< 後遺障害のポイント>
 
【1】後遺障害の前提

Ⅰ. 腸骨翼骨折に限っては、単独骨折であっても骨盤腔内に3000mlを超える大出血をきたすことがあり、その際は、出血性ショックに対応して全身管理を行う重症例となります。それ以外は骨癒合さえ問題なければ、後遺症なく回復傾向、等級も14級9号止まりか、痛みなどの神経症状が無ければ非該当になります。

Ⅱ. 仙骨と腸骨が接合する仙腸関節は、強固な靭帯で補強されており、この部分に靭帯損傷や離解が生じると、周囲に存在する静脈叢の損傷を合併して大量出血につながります。この場合、緊急オペが生死を分けます。後遺障害どころではありません。もっとも、出血さえ抑えれば、あとは骨癒合を待つ保存療法になります。つまり、オペで完治となれば、後遺障害の認定はありません。
  
Ⅲ. 腸骨翼骨折で出血を伴わないもの、恥骨・坐骨骨折の単独骨折は、保存的治療で軽快します。3週程度の安静で歩行ができるようになり、後遺障害を残すことなく完治しています。癒合後の変形や、痛み・しびれ等の神経症状もなければ非該当となります。
 
【2】等級は?
 
◆  XPやCTで変形が確認できれば、体幹骨の変形として12級5号が認定されます。

 認定例 ⇒ 12級5号:骨盤骨折(70代男性・埼玉県)

 骨折部に痛みの神経症状を残しているときは、骨折部の3DCT撮影で、骨癒合状況を検証し、変形癒合が確認できるときは、その神経症状は12級5号に内包して評価されます。変形が目立たない場合かつ、症状の一貫性があれば、14級9号の余地を残します。
 
◆  男性の尾骨骨折は、ほとんど後遺障害を残すことなく完治します。ただし、尾骨に痛みの神経症状を残すときは、3DCTで変形が立証できれば、その程度に応じて、14級9号か12級13号の認定を目指すことになります。

 女性の場合はもう一つ検証が必要です。この尾骨骨折を含む骨盤の骨折により、尾骨が屈曲変形、あるいは腸骨に変形をきたしたときは、正常産道を確保できません。将来の分娩で、帝王切開の危惧を持ちます。弊所では、婦人科医の診断書でこのことを立証し、11級の認定を得たことがあります。

 認定例 ⇒ 11級相当:骨盤骨折・狭骨盤(10代女性・長野県)

 この場合、出産が可能な年数について、逸失利益が認められます。もちろん、この逸失利益の判定は高度な医学的検証が必要ですから、相手保険会社との交渉ベースでは進まず、どうしても訴訟となります。したがって、同症例の経験のある弁護士を選ぶ必要があります。
  
 ⇒ 【2】不安定型 ⑤ ストラドル骨折・マルゲーニュ骨折 につづく