膝には4つの靱帯があります。
・膝の内側にある内側側副靭帯(MCL)、
・膝の外側にある外側側副靱帯(LCL)、
・大腿骨の後方と脛骨の前面とを結びつける前十字靭帯(ACL)、
・大腿骨の前方と脛骨の後面とを結びつける後十字靭帯(PCL)、
膝の靱帯を損傷すると、膝の痛みがでたり、膝を支える作用が機能しなくなるため、膝が揺れたりすること(動揺性)があります。交通事故では、膝を骨折(高原骨折等)した場合に併発することがあります。そのため、はじめはプレート固定をして膝が曲げられなくなるので、揺れが生じるかどうかはわかりません。骨が癒合すればプレートを外しますので、その後に揺れが生じているかどうかがわかります。
さらに、この揺れを放置して歩いたり立ったりすると、膝の支えが不十分なため、大腿骨と脛骨に挟まれている半月板に強く負荷をかけることで半月板が損傷することがあります(変形性質関節症)。
そこで、膝の揺れを防ぐため、装具(サポーター)を装着することになります。装具はソフトなものからハードなものまで様々です。その膝の損傷具合によって使い分けをします。
これら靱帯は、レントゲンでは明確に映らないため、MRI画像で確認する必要があります。経験豊富な医師の場合、触診のみで靱帯損傷がわかる方もいらっしゃるため、MRI画像はそれを裏付ける検査であるという見解があるようですが、保険手続上ではMRI画像所見は極めて重要です。
靱帯損傷と言っても、完全に断裂している場合もあれば、靱帯は切れていないが伸びてしまったため機能しない場合もあります。靱帯が切れていなかったからと言って、膝が揺れないとは断言できません。前回も述べましたが、膝は様々な角度から検討する必要がありますので、可能な限り、専門医に診て頂くようにして下さい。
※ なお、とある医師はMRI画像のみでは靱帯損傷等を判断せず、触診等様々な角度で慎重に検査し、あくまでMRIは判断要素の一つと考えておられましたが、膝に限らず、専門医は靱帯を損傷しているかどうかを判断するにあたって、大抵MRI撮影をしておりました。
※ 膝を骨折している場合、プレート固定することもあります。よって、半月板の時と同様、MRI撮影で反射してしまい(アーチファクト)、損傷を確認できなくなることがあります。
靱帯が損傷した場合、手術としては、靭帯修復術や再建術、膝の損傷がひどい場合には人工関節置換術があげられます。実際に手術をするかどうかは、まず装具(サポーター)を装着しても日常生活に支障が出るかどうかで判断する必要があります。何故なら、手術は感染症のリスクもあり、また失敗することもあるため、装具をつければ大丈夫ならリスクの高い手術をしない方がいいからです。