顔面骨折も少ないながら数例経験しています。顔面は複数の骨で形成されており、まずそれぞれの名称を確認します。

顔面骨折は複数の骨折が生じることが多く、状態を表現するために3分類します。

1、Le Fort(ルフォー)I型
 鼻骨(びこつ)骨折、下顎骨(かがくこつ)骨折、頬骨(きょうこつ)骨折、眼窩底(がんかてい)骨折、上顎骨(じょうがくこつ)骨折。

2、Le Fort II型
 鼻骨、上顎骨前頭突起、涙骨、篩骨、眼窩底、上顎骨頬骨縫合部、翼口蓋窩-翼状突起に達する骨折、上顎から眼窩にかけての骨折。

3、Le Fort Ⅲ型
 鼻骨を横断し、眼窩後壁を経て下眼窩裂、頬骨の前頭突起を通り後方へ向かい、上顎骨と蝶形骨の間を通過する。顔面骨が頭蓋底と分離する。
← 図で見た方がわかりやすいです。

 この3種骨折タイプがあります。ちなみに図ではⅠ~Ⅲ型とは別に、頬骨だけの骨折を単独の粉砕骨折としております。

 顔面骨折の原因としては、交通事故、スポーツ中の事故やけんかなどにより顔面を打撲することがあげられます。骨折がみられる頻度としては、鼻骨骨折、下顎骨骨折および頬骨骨折などが頻度の高いものです。

想定される障害

1、顔面神経麻痺

 しびれ、無感覚、疼痛がある場合がほとんどですが、重度となると普通の表情をしていても顔がゆがんだままです。

2、開口障害、咬合(こうごう)異常

 咬み合わせの異常がみられます。頬骨骨折で多く、顎の円盤と呼ばれる軟骨の損傷でも発症します。Le Fort I型の上顎骨折では、上顎の動揺など、咬合(こうごう)異常などがみられます。

3、眼球の運動障害、 複視(ものが二重に見えること)
 眼窩下縁や眼窩外側あるいは頬骨弓部(きゅうぶ)の骨の段差などがみられます。眼窩底骨折では眼球の運動障害、 複視や眼球陥凹(眼球が落ちくぼむこと)などがみられます。この眼球運動障害や複視は、受傷後時間が経過するにつれて次第に改善してくることがあります。

4、嗅覚障害・味覚障害

 眼窩底、頭蓋底骨折がある場合に多発します。眼窩底、頭蓋底は脳から嗅覚や味覚に関する神経が通っています。この部位に骨折があると、それぞれの神経が寸断されて臭いや味が減退、もしくは脱出(完全に喪失)します。

5、めまい、ふらつき

 受傷から時間と共に改善しますが、脳に何らかの損傷が及べば頑固な後遺障害となります。

診断

 顔面骨折の診断では、受傷時にどのような外力がどの方向から作用したかを知ることが骨折の部位や程度を診断する上で重要です。単純レントゲン撮影のみにとどまらず、CT検査が望まれます。

 単純レントゲン撮影に加えてCT撮影を行うことは、骨折の位置や程度を把握する上で非常に有効です。特に3DCTは3次元画像で見ることが可能で、非常にわかりやすいものです。最近の案件でもこれを最初に確認することが出来て、立証作業を始める上でとても役に立ちました。

 立証は各障害に対して専門科での検査を受けます。それぞれの解説はまたの機会に。