下顎骨々折(かがくこつこっせつ)
1 オトガイ部(正中部) 2 下顎体部 3 下顎角部(埋伏智歯部) 4 下顎頸部
(1)病態
下あごの骨折で、顔面部の骨折では最も多い例です。交通事故では、バイク、自転車で走行中、自動車と出合い頭衝突などで転倒した際の外力で、下顎の骨折は発生しています。
(2)症状
① 咬合不全、
② 疼痛、口腔内や皮下の出血、腫れ、開口障害、流涎=よだれ、言葉の不明瞭化、
③ 歯牙の歯折、脱臼
④ 下あごの変形、
⑤ 顔面神経麻痺、特に、唇や下顎のしびれ、
⑥ 関節突起骨折では、外耳道出血が見られることもあります。
これらの症状が予想されます。多くの場合、歯も折れます。
(3)治療
治療は、口腔外科と形成外科が担当しています。顔面骨折の診断では、受傷時にどのような外力がどの方向から作用したかを知ることが骨折の部位や程度を診断する上で重要です。
XP撮影に加えてCT撮影を行うことは、骨折の位置や程度を把握する上で非常に有効です。特に3DCTは3次元画像で見ることが可能で、非常に分かりやすいものです。
最近の案件でも、3DCTを最初に確認することができたので、その後の立証作業を進める上で、とても役に立ちました。
治療の目的は、元の正しいかみ合わせに戻すことであり、骨折部やかみ合わせの転位=ズレが小さいときは、手術によらず、上下のあごをゴムやワイヤーで固定する顎間固定を行って骨癒合を待ち、ズレが大きいときは、形成術が選択されています。
全身麻酔下で口内を切開、骨折部を整復し、チタンプレートあるいは吸収性プレートで固定します。術後も、骨折部が癒合するまで、1カ月前後、顎間固定が行われます。顎間固定中は、開口は不能で、流動食ですが、なんとか話すことはできます。
次回 ⇒ 上・下顎骨骨折による後遺障害のポイント