まず、頚椎捻挫(ムチウチ)の症状として、代表的なものは首の痛みや痺れ、手の痺れ等があげられ、ひどい場合には、疲れやすくなる方もおります。この点、糖尿病の症状にも同じような症状があります。交通事故の被害者の中には、元から糖尿病を患っている方もおります。このようなことになってしまうと、医者でも糖尿病によるものなのか、交通事故によるものなのかの区別は非常に困難です。よって、事故以前から手の痺れ等があったのではないかと保険会社は疑ってしまい、治療費を出し渋る場合もあります。仮に治療費が出たとしても既往症とみなされて後遺障害を否定されやすいのが現状です。
次に、MRI画像を確認してみたところ、後縦靭帯骨化症であったことが判明した場合について説明していきます。
後縦靭帯骨化症とは、椎体の後面に着いている靭帯が骨化(骨に変性する)する病気です。この骨化した靭帯が脊柱管の狭窄を起し、脊髄や神経根を圧迫すると、手足の痺れ、首の痛みを起します。部位が胸椎や腰椎の場合(頚部に比べ小数ですが)は背中・腰の痛みが生じます。最悪、運動障害も生じる可能性があります。
症状が重い方は手術(圧迫している骨を削る除圧や、除圧後に骨移植やプレート・スクリューで固定する固定術)の必要があります。後縦靭帯骨化症を患ってしまう原因については複数の要因が関与しているのではないかという見解がありますが、明確な原因については不明で、国の特定疾患(難病)に指定されております。ただ、その要因として、肥満や糖尿病等の生活習慣病があげられます。やはり、これまでの相談者で後縦靭帯骨化症を患っていた方の一部は糖尿病を患っておりました。
糖尿病や後縦靭帯骨化症を患った方であっても、症状が出てこなかった場合もあり、交通事故に遭ってからはじめて手のしびれや首の痛みが生じることもあります。しかし、後縦靭帯骨化症の症状はその原因でもありうる糖尿病の症状も重なっており、同じくムチウチの症状にも重なっております。
このような交通事故被害者の症状は元々の疾患であったとして、保険会社は交通事故による症状と見ない場合もあります。保険会社と医師に、「交通事故の後になってから症状が現れた」ことを説明すれば治療費は出してくれるかもしれませんが、手術代の話が出ると打ち切りを迫ったり、最終的に後遺症(後遺障害)を否定されることもあります。仮に等級(このような場合は多くは14級9号)が認められたとしても、後に弁護士が交渉する際に事故との因果関係で争われますので、交渉がしっかりできる弁護士を選ぶ必要があります。
以上から、糖尿病やそれによる後縦靭帯骨化症を患ってしまうと、いざ交通事故に遭ってしまった暁には他の交通事故被害者よりもとても不利な状況に置かれてしまいます。糖尿病の方々は、交通事故に遭わないよう、普段の生活に十分気を付けて頂く必要があります。もっとも、気をつけていても事故の被害に遭うわけですが・・。
糖尿病は万病のもとであると同時に真の症状の目くらましにもなってしまうのです。