(4)後遺障害のポイント

 被害者側が注意すべきは、発作の回数に注目するのではなく、性格変化・人格低下の高次脳機能障害を、日常生活でつかみ取ることです。性格変化や人格低下は、被害者本人には自覚がなく、よほど注意していないと見落としてしまうことになるからです。    交通事故110番の宮尾氏によると、宮尾氏は保険調査員時代に「外傷性てんかん2級1号」を経験しています。以下、その経験則から、4段階の症状に分けて対策を提案しています。   【事案】歩行中、自動車に跳ねられ、頭蓋骨陥没骨折となった39歳会社員男性の件。神経心理学的テストの結果は、IQレベルで小学2年生程度の知能・情緒でした。治療先には、10回以上同行しており、季節・出来事・子どもの話も、普通にやりとりがあり、どこから見ても一般人でしたから、神経心理学検査の結果には、その低得点から非常に驚きました。専門医より、「今後、重大な判断や決断で、大きく(数値が)落ち込むことが予想される。」と説明を受けました。   ① 脳波上に、てんかん波を示す棘波=スパイク波が認められないとき

 脳波上、大きな異常が認められなくても、予防的に抗痙攣剤の内服が指示されることが大半です。脳波上の異常が確認されないときは、てんかん発作を発症する可能性は、基本的にはありません。予防的に6カ月程度の抗痙攣剤を内服し、3カ月ごとに脳波検査を受けます。脳波上、異常がなければ、内服を停止、さらに3カ月ごとに2回の脳波検査を行って、治療終了です。後遺障害等級が認定されることはなく、将来、てんかん発作を発症することもありません。   ② 脳波検査で、境界波ですねと言われたとき

 脳波検査で、α波や徐波が認められるときは、主治医より、上記の説明がなされます。やはり、抗痙攣剤を内服し、3カ月ごとに脳波検査を受けます。脳波検査で、異常波が消失した時点で、内服を停止し、さらに、3カ月ごとに2回の脳波検査を行って、変化がなければ、治療は終了します。後遺障害等級が認定されることはありません。   ③ てんかん発作はないが、脳波検査で、てんかん波=スパイク波が認められるとき

 ここから、後遺障害等級の対象となるので、治療先を選択してフォローしなければなりません。抗痙攣剤を内服し、3カ月ごとに脳波検査を受けます。内服をキチンと守って、過激な運動を控えていれば、まず、てんかん発作の心配はありません。

 てんかん波の終息時点で、抗痙攣剤の投与量を少なくしながら、さらに、3カ月ごとに脳波検査を続け、2回の脳波検査でてんかん波が認められないときは、内服を停止、さらに、3カ月ごとの脳波検査でチェック、私の経験則では、治療を完了するのに、約3年、最大で5年があります。

 長期間に定説はありませんが、一般的に閉鎖的外傷で5年以内、開放性外傷では10年以内とされています。長期であっても、必ず、脳波は正常に復帰するので、過剰な心配は必要ありません。   続きを読む »

 てんかん発作は、今まで受任した頭部外傷の中に一定数見られました。最大の問題は、再発作への警戒から症状固定日が遅れることです。ご本人ご家族にしてみれば、再発作に怯える毎日です。症状固定に進め、解決することに躊躇してしまうのです。  てんかんは論点が多く、3回にわけて解説したいと思います。   (1)病態

 頭部外傷後のてんかんの初期発作は、統計上は、約75%が1年以内となっており、開放性脳損傷は、閉鎖性脳損傷に比較すれば外傷性てんかんの発生頻度が著しく高く、陥没骨折後の発作頻度は、約30%と報告されています。

 専門医は、口をそろえて「2年間の観察と投薬、そして定期的に脳波検査」としています。   (2)症状

 外傷で、脳の実質部に残した瘢痕は、手術による摘出以外、消去することはできません。この瘢痕部から発せられる異常な電気的信号に、周辺の正常な脳神経細胞が付和雷同して大騒ぎをしている状態を、外傷性てんかん発作といいます。発作は、とき、ところを構わず、突然、発症しますが、時間的には、ほとんどが2、3分で終わります。

強直性全身痙攣発作

 

 発作には、大発作、焦点発作、精神運動発作がありますが、発作を繰り返すことにより、周辺の正常な脳神経細胞も傷つき、性格変化や知能低下の精神障害をきたします。高度になると痴呆・人格崩壊に至ります。

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 今日から頭部外傷をシリーズで掘り下げます。まずは、脳損傷に結び付く、頭蓋骨骨折から。  

A :陥没骨折  B:線状骨折(亀裂骨折)

 

 頭蓋骨は、身体の他の部位の骨が関節を形成したり、重力に対して体を支えたりしているのとは違って、脳を格納し、脳を守る容器としての役割を果たしています。頭蓋骨骨折は、見過ごすことのできない外傷ですが、すべてが重症化するのでもありません。

 ポイントは、頭蓋骨骨折に伴って、脳損傷を発症しているかどうかにあります。頭蓋骨骨折の衝撃で、脳損傷をきたすことも多発していますが、損傷に至らないこともあり得ます。逆に、頭蓋骨骨折がないときでも、びまん性軸索損傷などの重篤な後遺障害を残すことがあります。ここに立証側の着眼点を置くべきでしょう。

 頭蓋骨骨折には、以下の3つの病態があります。

 ① 線状骨折 ・・・文字通り骨にひびが入る。≒亀裂骨折。

 ② 陥没骨折 ・・・頭蓋骨が内側に凹んでいる骨折

 ③ 頭蓋底骨折 ・・・頭蓋骨の底辺部の骨折    今回は①と②を解説します。 ③ 頭蓋底骨折は、頭部外傷 ⑤ 頭蓋底骨折 Ⅰにて集中解説します。   ① 頭蓋骨線状骨折

 直接的な衝撃で、頭蓋骨に線状のひびが入った状態です。亀裂骨折との診断名を目にすることもあります。頭蓋骨は、脳を守る格納容器であり、線状骨折そのものが、手術の対象になることはありません。しかし、線状骨折するほどの衝撃を受れば、脳に対する影響が大きく問題視されるのです。XP撮影で線状骨折が診断されたときは、頭部CT検査が行われ、脳損傷の有無が確認されています。

 また、深刻な脳障害に至らずとも、頭痛やめまい、諸々の神経症状が残存することがあります。    線状骨折からめまいを発症した実例 👉 続きを読む »

3、血管の損傷による障害    ○ 内腸骨動脈損傷(ないちょうこつどうみゃくそんしょう)

① 病態

 赤丸部分の腹大動脈は、左右2本の総腸骨動脈に分岐し、総腸骨動脈は、内腸骨動脈と外腸骨動脈に分かれています。内腸骨動脈は、骨盤の後方部分に分布しており、骨盤骨折による血管損傷では、大量出血につながります。さらに、豊富な側副血行路がはり巡らされており、破綻した血管からの出血は容易にとめることができません。

 骨盤骨折の死因の50%は、出血であると報告されており、骨盤腔内の出血で出血性ショックを引き起こし死亡する例も、珍しくありません。   ② 症状

 骨盤骨折により、骨盤内の血管や臓器が損傷されると、出血斑や血尿、血便などのほか、低血圧や意識障害などの症状が出現します。   ③ 治療

 輸液・輸血にもかかわらず、血圧が上昇しないときは、ただちに内腸骨動脈造影を実施し、スポンゼルコイルを使用し両側内腸骨動脈の根元から血管塞栓術が行われています。   ※ 出血性ショック

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○ 男性の生殖器の損傷・障害    男性では、勃起障害が多く見られます。勃起障害は、泌尿器科におけるリジスキャンRによる夜間陰茎勃起検査を受けて立証します。夜間の勃起も計測しますので、2泊~3泊の入院が必要です。それなりに大変な検査で、実施できる病院と診察できる医師も限られます。

 完全なる検査はリジスキャン検査です。他の検査として、会陰部の知覚、肛門括約筋のトーヌスおよび球海綿反射筋反射による神経系検査、プロスタグランジンE1海綿体注射による各種の血管系検査があります。以下に図示・説明します。これらの検査により、勃起を支配している神経の損傷を立証しなければなりません。原因がわからず、とりあえずバイアグラが処方されている方もおりました。薬で改善するのであれば、心因性(勃起不全)かもしれません。  

1、会陰部の知覚

会陰部とは、俗に蟻の門渡りと呼ばれる外陰部と肛門の間に位置していますが、肛門の周囲を針で刺して痛みがあれば正常とされています。

 

    2、肛門括約筋の随意収縮

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2. 骨盤輪内に収納されている臓器の損傷    骨盤輪の中には、S状結腸、直腸、肛門、膀胱、尿道、女性では、これらに加えて、子宮、卵巣、卵管、腟が収納されており、消化管は下腸間膜動脈、女性性器は卵巣動脈と子宮動脈、泌尿器系は内腸骨動脈により必要としている酸素と栄養素が供給されています。   ○ 排便障害

 骨盤骨折に合併するS字結腸・直腸の損傷ですが、人工肛門の造設などの重症例はなく、経験則では、程度は様々ですが便秘を残すものが圧倒的です。S字結腸に外傷があって、その結果、便秘になったものが対象で、便秘を残すものについては、肛門括約筋を支配している骨盤神経もしくは下腹神経に損傷が認められることが条件となっており、これは、直腸肛門機能検査を受けて立証します。その上で、排便回数が週2回以下の頻度で、恒常的に硬便であれば、11級10号の認定がなされています。

 9級11号は摘便(手で肛門から便をかき出す)が条件ですから、重度の介護状態が想定されます。この場合、介護等級である別表Ⅰの第1号1級、2級1号に内包されることになります。単独の9級11号認定は未経験です。

 逆に頻便(便意がしょっちゅう、便の回数が1日数度、単なる下痢ではない)の場合については、13級11号「臓器の障害」に属します。臓器の13級は、各臓器のちょっとした不具合をこの認定に当てはめています。    13級11号:胸腹部臓器の機能に障害を残すもの     以下は、排尿、排便、尿漏れの3点セットが認定された例です。

👉 ...

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ストラドル骨折・マルゲーニュ骨折、恥骨結合離開・仙腸関節脱臼における後遺障害のポイント>    不安定型の骨盤骨折が癒合不良となった場合、具体的には変形(文字通り形が変わってくっついた)や転位(ズレてくっついた)、もしくは偽関節(くっつかなかった)となれば、変形の12級5号となります。また、これら癒合不良に派生する後遺障害と内臓損傷、神経損傷における障害は以下の3つが想定されます。   ○ 骨盤骨折自体に関するもので、疼痛、股関節の可動域制限、骨盤の歪みによる下肢の短縮

○ 骨盤輪内に収納されている臓器の損傷・神経損傷による障害

○ 内腸骨動脈などの血管の損傷による障害    以下、骨盤骨折から派生する後遺障害を解説します。  

1.

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(2)恥骨結合離開・仙腸関節脱臼   ① 病態

 骨盤は左右2つの寛骨が、後ろ側で仙腸関節、仙骨を介して、前側で恥骨結合を介してジョイントしており、左右の寛骨は腸骨・坐骨・恥骨と軟骨を介して連結し、寛骨臼を形成しているのです。この輪の中の骨盤腔は内臓を保護し、力学的に十分荷重に耐え得る強固な構造となっていますが、大きな直達外力が作用するとひとたまりもなく複合骨折をするのです。     ② 症状

 骨折部の強い痛みで動くことができず、内臓損傷では、腹痛、血尿、排尿困難、排尿の制御ができなくなり失禁することや下血、性器出血を伴うことがあります。仙骨神経に損傷が及べば、排尿・排便障害となることがあります。「頻尿」は常に尿意があり、回数が増える。または尿漏れ。逆に「閉尿」は尿が出なくなります。便ですと、それぞれ頻便、便秘です。仙骨神経の損傷から下肢のしびれ、ひどいと麻痺で動きが悪くなります。   ③ 治療

 上図のような不安定損傷になると、観血的に仙腸関節を整復固定すると共に、恥骨結合離開についてはAOプレートによる内固定の必要が生じます。

 上のイラストは、右大腿骨頭の脱臼も伴っています。大腿骨頭の納まる部分である、寛骨臼の損傷が激しいときは、骨頭の置換術に止まらず、人工関節の置換術に発展する可能性が予想されます。

  ④ 後遺障害のポイント    安定型の骨折でも触れましたが、骨盤の変形を問うことになります。そこを参照下さい。    👉 骨盤骨折 ④ 後遺障害のポイント    ただし、骨盤の一部とも思える仙骨は、脊柱として判断されます。つまり、「脊柱に変形を残すもの」=11級7号の認定になるわけです。↓ ...

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 中断してていました骨盤骨折、シリーズを再開します。   👉 前回  ① 腸骨骨折   【2】骨盤骨折・不安定型

 前回の①~④までは、【1】安定型とのくくりで、骨盤輪にゆがみや崩れがなく、骨折が癒合することが多い傷病名から解説しました。今回からの不安定型は重傷と言えます。

(1)ストラドル骨折・マルゲーニュ骨折

① 病態

 骨盤は骨盤輪と呼ばれる内側でぐるりと輪を作る環状構造となっています。この骨盤輪が、一筆書きに連続しているので、骨盤は安定しているのです。両側の恥骨と坐骨の骨折で、骨盤輪の連続性が損なわれている状態をストラドル骨折と呼びます。

ストラドル骨折続きを読む »

< 後遺障害のポイント>   【1】後遺障害の前提

Ⅰ. 腸骨翼骨折に限っては、単独骨折であっても骨盤腔内に3000mlを超える大出血をきたすことがあり、その際は、出血性ショックに対応して全身管理を行う重症例となります。それ以外は骨癒合さえ問題なければ、後遺症なく回復傾向、等級も14級9号止まりか、痛みなどの神経症状が無ければ非該当になります。

Ⅱ.

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(3)尾骨骨折(びこつこっせつ)

① 病態

 仙骨の下についている骨で、しっぽの名残であり、尾てい骨ともいわれています。交通事故では、自転車、バイクでお尻から転倒したときに骨折することが多いのですが、尾骨は、退化した3~5つの尾椎が一塊となって存在しており、つなぎ目があることと、事故前から屈曲変形していることもあり、XPでは骨折と判断することが困難なことがあります。確定診断には、CT、MRI撮影が必要です。

 経験上、事故前にすでに軽い脱臼状態、変形や転位(折れて分離)しているなど、既往症もいくつか目にしました。産婦人科医に聞くと、経産婦で出産時に曲がったまま、それが残る例もあるそうです。   ② 症状

 尾てい骨部分に激烈な痛みがあり、歩くことや座ることで痛みが増強する。長時間、座っていると尾てい骨の痛みが強くなってくる。尾てい骨に痛みがあり、下肢にしびれがあり、歩きにくさを生じている。それでも、深刻な後遺症は稀で、後遺障害として認定されること少ないと思います。   ③ 治療

 治療は、通常は保存的に安静加療が行われています。   ④ 後遺障害のポイント

 シリーズの最後にまとめて解説しています。    ⇒ 骨盤骨折 ④ 後遺障害  

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(2)恥骨・坐骨々折(ちこつ・ざこつこっせつ)

① 病態

 骨盤骨折で経験上、最も多い例です。恥・坐骨②③は、前方と下方からの外力で骨折しており、恥骨と坐骨の両方が折れることも多く、併せて「恥坐骨骨折」と書かれることもあります。

 交通事故では、自転車やバイクを運転中、出合い頭衝突で前方向から衝撃を受け、ドスンとお尻から落下して骨折しています。この事故発生状況では、腰椎の圧迫骨折を合併することもあります。   ② 症状

 横になっても座っても、鼠径部に強い痛みが生じます。坐骨骨折では、半腱・半膜様筋・大腿二頭筋により、骨折部は下方へ転位し、股関節の伸展運動ができなくなります。   ③ 治療

 片側の恥骨や坐骨の単独骨折は、ほとんどは安定型骨折であり、高齢者などは入院することがあるものの、手術に至ることはありません。安静下で、鎮痛薬や非ステロイド性抗炎症薬、NSAIDが投与されます。

 多くは、1週間の経過で歩行器を使用して短い距離を歩くリハビリが開始され、1~2カ月の経過で、後遺障害を残すことなく、症状は軽快しています。弊所でも認定例が無かったように思います。   ④ 後遺障害のポイント

 シリーズの最後にまとめて解説しています。    ⇒ 骨盤骨折 ③  

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 今年いくつか相談・受任を頂きました骨盤骨折について、交通事故110番から引用、シリーズで集中解説したいと思います。

 一口に骨盤骨折と言っても、骨折箇所や様態を細かく分類して覚えておく必要があります。まずは、安定型と不安定型に2分、それに属する傷病名別に整理します。   【1】骨盤骨折・安定型

 骨盤は左右の恥骨、坐骨、腸骨と仙骨で構成され、後方は仙腸関節、前方は恥骨結合で融合して骨盤輪を形成しており、体幹の姿勢を支え、身体の要となっています。

 骨盤骨折でも、内臓器損傷がなく、転位が小さい単独骨折では手術によらず、保存的に安静臥位で経過観察しています。深刻な後遺症とならないケースが多いようです。   (1)腸骨翼骨折(ちょうこつよくこっせつ)

① 病態

 腸骨翼は、腰の両横にあって、ベルトがかかる部位です。腸骨翼は、前方、後方、側方からの衝撃で骨折しており、出血を伴わないものは、軽症例です。

② 症状

 骨折部の強い痛み、歩行すると痛みが増強します。

③ 治療

 ドーヴァネイ骨折(ドゥベルネ骨折と言う医師もおりました)とも呼ばれていますが、入院下で、安静が指示されますが、1週間もすれば、歩行器使用によるリハビリが開始され、1~2カ月で後遺障害を残すこともなく、軽快しています。

④ 後遺障害のポイント

 シリーズの最後にまとめて解説しています。

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圧迫骨折に対する術式?    交通事故外傷ではあまり馴染みがありませんが、骨粗しょう症の方や高齢者が転倒などの原因によって脊椎を圧迫骨折することがよくあります。骨粗しょう症患者は一千万人前後いると言われており、特に70歳以上の女性に多い病気です。交通事故外傷の圧迫骨折では保存療法が一般的であり、高い確率で11級7号か12級13号が認定されるでしょうが、今回は高齢者や骨粗しょう症患者が圧迫骨折をした場合に、どのような処置が施されるのか記載してみます。  高齢者や骨粗しょう症患者は、圧迫骨折によって寝たきりの状態につながる危険性があるため、保存療法ではなく経皮的椎体形成術と呼ばれる手術を行うことが多いようです。経皮的椎体形成術はPVP若しくはVPとBKPに分類されます。どちらも同じような手術ではありますが、違いが少しあります。   ○ PVPとは、Percutaneous(経皮的) Vertebro(これはエスペランサ語らしく、英語ではVertebralとなり脊椎のという意味)Plasty(形成する)の略で、圧迫された椎体内に医療用のセメントを注入することによって、瞬時に補強固定し、かつ痛みをとるため、その後の椎体圧迫の進行を抑える治療です。   ○ BKPとは、Balloon(風船) Kypho(後弯) Plasty(形成する)の略で、先程説明したPVPとほとんど同じですが、セメントを注入する前に造影剤入りのバルーンカテーテルを差し込み、膨らませ、椎体を元の形に戻します。(このとき、15分ほど放置するようです。)元の形に戻った椎体内には空洞ができますので、その空洞にセメントを注入し、補強固定します。    どちらも健康保険適用ですが、病院によっては自由診療となる場合がありますので、注意が必要です。尚、PVPは局所麻酔ですが、BKPは全身麻酔でレントゲン透視をしながら行いますので、PVPよりも時間がかかります。しかしながら、バルーンを使った方が入血栓のリスクが軽減され、より安全性も高いようです。BKPはより訓練を積んだ医師しか行うことができないため、限られた病院でしか実施できないみたいです。    先日、同居している祖母が転倒し、圧迫骨折の診断で即入院、GW中に上記手術を行うことになりましたため、この記事を書かせていただきました。この処置が交通事故被害者にも実施することになれば、11級7号の認定が激減することになるでしょうね。   続きを読む »

 涙滴骨折(るいてきこっせつ)      椎体骨折では比較的珍しい折れ方。医師によっては単に「破裂骨折」、単純に一つのかけらに分離する場合は「隅角骨折」と診断名を打つ場合もあります。秋葉事務所での等級認定にはなく、相談例として2件のみです。    (1)病態

 頚椎が、外力で屈曲が強制され、同時に、上方向からの圧迫力が加わったときに、中・下部頚椎に発生する骨折のことで、上位椎体が下位椎体を圧迫したときに、椎体前方部分を破壊し、これが涙の滴のように前方へ分離することから、涙滴骨折=ティアドロップ骨折と呼ばれています。

 交通事故では、正面や側面衝突などの高エネルギー衝突で発生しています。出合い頭衝突の勢いで、電柱や立木、高速道路壁に激突など、かなりひどい事故状況です。交通事故以外では、浅いプールや海などへの飛び込みにより頭部を水底に打ち付けることや、高所からの転落事故で発生しています。   (2)症状

 骨折部の激痛と腫れ、C2~3など頚椎が高い部位では可動域制限。 付随して頚部神経症の発症もあります。   (3)治療

 安定型であれば、仰臥位で砂嚢による固定、頚椎に配列異常があれば、持続的牽引の保存療法が行われます。椎体後柱部の骨折では、後方へ転位し、棘間靱帯や後縦靭帯の損傷による頸椎の後弯、前方辷り、椎間関節や棘突起の間隔の開大などにより高度の脊髄損傷を合併すること予想されます。この場合は、緊急手術で強固な内固定が行われています。   (4)後遺障害のポイント

 安定、不安定によって、対応は変わります。安定型骨折であれば、受傷から6、7カ月で症状固定とし、脊椎の変形で11級7号を目指します。不安定型骨折はめったにありません。神経症状がひどい場合、脊髄症状を丹念に拾い上げて、神経系統の機能の障害を立証します。  

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 私が担当した被害者さんの中で、頚椎捻挫に伴う難聴や耳鳴りが発症したケースがいくつかありました。器質的損傷が認められる場合には、聴力検査や耳鳴りの検査で十分に後遺障害等級が認定されますが、そうではない場合には、認定を受けることは容易ではありません。基本的に調査事務所では、単純聴力検査の数値だけでは判断しません。その中でもごまかしがきかないABR検査について触れてみたいと思います。

 ABR検査とは聴性脳幹検査といい、Auditory Brainstem Responseの略です。脳波で聴力を見る検査で、ある一定の音を被験者に聞かせて、聴覚進路の脳幹から出てくる脳波を解析し、その脳幹反応が出るかどうかで聞こえているかを調べる検査です。この検査は年齢に関係なく、生後間もない赤ちゃんから高齢者まで実施できるそうです。聴力を調べるだけではなく、手術時に生じる脳幹の機能異常を調べることや、脳死の判定なんかにも使われているみたいです。

 ABR検査は、音を聞かせたときに神経路からの反応波形を記録します。通常、人間が音を聞くと、その後約1.5ミリ秒で音が蝸牛神経に到達し、その後約1ミリ秒間隔でいくつかのピークを持つ反応が蝸牛神経→脳幹→橋→下丘にかけて発生します。この反応はとても弱いので、1回の記録でははっきりしませんが、約1,000回重ね合わせると、波のピークが見えてきます、純音聴力検査と違い、被験者自らスイッチを押さなくてもいいので、客観的な聴力検査が可能です。(福島病院 臨床検査科より抜粋)

 さて、ABR検査の方法ですが、被験者は左右の耳たぶと頭部(頭頂部と前額部)の計4ヵ所に脳波形の電極を付けます。ヘッドホンから音が聞こえると、脳が反応して脳波に変化が生じるため、その波形を医師が読み取ります。

 純音聴力検査では、40dBでやっと聞き取ることができるといった結果があったとしても、ABR検査で閾値が20dBだとします。このような場合、ご自身の感覚では20dBの音が聞こえないが、耳の機能としては20dBでも聞き取れているということを意味します。音がどのように聞こえているかについては、本人にしか分かりませんが、そのことを客観的に示すためには最適な検査です。本当に症状のある方については、立証方法として役立ちますが、心理的な症状や詐病者には、逆証明となってしまいます。自賠責からABR検査の実施を求められたことはありませんが、上位等級を狙う場合には必要な検査です。町中の耳鼻科では、検査できないことが多いので、専門医のいる病院で検査をすることが一般的だと思います。    聴力の障害を立証することは非常に難しく、厳しい戦いです。まずは、基本的は知識のある弁護士、行政書士に相談されることをお勧めします。  

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 それは原則であって、事情によってはそうもいかない時があります。

 骨の癒合期間はその折れ方や部位だけではなく、年齢や体質も影響します。とくに高齢者の場合、癒合は遅くなります。また、癒合後の変形を防ぐ為のプレートやスクリュー、髄内釘など、金属で固定する手術も避けがちです。したがって、高齢者の骨後の変形は残りやすいと言えます。

 骨折後の変形は、骨の癒合を待ってから症状固定時のレントゲンやCTで判断・審査されます。それは年齢に関わりなくです。

 本件では、認知症やコロナの影響から、わずか受傷3か月後のレントゲンで判断して頂きました。この点、柔軟な認定を下さった自賠責に感謝ですが、認知症状の進行による障害はやはりダメでした。多くの高齢者は例え足の骨折をしただけで、介護状態に陥ります。中には認知症状を発症、あるいは進行します。本件、自賠責は慎重に検討下さったようですが、結論はいつも通りでした。損害賠償上、因果関係の立証は難しく・・裁判上でも完全勝利とはいきません。   一勝一敗・・か  

12級5号:骨盤骨折(70代男性・埼玉県)

【事案】

自転車で直進中、交差点で左折自動車の巻き込みを受けたもの。左恥骨・座骨を骨折、受傷直後のレントゲンを観ると、骨盤が左右歪んでいた。

【問題点】

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 毎度思いますが、自賠責の後遺障害とは、1級~14級の段階別に”不特定多数を一律に判定する”基準に過ぎません。顔面醜状痕の場合、例えばキズが3cmですと12級14号で保険金は224万円です。それが2.9cmだったら非該当で0円です。  あくまで判定は基準に沿ったものですが、基準に1mm足りないからと言って、後遺症が無くなった訳ではありません。障害は残っているのです。この損害を回復すべく、弁護士が損害賠償を実現させることになります。

 連携弁護士に引き継ぐ際、秋葉事務所ではこのように言います。   「先生、15級がないだけです! 慰謝料の増額事由として2.9mmのキズを主張して下さい!」    後は弁護士先生の頑張りになります。それでも、損害を金銭に換算するには根拠が必要で、それこそ自賠責の等級こそ、最良の根拠であることは間違いありません。本件では醜状痕での等級は逃がすも、14級9号を残しました。主婦でも300万円に届く賠償金になります。つまり、形成外科・美容整形外科でキズを消すことができます。お釣りも残るはずです。

顔面のキズで神経症状の認定は比較的珍しいものです  

14級9号:顔面打撲皮下血腫・鼻唇溝挫創(50代女性・埼玉県)

【事案】

信号のない交差点を原付バイクで走行中、右方より一時停止せずに進入してきた自動車に衝突され、負傷した。ドクターヘリも出動したが、救急車にて総合病院に運ばれた。   【問題点】

既に後遺障害診断書が完成した段階でのご相談であったが、後遺障害診断書上、3センチに満たない醜状瘢痕が記載されており、線状・瘢痕のどちらで審査されても12級の数値に満たないものであった。 続きを読む »

 これは、常日頃から感じていることですが、自賠責の認定基準はかっちり決まっている前提ながら、微妙なさじ加減で等級のバランスをとっているのではないか・・。それは等級の系統や序列に準じた、認定基準の範囲での調整となりますが、複合的に障害が重なっている場合はとくに、自賠責側の思惑を感じるのです。

 同じ○級でも実際の障害に比して軽い、あるいは重すぎるジャッジになることがあります。それは基準に照らした結果ですが、複数の障害認定がある場合、わずかに軽重を調整しているように感じます。認定ルールに矛盾を持ち込む程ではありませんが、そのような認定をいくつか経験しています。本件もその一つと思います。うまく説明できませんが・・。

 

背中が痛くて12級13号は予想外でした  

12級5号:鎖骨骨幹部骨折 12級13号:肋骨骨折(70代女性・山梨県)

【事案】

自転車で交差点を横断中、右折してきた車に衝突され受傷。鎖骨、肋骨を骨折したもの。

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 高齢者の多くは、事故の衝撃から一か所の骨折で済まず、複数の骨折(多発骨折)となる傾向です。本日の例は昨日の両手首と片足を骨折した被害者と同一です。つまり、四肢の内3本、おまけに鎖骨・肋骨・骨盤も折れた。さらに、骨折は無かったが、脊椎は過伸展損傷(簡単に言うとエビぞりになってひどく痛めた)で手術となりました。

 もう、これだけ人体の破壊があれば、80歳を超える年齢から車イス脱却は大変、歩行器や杖なしの独歩はほとんど不可能です。介護等級も容易に認められました。しかし、自賠責の認定基準からは、受傷箇所にそれぞれ等級を付けて、併合○級との判断に留まります。骨折後、各機能が弱ってしまうことは二次的な障害ですから、直接因果関係を絶対条件にする自賠責は「介護」としての等級を認めません。介護等級は頭部外傷や脊髄損傷など、直接に日常生活の動作が奪われる重傷例に限られます。結局、高齢者は事故を引き金に介護状態に陥ったとしても、「年寄りはケガがなくても、いずれ介護状態になるもの」とされてしまうのです。     これについては、賠償保険の限界を感じます。実態に即した介護状態と、それに至った因果関係の立証は、後の賠償交渉で実現するしかありません。連携弁護士の頑張りに期待して引き継ぎました。    もう一つの論点として、過伸展損傷による機能障害の認定は珍しく、弊所で初の認定となりました。   一人で5人分の後遺障害です  

12級5号:鎖骨骨折、肋骨骨折、骨盤骨折 +8級2号:胸腰椎 過伸展損傷(80代女性・神奈川県)

【事案】

歩行中、立体駐車場に入庫しようと右折してきた車に衝突され受傷した。以来、全身に渡る骨折で苦しむことに。   【問題点】

リハビリ病院に依頼したとされる後遺障害診断書が既に完成していたが、後方固定術の記載がなく、詳細は主たる病院に記載してもらうようにという内容だったため、救急搬送先の病院に作成依頼をしに行かなければならなかった。

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