鎖骨の変形障害について
 
③ 外見上、健側(怪我していない肩)と比べて、左右差が出ているかどうかについて
 
 鎖骨を骨折した後や脱臼した後、骨そのものの変形や脱臼で肩が変形してしまうなどして、外見上(裸体になったとき)、鎖骨の先端が飛び出てしまう場合があります。脱臼後の突出の場合、とくにピアノキー・サインといいます。相談会等で本人に会う場合、可能であれば、両肩が見えるように服をずらして頂くことがあります。症状固定時に、変形による突出や、ピアノキー・サインが認められている場合、後遺障害診断書上、体幹骨の変形について記載して頂く必要があります。

 また、等級が認定されるためには、外見上、変形が認められたとしても、画像上で変形が生じていることを確認する必要があります。この場合の撮影方法としては、画像上でも健側と比較できるように両肩を1枚のレントゲンで確認できるように撮影して頂く必要があります。

 医師によっては、自賠責保険に詳しくない医師の場合、左右比較できるように撮影しないで患側(怪我をしている肩)のみで判断することがありますが、他方で、肩の左右差については、もともと差がある人もいますので、事故によって外見が変化したことをしっかり確認したうえで治療をする医師もおりました。後者のような医師に巡り合えれば幸運ですが、もしそのような医師でなかった場合、症状固定時にもう1度撮影して頂くことをお勧めします。これで、変形が認められれば、12級5号が認定されます。

 しかし、ここで注意点があります。等級が認定されても、モデル等、外形で仕事をしているわけではない場合、収入が減るわけではないから逸失利益を否定する主張を保険会社はしてくることがあります。変形以外に症状がないのであればやむを得ませんが、もし肩の痛みが残存しているのであれば、自覚症状として、後遺障害診断書にまとめて頂いてください。自賠責調査事務所は、この症状も後遺障害(12級13号の神経症状)として認めると、12級5号に含めて評価します。

 当たり前のことかもしれませんが、この自覚症状を記入して頂けなかっただけで、その後の弁護士さんや交通事故被害者さんの請求できる金額に差が出てしまうことになりますので、ご注意ください。

 まとめますと、鎖骨の怪我で外見上、画像上で肩が変形していることが確認できて、かつ痛みなどの症状も併せて後遺障害診断書にまとめて頂き、元々、左右差がある場合は、両肩を撮影したレントゲン画像を提出する必要があります。