最近読んだ小説 「忍びの国」は面白かったです。著者は「のぼうの城」(近日映画公開します)ですっかり有名となりました和田 竜さんです。舞台は戦国時代、織田勢の伊賀攻めを史実織り交ぜ、物語は進みます。伊賀・・御存知の通り忍者の里で、作中で忍者が「縄抜けの術」を使いました。これは捕縛され縄で縛られていても、肩の関節を外して縄から抜けてしまう技です。
現在でも体操選手で可能な人がいるそうです。ケガの頻発で脱臼ぐせとなり、自らの肩をぶつけて肩の関節を外すことができると聞きました。これは医学上、「随意性肩関節脱臼」と呼び、ほとんどが後方脱臼です。
交通事故では自転車、バイクの運転者に多く、衝突の衝撃や転倒の際に手をついた時に肩に負担がかかり起きることがあります。これは「縄抜けの術」と違い、前方脱臼が圧倒的多数です。
4、外傷性肩関節前方脱臼
■ 病態
1、バンカート病変 (関節窩前下縁の関節唇剥離)
関節唇とは肩甲骨(受け皿側)の関節面周囲にある、軟骨で出来た土手のようなものです。これが脱臼時にはがれるので、脱臼する道が出来てしまい、脱臼を繰り返すと言われています。
治療は保存療法とられますが、手術(内視鏡の一種で見ながらこの病変部を修復する方法=鏡視下バンカート修復術)も広まりつつあります。
2、ヒル・サックス病変 (上腕骨頭後外側の陥没骨折)
これは肩甲骨側ではなく、上腕骨側に発生する病変です。脱臼時に関節窩前下縁部に上腕骨の後方が押し付けられることによって上腕骨のその部分に陥没骨折を起こすことがあります。その陥没骨折を完全に修復できなかった場合、脱臼ぐせとなってしまいます。
■ 後遺障害
習慣性脱臼では、12級6号の後遺障害等級が認められます。重篤で腋下神経麻痺が合併すると、さらに運動制限が加わります。ほとんど肩が動かなくなった場合10級10号となります。高齢者では腱板断裂や大結節骨折も伴うケースもあります。その場合も運動障害の残存から等級を計ります。脱臼癖は程度問題でもあり、不安定性程度の診断では12級13号止まりです。
■ 立証
亜脱臼位まで圧をかけた、ストレスXPが有効でしょう。弊所の連携先の弁護士さんが、この立証に成功、12級をとりました。動揺関節の場合も圧をかけた結果、亜脱臼位まで不安定性がないと、12級6号以上の障害とはなりません。
多くの体操選手や名横綱 千代の富士を悩ませた症状です。肩の周辺の筋肉を鍛えたり、技を工夫したり、脱臼と付き合いながら競技を続けたようです。