詐病者とは、保険金等を目的に、嘘・偽りの症状を訴える者です。もちろん、これは保険金詐欺に類するもので、刑罰の対象です。人身・物損に限らず、あの手この手で保険金を詐取しようと考える者が、私達や弁護士事務所にしれっとやってきて、保険会社の横暴な払い渋りにあった気の毒な被害者を装います。なかなかに巧妙で、この道何十年の弁護士先生も騙されることがあります。まして、交通事故業務歴の浅いと言うか、人生経験の少ない若手など、簡単に騙されます。
私達の相談会でも、毎年、数人やってきます。私は、保険会社・代理店時代から多くの例を見てきましたから、割と見抜くことができます。しかし、疑うのは簡単です。保険会社側はそれでよいでしょうが、私達の立場として、真実の被害で助けを求める被害者さんを疑い、見捨てることは絶対に許されません。嘘か本当か、迷うこともしばしばです。こればかりは、経験を積むしかないと思います。できる事として、色々な手口を知っておくことでしょうか。
最近は、その保険金の詐取方法をレクチャーし、共犯者として呼び込む、新手の組織が現れました。コロナ対策の持続化給付金の詐欺に代表されるように、あらゆる補助金・保険制度の穴をついて、お金を不正に得る元締めみないな組織が増えているのです。彼ら、給付制度や保険約款を本当によく勉強しています。これら不正によって、払われる保険金の額は膨大です。業界ではこの全体像を「モラルリスク」と呼んでいます。
保険の掛け金は、正当な保険金支払いが前提で計算されています。支払いが増えれば、結局、契約者全員の掛け金値上げで回収せざるを得ません。国の給付制度だって元は税金です。不正請求者・不正受給者は国民全体の敵なのです。そして、強調したいのは、不正請求者の存在こそ、給付金の支払いを切に待つ困窮者、十分な保険金が支払われるべき被害者、これら真に困った人達に対して、審査の厳格化・長期化をもたらすのです。
私達は、保険会社と対立する被害者側の立場です。しかし、”不正請求や保険金詐欺を排除すべき”との立場は一緒だと思っています。