醜状痕の認定では数々のパターンを経験してきました。医師が診断書の該当欄に計測値を記載さえすればで済むものではなく、写真の添付や時には別紙に図示していただくこともあります。それでも、ほとんどのケースで自賠責調査事務所から”実際にキズを見て計測する”ための面接の要請が入ります。もちろん、即座に面接に応じ、連携弁護士が同席して計測を見守るなど万全を期します。
しかし、全件に面接をしているわけではなく、面接を割愛することがあります。それは以下、4パターンを把握しています。
① 高齢、重傷で外出不能、車イスなど、被害者さんの健康状態など事情によっては、自賠責側が面接を遠慮してくれる時があります。その場合、写真判定になりますから、角度を変えて数枚撮影するなど写真の充実と、写真からキズの大きさが計測できるようメジャーをあてた写真などの工夫を加えることになります。
② 下腹部や臀部など、とくに女性の場合は写真もはばかられますので、これは、医師の図示から判定して頂きます。まさか、面接でパンツを下ろせとは言えません。
③ 明らかに醜状痕の基準に満たないキズの場合。自賠責から念のため面接の打診が入りますが、申請者側から「非該当でいいですから面接はいいです」と断るケースです。
④ 逆にキズが明らかで、容易に判定できるケース。意外と稀だと思います。本件実績はこれにあたります。
私も何度か面接に立ち会いました
9級16号:顔面線状痕(50代男性・埼玉県)
【事案】
自転車搭乗中、交差点で右折しようとしたところ、自動車が進入し衝突、受傷した。顔面挫創の診断。
【問題点】
被害者にも過失が認められるため、治療費は労災を利用を推進、申請を急いだ。その後、症状は徐々に緩和され、顔面の傷跡も事故から半年でかなり薄くなってきた。
【立証ポイント】
このままだと、完全に後遺障害等級が認定されなくなってしまうため、症状固定を急ぐ。傷跡については追加で手術する方針もないことを医師から確認し、後遺障害診断書を依頼する。キズは薄くなっていたが、病院同行で医師に後遺障害の対象として説明、線状痕の長さも丁寧に計測して頂いた。
速やかに後遺障害等級申請(被害者請求)を提出した。醜状痕の場合、自賠責から傷跡の確認のために面談があると予想も、書面で判断され、迅速に5cm以上の線状痕=9級16号が認定された。