中断していましたが、再開します。
 

 人身事故で95%を占める、後遺障害のない、どちらかと言えば軽傷事故。それでも多くの場合に争点となるのが、

① 治療の継続による治療費請求

② 休業損害の証明

③ 慰謝料の妥当性

 前回は被害者が相手保険会社と交渉するケースを検証しました。それでは、この煩わし交渉を弁護士に依頼した場合をシミュレーションしてみましょう。

 

2、弁護士に依頼

① 治療費

 治療期間が3か月に及ぶ頃、相手保険会社が「そろそろいかがでしょうか?」と電話がかかってくるようになりました。まだ痛むと言って治療を伸ばしても担当者はだんだん強硬になってきました。そこで知人の紹介で弁護士の紹介を受け、相談したところ、「むち打ち」程度の軽傷では受任しないそうです。そこでホームページで交通事故に強いとある弁護士に相談しましたが、「後遺障害の等級が取れてからまた連絡を」との対応です。さらに検索してようやく数件目で受任してくれる弁護士事務所を見つけました。
 その弁護士さんは治療の延長を交渉し、なんとかあと1か月の延長を取り付けました。代理人・弁護士のおかげで少しの間、一心地です。
 

② 休業損害

 しかし休業損害の延長については弁護士もあきらめムードです。なぜなら、むち打ちで何か月も会社を休むなどそれ相当の医師の診断がなければ難しいと言われました。

 もっとも問題となっていたのは休業日額です。自営業者で所得は実態より少な目に申告していますが、その申告書の数字から相手保険会社は譲りません。現状、1日=5700円の最低補償(自賠責)基準の算定額しかくれません。

 弁護士は「売上-経費=所得」の計算を少し修正しました。売り上げから引かれている経費の項目で水道光熱費、損害保険料(自動車保険の掛け金、個人事業税)など、被害者本人が休業していても待ったなしにかかってしまう経費を所得に加算しました。これで相手保険会社の5700円から7000円にアップしました。これ以上の金額は総勘定元帳などを作成して交渉することになります。弁護士は税理士にお金をかけてまで立証書類を作成する増額効果が少ないこと、倫理的には申告書を基とすべきことから、これ以上は断念するようにとのことです。
 

③ 慰謝料

〇 自賠責保険の慰謝料計算 通院1日4200円、3か月間:2日に1回ペースで通院 ⇒ 378000円

〇 任意保険の3か月慰謝料は 上と同じ頻度で通って ⇒ 378000円

〇 赤い本基準のでは 同条件で ⇒ 530000円

 (別表Ⅱ⇒むち打ちはここでみます)

 慰謝料はズバリ以下の表をみて検討してみましょう。

 傷害部分の慰謝料比較(単位 万円)

傷害部分慰謝料

治療期間

損保

東京

名古屋

大阪

別表Ⅰ

別表Ⅱ

軽傷

通常

重傷

3カ月

37.8

73

53

46

48

72

90

4

47.9

90

67

57

60

90

113

5

56.7

105

79

67

72

108

135

6

64.3

116

89

76

80

120

150

7

70.6

124

97

84

85.3

128

160

8

76.9

132

103

90

90.6

136

170

9

81.9

139

109

95

96

144

180

10

86.9

145

113

100

101.3

152

190

11

90.7

150

117

103

106.6

160

200

12

93.2

154

119

106

110.6

166

208

 

 さて材料は揃いました。敏い被害者さんは弁護士に委任すべきか否か、もう判断ができそうです。治療費の交渉と延長、休業損害の増額交渉と違い、慰謝料ははっきりとしたもので378000<530000円となり、差額152000円は増額の可能性が高いとえます。

 明日はもう少し解説を加えてみます。