今年を振り返りたいと思います。業界では事件が多く、数年後、「2024年は損保業界が変わった潮目の年」とされそうです。僭越ではありますが、秋葉の筆により昨年を振り返ってみたいと思います。今回ランクインした事件のいくつかは、2024年より前に発端している長期的な問題でした。
第1位 ビックモーター不正請求事件と損保ジャパン、その後
自賠責保険の手数料が明るみに・・・
事件自体は2023年の報道ですが、2024年までの顛末をまとめます。すでに2022年8月、ビッグモーター(以後、BM)による保険金不正請求と、その不正事実を知りながらも保険会社が取引しているとの内部告発から、2022年初旬に損保ジャパン(以後、損J)、東京海上日動、三井住友に対して調査が実施された。その結果、不正事案が発覚し、BM側に追及すると、「作業員のミスによるもので意図的なものでない」と回答された。損Jは、組織的関与はないものとしたが、東海日動と三井住友は再調査を求めていたという。同年7月、BM社内では東京海上と三井住友の自賠責の取り扱いを停止するよう指示があったとされる。同月下旬、事故車の修理紹介を停止していた前述3社のうち、損Jだけが修理紹介を再開した(損Jは独り勝ちと思ったのか?)。
その後、不正の事実が次々と明らかになり、2023年の報道で全国民が知るところになった。BMの経営陣は退職、2024年会社は分割され、WECARSに社名変更、伊藤忠が引継ぎ、当面は損害賠償などの後始末に追われています。
一方、損Jには、金融庁より業務改善命令を発出された。損JはBMの不正請求を知らなかったとしているが(損Jのアジャスターはそんな間抜けではない)、金融庁は「知らなかったこと自体が(子会社管理上の)問題だ」と指摘した(とぼけるな!とは言われなかったが)。損Jとしては、白川社長の辞任で責任を示した形だが、他社が手を引いた後も継続取引したことが、実に悪目立ち、損Jのイメージダウンは決定的となった。損JからBMの出向者は、2004年11月から2023年3月までに43人いるが、報告書では不正請求に関与していないと結論づけている(立場上、見て見ぬふりはあったと思いますが・・)。
通常、自動車の修理費について異常に厳しく査定する損Jですが、BMは特別に「査定なしの修理費支払い」をするなど、BMから上がる自賠責保険の為に「正確で公平な損害賠償を実現する」損保の矜持を捨てたのです。本来、社員は皆、真面目で優秀な損保マンです。今後、信頼回復に時間をかけて取り組んで頂きたいものです。
また、今回の事件で明るみとなったのは、自賠責保険の収益です。自賠責保険は、国土交通省管轄の強制保険であり、公的制度と言えます。その契約事務を任意保険会社に委託しています。その手数料ですが・・・代理店さんには、昨年少し上がりましたが1735円、保険会社へは社費として1件あたり5056円です。現在、自家用普通自動車の掛金が17650円ですから、そのうち実に31%が損保への手数料なのです。普通の消費者感覚として、代理店が領収書を切って、保険会社が証券を発行するだけ、その手間賃としては高額に思えてなりません。BMは最盛期、年間10万台の販売です。これだけでも、損Jは毎年5億円を超える収益、さらに車検の際の契約も加われば莫大な利益です。これを独り占めしたかった・・・この事件の根底に「自賠責保険の収益と見返り」の構図があったと思います。
そして、全国の中古車店舗前は“草ぼうぼう”になりました。
(BMのように除草剤を使用していると思われるからです)
つづく