頭部・顔面外傷の実績ページを整理しましたので、改めて紹介します。 頭部の障害は、脳挫傷や脳出血のケガから高次脳機能障害となったものを除きます。すると、頭蓋骨骨折、脳損傷、くも膜下出血から、主にめまいや頭痛を追いかけることになります。 顔面の障害については、実例の通り、顔面骨の骨折後に重度の顔面神経麻痺(ビートたけしさんは12級レベル?)にまでに至るケースは少ないですが、痛みやしびれの残存は是非とも認定を受けたいものです。
頭部・顔面外傷の実績ページを整理しましたので、改めて紹介します。 頭部の障害は、脳挫傷や脳出血のケガから高次脳機能障害となったものを除きます。すると、頭蓋骨骨折、脳損傷、くも膜下出血から、主にめまいや頭痛を追いかけることになります。 顔面の障害については、実例の通り、顔面骨の骨折後に重度の顔面神経麻痺(ビートたけしさんは12級レベル?)にまでに至るケースは少ないですが、痛みやしびれの残存は是非とも認定を受けたいものです。
ドクターヘリですが、過去の依頼者様で操縦士さんがおりました。また、元出身の医師のいる病院に何度もお伺いしており、以前から知っておりました。遅ればせながら、その存在を一般に知らしめたドラマを先月から初めて観ました。過去に2シーズンもあったのですね。 毎回、救急救命のシーンで興味深いシーンの連続です。また、平素から業務の中で出てくる専門用語が満載です。私達はメディカルコーディネーターとして、毎日のように病院にお伺いしていますが、それは事故受傷からしばらく経ってからとなります。受傷直後の処置などは診療報酬明細書で確認するに留まります。記録された処置は、後の障害の立証に必要な情報となりますが、イメージの鮮明度は決して高いものではありません。やはり、書面からの知識は限界があります。言葉の意味は知っていても、実際にその場面を見る事はほとんどないのです。その点、ドラマでの実写の描写は大変参考になります。
例えば、前夜のシーンで、戸田 恵梨香さん扮する医師が、ICUで患者の指を弾き、「中心性頚損ですね」と医師間でささやく場面がありました。これは、ホフマン(あるいはトレムナーも一緒にやったかもしれません)反射といい、脊髄損傷の陽性反応をみるものです。↓写真のように中指をピンと弾いて、親指が内側に曲がれば、脊髄損傷(陽性)です。ドラマの患者さんはこの反応がはっきり出ていました。中心性脊髄損傷(頚髄損傷とのことですので、頚の脊髄がやられたようです)では、ほとんどすべての患者さんは、上肢や下肢の完全麻痺となるか、程度の差はありますが麻痺の残存は確定的です。交通事故相談会でも脊髄損傷の被害者さんが来ると、私達はホフマン・トレムナーで反応をみています。もっとも、ドラマでは解説がないので、「?」と思った視聴者が多かったと思います。 それと、患者が救急搬送される過程で毎度のセリフ、「JCSは2桁です!」「GCSは6!」などがあります。これは、意識障害のレベルをあらわすものです。後に高次脳機能障害の立証の場面では、大変に重要な記録となります。いずれ、ドラマで象徴的なシーンがくると思いますので、その機会に解説します。
主人公の山下 智久さんは脳外科医です。救急救命科に脳外科医がいることは大変に恵まれていると思います。救急救命科は色々な科からの医師が、一定期間配属されるようです。しかし、第一線の専門医・執刀医がヘリに搭乗することなど稀でしょう。今後、続きを読む »
最後は個人賠償責任保険ではなく、施設賠償責任保険です。
個人賠はあくまで、日常生活上で第三者に損害を与えた場合に対応する賠償保険です。したがって、業務上の賠償問題は専用の賠償保険の対象となります。 ・工事現場で請負工事の作業中に第三者に損害を与えた場合 ⇒ 請負賠償責任保険
・商品を購入したら、商品が不良品だった場合 ⇒ 生産物賠償責任保険
・品物を預る業者が預り物を壊してしまった場合 ⇒ 受託物賠償責任保険
・お店の設備に問題があり、お客さんに損害を与えた場合 ⇒ 施設賠償責任保険 他にもありますが、代表的なものは以上です。 本件は宿泊施設が加入していた施設賠償保険に頼ることになりました。賠償保険の多くは、自動車の任意保険のように積極的に示談代行ができない上、担当者は自賠責保険の基準で押し切ろうとします。それでダメなら、弁護士介入がパターンです。それでも、保険の加入はありがたいものです。連携弁護士とのコンビでしっかり解決させます。
賠償保険なら何でも来い!
【事案】
内臓の障害は珍しい部位になります。内臓損傷は手術対象で、軽度の損傷はわりと手術で治るものです。
本件は少し説明が要ります。横隔膜が事故外傷によって、下部へ突出(ヘルニア)し、小腸に圧迫したことから腸閉塞(イレウス)を併発、小腸の部分切除となりました。二次的な病変とも言えますが、骨盤を骨折していたことや、初期の診断書の記載内容から因果関係に問題は生じなかったようです。それにしても、事務所にとって貴重な経験となりました。
勉強に勉強の毎日です
【事案】
自転車で走行、道路を横断しようとしたところ、右方から自動車が衝突、受傷した。全身を強打し、頭部骨折、くも膜下出血、肋骨骨折、骨盤骨折した。複数の障害認定となったが、本件では、外傷性横隔膜ヘルニアについてまとめる。
【問題点】
【1】閉尿・頻尿を残すもの
排尿障害(閉尿 等)を残すもの ぼうこう君膀胱は都合のよい時まで尿をためておく貯水池の役目を果たしています。通常の場合で 250ml 、牛乳瓶 1 本分より少し多目の量を貯蔵可能です。 続きを読む »
排尿障害が一時的なものであれば、専門医への受診によって、ある程度の改善が見込めます。ただし、中高年の病的疾患の場合は完治は難しく、長期な通院を必要とします。
交通事故外傷で、膀胱や尿路に損傷があった場合は手術での改善を検討します。やはり、やっかいなのは神経因性のもので、完全に治す(根治療法)より、症状の抑制が中心(対処療法)の傾向です。 【1】閉尿の処置 出ないものは出さなければなりません。 ① 導尿 ⇒ おなじみのカテーテル
カテーテルを”おしっこの度に”挿入するものを「導尿」といい、カテーテルを”挿入したまま”を「持続導尿」といいます。カテーテルはこの2種に加え、長さに差のある男性用、女性用があります。
② 尿路拡張 ⇒ 糸状ブジー
尿道狭窄(文字通り尿路が狭くなった)の場合は、尿道よりブジーを挿入して尿道の拡張をはかります。ブジーは、管腔を探ったり、拡張したりする棒状、管状のものです。拡張する場合は細いものから順次太いものへと変更していきます。
尿道狭窄の拡張は、一般に金属ブジーを用いますが、狭窄が著しい場合は、糸状ブジーを挿入して順次拡張します。
読んでいるだけで痛そうですが、カテーテルも挿入時に使うローションがあり、特に麻酔効果のあるキシロカインゼリーが代表です。 ③ 服薬
神経因性膀胱では、エブランチル、ウブレチドの服用を考慮します。
・エブランチルはα1受容体遮断作用により、末梢血管を拡げ、血圧を下げます。その結果、前立腺・尿道の平滑筋収縮を抑え、尿道を拡げることにより、尿を出しやすくします。
・ウブレチドは、筋肉を収縮させるアセチルコリンという神経伝達物質を増やします。膀胱の収縮を助け、排尿をスムーズにします。 ★ 尿路拡張術など、観血的手術を伴うものは、また、別の機会に解説します。
【2】頻尿・尿失禁の処置 ① 抗コリン剤の服用 定番薬はこれ
頻尿、過活動膀胱には、対処薬があります。抗コリン剤は、副交感神経を亢進させる(アセチルコリン)の作用を抑えることで、消化管の運動亢進に伴う痛みや痙攣、下痢などを抑える薬です。
アセチルコリンという物質は副交感神経を刺激⇒筋肉の緊張⇒膀胱の収縮⇒排尿を促す、これらの運動を活発にさせる作用があります。コリン剤はこのアセチルコリンの働きを抑える作用(抗コリン作用)があるので、消化管の過活動=頻尿を抑えることになります。 これは、前述の閉尿のウブレチドと逆の作用になります。
頻尿のお薬は他に、バップフォー、デトルシトール、ベシケアがあります。 ② 物理的な対処 多い日も安心?
尿失禁への対処はオムツ、尿パッドがあります。それぞれ、市販のものがあります。症状が酷ければ抗コリン剤の服用ですが、それでも漏れてしまう場合はパッドで対処するしかありません。
「おしっこがでないからここ(病院)にきたんでしょ?」
・・・(今更、でないことを検査してどうするの?) 毎度おなじみ、医師の対応です。交通事故受傷で排尿障害となった場合、例えば、おしっこが出なくなった証拠を突きつけなければ、障害等級の認定はありません。医師は患者の「おしっこがでない」ことに疑いを持たず、治療にあたります。しかし、自賠責保険・調査事務所は「客観的な検査結果」がなければ信じません、つまり障害の判定ができないのです。ここに、臨床判断と賠償請求の壁が存在するのです。
もっとも、検査の設備があり、30年前の知識のままのおじいちゃん医師でなければ、速やかに排尿検査を実施します。大学病院の泌尿器科となれば、尿流量検査はじめ、一連の設備があります。ただし、ウロダイナミクスを完備している病院は極めて少なく、検査誘致はメディカルコーディネーターの活躍場の一つとなります。 排尿障害の検証、2段階目は各種検査を紹介します。検査にて障害の実態を明らかにする事は治療の第一歩であり、障害審査、しいては賠償請求の証拠として必要なのです。 【1】尿の成分検査
尿中の蛋白、血液、糖などの有無とその量を調べます。通常は中間尿(はじめの尿を取らずに、途中からコップに取り、途中までの尿を入れる)を採取します。結果は30分後に成分表が作成されます。 内蔵機能の病的疾患の検査ですので、交通事故外傷とは離れますが、腎損傷などの場合はその初期検査には有用と思います。腎臓機能の障害はさらに、GFR検査(※)に移ります。
※ GFR =糸球体濾過値(しきゅうたいろかち) 腎臓の能力、どれだけの老廃物をこしとって尿へ排泄することができるのか? つまり、腎臓の能力は、GFR値で判断されています。 この値が低いほど、腎臓の働きが悪いということになります。腎機能の障害については、また別の機会に解説します。【2】尿流量検査(ウロフロメトリー)
専用トイレで排尿し、検査機器が自動的に尿流のカーブを描く検査です。10分程度できますので、閉尿・頻尿・尿失禁、どの場面でもまず実施すべき検査です。この検査で、尿の勢い・排尿量・排尿時間などが明らかになります。このデータから、排尿障害の種別・状態が客観的に把握できますので、排尿検査の出発点となります。 検査前には十分に水分を取って、検査までトイレは我慢となります。 ← 測定用の専用便座 【3】残尿測定
通常は上記のウロフロメトリーと一緒に実施します。排尿後、超音波検査で膀胱の画像をみて計算します。 泌尿器科の医師は、尿流量と残尿測定から、蓄尿機能の低下、排尿括約筋の異常など、排尿機能の異常を把握します。 続きを読む »
脊髄損傷では多くの場合、排尿障害を発症します。
脊髄損傷以外の原因ですと、骨盤骨折など下腹部への直接のダメージがあれば、膀胱や尿路への物理的な損傷、末梢神経性・膀胱の神経障害(排尿括約筋不全など)が考えられます。また、病的疾患として前立腺肥大、さらに心因性での発症もあります。
医学的な難しい解説はほどほどに、実例や簡易なイメージから説明します。これから、排尿障害が自賠責や労災の後遺障害として認定を受けるまでを、4段階で追っていきましょう。 【1】排尿障害の種類 一般的に、以下、3種でしょうか ① 閉尿 ・・・ 尿がでない、でずらい、尿が途切れる、尿意が乏しい
② 頻尿 ・・・ 尿の回数が頻繁になる、尿意がありすぎる
③ 尿失禁・・・ 尿意がすると我慢できない、くしゃみ程度で漏れる、知らずに漏れてしまう 経験上、頻尿の多くは尿失禁を伴います。高齢者は外傷に関係なく、頻尿・尿失禁に悩まされている方が多いようです。当然に既往症の影響を検討します。また、むち打ち等、外傷性頚部症候群で排尿障害となった被害者さんの場合、「なぜ、むち打ちでおしっこに異常が?」からの出発となり、因果関係や病的疾患との区分けに大変な苦労を強いられます。 【2】尿失禁の種類 ここで、尿失禁について、さらに3分類します。 ① 持続性尿失禁
膀胱の括約筋機能が低下、または欠如しているため、尿を膀胱内に蓄えることができず、 常に尿道から尿が漏出する状態のことで、膀胱括約筋の損傷、または支配神経の損傷により出現します。
○ 鼻の障害は、
外貌の醜状(鼻の欠損、鼻が曲がった)と嗅覚障害 に大別できます。 ○ 口の障害は、
咀嚼障害(食べ物を噛み砕けない)、嚥下障害(飲み込めない)
言語障害(上手く話せない)
歯牙の障害(抜けた、折れた、補綴(人工物を使って修理)した)
味覚障害(味がしない) このように、大きく5分類できます。
例えば、顔面の多発骨折や脳損傷の場合、上記の障害が複数生じる可能性があります。しかし、顔面や脳の手術が優先され、その後のリハビリが続く中、徐々に上記の障害が確認されていくのです。鼻の醜状や言語障害は周囲が気付きますが、咀嚼や嚥下、味覚・嗅覚は注意深く観察する必要があります。とくに、高次脳機能障害の被害者さんの場合は、周囲がチェックしなければ、何かと見落とされるものです。
本人が主張しない症状、家族が気付かない症状、そして、医師が見落とした症状は・・「障害はなかった」ことにされてしまいます。
交通事故外傷による後遺障害の世界では、”病院にさえかかっていれば”、障害が自動的に認められるわけではありません。目耳鼻口の中でも感覚器の障害は、被害者側の医療調査・損害立証の必要性を強く感じる分野でもあります。 それでは、味覚障害が(そもそも、高次脳機能障害が)見落とされた実例をご参照下さい。
○ 鼻の障害は、
外貌の醜状(鼻の欠損、鼻が曲がった)と嗅覚障害 に大別できます。
○ 口の障害は、
咀嚼障害(食べ物を噛み砕けない)、嚥下障害(飲み込めない)
言語障害(上手く話せない)
歯牙の障害(抜けた、折れた、補綴(人工物を使って修理)した)
味覚障害(味がしない) このように、大きく5分類できます。 これらの障害について、当然に画像所見が要求されます。さらに、嗅覚・味覚等、感覚器の障害を認定するには、以下のプロセスをたどります。 嗅覚障害を例にしますと・・ 1、鼻腔が外傷で損傷
鼻に実質的な破壊があり、物理的な変形が残存した結果から、鼻の中の鼻腔が損傷、又は狭くなり、臭いがしなくなったケースです。いわば、マイクの故障でしょうか。
2、嗅覚神経が切断された
臭いは、鼻の奥の嗅粘膜に臭いの分子が付着し、嗅細胞から電気信号に変換されて脳に伝達されます。顔面の骨折などで、この回路が壊れてしまった、いわばケーブルの断線で嗅覚を失うケースです。
3、脳損傷による嗅覚障害
臭いは最終的に脳で判断することになります。上記の1~2までは問題なしでした。しかし、脳に外傷があった場合、脳損傷による嗅覚異常があり得ます。経験上、前頭葉に脳損傷があった被害者さんに多くみられました。これをパソコンで例えればCPUの故障です。 感覚器の障害はおおよそ、このように段階的に原因を探ります。次に検査です。 4、障害の有無・程度を検査
原因の見当はつきました。さて、問題は、医師が単に「嗅覚障害」と診断書に書くだけでは、障害認定とならないことです。医師は「臭いがしないから、ここに来たのでしょ?」と患者の訴えに疑いを持ちません。しかし、賠償問題となると、審査側は「臭いがしなくなった証拠」を必要とするのです。したがって、適切な時期に該当する検査をしなければなりません。障害の程度を測る上でも、検査はどうしても必要なのです。 続きを読む »
目や耳では様々な障害の種類があります。代表的な症状に、視力を失う失明や視力低下、二重に見える複視、見える範囲が狭まる視野狭窄があります。耳であれば、聴力が低下する難聴、耳鳴りでしょうか。これらが障害として認定される場合、目や耳、または脳に直接の損傷あれば容易でしょう。しかし、直接の損傷がない場合が問題なのです。
目立った外傷のない頭部への衝撃や、頚椎捻挫(いわゆる、むち打ち)で視覚や聴覚の症状を訴える被害者さんは多く、今までも相談会に多数参加されました。おそらく、神経系統に何らかの衝撃があったのでしょう。しかし、直接の器質的損傷がないケガでは、自賠責は因果関係を疑います。確かに、ケガがなくとも視力や聴覚の低下は起きますので、内在的な病気の影響を捨て切れません。
秋葉事務所では、これら因果関係に乏しいケースの立証に数例、成功しています。ポイントは受傷直後からの症状の訴えと専門科の受診、早期の検査実施です。そして、その症状が好悪転せず、一貫して続いていることでしょうか。自賠責は、因果関係に確固たる証拠がなくとも、症状の信憑性と一貫性で認定することがあるのです。
逆に、障害を否定された被害者さんは、症状の発生、もしくは訴えが事故受傷からしばらく経ってからで、眼科・耳鼻科への受診が遅く、又は、検査数値が好調不調から?上下動します。つまり、原因が事故外傷から離れてしまうのです。
以下の実例からも、「顔面骨折や脳損傷なら立証は容易、直接に損傷の無かったケースは苦労」、がお解かりと思います。
非器質性精神障害とは、脳神経に外傷がない精神的な障害を指します。その代表的な傷病名であるPTSD(心的外傷後ストレス障害)は一般的に知られるようになってきました。現代人の4人に1人は日常や仕事に強いストレスを感じており、心療内科の診断・カウンセリングを受けている人も20人に1人との統計データを目にします。もはや、心の病気は国民病の様相です。当然ですが、交通事故を契機に重度な症状に陥る方もおります。
交通事故の被害にあえば、誰もがブルーになります。ケガの痛み、治療の苦労、保険会社との折衝でイライラ、その他、労災やら健保やらが絡んで・・まさにストレスの大洪水です。夜も眠れず、事故の場面が常に頭から離れない・・これでは皆、程度の差こそあれ、鬱になってしまうでしょう。 しかし、それが治らないもの=後遺症として、日常生活や仕事に深刻な支障をきたし、専門医の継続的な治療が必要な疾病と認められるには、一定の基準が存在します。それがタイトルの2大ポイントです。加えて、症状の程度や既往症(事故前からの心身症治療歴)も検討されます。自賠責保険では、とくに事故との因果関係を重視します。
専門的な解説ではなく、わかりやすい実例から説明しましょう。
1、死を意識するような事故状況であったのか?
○ 多重衝突で潰れた車に長時間、閉じ込められて、ガソリンが漏れている中、救出されるまでの恐怖で・・。
○ 自動車が壁に衝突し、脱出できないまま、血だるまとなった隣の家族が息を引き取るまで見届けた・・。
× ...
今年に入って、腰椎の実績が続いたので、いくつか紹介しましょう。
腰椎捻挫は頚椎捻挫、いわゆるむち打ちに続いて多い交通事故外傷と思います。その認定もむち打ちに同じく、症状の一貫性・信憑性がポイントです。骨折等のない障害の立証は”信じてもらう作業”と言えるでしょう。
対して本件は骨折が診断されていたので、立証は比較的容易ながら、今度は圧迫骨折の11級が認められる椎体の変化を追う必要がありました。椎骨の圧迫骨折11級の認定では、どうやら圧壊率○%との明確な基準はないようで、画像上で明らかに確認できるほど椎体が潰れている必要があります。 本件は佐藤が追いかけました
【事案】
タクシー搭乗中、右折待ちで交差点内で停止していたところ、信号無視のトラックに正面衝突され受傷した。直後から全身の痛みに悩まされる。 続きを読む »
脊椎に軸圧、屈曲、回旋、伸展、剪断、伸延などの強力な外力が加わり、脊髄の神経伝導路が遮断され、運動麻痺、知覚麻痺、自律神経障害、排尿排便機能障害を起こします。一口に脊髄損傷と言っても、タイプや症状の軽重は様々です。
まず、完全損傷と不完全損傷に分かれ、不完全損傷は4つの典型に分かれます。等級は表の通り1級~9級ですが、脊髄損傷の有無は不明瞭ながら、軽度の麻痺の場合は12級評価もあります。 完全損傷
脊髄が完全に脊椎や椎間板によって遮断されたり、脊髄そのものが引きちぎれるので、非可逆性で回復はしません。ほぼ、全身麻痺で寝たきり状態は必至です。環椎・軸椎部分の場合、呼吸困難で多くは死亡となります。
不完全損傷
① 前部脊髄損傷・・・運動麻痺はあるが、触覚、位置覚、振動覚は保ちます。 ② 中心性脊髄損傷・・・下肢より上肢の運動障害が強く、温覚と痛覚が麻痺、触覚は保ちます。 ③ 後部脊髄損傷・・・少数例。触覚、位置覚、振動覚は麻痺しますが、運動障害はありません。 ④ ブラウン・セカール型損傷・・・脊髄の片側損傷で、損傷側の運動麻痺と反対側の温覚・痛覚が麻痺。
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自賠責保険の認定基準は公表されている労災基準に準用としているだけで、詳細を明かしていません。おおよそは同じ基準ですが、私達は経験から見当、割り出している部分もあります。醜状痕の認定等級は以下のとおりです。業界初の完全整理票です。
次いで、実例を列挙します(「女子・・」とある例は、旧基準で男女差があった時代の認定例です)。
自賠責保険 醜状障害の新認定基準後遺障害認定等級(平成23年改正)
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これも珍しいケースです。
指の伸筋腱とは、指の背側に張り付いて、指をまっすぐ伸ばす時に、手の甲から指を引っ張る役割をしています。この腱が断裂すると指が伸ばせなくなり、ただちに手術で再建します。軽度の損傷では保存療法となります。本件の場合、伸筋腱が指のMP関節(根元の関節)で外れてしまったのです。幸い、指の曲げ伸ばしに深刻な影響はなく、痛みと不具合が残りました。手先を使う細かな作業には影響があるといえます。ピアノを弾く方ならご理解いただけるでしょう。
自賠責の判断はやはりと言うか、14級9号での評価となりました。 後日談ですが、元々、指の伸筋腱が関節部で外れて動く人もけっこういるようです。担当した弁護士さんもそうでした。
【事案】
自動車で交差点を直進のところ、右方より一時停止無視の自動車に側面衝突を受けた。頚椎捻挫の診断のほか、右手の甲、人差指~中指のMP関節部を傷めた。
【問題点】
右手の診断名は伸筋腱脱臼となった。手の甲(中手骨)から示指(人差指)、中指にかかる指の靱帯が、指の屈曲時に左右に動くようになってしまった。これは、どのような後遺障害に該当するのか? 続きを読む »
交通事故外傷の実に65%を占めるむち打ちですが、単なる捻挫・打撲ではなく、神経症状を伴うものは症状が長期化する傾向です。しかし、保険会社は「捻挫・打撲でいつまで通っているんだ(怒)!」と3ヶ月以上の通院は許さない姿勢です。確かに、大げさに症状を訴える者、心因性の被害者が多いと思います。その中から、症状が嘘偽り無くある被害者さんを救わねばなりません。その点、症状の一貫性、信憑性から認定の余地がある14級9号「局部に神経症状を残すもの」は大変便利な評価基準です。
秋葉事務所でも、この14級9号を想定して、多くの傷病名から認定を引き出しています。
「14級9号を知る者が後遺障害を制する」
と後進に指導しています。これら好取組みの中から、いくつか紹介しましょう。 佐藤が担当しました!
【事案】
自動車搭乗中、急な飛び出しを確認したため急ブレーキをかけたところ、車間距離をとっていなかった後続のトラックに追突される。直後から頚腰部痛のみならず、手足のしびれ、頭痛等、強烈な神経症状に悩まされる。特に、めまいと耳鳴りが受傷後から残存した。
【問題点】
症状固定の月、最後の診断では眼振検査で異常がみられなかった。また、頚椎捻挫で難聴・耳鳴りが発症するのか? 続きを読む »
最近、めっきり相談者の減った脳脊髄液減少症ですが、一昨年、健保治療が復活して名前も改められました。
CSFH は、 Cerebro Spinal Fluid Hypovolemia の略語です。健保適用から自由診療、再び健保適用へと変遷にあわせて傷病名も変わりました。現在、脳脊髄液減少症は低髄圧液症候群に戻りました(現場では脳脊髄液漏出症も合わせ、主に3つの傷病名で呼称されています)。この謎の症例には以下の診断基準が存在します。
(1)症状(自覚症状)
① 起立性頭痛
国際頭痛分類の特発性低髄液性頭痛を手本として、起立性頭痛とは、頭部全体に及ぶ鈍い頭痛で、坐位または立位をとると 15 分以内に増悪する頭痛と説明されています。
CSFHを訴える患者さんは横になると症状が緩和されるそうです。また、応急処置として水分を取ることも有効のようです。点滴で体液を増やす?処置も多く目にしています。
② 体位による症状の変化
国際頭痛分類の頭痛以外の症状としては、項部硬直、耳鳴り、聴力の低下、光過敏、悪心、これらの5つの症状です。しかし、多くの患者さんはこの5つに留まらず、あらゆる不定愁訴を訴えています。 (2)基準(他覚的所見)
① MRIアンギオで、びまん性の硬膜肥厚が増強すること
この診断基準は、荏原病院放射線科の井田正博医師が、「低髄液圧の ...
交通事故から精神的に参ってしまい、PTSD(心的外傷後ストレス症候群)、鬱、パニック障害、フラッシュバックなどを訴える被害者さんは珍しくありません。
誰しも突然降りかかった災難と、治療や相手との交渉、あらゆるストレスから心を病んでしまうものです。しかし、そのほとんどがPTSDではありません。多くは2次的な心身症気味(?)を訴えているに過ぎず、事故によって精神を破壊するほどの強烈な体験がなければ、障害の対象となりません。その点、労災も自賠責も明確な基準によって区別・審査しています。
その根拠は「厚生労働省 非器質性精神障害判定基準」に細かく設定があり、以下の項目を出発点に細かく審査基準が定められています。
PTSD 診断の基準 ICD-10 ① 自ら生死に関わる事件に遭遇したり、他人の瀕死の状態や死を目撃した体験、などの破局的ストレス状況に暴露された事実があること。 ② 自分が「危うく死ぬ 、重傷を負うかもしれない」という体験の存在 ③ 通常では体験し得ないような出来事 ④ 途中覚醒など神経が高ぶった状態が続く ⑤ 被害当時の記憶が無意識のうちに蘇る ⑥ 被害を忘れようとして感情が麻痺する、そのために回避の行動を取る ...本件は同種の傷病名の被害者さまはもとより、交通事故・後遺障害の立証を業とする皆様に参考になると思います。
秋葉事務所では自賠責のルールを最大利用しての解決例がいくつもあります。あたかも、連携系弁護士の賠償交渉を前に、自賠責保険請求にて勝敗を決しているかのようです。
交通事故で受傷した部位に、既に昔からの骨折などが残っていた場合、新たに加わった障害を加重障害として、既往症分を差し引いて評価・保険金支払いを行います。加重障害は自賠責にとって公平を期したルールであり、重なった障害の切り分けに大変有効な手段と言えます。これを偶然ではなく、意識して立証作業を進めています。毎度、同じ言葉を繰り返しますが、後遺障害の立証作業は、審査側である自賠責と意を同じくする作業です。
高齢者の画像からは経年性の骨変化、病変性の骨折や自然骨折など、事故外傷ではない骨折がみつかることがあります。本件は相談会の段階から、陳旧性骨折(昔の骨折)と新鮮骨折(本件事故での骨折)を見極めていました。
【事案】
バイク搭乗中、直進していたところ、点滅信号の交差点で右方からの衝突により受傷した。直後から全身の痛みに悩まされる。
【問題点】
相談時に既に後遺障害診断書が完成しており、事前認定で保険会社に提出していた。後遺障害診断書の内容が悪く、このままでは非該当の可能性が極めて高いと判断した。
また、過失割合も被害者が不利、65:35を想定していた。事故相手に対する賠償交渉の余地にも不安があった。
【立証ポイント】
ただちに保険会社から後遺障害診断書を回収し、修正依頼をするため病院同行する。主治医に詳細を聴取した。画像を精査すると腰椎に2ヶ所骨折がみられ、事故によるものなのか疑問を感じた。主治医は1箇所は破裂骨折は交通事故によって起こった骨折と断言したため、破裂骨折で申請する方針を決める。別の箇所に圧迫骨折が見られたが、陳旧性所見であったため、主張からは外して申請する。認定結果は予想しがたいところがあったが、脊椎の2箇所にわたる変形障害で現存障害が8級相当、既存障害で11級7号が判定される。秋葉事務所では多くの例でこのような加重障害の判定を導いている。
自身の過失が大きく、高齢で逸失利益が伸びない事情もあり、この自賠の判定・保険金支払いで事故は解決となった。本件は自賠責保険のルールを駆使して解決を計った典型例でもある。
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