2. 骨盤輪内に収納されている臓器の損傷
骨盤輪の中には、S状結腸、直腸、肛門、膀胱、尿道、女性では、これらに加えて、子宮、卵巣、卵管、腟が収納されており、消化管は下腸間膜動脈、女性性器は卵巣動脈と子宮動脈、泌尿器系は内腸骨動脈により必要としている酸素と栄養素が供給されています。
○ 排便障害
骨盤骨折に合併するS字結腸・直腸の損傷ですが、人工肛門の造設などの重症例はなく、経験則では、程度は様々ですが便秘を残すものが圧倒的です。S字結腸に外傷があって、その結果、便秘になったものが対象で、便秘を残すものについては、肛門括約筋を支配している骨盤神経もしくは下腹神経に損傷が認められることが条件となっており、これは、直腸肛門機能検査を受けて立証します。その上で、排便回数が週2回以下の頻度で、恒常的に硬便であれば、11級10号の認定がなされています。
9級11号は摘便(手で肛門から便をかき出す)が条件ですから、重度の介護状態が想定されます。この場合、介護等級である別表Ⅰの第1号1級、2級1号に内包されることになります。単独の9級11号認定は未経験です。
逆に頻便(便意がしょっちゅう、便の回数が1日数度、単なる下痢ではない)の場合については、13級11号「臓器の障害」に属します。臓器の13級は、各臓器のちょっとした不具合をこの認定に当てはめています。
13級11号:胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
以下は、排尿、排便、尿漏れの3点セットが認定された例です。
👉 併合10級:腸間膜損傷 尿道・膀胱損傷 異議申立(20代男性・埼玉県)
○ 排尿障害
膀胱・尿道の損傷では、ズバり排尿障害の対象です。医学論文では、仙骨の脱臼骨折では、56%に膀胱・直腸障害が認められると報告されています。排尿障害は泌尿器科におけるウロダイナミクス検査で立証することになります。
仙骨の骨折で出現する排尿・排便障害は、S2とS3の仙骨神経根の損傷が原因です。S2の陰部神経は、外尿道括約筋の持続的収縮を弛緩させ、S3の骨盤神経は尿意を促し、膀胱括約筋を収縮させ排尿に導く、S2、S3の神経根が障害されると尿閉をきたすことが判明しています。
排尿障害について、集中解説はこちら 👉 排尿障害を段階的に検証します ① 分類
⇒ ⑨ 後遺障害のポイント (不安定型)Ⅲ