最近、弁護士先生から寄せられた質問について、質疑応答。(内容は若干脚色しています)
Q)肩甲骨を骨折した被害者さんですが、肩関節が脱臼し、もちろん整復はなされたのですが、以後も2度脱臼を起してしまい、肩関節に不安定性を残しています。この場合、後遺障害の認定は何級でどのように立証したらよいでしょうか?
A) 不安定性と脱臼癖は程度の差と言えるかもしれません。
イメージでは 不安定症 < 動揺性肩関節 < 脱臼ぐせ < 完全脱臼
脱臼は大きく分けて2種、関節唇の損傷による前方脱臼(図1)であるバンカート病変、上腕骨の骨頭の損傷によるヒルサックス病変です(図2)。他には後方脱臼も外傷によって起きることあります。
以下2例の経験からお答えします。
1、不安定症
肩甲骨の関節腔骨折でしたが、癒合はよく、脱臼も整復後1度だけでした。余程無理をしなければ外れません。この被害者は診断名だけでは12級13号が限界でした。
そもそも労災・自賠での後遺障害の定義は「常時、残存する症状」です。したがって脱臼癖や不安定性は等級になりづらいのです。
やはり不安定性について常時性を帯びたものするためにXPストレス撮影が必要です。ストレス撮影とは関節を曲げて亜脱臼(関節は外れるが圧をとると戻る)を起こした状態でレントゲンを撮ります。これでなんとか勝負です。それでも否定されたら、あとは訴訟決着です。
2、バンカート病変
一方12級6号の認定例はバンカート脱臼で脱臼癖となった被害者の相談でした。バンカート脱臼は肩関節の関節唇の損傷(図3は関節唇の剥離)で前方脱臼を起します。習慣性脱臼では脱臼位の肩関節運動と角度、脱臼の頻度がポイントになります。その被害者は伸展40°もしくは外転90°で外れてしまう状態をストレスXPで撮影し、日常作業でシャツの脱ぎ着も注意しないと外れてしまうことを医師に診断書に盛り込んで頂きました。もっともこれほどひどいと手術で関節唇の再生が必要です。(関節鏡写真:図4)。
(写真、参照 『図解整形外科』金芳堂)
最後に過去の名作業務日誌をアンコール ⇒ 「肩の後遺障害4」縄ぬけの術