達はこの条項を「過失分限定払い」と呼んでいます。この条項によって、人身傷害に先に請求しても、人身傷害発売以来の売りだった「夢の(過失減額のない)全額補償」はダメになったのです。三井住友さんやあいおいニッセイ同和さんは、人身傷害そのものを改悪させたと言っていいでしょう。さらに、

① 当社と保険金請求者との間の協議

②  ①の協議が成立しない場合は、当社と保険金請求者との間における訴訟、裁判上の和解または調停。    支払保険金はこの2行で決定すると・・つまり、「加害者との裁判で決まった額を認める」とはしていません。まず、協議、そして、まとまらなければ、「うちに保険金請求訴訟を起してね」と居直り約款で締めくくっています。なんとしてでも裁判基準では払いたくない強い信念を感じます。この点のみでは、損J日興は潔いと思います。    そして、両グループとも、無保険車傷害保険は人身傷害に組み込まれ、支払基準を同じくしています。

 つづく  

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 昨日の約款条項を、損保ジャパン日本興亜さん(平成30年1月版)から確認してみましょう。

第6条(損害額の決定)

(3)(1)および(2)の規定にかかわらず、賠償義務者があり、かつ、賠償義務者が負担すべき法律上の損害賠償責任の額を決定するにあたって、判決または裁判上の和解において(1)および(2)の規定により決定される損害額を超える損害額が認められた場合に限り、賠償義務者が負担すべき法律上の損害賠償責任の額を決定するにあたって認められた損害額をこの人身損害条項における損害額とみなします。 ただし、その損害額が社会通念上妥当であると認められる場合に限ります。

※ 緑字は弊社が定める損害算定基準に従い算定された金額=人傷基準 を指しています。    普通なら、ここで、「あぁ、ついに裁判基準を認めてくれたのだな」と思ってしまいます。    ところが、以下の8条で、「ただし、限度額があります。それも人身傷害の基準額です」と・・   第8条 (支払保険金の計算)

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毎度お馴染み、人身傷害ウォッチャーの秋葉です。 久々にこのシリーズを続けます。    以前まで・・・人身傷害の約款改悪シリーズ 夢の全額補償が破壊された ①    今回の問題ですが、以前から損保ジャパン日本興亜のグループは賠償先行でも人傷先行でも、裁判となれば、その基準を総損害額とみなす規定であることを評価して、「24年2月最高裁判例に応じた約款改定をして、潔い」としました。しかし、ある約款条文を見落としていました。これは既に、あいおいニッセイ同和さんが採用していた、上限規定です。これについては過去記事をご覧下さい。    人身傷害の約款改悪シリーズ 夢の全額補償が破壊された ③    この③で指摘していることは・・・「人身傷害の損害額について、裁判で決まった額を総損害額と認めますが、支払う人身傷害保険金は限度があり、その限度額は人身傷害基準で計算された額です」との条項によって、以下の不都合が起きることです。

 自身に過失が大きい場合、例えば80:20ですと、裁判で相手から20%を回収し、次いで自契約の人身傷害に80%を請求しても、人身傷害の限度額規定によって、この裁判基準の80%は確保できない、つまり、総損害額の全額確保はできない問題です。

 これが、損保ジャパン日本興亜の約款にも含まれていたのです。書き方が巧妙で、気付くのが遅れました。この条項は、日本興亜と合併を機とした約款改定(平成26年7月1日~27年9月30日)から確認できます。この約款によって、裁判基準額で人身傷害(無保険車傷害)を回収する方法が潰されています。具体的に説明します。

 加害者が無保険で過失割合は0:100、相手が一方的に悪い事故です。この場合、相手からの回収は諦め、自契約の人身傷害に請求することが、残念ながら普通のことでした。多くの交通事故相談でも、そのように回答しているようです。しかし、私達が以前から推奨してきた策は、「まず、相手と裁判して、(すんなり回収できれば解決ですが)、相手の支払可能の有無に関わらず、判決額を確保します。

 そして、その額を人身傷害、あるいは無保険車傷害に請求するものです。

 この、いわゆる宮尾メソッドを全国の弁護士に流布してきました。

 人身傷害の約款では裁判基準で支払うか否か、長い間、不明瞭な記載が続きました。これが平成24年2月の最高裁判例で定まったのですが、定まったのはあくまで、人身傷害の先行請求後の求償額についてです。これを受けて、各社、約款改定しましたが、どうもスッキリしません。東海のグループは求償規定のみで、賠償先行については記述無し(つまり、無視?)、三井住友のグループは「協議」で逃げて(?)います。

 また、無保険車傷害保険が人身傷害に併存しており、その支払基準は、そもそも「まず、保険会社基準で計算しますが、裁判となればその額を支払う」としていましたので、支払基準のダブルスタンダード状態だったのです。

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 先日の代理業協会のセミナーから、反響が大きかったテーマを少し取り上げます。    私の保険会社での研修時代は、SC配属時も含め、徹底的に知識を詰め込まれましたが、何故か後遺障害の知識だけはポッカリ穴が空いたように、学ぶ機会がありませんでした。あたかも後遺障害だけを避けているかのようです。

 また、ある代理店さんから聞きましたが、「秋葉事務所は保険会社の支払を増大させる、リザルトを悪化させる立場の人間」であり、拒絶感をもっているそうです。しかし、講義を聴いた皆様はお分かりと思います。保険とは適正な支払と、それに応じた掛け金によって、制度が保たれているものです。支払いの増大は、掛金値上げ、あるいは補償内容の縮小で調整するものです。本来、保険会社が払い渋りをする必要などないのです。それなのに、保険会社や代理店さんが、自らのお客様に対して後遺障害を秘匿し、不当に低い支払いをすることは、むしろ、このバランス・均衡を阻害するものです。

 そして、真にリザルトを悪化させる者は不正請求者のはずです。この者達が共通の敵であり、保険会社や代理店さん、そして交通事故に携わる者すべてが、協力してその排除に注力すべきなのです。適正な保険金支払と、リトン・ベイシス・ロスレシオから適正な保険料が算出されること、これこそ、人智が生み出した保険と言うシステムだと思います。  

排除すべき被害者御三家

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(Q1) 会社で禁止されているマイカー通勤で交通事故受傷したのですが、通勤災害の適用はできますか?

(A) 通常用いられる交通方法である限り、通勤災害となります。 労災保険法7条の2では、「通勤とは、労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路および方法によって往復することをいい、業務の性質を有するものを除く、」 と規定しています。つまり、勤務先がマイカー通勤を禁止していたとしても、先の要件に合致しているか否かで判断がなされます。したがって、労災はOKですが、会社は嫌な顔をすると思います。やはり、会社のルールも守るべきでしょうか。   (Q2) 出張中の事故?  弊社の社員の井上さんが鹿児島に出張しました。駅近くの酒屋で土産の焼酎を物色中に、酒屋の店舗に運転を誤って飛び込んだ自家用車の衝突を受け負傷し、現在入院を続けています。 土産物の物色中は、厳密には業務ではありませんが、業務災害の適用は可能でしょうか?

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 秋葉事務所では、交通事故被害者が労災も併せて請求できる場合、積極的にお手伝いをしています。自賠責で揃えた書類のコピーが使えますので、その申請作業など、行きがけの駄賃に等しいものです。

 後遺障害は労災と自賠、両方に請求はできますが、丸々二重取りはできません。どちらか先に入金した場合、片方は重なる部分を計算・控除します。これを、支給調整と言います。

 問題は労災7級以上の重傷者です。7級以上は一時金ではなく、年金払いとなりますので、支給調整の計算が困難です。そこで、特別給付金などの一時金は即時に支払われますが、年金は数年間、支給据え置きの措置となります。この据え置き年数は長らく3年でしたが、最近、改正されました。詳しくは、以下、労災の文章を読んでみましょう。(通達を原文のまま転載しました)

第三者行為災害事案に関する控除期間の見直しについて

{現状}

○ 災害事故が第三者の行為によって生じた事案については、被災労働者が、労災保険の請求権と第三者に対する損害賠償請求権を同時に取得する場合がある※。

※ 例えば、仕事中の交通事故について、被労働者が、労災保険の請求権に加え自賠責等の損害賠償請求権を取得する場合   ○ 被労働者が第三者から損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険供給を控除することができるとされており、現行では控除を行う期間を3年間としている※。

〔控除期間が3年である理由〕

○ 労災保険法は被害者の保護を第一の目的としていることから労災保険給付の対象となっている災害について多年にわたる控除を行うことは労災保険法の制度の趣旨に反すること。 続きを読む »

 今月号の通信で特集した「労災」ですが、よくまとまっていましたので、こちらにも掲載したいと思います。    労災は大きく分けて、「業務災害」と「通勤災害」です。補償内容については、労働基準法に「災害補償」に関する条文が定められています。条文に沿って、補償内容を確認しましょう。   【1】補償内容(第8章 災害補償)    (1)療養補償(第75条)

・・・労働者が業務上、ケガもしくは病気にかかった場合、その治療費を支払います。

(2)休業補償(第76条)

・・・ケガや病気での療養で仕事を休んだ場合、賃金の60/100(平均賃金)を休業4日目から支払います。 (3)障害補償(第77条)

 ・・・ケガや病気で障害が残った場合、その程度(1級~14級)に応じて、補償金がでます。7級以上の重い障害には年金での支払いとなります。

(4)遺族補償(第79条)

(5)葬祭費(第80条)

 ・・・死亡の場合、平均賃金の1000日分が支払われます。   葬祭費は平均賃金の60日分。   【2】労災使用のメリット   (1)全額補償される!

 ・・・健康保険のように、治療費の自己負担はありません。又、交通事故の場合で、自己にも責任がある場合、過失減額がありますが、労災は過失割合に関係なく100%支払われます。

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続いて任意保険です   ③ 任意保険会社への損害賠償請求の時効の起算点・時効期間    損害賠償請求権は、民法724条が適用されるので、被害者(死亡事故の場合は相続人)が「損害及び加害者を知った時」を起算点として3年間行使しないときは時効によって消滅します。具体的には、

A:物損による損害は事故日の翌日から起算して3年

B:傷害による損害は事故日の翌日から起算して3年(後遺障害による損害は症状固定日の翌日からです)

C:死亡による損害は死亡日の翌日から起算して3年

なお、ひき逃げ等で加害者が不明の場合は、除斥期間により、事故から20年で請求権は消滅します。   これまで述べてきた時効消滅を中断させる方法として、被害者から加害者側に事故に関するなにかしらの請求をするか、加害者から債務の承認がなされること、があげられます。    債務の承認とは、被害者に損害賠償請求権があることを加害者側が認めることをいいます。

 具体例としましては、加害者側の任意保険会社や、労災から治療費等の支払があったこと、加害者側の任意保険会社等が作成した債務の存在を認める何かしらの通知(日付のある書面)があること等があげられます。

 仮に、時効期間を経過した場合でも、加害者側が、その時効を援用(時効を主張すること)しない限り、被害者は請求が可能です。

 任意保険会社や自賠責保険等は時効期間が経過した場合でも、あえて援用しないで支払対応してくれる場合も多いものです。保険会社は、やはり人を助ける企業ですので、良心的と言えます。しかしながら、他方で請求内容に不正、疑問がある場合や、保険会社から完全に相手をしたくない人と思われてしまった被害者の場合は、遠慮なく時効を援用してきます。

 保険会社担当者も感情ある人間です。どんな時でも紳士的に対応することは損ではないということでしょうか。  

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時効について復習します    被害者請求や任意保険会社への請求は事故後、いつでも必ずできるわけではなく、時効期間を経過すると請求できなくなる可能性があります。

 交通事故で時効が問題になる主な場合として、①自賠責保険への被害者請求権の行使の場合、②労災の場合、③任意保険会社への損害賠償請求の場合、の3点があげられます。

① 自賠責保険への被害者請求権の時効の起算点・時効期間

 まず、自賠責法が改正されたため、(1)平成22年4月1日以降に発生した交通事故と、(2)平成22年3月31日以前に発生した交通事故とで、時効期間に変化があります。なお、自賠責法改正により、時効期間が2年から3年となりました。

(1)平成22年4月1日以降に発生した交通事故の場合

A:傷害による損害の場合は、事故日の翌日から起算して3年 B:死亡による損害の場合は、死亡日の翌日から起算して3年 C:後遺障害による損害の場合は、症状固定日の翌日から起算して3年

(2)平成22年3月31日以前に発生した交通事故の場合は、上記各3年がすべて2年になります。   ② 労災への時効の起算点・時効期間

(1)療養補償給付のうち、療養費用の支給の場合は療養に要する費用を支払った日、又は費用の支出が具体的に確定した日ごとにその翌日から起算して2年

(2)休業補償給付の場合は、療養のため労働することができないために賃金を受けない日ごとにその翌日から起算して2年

(3)介護補償給付の場合は、介護補償給付の対象となる月の翌月の1日から起算して2年

(4)葬祭料の場合は、労働者が死亡した日の翌日から起算して2年

(5)障害(補償)給付の場合は、傷病が治った日(治ゆ日)の翌日から起算して5年

(6)遺族補償給付の場合は、労働者が死亡した日の翌日から起算して5年    わかりやすく言えば、上記のうち、(5)障害(補償)給付の場合と、(6)遺族補償給付の場合とは、時効期間が5年であり、その他は2年です。  

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 東京はじめ関東地方は4年ぶりの大雪となりました。昨日、社員は3時に帰宅としましたが、少し遅れて退社した者は渋谷の大渋滞に引っかかってしまいました(帰宅まで3時間半もかかったそうです)。

 火災保険の家庭用商品の多くで、雪災は支払いの対象となっております。この機に火災保険の雪災について復習しましょう。以下、ベーシックな商品の解説で、最新の商品までチェックしていません。詳しくは保険証券と約款を確認して下さい。

 また、転倒してケガをした場合(入院・通院を伴うケガ)は、ほとんど傷害保険で支払い対象です。火災保険に傷害特約が付いている場合は要チェックです。     (1)風災・雹災(ひょうさい)・雪災

 風災・雹災(ひょうさい)・雪災により家屋が損傷した、などの損害に、保険金をお支払いします。対象は家屋のみならず、通常、ガレージ・物置・門塀垣根も含まれますので証券にそれらが含まれているか確認して下さい。今回もガレージが潰れた被害が多かったようです。また雨どいが落ちたなどの損害も対象なので、家の周りをチェックして下さい。

★ フランチャイズ20万とは?

 注意が必要なのは、「20万円以上の損害に対し支払います」と条件が付いている場合です。これは20万円以上の損害となった場合は支払いますという条件で、19万円の見積もりでは保険は出ませんが、見積もりが20万円を超えれば全額支払われます。 続きを読む »

 毎度、華々しい実績を披露していますが、反面、失敗例も存在します。とくに、異議申し立ての成功率は50%前後であり、半分が残念な結果となります。依頼者さまの強い依頼の希望があったにせよ、「無理です」とお断りするべきなのです。再請求の為に、貴重なお金と時間を浪費するのは被害者本人です。被害者さまにとって、結果は常に100%でなければならないのです。

 本件は、認定基準どおりの審査結果ですが、矛盾をはらんだものです。以下、経過をみて下さい。敗北は実績ページに記録されません。それでも、秋葉自身の戒めとして、ここに記録を残します。 「くそっ!」・・依頼者に申し訳ない

変更なし:大腿骨骨折 異議申立(80代女性・熊本県)

【事案】

自動車運転中、センターラインオーバーの対向車と正面衝突、両大腿骨の骨幹部~顆上部を骨折、その他、わずかに腰椎と恥坐骨を骨折したもの。事故前は現役で働いており、年齢以上の体力があった。それでも、高齢ゆえに、両脚の骨折は自力歩行までの回復が危ぶまれた。その後、髄内釘とプレート固定術を経て、歩行回復訓練を続けたが、やはり、歩行器の使用による独歩が限界であった。

【問題点】

既に事前認定で審査されており、右大腿骨は変形による12級8号となったが、左大腿骨は骨癒合が成されたとして、疼痛の残存(神経症状)=14級9号に留まっていた。この結果をもって弊所に相談にいらした。上位等級への変更の可能性を検討すべく、画像を精査した。腰椎と恥坐骨は癒合しているので14級が限度。右大腿骨に一部癒合不良があることに気付いたが、現状、癒合の進行を待つ状態から、再請求の決断に踏み出せなかった。

その後、癒合不良を改善すべく、医師は再手術を決断、大腿骨のわずかな骨欠損部に腸骨を埋没、さらにプレートを固定を追加することになった。ここに至って、ご家族から異議申立ての強い希望を受けて、再び、熊本へ飛ぶことになった。

【反省ポイント】

手術は成功し、術前より骨の強度は増したと言える。しかし、疼痛は相変わらず、なんと言っても、癒合不良という事実があったことが、本手術で証明されたことになる。つまり、癒合不良=器質的損傷が確認できる疼痛であれば、”頑固な神経症状を残すもの”12級13号の要件に合致する。つまり、左右の脚の併合で11級とすべきである。再請求では、この事情を説明した申立書を作成した。添付資料には、受傷後から再手術後に至るまでの10数枚の画像の分析資料、いくつもの手術痕を写した写真、事故前後の日常生活の変化の記録を付した。治療経緯と残存する障害の実態を訴える精密な資料を提示し、自賠責の実情を汲んだ認定を期待したのである。

しかし、「再手術で癒合不良は改善されたので、14級は変わらず」との結果に。それでは、最初の認定、14級は間違っていたのではないか!との反論が残る。このような経緯もあった上、両脚を折って、その後何度も手術を重ね、歩行困難にまで陥ってしまった労苦は顧みられず、基準に沿ったジャッジが下った。

では、相談のあった時点=再手術前であれば12級を認めたのか?このような悔恨も生じる。しかし、骨の変形は画像で判定されるとはいえ、1度目の審査で「(問題なく)癒合された」と判断された以上、容易に覆さないであろう。これが、人が審査するものであるところの難しさかもしれない。本件でも”初回申請で勝負を決めるべき絶対的な教訓”を噛み締めることになった。   追伸:引き継いだ連携弁護士はこの結果を受け、再手術までの治療費を拡張請求し、加えて慰謝料の増額事由に活かすことにしました。再調査の努力と資料は決して無駄にしません。  

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 自賠責保険の資金、つまり、契約者から集めた掛金が勝手に他所に貸し出して、戻ってこない? 問題があります。

 簡単に説明しますと・・自賠責保険の支払い準備金は、所管の国土交通省、要するに国が管理しています。交通事故被害者救済のために貯めたお金ですが、割と余裕を持って貯めてこんでいるものです。これを、国が財政難の名目で、自由に使えるお財布へ一時的に貸し出しをしています。しかも、一向に返さない・・。この問題ですが、以下、毎日新聞さんの記事を読んでみましょう。  

度重なる延期 6000億円超の期限が来年度に 

 交通事故対策のために限定して集められた自賠責保険の資金が、国の歳入不足を補填するため一般会計に繰り入れられている。それを自賠責保険の勘定に繰り戻す期限が来年度に迫っている。ところが、来年度予算の概算要求額は4年連続で100兆円の大台を突破し、拡大に歯止めがかからない状態だ。その一方で、2019年10月に予定されている消費税率の10%への引き上げは、これまで2度にわたり繰り延べされており、ひょっとしたら3度目があるかもしれない。6000億円を超す自賠責の資金は一般会計に取り込まれたまま戻ってこないのではないかと、関係者の心配は募るばかりだ。

 一般に自賠責保険と呼ばれている自動車損害賠償責任保険は、交通事故に遭った被害者の救済を目的とした制度だ。自動車と原動機付自転車で公道を走る場合、自賠責保険に加入した車両以外は運転してはならないことから、強制保険とも形容されている。

 1955年の自動車損害賠償保障法施行に伴い開始され、あらかじめ自賠責保険に加入することで、被害者は被害者請求制度を使って交通事故の加害者を介さず、最低限の損害賠償金を被害者が直接受け取ることができる。

 自賠責保険に加入していない車両が引き起こした事故や、ひき逃げで加害者が不明なケースでも、交通事故の被害者補償を行っている。公益性の高い制度で、その原資は、自賠責保険の保険料がベースとなっている。

 この自賠責保険を基盤に運営されている自動車損害賠償保障制度は、01年の自賠法改正で現在の仕組みに移行した。損害保険会社の支払い能力に問題がないとして、政府が行っていた再保険の仕組みを廃止した。再保険料の運用益などプールされていた約2兆円の資金のうち1兆1000億円は保険料の引き下げなどユーザーの利益還元に用い、残る8700億円は積立金とし、その運用益を被害者救済と事故防止対策のための資金にすることになった。

 ところが、再保険制度が廃止となる前から、政府が運営していた自賠責の再保険運用益は「埋蔵金」とみなされるようになり、財政赤字の穴埋めのため、自賠責にまつわる特別会計から一般会計へ繰り入れられてしまった。

 94年度と95年度で1兆1200億円が一般会計に繰り入れられた。96年度から繰り戻しが始まったものの、基金への繰り戻し額は今年度末で6921億円にとどまり、元本で4848億円、その間の運用益相当分の1321億円と合わせ、6169億円が一般会計から返還されないままになっているという。  

積立金の取り崩し続く

 その結果、自動車事故対策機構(NASVA)などが行っている被害者救済や事故防止のため、その運用益を充てるとされた積立金の額は1786億円に細ってしまった。被害者救済と事故防止のための年間の経費127億円のうち運用益で賄える分は約30億円で、毎年100億円程度は積立金を取り崩さざるを得ず、このままでは制度の維持が心配される事態に至るのではないかと心配されている。

 被害者救済と事故防止対策の充実が、このままでは妨げられてしまうとして今年9月には、国土交通省が設けた「今後の自動車損害賠償保障制度のあり方に係る懇談会」と、金融庁の「自動車損害賠償責任保険審議会」のメンバーを中心に、「自動車損害賠償保障制度を考える会」をつくり、意識障害の交通事故被害者の家族でつくる会や、自動車産業の労使でつくる団体、損害保険会社の労組連合会などの支援を受け、一般会計からの全額繰り戻しを実現するため、政官界に向けた要請活動を行うことになった。

 積立金の運用益をもとにした被害者救済と事故防止対策については、交通事故の件数や死者の減少とは異なり、対応のさらなる充実が求められている。それが、「考える会」の要請活動の背景にあるようだ。

 交通事故による死者数はさまざまな対策の結果、大きく減っているものの、重度の後遺障害者は交通戦争と言われた時代と比べそれほど減っていない。救急医療も含めた医学の進歩や車の安全性能が向上し、道路設備の整備も進んだこともあって、死亡事故になる確率が減っている。

 交通事故により遷延性意識障害を負った重度の後遺障害者については、積立金の運用益をもとにNASVAが運営している療護施設の役割が大きい。NASVAが運営している療護施設での症例は、脳神経外科学会や意識障害学会での研究発表を通じ学術的にも貢献し、これからの医療にとって最大の課題と言ってもいい大脳機能の解明にも役立つだろう。意識障害の患者の家族を長期に支えるための介護料の支給も重要な役割だ。

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 今年も多くのセミナーを開催しました。中でも損保代理店さま向けのセミナーでは、交通事故最前線の皆様であるゆえ、たくさんのご参加、そして、ご質問を頂きました。久々のシリーズで、質疑応答例を紹介します。(個人情報に配慮し、内容を改変しています)   (質問:相手が保険を使わないと言って・・)

交差点で自動車同士の接触事故となりました。幸い、ケガもなく、自動車の修理費は30万円程でしょうか。当然、お互いの任意保険会社で交渉・示談しましょうと持ちかけました。ところが、相手は「俺は悪くない」の一点張りで埒が明かず、分かれて保険会社に事故報告しました。しかし、相手の保険会社は対応してくれません。相手の担当者が言うには、「契約者さんが保険を使わないと言っていますので、弊社としても対応できかねます」・・だそうです。こんなことが許されるのでしょうか(怒)!

(回答)

 契約者が保険を使わないのだから、対応できない・・・頭にきますが、一見、納得させられそうな理屈です。しかし、ほとんどすべての自動車保険約款には”直接請求権”という条項があります。これは、一定の条件のもとに被害者側が賠償請求してきた場合、保険会社は契約者の意向に関わらず、対応しなければならないルールです。

 例えば、被害者が裁判で訴えてきた場合、判決・和解がでたら、加害者の保険会社はその額を請求されたら応じなければなりません。また、加害者・被害者間でお互いに賠償金のやり取りをしないと書面で合意したケース(もっとも、この場合、最初から保険会社同士の交渉・示談になりますね)、加害者側が死亡や破産したケースです。

 つまり、先の相手損保担当者の(対応できないと言う)言い訳は約款違反です。「直接請求権の条件を満たせば対応できます」と回答すべきです。もっとも、保険会社のSC職員であっても、この条項を良く知らないようです。信じられないですが、すっとぼけているのではなく、本当に「初めて聞いた」との担当者さんに何人も出くわしました。     以下、約款(損保ジャパン)を転載します。対人、対物の第8条です。

 より詳しく知りたい方は ⇒  事故の相手が保険を使ってくれない を熟読して下さい。  

 第8条(損害賠償請求権者の直接請求権) (1)対物事故によって被保険者の負担する法律上の損害賠償責任が発生した場合は、損害賠償請求権者は、当会社が被保険者に対して支払責任を負う限度において、当会社に対して(3)に定める損害賠償額の支払を請求することができます。 (2)当会社は、次の①から④までのいずれかに該当する場合に、損害賠償請求権者に対して(3)に定める損害賠償額を支払います。ただし、1回の対物事故につき当会社がこの対物賠償責任条項および基本条項に従い被保険者に対して支払うベき保険金の額(同一事故につき既に支払った保険金または損害賠償額がある場合は、その全額を差し引いた額)を限度とします。 ① 保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と損害賠償請求権者との間で、判決が確定した場合または裁判上の和解もしくは調停が成立した場合 ② 被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と損害賠償請求権者との間で、書面による合意が成立した場合 ③ ...

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 保険業界ではお馴染みの言葉ですが、一般的に知られていない用語があります。例え弁護士先生といえど、通じないことがあります。ここに、交通事故を解決すべき法律家に専門性があるか否かの境界線を感じることになります。つまり、保険用語がすらすら解る法律家は交通事故に精通していることになりますが、その逆は専門性に疑い有となるわけです。

 事務所内でも、時折、保険用語について解説しています。交通事故に携わる者が当然に知るべき用語を、この業務日誌でも取り上げていきたいと思います。 ① ノンフリート契約とフリート契約 

 フリート{fleet}・・・ 艦隊、(一国の)全艦隊、(商船・漁船などの)船隊、船団、(飛行機の)機団、(輸送車・戦車などの)車隊、<英和辞典>

 このような意味を持つ英単語ですが、自動車保険の世界では、”同一会社所有の自動車群”の意味を持ちます。フリート契約とは自動車保険の団体契約のようなものです。一枚の契約書で複数車両の契約をします。個々の自動車は明細書で管理することになります。

 個人で契約する自動車保険の証券に、「ノンフリート等級」という言葉を見かけます。これは、フリートのようにまとめて複数台契約ではなく、1台の契約であること、その無事故割引等級を示しています。無事故割引であるノンフリート等級は、標準的な会社で、1等級~20等級となっており、新規契約は6等級からスタートします。同居家族内で2台目を購入・契約した場合は、複数所有割引の特典として、7等級からのスタートになります。契約期間の事故数(保険を使った事故に限定)によって、この等級がダウンします。事故が無ければ1等級づつ上がっていきます。4年前の改定では、事故(による支払い)があった契約者は特別に「デメリット等級」(これも保険用語)に移行し、割引率、あるいは割増率が厳しくされました。

 では、フリート契約の無事故割引ですが、事故の件数でカウントしません。契約期間内での支払金額から、翌年の割引・割増率が上下動する仕組みです。大きな支払事故がかさむと、翌年の掛金がうなぎのぼりです。担当する代理店さんは事故の抑制に気を使うことになります。最も、死亡事故など、一気に数千万~数億円が支払われた場合は、「ヘビークレーム」(これも保険用語)扱いとして、その支払金額が無事故割引の算定に直接影響しない仕組みになっています。  

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 代理店さんがお客様にお勧めした保険・特約が必ずしも、付保頂けるわけではありません。それでも、代理店さまにおかれましては、契約の際に、「お勧めしていたが、お客さまの判断で加入しなかった」と「その保険・特約の説明をしていなかった」では、大違いです。前者はお客様も納得するしかありませんが、後者では信頼が揺らぐ事は間違いありません。これは保険代理業を営むプロにとって、常態的なテーマと言えるでしょう。今年の事例から、注意喚起の意味も込めて紹介したいと思います。(個人情報に配慮して、内容を改変しています)    自動車保険に契約しているAさん、同居の父が(認知症の影響か)赤信号で交差点を横断して、自動車と接触して高次脳機能障害となった件がありました。当然、自身の過失を大きく取られ、相保からの一括対応はありません。しかしながら、契約していた自動車の人身傷害は「搭乗中のみ担保」です。これは、”契約している自動車に乗っている時”にケガをした場合のみ、保険金を支払うと限定したもので、その分、掛金が少し安くなります。人身傷害は、契約者及び同居の親族(別居の未婚の子含む)が、他の車に搭乗中だけでなく、歩行中や自転車搭乗中のケガでも人身傷害保険が支払われます。人身傷害の補償範囲の広さを実感するものですが、掛金を安くするためか、わざわざ契約車両に乗っている時のみに限定して契約してありました。本件事故では当然に免責=”支払いなし”となります。

 後遺障害は恐らく3級以上です。少なくとも相手の自賠責保険から2000万円は回収できますが、賠償総額は4000万円を見込めます。つまり、わずか2000円掛金を安くした結果、2000万円を失うことになりました。保険設計上、ご契約者さまの同居に高齢者や子供さんがいれば、「搭乗中のみ」は避けるべきでしょう。さらに弁護士費用特約も未加入で、弁護士にも頼めず、自身で相手の自賠責に被害者請求をする難儀となりました。    通販系の保険なら、自己責任で済まされますが、本件は代理店担当者がおりました。Aさんは事故後、初めて対応する保険契約があるにも関わらず、付保していないことを知ったのです。時既に遅しですが・・。担当者に責任はないとはいえ、悔やまれます。やはり、家族構成や自動車の使用範囲など、契約者さまの観察に遺漏無く、保険設計しなければなりません。保険契約とは、それだけ怖いものなのです。  

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 遅ればせながら、今夏の弁護士研修会で担当した、弁護士費用特約の各社比較から紹介します。    三井住友の不合理条項として、以前から取り上げてきた、弁護士費用特約の労災免責が最新約款(2017.4.1改訂版)から無くなっていました。えらく細かい事を言っているようですが、交通事故の現場で一体、何人がこの免責(つまり、保険がおりない)で泣かされたことでしょう。これを削除した三井住友さんの約款改正を称えたいと思います。是々非々でいきましょう。

 弁護士費用特約の労災免責とは? ⇒ 弁護士費用特約にまつわるエトセトラ ⑩

(改定=削除前の約款> 太字の部分です

(3) 当社は、次のいずれかに該当する被害を被ることによって生じた損害に対しては、弁護士費用保険金を支払いません。 ① 被保険者が麻薬、大麻、あへん、覚せい剤、シンナー等の影響を受けているおそれがある状態で発生した易体の障害または財物の損壊 ② 液体、気体(注13)まだは固体の排出、流出またはいつ出により生じた身体の障害または財物の損壊。だだし、不測かつ突発的な事由による場合を除きます。 ③ ...

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 交通事故でも健保が使える? 以前に比べ、この質問は大分減りました。長らく、病院窓口ですったもんだが続いてきましたが、病院側はもちろん、ネットのおかげで周知が進んだのかと思います。ただし、届出書類が必要になります。改めて復習しましょう。    交通事故のように第三者によって、起こったケガや病気は、本来、その第三者である加害者が治療費や休業補償費を負担すべきものですが、被害者は健保組合に届出をすることによって、健康保険による治療を受けることができます。この場合、健康保険で治療や休業補償を受けた部分について、健保組合が賠償請求権を代位取得(被害者に代わって健保組合がその請求権を取得する)します。

 健保組合が負担する治療費の範囲内で相手方もしくは、相手方が加入されている損害保険会社に損害賠償を請求することになりますので、健保組合に届出が必要となります(このことは法律で定められています)。   (事例)

1.自動車等の交通事故によりケガをした

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 比較的新しい生保商品ですが、最近、代理店さんと話題になったので、少し調べてみました。    平均寿命を超えて長生きしてもお金に困ることがないよう商品設計された「トンチン年金保険」と呼ばれる商品が生命保険会社から相次ぎ発売されています。死亡、解約での払戻金を少額に抑え、その分を長生きした人の年金に回す仕組みです。公的年金の上乗せとして加入を検討する人が増えているそうです。いわば、死亡リスク<長生きリスクの商品です。 (下図 4社比較:男性が50歳加入、70歳から受取を開始した場合)

 この4社の商品は、契約時に決めた支給開始年齢を超えると、それ以降は年金として保険金を毎年受け取ることができるという仕組みで、長生きすればするほど多くの保険金が得られます。しかし、年金額が払込総額を上回る「損益分岐年齢」まで長生きしなければ保険料の払い損になってしまいます。支給開始年齢に満たずに死亡した場合も、受け取れる払戻金は保険料より少なくなります。長生きすれば得、早死にすれば損、となる仕組みです。  トンチン保険の歴史は古く、名前は17世紀イタリアの銀行家、ロレンツォ・トンティ氏が開発したものです。トンティ氏は、当時のフランスの財政難を救うため政府にこの保険の導入を進言したとされています。国民から集めた保険料を運用し、利息分のみを年金として支払えば、年金原資分が国家に入るという仕組みです。欧米では17世紀に販売が開始され、フランス、オランダなど各国で盛況でした。

 日本では、「トンチン保険」は「死者の保険料で生存者が得する反道徳的商品」という批判から、これまで販売をためらってきました。しかし、環境は変わり、日本人の平均寿命は、男性が80.98歳、女性が87.14歳(2016年)。20年前に比べて、男性は3.97歳、女性は3.55歳延びています。つまり、長生きする人が増え、老後生活への不安は募るばかり、こうした背景が「長生きするほど得をする保険」の需要となったのです。さらに、保険会社側の事情も・・。保険数理の専門家で、慶應大学理工学部特任教授の山内 恒人先生によると、「背景にあるのは『低金利』です。1980年代後半に5.5~6.25%あった生命保険の予定利率は、現在0.25%と非常に低くなっている。あまりに予定利率が低いため、利回りの高い売れる保険を設計できなくなっていた。そこでたどり着いたのがトンチン保険で、従来の保険は、支給前に亡くなった契約者に支払った保険料を全額返していた。しかし、トンチン保険は7割を返し、3割を残った契約者に振り分けることで、低い保険料に抑えつつ、より利回りの高い商品を作ることができるわけです」。

 トンチン保険に加入するか否かを判断する際、ポイントになるのは「損益分岐年齢」です。以下、「グランエイジ」(日本生命)を例にとります。50歳から70歳までの間に毎月支払う保険料は50790円。支払い総額は20年間で約1219万円となる。70歳からは毎年60万円の保険金がもらえるので、受け取り金額が支払い総額に相当する1200万円に達するのはその20年後、つまり90歳まで生きなければ、保険金総額が保険料総額を下回ることになります。逆に、もし100歳まで生きるとすれば、1860万円を受け取ることができ、返戻率は152.5%となります。この「損益分岐年齢」は、各社88~92歳と、おおむね90歳前後となっています。「損益分岐年齢が男性の平均寿命より10年も高いうえ、90歳ともなれば必要な生活費の額も下がってくる。本当に加入すべきか、よく検討すべきでしょう」(山内先生)。  <日経新聞10/21、週刊ポスト様10/27号から引用>   

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