外傷性斜視(がいしょうせいしゃし)
 

  左から内斜視・外斜視・上斜視・下斜視

 
(1)病態

 斜視には、内斜視、外斜視、上斜視、下斜視の4種類があります。
 
 片目が正常な位置にあるときに、
 
① 内斜視とは、もう片方の目が、内側に向いている、
 
② 外斜視とは、もう片方の目が、外側に向いている、
 
③ 上斜視とは、もう片方の目が、上側に向いている、
 
④ 下斜視とは、もう片方の目が、下側に向いている状態のことです。
 
 自動車や自転車、歩行中の交通事故などで、頭部、眼部に対する強い打撃により斜視となることがあり、外傷性斜視といわれています。

 眼窩底ふきぬけ骨折は、斜視を伴う代表的な傷病名です。頭部外傷、外傷性くも膜下出血では、外転神経などの視神経が影響を受け、眼球運動に障害が起こることもあります。

 斜視の原因の1つに、眼球打撲による眼筋と呼ばれる目の筋肉の損傷があります。眼球を動かす筋肉を外眼筋といい、外眼筋には6種類の筋肉があり、それぞれ眼球を下に向かせる上斜筋、眼球を上に向かせる下斜筋、眼球を上内側に向ける上直筋、眼球を下内側に向ける下直筋、眼球を内側に向ける内側直筋、眼球を外側に向ける外側直筋があり、眼球はこれら6つの筋肉の収縮によってバランスを保たれ、一定の視力を持った両眼視を可能としているのですが、外眼筋を構成するこれら6つの筋肉のいずれかもしくは複数の筋肉の損傷により、バランスが崩れると斜視や複視を発症するのです。
 
(2)治療

 脳神経のひとつである視神経は、眼で見たものを脳の中枢へと伝える通路の役割があります。視神経萎縮症でも、症状の1つに斜視があります。治療先は、町の開業医ではなく、大学病院にある神経眼科を受診します。

 神経眼科では、目の外傷や病気にとどまらず、中枢神経・自律神経・脳神経など、幅広く扱います。神経眼科を専門とする研究機関である日本神経学科学会は、神奈川県相模原市の北里大学医療衛生学部内に設置されています。
 
(3)後遺障害のポイント

Ⅰ. 眼球の運動障害

 斜視による眼球の運動障害が認められるときは、ゴールドマン視野計、フェルスター視野計、大型弱視鏡による検査で注視野検査を受けます。

※ 注視野・・・頭部を固定した状態で、眼球の運動のみで見える範囲のことで、単眼視では各方向50°両眼視では45°となります。
 
 単眼、両眼の注視野の範囲は、以下の通りです。


 眼球の運動障害の等級は、以下の通りです。

 
Ⅱ. 複視

 眼球運動障害として後遺障害等級に該当しないものであっても、モノが二重に見える複視の症状があるときは、ヘスコオルジメーター検査を受け、立証します。


 
 正面視の複視は、両眼で見ると高度の頭痛や眩暈が生じるので、日常生活や業務に著しい支障を来すものとして10級2号、左右上下の複視は正面視の複視ほどの大きな支障はないものの、軽度の頭痛や眼精疲労は認められるので、13級2号が認定されます。
  
Ⅲ. 視力障害、運動障害などの併合

 視神経管骨折などの傷病名では、視神経管萎縮による視力障害と外傷性斜視による眼球運動障害を残すことがあります。視力障害と眼球運動障害は、個別に立証することで、等級は併合されます。

 👉 ② 視神経管骨折
 
 複視の後遺障害は、動眼神経麻痺ホルネル症候群外転神経麻痺滑車神経麻痺において、詳細な解説をしています。参考にしてください。
 
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