原則 異議申立ては受任しません。

 しかしどうしてもやらざるを得ない気の毒な被害者さんも存在します。極めて限定的ですがお引き受けすることもあります。私たち協力行政書士や連携弁護士は仕事の基本を、「受傷から解決までを間違いなく案内する船頭たるべし」としているからです。
 
 ご自身で動き、つまづきがあった結果、かなり厳しい状態からのスタートになります。幸い異議申立てに積極的な事務所も多いので、そちらへご紹介していこうと考えています。

 さて、それでも今年数件の異議申立て、再異議申立て、自賠責紛争機構への異議申立てといくつか手がけました。作業として最初に「なぜこの等級が認められなかったのか?」を分析します。そこで失敗続きの原因が浮き彫りになります。そして決まりきった失敗パターンの存在に気づきます。
 

■ 異議申立てが不調となる理由

・ 非該当もしくは認定された等級の理由書をよく読んでいない。

 自賠責保険調査事務所は必ず「理由」を明示しています。自賠法16条の4および5 (最下段参照)で決められているからです。ですからその理由に対しての反論が必要です。それなのに「なぜ私のケガが○級なのか!非該当はおかしいのではないでしょうか!まったく理解できません!審査に納得がいきません、どうしてなんでしょうか?」・・・単に怒っている、愚痴をいっていっている、文句を言っている、再質問をしている類の文章が多いです。理由を理解しない被害者です。これでは会話になりません。

・ 矛先がずれている

 自賠責調査事務所は後遺障害等級の判定・認定をする機関です。なのに今まで担当してきた任意保険会社の対応について切々と恨み言を書くケースです。確かに怒り心頭なのはわかりますが、異議申立てはあくまで後遺障害等級の認定内容についてのはずです。任意保険会社の対応云々は関係ありません。さらに現行の保険制度・医療制度批判まで、つらつらと持論が展開されます。もう自分の障害を立証したいのか、社会正義のために立ち会上がったのか、さっぱりわかりません。
 当然調査事務所も内容を審議せずに「異議申立却下!」です。
 

・ 新しい医証がない

 すでに提出した画像や診断書で判定された結果なので、同じものを提出して「もっとよく見てよ!」といった異議申立てをしても空しい結果となります。新しい主張は新しい診断・所見、提出からもれた画像、医証をもとに展開する必要があります。それでこそ再度の審査につながるのです。同じことの主張を繰り返しても時間の無駄です。

 
 異議申立てによる上位等級の認定率は14%程度です。この厳しい壁を超えるには誰が見ても納得の道理、理論、証拠が必要です。調査事務所の審査も人間である以上、間違いを犯す時があります。しかし単純なミスは極めて稀なケースで、よく審査されているなぁ、と感心することの方が多いのです。また明日も異議申立てについて語ります。

<自賠法 書面の交付>

16条4-1 請求時の書面の交付

保険会社は、保険金の請求があったときは、遅滞なく支払基準の概要・保険金支払い手続きの概要・自賠・共済紛争処理機構の概要を記載した書面を交付しなければならない。

16条4-2 支払時の書面の交付

保険会社は、保険金等の支払を行ったときは、遅滞なく、事故年月日・傷害・後遺障害・死亡による損害ごとの支払金額、後遺障害に該当するときは、該当する等級と判断理由等を記載した書面を交付しなければならない。

16条4-3 支払を行わないときの書面交付

 保険会社は、保険金を支払わないときは、遅滞なく、事故状況の概要・無責と判断したときは、その理由、事故により損害が発生していないと判断したときは、その理由、悪意免責と判断したときは、その理由等を記載した書面を交付しなければならない。

16条5-1 書面による説明

 保険会社は、書面を交付した後に、被害者から書面による説明を求められたときには、30日以内に書面により説明しなければならない。