眼瞼下垂(がんけんかすい)と瞳孔(どうこう)の収縮
(1)病態・症状
ホルネル症候群では、①片側のまぶたが垂れ下がり、②瞳孔が収縮して、③発汗が減少します。交通事故では、眼と脳を結ぶ神経線維が分断されることが原因で発症しています。
眼と脳をつなぐ神経線維のいくつかは環状になっており、それらの神経線維は脳から脊髄に沿って下行、脊髄を下ったあと、胸部から出て、頚動脈のそばを通って上へ戻り、頭蓋を通って、眼に到達しているのですが、神経線維がこの経路のどこかで分断されると、ホルネル症候群が起こります。
ホルネル症候群は、交通事故外傷による頭、脳、頚部、または脊髄の疾患、大動脈や頚動脈の解離、などが原因で発症すると報告されています。この部分は覚える必要はありません。
(2)治療
医師は、症状が出ている側の眼に、コカインを少量含む点眼薬をさし、30分を経過しても瞳孔が広がらなければ、ホルネル症候群と診断します。その後、他の点眼薬による検査が実施され、それらの点眼薬に瞳孔がどのように反応するかを見ることで、神経損傷のおよその位置がわかります。脳、脊髄、胸部、頚部などのCT、MRI検査も必要となります。原因が特定されれば、その治療が開始されますが、ホルネル症候群そのものに対する具体的な治療法はなく、改善は、風まかせです。
(3)後遺障害のポイント
1、眼瞼下垂
後遺障害の、まぶたに著しい運動障害を残すものとは、まぶたを閉じたときに、角膜を完全に覆えないもので、兎眼、まぶたを開いたときに、瞳孔を覆うもので、これは、眼瞼下垂と呼ばれています。
いずれも、単眼で12級2号、両眼で11級2号が認定されています。上のイラストにあるように、動眼神経麻痺に比較するのであれば、眼瞼下垂のレベルは軽度であり、上記の認定基準に該当するかは、ボーダーラインです。
2、縮瞳(しゅくどう)
瞳孔の対光反射は認められるが不十分であり、羞名を訴え労働に支障を来すものは、単眼で14級相当、両眼で12級相当が認定されます。
黒目の中心部にある瞳孔は、周囲が明るいと小さくなり、暗くなると大きくなります。小さくなることを縮瞳(しゅくどう)、大きくなることを散瞳(さんどう)といいますが、自律神経によって調整されています。
縮瞳、散瞳の機能が失われると、眼精疲労が起こります。
眼神経麻痺に比較すれば軽度と解説していますが、正面視では、まぶたと瞳の明らかな異常が確認できるレベルであり、実務上は、醜状障害として9級16号、12級14号も検討する必要があります。
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