前日よりつづきます。
 
 弁護士事務所にとって「交通事故被害者の初期対応」を困難にしているもの・・・

 それはズバり報酬体系です。

 いくつかの弁護士事務所のHPをみてみました。それぞれの細かな違い、料金の多寡はスルーしますが、おおまかに二つのタイプに分かれることに気づきました。

1、着手金なし+成功報酬10%+20万円 

 これは大手事務所に多いパターンです。着手金無料をうたって集客力強化を図っていますが、最後に20万が加算されるので、正確に言えば「着手金後払い」と思います。この構図は某大手法人事務所が業界に先駆けて打ち出した「着手金無料」攻勢に他事務所が引きづられて、どこの事務所も「着手金あり」ができなくなってしまった状態です。また、依頼者側に弁護士費用特約がついていれば、別体系の報酬規程になります。多くは旧日弁連の報酬基準に準じています。このダブルスタンダードは今回の着目点ではありません。指摘したいのは受任時期です。
 
 この報酬基準はどの段階から依頼しても同じ料金となります。例えば、後遺障害の被害者請求から弁護士に依頼し、その後の賠償交渉まですべて面倒を見てほしい被害者も、既に後遺障害等級を相手保険会社の事前認定にて、認定されてから代理交渉を依頼する被害者も同じ料金となります。前者と後者では作業量も違ってきますし、等級認定の成否も大きく弁護士の力に関わってくるはず・・・なのにです。
 
 受傷直後に相談に来た被害者、賠償交渉ができる状態まで等級などが整っている相談者、どちらも同じ料金なら、「等級がとれてから来てくださいね」となるのが人情です。同じ報酬なら仕事量が少ない方がいいに決まっています。まして着手金が無料ですので、等級が認定されるかどうかわからない受傷直後の被害者を受任するのはリスキーだと考えます。
 
 多くの事務所がこの「着手金無料」+「画一的な報酬体系」のおかげで、「事故直後から受任します」とアピールできません。頼りない印象を持った相談者は戻ってはきません。当然、受任率も低迷します。

2、等級認定前、等級認定後で違う報酬体系をもつ事務所

 この事務所は仮に1の「着手金なし+10%+20万」を掲げつつも、受任時期を等級認定「前」、「後」と分けて報酬設定をしています。つまり等級認定までの作業に対する費用は当然に発生するものと考えている事務所です。等級認定の手間、難しさを理解していますので、この作業を別料金としてオプションメニューにしている事務所さえあります。これらの事務所は自信を持って、「受傷直後から相談に来てください!」と呼びかけています。この言葉の真贋、嘘か真かは事務所の利益面からも裏付けられているのです。

 細かな報酬設定は煩雑に見えますが、被害者にとって初期から助けてもらえ、等級認定にも尽力してくれるなら、十分に納得できるものです。例として、弁護士費用特約がない被害者であっても、等級認定の重要性に理解が及べば、お財布から着手金をさっと出します。それくらい被害者は必死になって助けを求めており、それにかなう事務所を見つけたら迷いはありません。

連携を阻むもの

 1の弁護士事務所に連携を呼びかけるとどうなるか・・・私が「初期対応、特に等級認定は私達、行政書士、メディカルコーディネーター(MC)がやります」とアプローチしても、「秋葉さん、それは助かるけど・・・でも秋葉さんにその分の報酬を払ったら、うちの報酬が減っちゃうよ」と消極的になってしまいます。その分の仕事について、事務所の報酬規程では余分に報酬はいただけない、このような自縄自縛に陥っているのです。さらに事務所内の弁護士、事務員も「初期対応や等級認定は自分たちでできる!」と息巻きます。しかし実態は昨日書いたように「初期対応をやっているつもり」、「被害者請求すらせず」の事務所が多いのです。なぜなら繰り返しますが、同じ報酬なら、なるべく事務が少ない方がいいからです。

 では「報酬規定を改定し、別料金を設定すれば?」これに対しては競争力低下を心配してか、初期対応・等級認定の重要性に気づいていないか、私達MCの仕事の評価が低いのか・・・このような理由から踏み切れません。

 対して2の事務所は渡りに船とばかりに連携が進みます。初期対応をMCに預けることで、受任率は40%を超えます。さらに進化した事務所では事務所内においても初期対応、等級認定に力を入れつつ、等級が見込まれるか否か判別がつかないもの、難事案、とくに病院同行や特殊な検査が必要な案件は私(MC)に任せるなど、案件ごとに使い分けを行っています。

 被害者もこのような事務所に集まってきます。「受傷直後からの受任」に偽りはなく、報酬が高くなろうと、それに見合った仕事をしてくれる上、獲得した等級により最終的に受け取る賠償金も増大するケースが多いのです。結果として顧客の満足度は非常に高いものになります。何故なら初期のフォローから等級認定まで尽力してくれた弁護士の姿・仕事が「見えて」いるからです。多くの事務所は受任したのち、(見えないところで)「保険会社と交渉し、まとまりました」との連絡のみが返ってきます。・・・結果として頼んでよかったのか、わからない状態で解決します。 
 
 弁護士費用特約がある被害者であれば、迷わず2の事務所を選びます。そしてMC側=秋葉もこの連携によって報酬がしっかり頂けますので、どんどんこの事務所に案件を紹介します。逆に「秋葉さんに報酬を払ったらうちの報酬が減っちゃうよ~」と心配している事務所に案件は紹介しづらくなります。

 結論。すべて「着手金無料」は現実的ではない。「画一的な報酬体系」では被害者を救いきれない。これを理解し一歩踏み出さねば、連携はもちろん、交通事故に特化した弁護士事務所へ脱皮できないのです。