今回は、膝の靱帯を損傷した場合の立証について述べていきたいと思います。
靱帯損傷でも交通事故から半年を経過したところで、骨折をしている場合には、骨の癒合ができているかどうかを確認してからですが、症状固定時期です。
この点、症状として膝の痛みのみであれば、14級9号か12級13号が認められる可能性があります。器質的損傷、ここでは膝の靱帯損傷がMRI画像上明確であれば12級13号を狙えます。
これに対して膝の動揺性が残存した場合は、8級7号(動揺関節で労働に支障があり、常時固定装具の装着を絶対に必要とするもの)、10級11号(動揺関節で労働に支障があるが、固定装具の装着を常時必要としない程度のもの)、12級7号(動揺関節で通常の労働には固定装具の装着の必要がなく、重激な労働等に際してのみ必要のある程度のもの)、が認められる可能性があります。一番認められやすいのが12級7号です。
しかし、自覚症状で膝の動揺性のみを訴えても、上記等級は認められません。動揺しているかどうかを医師に検査して頂く必要があります。具体的には、以下の2つが必要です。
(1)徒手検査について
内側側副靱帯や外側側副靱帯を損傷した場合、内・外反動揺性テストが必要です。これは、仰向けの患者のふくらはぎを持って、膝を左右(内側・外側)に動かして、実際に動くか(揺れるか)どうかを診る徒手検査で、診断書には何cm(mm)と記載して頂く必要があります。
前十字靭帯を損傷した場合、前方引き出しテストやラックマンテストという徒手検査が必要です。これは脛骨を前に引っ張って実際に動くかどうかを診るものです。
これに対して、後十字靭帯を損傷した場合、後方押し込みテストという徒手検査が必要です。これは脛骨を後ろに押し込んで実際に動くかどうかを診るものです。
これらも診断書に何cm(mm)と記載して頂く必要があります。
(2)画像所見について
前回述べましたように、MRI画像上で靱帯損傷が認められることがまず必要です。
しかし、動揺性を立証するには、MRIだけではなく、ストレスXP撮影という特殊な撮影による所見が必要です。これは、上記徒手検査で動く方向に足を動かした状態でレントゲン撮影をする方法です。実際に膝を動かす場合、医師やレントゲン技師が手で直接引っり、動揺性・不安定性を明らかにする手法です。
専用の検査器具として、「テロス」(写真 左)、最近では「ニーラックス」(写真 右)という機材を使用する方法もあります。しかし、弊所や仲間の弁護士事務所や行政書士事務所の情報を集積しますと、「ニーラックス」で動揺性の立証に成功する可能性は現時点では低いことがわかりました。自賠責ではストレスXPを審査対象として堅持しているようです。
そこで、治療だけではなく、保険手続きを円滑に進めるためには、なるべく「テロス」を利用した撮影、もしくは手で引っ張る撮影ができる、実力のある医師のいる病院に行くことをお勧めします。