実話 隠れ特約に翻弄されて 第3話
いよいよ裁判が始まりました。まずは損害実費、既払額の確認からです。なにせ事故から時間がたっています。被害者Bさんにまったく責任のない事故なので、争点は「こちらの請求額が多すぎる!」の一点です。相手のみならず、自分の保険会社まで減額の大合唱、時間のかかる裁判となりそうです。
そして相手弁護士から謎の一言
「賠償額が裁判で決まれば、賠償額の49%をあ○おい保険会社から払います」。
は?何のこと?
えっ、年齢条件違反で保険がでないはずじゃなかったのですか???
始まったばかりですが、ここで物語を中断します。
私がなんでこの話をGW特集としてシリーズ化しているかと言いますと、「隠れ特約」は一つではないからです。「隠れ特約②~③」を紹介しましょう。
隠れ特約②: A『年齢条件特約の不適用に関する特約』
1.「年齢条件に違反」して被保険自動車を運転して起した事故を補償します。
2.『対人賠償』と『対物賠償』のみ補償
3.「家族か否か」、「免許を取ってからの期間」などの条件はありません。
4.年齢条件に適合した本来負担すべき保険料と、実際に負担した保険料との差額に応じて保険金は減額されます。(…だから49%か)
5.「記名被保険者・本人が年齢条件を満たしていない」場合は、そもそも適用できません。
隠れ特約③: B『運転免許取得者に対する「賠償損害」自動担保特約』
1.「免許を新たに取得した家族」が「年齢条件に違反」して被保険自動車を運転して起した事故を補償します。適用には保険会社の承認がいるようです。
2.補償の対象となるのは
・ 記名被保険者の配偶者
・ 同居の親族(記名被保険者またはその配偶者の親族)
・ 別居の未婚の子(記名被保険者またはその配偶者の子)
※ 別居の未婚の子でも、婚姻暦のある場合は対象外(逆に言えば婚姻歴がなければ何歳でもOK)
3.『対人賠償』と『対物賠償』のみ補償します。
4.支払われる保険金に②の「不適用特約」のような減額はありません。
そもそも昔から年齢条件から外れる運転者に被害にあい、被害者が補償を得られない悲惨な事故は何度も起こっていたのです。これを回避できる特約を作った保険会社の英断を称えたいと思います。この特約はAかBが保険会社によって選択されているようで、大手は以下のようです。
A:『年齢条件特約の不適用に関する特約』…東京海上日動、三井住友、あいおい
B:『運転免許取得者に対する「賠償損害」自動担保特約』…損保ジャパン
外資系はBの『自動担保特約』型もしくは「この特約なし」が多いようです。そしてこれらの特約は自動担保(勝手に契約に入っている)が基本です。しかし約款の隅っこに書かれてあるだけで、保険証券やパンフレット等には不記載が多いです。そしてなにより多くの損保会社社員、代理店も良く知りません。損保ジャパンの人身事故担当社員も全社『自動担保特約』だと思っていたようで、『不適用特約』の存在すら知りませんでした。
4連休後、物語は最終回