現在、高次脳機能障害案件を4件担当しています。
これから立証作業に入るもの、非該当から異議申立を行うもの、それぞれ受任の出発点は違いますが、この障害の立証に共通する出発点について解説します。
※ 今年4月からの新基準となり、いくつか変更がありますが、この旧基準を基本条件と見てください。後日、新基準の解説を行います。
・脳挫傷
・びまん性軸策損傷
・びまん性脳損傷
・急性硬膜外血腫
・急性硬膜下血腫
・外傷性くも膜下出血
・脳室出血
・骨折後の脂肪塞栓で呼吸障害を発症し脳に供給される酸素が激減した低酸素脳症
③ 頭部外傷後の意識障害が少なくとも6時間以上続いていること、もしくは健忘症あるいは軽度意識障害が少なくとも1週間以上続いていること。
意識障害とは JCSが3桁、GCSが8点以下のもの、軽度意識障害とはJCSが2~1桁、GCSが13~14点のもので、意識障害は6時間以上、軽度意識障害なら1週間以上との指標により判断します(これは旧基準です。現在は少し緩和されています)。これは専用診断書 「頭部外傷後の意識障害の所見についての所見」 に記載します。最初の重要書類と言えます。
○ この診断書により高次脳機能障害が入口で否定された例
1、なぜか意識清明に チェックが
はぁ???実際は事故直後、家族が駆け付けた時は朦朧としていました。
2、JCSが0点、GCSは15点満点つまり意識がはっきりしている。
「意識障害あり」にチェックがなされていたとしても、これでは意識障害なしに等しいことになってしまいます。
3、意識障害の所見について
「記憶障害があるが、意識障害ではない」と。一体いつの所見を指しているのか?それとも医師の解釈の問題でしょうか・・・。
これらの例は決して珍しくなく頻発しています。なぜでしょうか?
事故現場から救急搬送された患者には、まず救命処置がなされます。一刻を争います。そこで担当する医師が脳外科ではなく、宿直の内科医だったらどうでしょう?この意識障害に関する記録を正確にとってないことも想像できます。
また、これも実際にあった例ですが、重大な体幹骨の骨折や内臓への損傷で緊急手術した場合、麻酔でしばらく眠ってしまいます。そして目が覚めた時に、「良かったね、手術は成功だよ」と医師が安心してしまい、「一応後で脳の検査をしましょう」程度で、体のケガをより重篤とみて脳損傷を軽視してしまうケースです。あとになって高次脳機能障害が明確化しても、この最初の段階での記録が曖昧なままです。
脳外科であっても、高次脳機能障害の立証ができない病院はたくさん存在するのです。
この入口でコケると・・立証が絶望的になります。
高次脳機能障害が疑われる患者さん、あるいはご家族に、以上のメッセージが届くといいのですが・・・
現在、治療中であっても、早めに主治医に「頭部外傷後の意識障害についての所見」の記載を依頼して下さい。
早ければ早いほど修正は容易です。