2. 骨盤輪内に収納されている臓器の損傷    骨盤輪の中には、S状結腸、直腸、肛門、膀胱、尿道、女性では、これらに加えて、子宮、卵巣、卵管、腟が収納されており、消化管は下腸間膜動脈、女性性器は卵巣動脈と子宮動脈、泌尿器系は内腸骨動脈により必要としている酸素と栄養素が供給されています。   ○ 排便障害

 骨盤骨折に合併するS字結腸・直腸の損傷ですが、人工肛門の造設などの重症例はなく、経験則では、程度は様々ですが便秘を残すものが圧倒的です。S字結腸に外傷があって、その結果、便秘になったものが対象で、便秘を残すものについては、肛門括約筋を支配している骨盤神経もしくは下腹神経に損傷が認められることが条件となっており、これは、直腸肛門機能検査を受けて立証します。その上で、排便回数が週2回以下の頻度で、恒常的に硬便であれば、11級10号の認定がなされています。

 9級11号は摘便(手で肛門から便をかき出す)が条件ですから、重度の介護状態が想定されます。この場合、介護等級である別表Ⅰの第1号1級、2級1号に内包されることになります。単独の9級11号認定は未経験です。

 逆に頻便(便意がしょっちゅう、便の回数が1日数度、単なる下痢ではない)の場合については、13級11号「臓器の障害」に属します。臓器の13級は、各臓器のちょっとした不具合をこの認定に当てはめています。    13級11号:胸腹部臓器の機能に障害を残すもの     以下は、排尿、排便、尿漏れの3点セットが認定された例です。

👉 ...

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ストラドル骨折・マルゲーニュ骨折、恥骨結合離開・仙腸関節脱臼における後遺障害のポイント>    不安定型の骨盤骨折が癒合不良となった場合、具体的には変形(文字通り形が変わってくっついた)や転位(ズレてくっついた)、もしくは偽関節(くっつかなかった)となれば、変形の12級5号となります。また、これら癒合不良に派生する後遺障害と内臓損傷、神経損傷における障害は以下の3つが想定されます。   ○ 骨盤骨折自体に関するもので、疼痛、股関節の可動域制限、骨盤の歪みによる下肢の短縮

○ 骨盤輪内に収納されている臓器の損傷・神経損傷による障害

○ 内腸骨動脈などの血管の損傷による障害    以下、骨盤骨折から派生する後遺障害を解説します。  

1.

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(2)恥骨結合離開・仙腸関節脱臼   ① 病態

 骨盤は左右2つの寛骨が、後ろ側で仙腸関節、仙骨を介して、前側で恥骨結合を介してジョイントしており、左右の寛骨は腸骨・坐骨・恥骨と軟骨を介して連結し、寛骨臼を形成しているのです。この輪の中の骨盤腔は内臓を保護し、力学的に十分荷重に耐え得る強固な構造となっていますが、大きな直達外力が作用するとひとたまりもなく複合骨折をするのです。     ② 症状

 骨折部の強い痛みで動くことができず、内臓損傷では、腹痛、血尿、排尿困難、排尿の制御ができなくなり失禁することや下血、性器出血を伴うことがあります。仙骨神経に損傷が及べば、排尿・排便障害となることがあります。「頻尿」は常に尿意があり、回数が増える。または尿漏れ。逆に「閉尿」は尿が出なくなります。便ですと、それぞれ頻便、便秘です。仙骨神経の損傷から下肢のしびれ、ひどいと麻痺で動きが悪くなります。   ③ 治療

 上図のような不安定損傷になると、観血的に仙腸関節を整復固定すると共に、恥骨結合離開についてはAOプレートによる内固定の必要が生じます。

 上のイラストは、右大腿骨頭の脱臼も伴っています。大腿骨頭の納まる部分である、寛骨臼の損傷が激しいときは、骨頭の置換術に止まらず、人工関節の置換術に発展する可能性が予想されます。

  ④ 後遺障害のポイント    安定型の骨折でも触れましたが、骨盤の変形を問うことになります。そこを参照下さい。    👉 骨盤骨折 ④ 後遺障害のポイント    ただし、骨盤の一部とも思える仙骨は、脊柱として判断されます。つまり、「脊柱に変形を残すもの」=11級7号の認定になるわけです。↓ ...

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 中断してていました骨盤骨折、シリーズを再開します。   👉 前回  ① 腸骨骨折   【2】骨盤骨折・不安定型

 前回の①~④までは、【1】安定型とのくくりで、骨盤輪にゆがみや崩れがなく、骨折が癒合することが多い傷病名から解説しました。今回からの不安定型は重傷と言えます。

(1)ストラドル骨折・マルゲーニュ骨折

① 病態

 骨盤は骨盤輪と呼ばれる内側でぐるりと輪を作る環状構造となっています。この骨盤輪が、一筆書きに連続しているので、骨盤は安定しているのです。両側の恥骨と坐骨の骨折で、骨盤輪の連続性が損なわれている状態をストラドル骨折と呼びます。

ストラドル骨折続きを読む »

< 後遺障害のポイント>   【1】後遺障害の前提

Ⅰ. 腸骨翼骨折に限っては、単独骨折であっても骨盤腔内に3000mlを超える大出血をきたすことがあり、その際は、出血性ショックに対応して全身管理を行う重症例となります。それ以外は骨癒合さえ問題なければ、後遺症なく回復傾向、等級も14級9号止まりか、痛みなどの神経症状が無ければ非該当になります。

Ⅱ.

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(3)尾骨骨折(びこつこっせつ)

① 病態

 仙骨の下についている骨で、しっぽの名残であり、尾てい骨ともいわれています。交通事故では、自転車、バイクでお尻から転倒したときに骨折することが多いのですが、尾骨は、退化した3~5つの尾椎が一塊となって存在しており、つなぎ目があることと、事故前から屈曲変形していることもあり、XPでは骨折と判断することが困難なことがあります。確定診断には、CT、MRI撮影が必要です。

 経験上、事故前にすでに軽い脱臼状態、変形や転位(折れて分離)しているなど、既往症もいくつか目にしました。産婦人科医に聞くと、経産婦で出産時に曲がったまま、それが残る例もあるそうです。   ② 症状

 尾てい骨部分に激烈な痛みがあり、歩くことや座ることで痛みが増強する。長時間、座っていると尾てい骨の痛みが強くなってくる。尾てい骨に痛みがあり、下肢にしびれがあり、歩きにくさを生じている。それでも、深刻な後遺症は稀で、後遺障害として認定されること少ないと思います。   ③ 治療

 治療は、通常は保存的に安静加療が行われています。   ④ 後遺障害のポイント

 シリーズの最後にまとめて解説しています。    ⇒ 骨盤骨折 ④ 後遺障害  

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(2)恥骨・坐骨々折(ちこつ・ざこつこっせつ)

① 病態

 骨盤骨折で経験上、最も多い例です。恥・坐骨②③は、前方と下方からの外力で骨折しており、恥骨と坐骨の両方が折れることも多く、併せて「恥座骨骨折」と書かれることが多いようです。

 交通事故では、自転車やバイクを運転中、出合い頭衝突で前方向から衝撃を受け、ドスンとお尻から落下して骨折しています。この事故発生状況では、腰椎の圧迫骨折を合併することもあります。   ② 症状

 横になっても座っても、鼠径部に強い痛みが生じます。坐骨骨折では、半腱・半膜様筋・大腿二頭筋により、骨折部は下方へ転位し、股関節の伸展運動ができなくなります。   ③ 治療

 片側の恥骨や坐骨の単独骨折は、ほとんどは安定型骨折であり、高齢者などは入院することがあるものの、手術に至ることはありません。安静下で、鎮痛薬や非ステロイド性抗炎症薬、NSAIDが投与されます。

 多くは、1週間の経過で歩行器を使用して短い距離を歩くリハビリが開始され、1~2カ月の経過で、後遺障害を残すことなく、症状は軽快しています。弊所でも認定例が無かったように思います。   ④ 後遺障害のポイント

 シリーズの最後にまとめて解説しています。    ⇒ 骨盤骨折 ③  

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 今年いくつか相談・受任を頂きました骨盤骨折について、交通事故110番から引用、シリーズで集中解説したいと思います。

 一口に骨盤骨折と言っても、骨折箇所や様態を細かく分類して覚えておく必要があります。まずは、安定型と不安定型に2分、それに属する傷病名別に整理します。   【1】骨盤骨折・安定型

 骨盤は左右の恥骨、坐骨、腸骨と仙骨で構成され、後方は仙腸関節、前方は恥骨結合で融合して骨盤輪を形成しており、体幹の姿勢を支え、身体の要となっています。

 骨盤骨折でも、内臓器損傷がなく、転位が小さい単独骨折では手術によらず、保存的に安静臥位で経過観察しています。深刻な後遺症とならないケースが多いようです。   (1)腸骨翼骨折(ちょうこつよくこっせつ)

① 病態

 腸骨翼は、腰の両横にあって、ベルトがかかる部位です。腸骨翼は、前方、後方、側方からの衝撃で骨折しており、出血を伴わないものは、軽症例です。

② 症状

 骨折部の強い痛み、歩行すると痛みが増強します。

③ 治療

 ドーヴァネイ骨折(ドゥベルネ骨折と言う医師もおりました)とも呼ばれていますが、入院下で、安静が指示されますが、1週間もすれば、歩行器使用によるリハビリが開始され、1~2カ月で後遺障害を残すこともなく、軽快しています。

④ 後遺障害のポイント

 シリーズの最後にまとめて解説しています。

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圧迫骨折に対する術式?    交通事故外傷ではあまり馴染みがありませんが、骨粗しょう症の方や高齢者が転倒などの原因によって脊椎を圧迫骨折することがよくあります。骨粗しょう症患者は一千万人前後いると言われており、特に70歳以上の女性に多い病気です。交通事故外傷の圧迫骨折では保存療法が一般的であり、高い確率で11級7号か12級13号が認定されるでしょうが、今回は高齢者や骨粗しょう症患者が圧迫骨折をした場合に、どのような処置が施されるのか記載してみます。  高齢者や骨粗しょう症患者は、圧迫骨折によって寝たきりの状態につながる危険性があるため、保存療法ではなく経皮的椎体形成術と呼ばれる手術を行うことが多いようです。経皮的椎体形成術はPVP若しくはVPとBKPに分類されます。どちらも同じような手術ではありますが、違いが少しあります。   ○ PVPとは、Percutaneous(経皮的) Vertebro(これはエスペランサ語らしく、英語ではVertebralとなり脊椎のという意味)Plasty(形成する)の略で、圧迫された椎体内に医療用のセメントを注入することによって、瞬時に補強固定し、かつ痛みをとるため、その後の椎体圧迫の進行を抑える治療です。   ○ BKPとは、Balloon(風船) Kypho(後弯) Plasty(形成する)の略で、先程説明したPVPとほとんど同じですが、セメントを注入する前に造影剤入りのバルーンカテーテルを差し込み、膨らませ、椎体を元の形に戻します。(このとき、15分ほど放置するようです。)元の形に戻った椎体内には空洞ができますので、その空洞にセメントを注入し、補強固定します。    どちらも健康保険適用ですが、病院によっては自由診療となる場合がありますので、注意が必要です。尚、PVPは局所麻酔ですが、BKPは全身麻酔でレントゲン透視をしながら行いますので、PVPよりも時間がかかります。しかしながら、バルーンを使った方が入血栓のリスクが軽減され、より安全性も高いようです。BKPはより訓練を積んだ医師しか行うことができないため、限られた病院でしか実施できないみたいです。    先日、同居している祖母が転倒し、圧迫骨折の診断で即入院、GW中に上記手術を行うことになりましたため、この記事を書かせていただきました。この処置が交通事故被害者にも実施することになれば、11級7号の認定が激減することになるでしょうね。   続きを読む »

 涙滴骨折(るいてきこっせつ)      椎体骨折では比較的珍しい折れ方。医師によっては単に「破裂骨折」、単純に一つのかけらに分離する場合は「隅角骨折」と診断名を打つ場合もあります。秋葉事務所での等級認定にはなく、相談例として2件のみです。    (1)病態

 頚椎が、外力で屈曲が強制され、同時に、上方向からの圧迫力が加わったときに、中・下部頚椎に発生する骨折のことで、上位椎体が下位椎体を圧迫したときに、椎体前方部分を破壊し、これが涙の滴のように前方へ分離することから、涙滴骨折=ティアドロップ骨折と呼ばれています。

 交通事故では、正面や側面衝突などの高エネルギー衝突で発生しています。出合い頭衝突の勢いで、電柱や立木、高速道路壁に激突など、かなりひどい事故状況です。交通事故以外では、浅いプールや海などへの飛び込みにより頭部を水底に打ち付けることや、高所からの転落事故で発生しています。   (2)症状

 骨折部の激痛と腫れ、C2~3など頚椎が高い部位では可動域制限。 付随して頚部神経症の発症もあります。   (3)治療

 安定型であれば、仰臥位で砂嚢による固定、頚椎に配列異常があれば、持続的牽引の保存療法が行われます。椎体後柱部の骨折では、後方へ転位し、棘間靱帯や後縦靭帯の損傷による頸椎の後弯、前方辷り、椎間関節や棘突起の間隔の開大などにより高度の脊髄損傷を合併すること予想されます。この場合は、緊急手術で強固な内固定が行われています。   (4)後遺障害のポイント

 安定、不安定によって、対応は変わります。安定型骨折であれば、受傷から6、7カ月で症状固定とし、脊椎の変形で11級7号を目指します。不安定型骨折はめったにありません。神経症状がひどい場合、脊髄症状を丹念に拾い上げて、神経系統の機能の障害を立証します。  

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 私が担当した被害者さんの中で、頚椎捻挫に伴う難聴や耳鳴りが発症したケースがいくつかありました。器質的損傷が認められる場合には、聴力検査や耳鳴りの検査で十分に後遺障害等級が認定されますが、そうではない場合には、認定を受けることは容易ではありません。基本的に調査事務所では、単純聴力検査の数値だけでは判断しません。その中でもごまかしがきかないABR検査について触れてみたいと思います。

 ABR検査とは聴性脳幹検査といい、Auditory Brainstem Responseの略です。脳波で聴力を見る検査で、ある一定の音を被験者に聞かせて、聴覚進路の脳幹から出てくる脳波を解析し、その脳幹反応が出るかどうかで聞こえているかを調べる検査です。この検査は年齢に関係なく、生後間もない赤ちゃんから高齢者まで実施できるそうです。聴力を調べるだけではなく、手術時に生じる脳幹の機能異常を調べることや、脳死の判定なんかにも使われているみたいです。

 ABR検査は、音を聞かせたときに神経路からの反応波形を記録します。通常、人間が音を聞くと、その後約1.5ミリ秒で音が蝸牛神経に到達し、その後約1ミリ秒間隔でいくつかのピークを持つ反応が蝸牛神経→脳幹→橋→下丘にかけて発生します。この反応はとても弱いので、1回の記録でははっきりしませんが、約1,000回重ね合わせると、波のピークが見えてきます、純音聴力検査と違い、被験者自らスイッチを押さなくてもいいので、客観的な聴力検査が可能です。(福島病院 臨床検査科より抜粋)

 さて、ABR検査の方法ですが、被験者は左右の耳たぶと頭部(頭頂部と前額部)の計4ヵ所に脳波形の電極を付けます。ヘッドホンから音が聞こえると、脳が反応して脳波に変化が生じるため、その波形を医師が読み取ります。

 純音聴力検査では、40dBでやっと聞き取ることができるといった結果があったとしても、ABR検査で閾値が20dBだとします。このような場合、ご自身の感覚では20dBの音が聞こえないが、耳の機能としては20dBでも聞き取れているということを意味します。音がどのように聞こえているかについては、本人にしか分かりませんが、そのことを客観的に示すためには最適な検査です。本当に症状のある方については、立証方法として役立ちますが、心理的な症状や詐病者には、逆証明となってしまいます。自賠責からABR検査の実施を求められたことはありませんが、上位等級を狙う場合には必要な検査です。町中の耳鼻科では、検査できないことが多いので、専門医のいる病院で検査をすることが一般的だと思います。    聴力の障害を立証することは非常に難しく、厳しい戦いです。まずは、基本的は知識のある弁護士、行政書士に相談されることをお勧めします。  

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 それは原則であって、事情によってはそうもいかない時があります。

 骨の癒合期間はその折れ方や部位だけではなく、年齢や体質も影響します。とくに高齢者の場合、癒合は遅くなります。また、癒合後の変形を防ぐ為のプレートやスクリュー、髄内釘など、金属で固定する手術も避けがちです。したがって、高齢者の骨後の変形は残りやすいと言えます。

 骨折後の変形は、骨の癒合を待ってから症状固定時のレントゲンやCTで判断・審査されます。それは年齢に関わりなくです。

 本件では、認知症やコロナの影響から、わずか受傷3か月後のレントゲンで判断して頂きました。この点、柔軟な認定を下さった自賠責に感謝ですが、認知症状の進行による障害はやはりダメでした。多くの高齢者は例え足の骨折をしただけで、介護状態に陥ります。中には認知症状を発症、あるいは進行します。本件、自賠責は慎重に検討下さったようですが、結論はいつも通りでした。損害賠償上、因果関係の立証は難しく・・裁判上でも完全勝利とはいきません。   一勝一敗・・か  

12級5号:骨盤骨折(70代男性・埼玉県)

【事案】

自転車で直進中、交差点で左折自動車の巻き込みを受けたもの。左恥骨・座骨を骨折、受傷直後のレントゲンを観ると、骨盤が左右歪んでいた。

【問題点】

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 毎度思いますが、自賠責の後遺障害とは、1級~14級の段階別に”不特定多数を一律に判定する”基準に過ぎません。顔面醜状痕の場合、例えばキズが3cmですと12級14号で保険金は224万円です。それが2.9cmだったら非該当で0円です。  あくまで判定は基準に沿ったものですが、基準に1mm足りないからと言って、後遺症が無くなった訳ではありません。障害は残っているのです。この損害を回復すべく、弁護士が損害賠償を実現させることになります。

 連携弁護士に引き継ぐ際、秋葉事務所ではこのように言います。   「先生、15級がないだけです! 慰謝料の増額事由として2.9mmのキズを主張して下さい!」    後は弁護士先生の頑張りになります。それでも、損害を金銭に換算するには根拠が必要で、それこそ自賠責の等級こそ、最良の根拠であることは間違いありません。本件では醜状痕での等級は逃がすも、14級9号を残しました。主婦でも300万円に届く賠償金になります。つまり、形成外科・美容整形外科でキズを消すことができます。お釣りも残るはずです。

顔面のキズで神経症状の認定は比較的珍しいものです  

14級9号:顔面打撲皮下血腫・鼻唇溝挫創(50代女性・埼玉県)

【事案】

信号のない交差点を原付バイクで走行中、右方より一時停止せずに進入してきた自動車に衝突され、負傷した。ドクターヘリも出動したが、救急車にて総合病院に運ばれた。   【問題点】

既に後遺障害診断書が完成した段階でのご相談であったが、後遺障害診断書上、3センチに満たない醜状瘢痕が記載されており、線状・瘢痕のどちらで審査されても12級の数値に満たないものであった。 続きを読む »

 これは、常日頃から感じていることですが、自賠責の認定基準はかっちり決まっている前提ながら、微妙なさじ加減で等級のバランスをとっているのではないか・・。それは等級の系統や序列に準じた、認定基準の範囲での調整となりますが、複合的に障害が重なっている場合はとくに、自賠責側の思惑を感じるのです。

 同じ○級でも実際の障害に比して軽い、あるいは重すぎるジャッジになることがあります。それは基準に照らした結果ですが、複数の障害認定がある場合、わずかに軽重を調整しているように感じます。認定ルールに矛盾を持ち込む程ではありませんが、そのような認定をいくつか経験しています。本件もその一つと思います。うまく説明できませんが・・。

 

背中が痛くて12級13号は予想外でした  

12級5号:鎖骨骨幹部骨折 12級13号:肋骨骨折(70代女性・山梨県)

【事案】

自転車で交差点を横断中、右折してきた車に衝突され受傷。鎖骨、肋骨を骨折したもの。

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 高齢者の多くは、事故の衝撃から一か所の骨折で済まず、複数の骨折(多発骨折)となる傾向です。本日の例は昨日の両手首と片足を骨折した被害者と同一です。つまり、四肢の内3本、おまけに鎖骨・肋骨・骨盤も折れた。さらに、骨折は無かったが、脊椎は過伸展損傷(簡単に言うとエビぞりになってひどく痛めた)で手術となりました。

 もう、これだけ人体の破壊があれば、80歳を超える年齢から車イス脱却は大変、歩行器や杖なしの独歩はほとんど不可能です。介護等級も容易に認められました。しかし、自賠責の認定基準からは、受傷箇所にそれぞれ等級を付けて、併合○級との判断に留まります。骨折後、各機能が弱ってしまうことは二次的な障害ですから、直接因果関係を絶対条件にする自賠責は「介護」としての等級を認めません。介護等級は頭部外傷や脊髄損傷など、直接に日常生活の動作が奪われる重傷例に限られます。結局、高齢者は事故を引き金に介護状態に陥ったとしても、「年寄りはケガがなくても、いずれ介護状態になるもの」とされてしまうのです。     これについては、賠償保険の限界を感じます。実態に即した介護状態と、それに至った因果関係の立証は、後の賠償交渉で実現するしかありません。連携弁護士の頑張りに期待して引き継ぎました。    もう一つの論点として、過伸展損傷による機能障害の認定は珍しく、弊所で初の認定となりました。   一人で5人分の後遺障害です  

12級5号:鎖骨骨折、肋骨骨折、骨盤骨折 +8級2号:胸腰椎 過伸展損傷(80代女性・神奈川県)

【事案】

歩行中、立体駐車場に入庫しようと右折してきた車に衝突され受傷した。以来、全身に渡る骨折で苦しむことに。   【問題点】

リハビリ病院に依頼したとされる後遺障害診断書が既に完成していたが、後方固定術の記載がなく、詳細は主たる病院に記載してもらうようにという内容だったため、救急搬送先の病院に作成依頼をしに行かなければならなかった。

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 本件もコロナの影響下、症状固定が遅れに遅れました。長期間の治療費をみて頂けることはありがたいことです。しかし、治療期間が長いということは、回復が進んだ結果として後遺障害等級が薄まる危険性があります。

 お金より、お体の回復が第一であることは言うまでもありません。しかし、積極的な治療が一段落すれば、適当な時期に、それもなるべく早く症状固定を推奨しています。別に治療がそこで終わるわけではありません。症状固定後は健保を使って治療を続けるだけです。

 被害者さんの「相手の保険会社に何が何でも治るまで治療費を出させる!」意気込みは解りますが、中途半端な回復まで引っ張った結果、もらえるはずの後遺障害保険金が数10~100万円単位で下がり、その損失は得てして、相手に負担させる治療費より高額なのです。この点、被害者は損得勘定をすべきと思います。

 これは、ズルい計算とは思いません。なぜなら、障害が今後軽快するのか、悪化するのか、未来のことはわかりません。誰も保証はしてくれないのです。だからこそ、症状固定という区切りで障害を決めるしかないのです。この選択こそ、被害者の権利と思っています。

本件はコロナはじめ様々な事情から延びてしまいましたが、 等級はなんとか薄まらず、想定通りに確保できました  

10級10号:右橈骨遠位端骨折・左橈骨遠位端開放骨折、14級9号:脛骨高原骨折、9級16号:顔面線状痕(40代男性・埼玉県)

  【事案】

バイクで幹線道路を直進中、右折してきた車に衝突される。救急搬送され、目視(左手首は開放骨折)・XP・CTにて骨折が判明、ただちに手術となり、およそ2ヶ月の入院と長いリハビリ通院を余儀なくされた。 続きを読む »

 続いて、12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」の認定例を、細田先生の実績から紹介します。    昨日の症例は、ひどい痛みと、基準(≒ギボンズのRSDスコア)にほぼすべて合致することから、神経系統の機能障害として7級の認定でした。骨折後の症状であり、分類でいえばTypeⅡ(≒カウザルギー)になります。

 一方、本件は捻挫の診断名から後に発症したもので、TypeⅠ(RSD)に類するものです。機能障害まで及ばずとも、14級9号「局部に神経症状を残すもの」や、12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」のいずれかで認定されるケースです。CRPSは特殊な症例ですから、早期に専門医の診断を受けること、何より「疼痛コントロール」と呼ばれる治療を開始することが望まれます。    無策のまま放置すると・・・   ○ 整形外科医は・・「う~ん(頭を傾げる)、様子をみましょう」と、延々とロキソニンと湿布の処方が続きます。    ○ 相手の保険会社・・「いつまで通ってんだよ(怒)、事故から何か月も経っているのに痛い痛いって、大げさな」と治療費の打ち切り、終には弁護士介入とします。      続きを読む »

 CRPSに陥った被害者さん数人を経験していますが、その診断名でズバリ等級認定、弊所ではありませんでした。これでは、実例で語る秋葉事務所の名折れになります。そこで、名古屋にあるグループ事務所:細田行政書士事務所の実績から紹介したいと思います。

 細田先生は、整形外科が手をこまねいている激しい疼痛を訴える相談者さんを専門医へ誘致し、確定診断を得て自賠責へ申請、謎の症状について7級の認定を勝ち取りました。先日、その過程を資料と共にご教授頂き、下記実例の掲載許可を頂きました。   ← 細田先生

 たった一つの事務所での経験は限界があります。未経験の症例を扱うことの無責任と愚を悟っています。私達は日本各地のグループ事務所と症例を共有することで、あらゆる被害者さんへの対応を可能としています。  

7級4号:CRPS(30代男性・岐阜県)

【事案】

 歩道に隣接した駐車場で車の修理中、歩道に出ていた足を、歩道を走行してきた車に轢かれ左足親指を骨折、その後CRPSを発症した事故。   【問題点】

 CRPSは、普通の整形外科では見落とされがちな傷病で、例えば骨折後に骨が癒合したにもかかわらず激しい疼痛が残り、本人がしきりに痛みを訴えても、様子を見ましょうと言われるだけで、専門医でなければ適切な対応がなかなか行われないという問題があります。

 この方の場合も、事故から1年以上が経過しているにもかかわらず、一般的なリハビリ治療をしているだけという状態でのご相談。

 患部の浮腫、皮膚色の変化、アロデニア、可動域制限などがあり、医者ではない私が見てもすぐにCRPSではないかと疑問を持つ。このままではよくならない可能性が高いと考え、専門医を受診する事を勧める。

 ご依頼いただく事になったので、さっそく複数の専門医から被害者の通いやすい専門医を選択。すぐに病院に一緒に行き診断して頂いた結果、やはりCRPSで間違いないとの事。先生と被害者と私で、今後の治療について話し合う。 続きを読む »

 最近、久々に真正が疑われる相談が入りました。異常な神経性疼痛、およそ年に一件程度、相談が入ります。いずれも真正の症状は少なく、CRPSの兆候を示している、または回復傾向など、弊所が受任した案件では、CRPSの診断名で等級が付くことはありませんでした。やはり、珍しい症例であることは変わりません。

 骨折や打撲から数か月を経て、大分痛みは和らいでいるはずなのに、とにかくひどい痛みが収まりません。軽く触れただけでも激痛で飛び上がります。また、患部の発汗や変色が見られ、明らかに異常です。それでも、整形外科などでは、「様子をみましょう」とロキソニンと湿布だけで対処、気付かない医師もおります。それですから、相手の保険会社などは”大げさにいつまでも通院を続ける面倒な被害者”扱い、治療費の打ち切りを迫ってきます。

 ご無沙汰していますので、復習しましょう。    CRPS (Complex regional pain syndrome=複合性局所疼痛症候群)   ○ Type I  RSD (reflex sympathetic dystrophy=反射性交感神経性ジストロフィー)   ○ Type II カウザルギー  (Causalgia)   ※ 最近ではカウザルギーとの呼称は用いません。臨床上、単にCRPS(タイプⅡ)としています。   <外見> 続きを読む »

 普通の道路で起きる交通事故だけではなく、構内事故の相談・受任も多い秋葉事務所です。

 フォークリフトの場合でも、構内のみならず一般道を走行するには自賠責保険の加入が必要です。つまり、自賠責があるなら私達の仕事になります。後の弁護士の賠償交渉の前に、後遺障害等級を固める準備ができるのです。

 足指の可動域制限が見逃されるのは、毎度のことです。さらに本件の場合、骨折後の骨変形と違い、軟部組織の腫脹では、14級を超えられないジレンマも抱えました。これら立証の基本は変わりませんが、前任弁護士の無策と、不完全な診断書の修正・追記に再三追われる結果となりました。

 とどめは、初回審査で画像の精査をしていないような判断が返ってきました。地区審査では、一々顧問医に画像を観せて意見を求めていないのでしょう。難しい案件になると、立証側に二度手間の負担を強いることになるのです。さらに、本件自賠責の担当者も意地悪、いえ、厳しかった。担当者によっては、もう少し融通利かせてくれるものですがねぇ。   初回審査(地区審査)の精度・・私達の苦労は絶えません  

14級9号・14級8号⇒11級9号:母趾基節骨+第5趾中足骨 骨折 異議申立(60代男性・東京都)

  【事案】

市場の構内を歩行中、後方よりフォークリフトの衝突を受け受傷したもの。転倒の際についた肘は肘頭骨折、車輪でひかれた右足は足甲部に圧挫創と醜状痕、小指側の中足骨の骨折と足の親指(母趾)の骨折となった。 続きを読む »

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