自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、(1)自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、(2)被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに(3)自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
自賠法第4条<民法の適用>
自己のために自動車を運行の用に供する者の損害賠償の責任については、前条の規定によるほか、民法(明治29年法律第89号)の規定による。
民法709条<不法行為>
「故意または過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」
★ 自賠法3条と民法709条を比べる
① 加害者の範囲
民法709条は、自動車の運転手など、被害者に対して不法な行為を行った者に対して責任を追及します。加害運転者はもちろん、業務中の事故であればその使用者(使用者責任:715条)、子供であればその親(親権者責任:712条、714条)など。
一方、自賠法3条は「自己のために自動車を運行の用に供する者」(=運行供用者)に対して責任追及できます。現実にはやや自賠法が広範囲と言えますが、それぞれの適用範囲はほぼイコールです。
② 事故の対象範囲
民法709条は、人に対する損害である「人損」及び物に対する損害である「物損」を対象とします。一方自賠法3条は「人損」のみを対象とします。
実例として、相手保険会社が「人身の支払いは100%出します。しかし物損は20:80です」というような人損、物損で違った過失減額を主張してくる場合があります。これは保険会社の対物賠償保険の約款は民法709条を基にしているため、それぞれ根拠となる法律が違うために生じてしまうのです。おかしな話ですが・・。
③ 立証責任
両者の大きな違いは、過失責任の立証責任が加害者側に転換されていることにあります。つまり民法709条は責任を追及する被害者側が加害運転者の過失を証明しなければならない(過失責任主義)のに対し、自賠法3条は加害者側が自ら過失がなかったことを証明(無過失責任主義 → 自賠責保険 非適用の三条件)しなければなりません。つまり被害者にとって自賠法=自賠責保険の適用の方が楽なのです。
1、 自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと
2、 被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと
3、 自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと
★ 保険会社の対応
保険会社の対人賠償保険約款は民法を基にしつつ、自賠責保険を優先適用している側面があります。保険会社担当者は腹の傷まない自賠責の範囲で支払いを済ますこと、これを常に目標 にしています。
つまり通院が長引き、自賠(傷害120万限度)を超えた瞬間、民法709条の考え方≒対人賠償約款に切り替えた対応となります。
実務上、担当者は自賠責保険と対人賠償をそれぞれ積算し、金額の多い方を提示してきます。