あからさまな詐欺事件に限らず、保険会社が「怪しいぞ?」と感じつつ保険金支払を行い、それが結局、約款改訂で補償対象から外れる・・このようなことは珍しくありません。前日に続き、その代表的な例を挙げましょう。

 今から8年前に、人身傷害保険(特約)の補償範囲である「交通乗用具」について、東京海上、損保ジャパン(当時の会社名)が相次いで、補償範囲から外しました。理由は、毎度のことですが、「リザルトの悪化」です。つまり、掛金に対して支払保険金が多すぎる状態です。

 例によって、保険内容の説明からですので、前置きが長くなります。
  
(1)人身傷害保険(特約)とは? 
 
 (念のため人身傷害について ⇒ 人身傷害特約について ご存知の方はクリックするまでもないと思います) 
    
○ 対象となる乗り物

 自動車保険ですから、契約自動車、契約バイクに搭乗中は当然に補償対象です。

  

 また、保険契約者が他の自動車搭乗中(タクシーも含む)の事故、また、歩行中・自転車走行中に他の自動車やバイクにぶつけられた場合は、「車外事故特約(損保ジャパン日本興亜での名称)」を付けておけば補償されます。

 
     

 自転車も含みます。 ただし、「車外事故特約」を付保しても、他の自動車・バイクとの衝突に限定され、自転車単独および自転車同士での事故受傷の場合はダメです。自転車単独および自転車同士の事故は、交通乗用具の範疇になります。(ここが、本編の問題点になります。これは明日以降に)

 
 
 これら以外の乗り物=「交通乗用具」について、以下に整理します。
    
(2)交通乗用具とは?

○ 電車、バス、飛行機、船舶・・概ね公共交通機関の乗り物が対象です。

  
   
○ これも乗り物に入ります

(対象となる乗り物)
ヘリコプター
、グライダー、飛行船、ロープウェー、椅子付きリフト、人力車、そり

     

これらも立派な乗り物です。なんと、人力車での事故受付・支払いの実績があるそうです。人力車は京都や浅草などの観光地で活躍していますが、転倒による乗客のケガが対象となります。ただし、多くは人力車側の業者が賠償しているようです。施設賠償の対象にもなりそうですが、今度、調べてみます。
 
(対象とならない乗り物)
ハングライダー、気球、パラシュート、ゴムボート、セーリングボード、サーフボード、立体駐車場のリフト
    
    

遊び系はダメですね、やっぱり。       
 
○ まさかこれも?

(対象となる乗り物)
エレベーター
エスカレーター、歩く歩道、身体障害者用車椅子、乳母車、ベビーカー

       

未だに、これらが対象になることが信じられません。エスカレーターでの転倒事故はよくあると思います。もし、エレベーターで事故にあっても契約者さまが、支払対象と気付く事はないでしょう。代理店さまが気付けばよいのですが・・。
 
(対象とならない乗り物)
ジェットコースター、メリーゴーランド、ゴーカート、一輪車、幼児用車両、スケートボード、キックボー

  
 
やはり、遊具系はダメです。最近はキックボードでの事故が増えているようです。

通常の移動手段・公共的な乗り物ならOK、スポーツ・遊具、私的な乗り物はNGでしょうか。
 
 このように、人身傷害保険は、自動車やバイクだけではなく、乗り物について幅広く補償範囲が及ぶ点を、まず、ご理解下さい。
 
 明日につづく