カスタマーハラスメントは昔からあったと思います。お店側は、常日頃から横柄なお客様への対応を強いられてきたと思います。横柄も度を越せば犯罪です。その境界線として、度を越すか否か、区切る言葉がハラスメントではないでしょうか。ハラスメントと呼ばれる事象は最近の言葉です。昭和の時代には無かった概念とまでは言いませんが、端的な言葉はなかったと思います。50年以上も生きていますと、概念の移り変わりを実感します。
例えば、最近は煙草を吸う場所がなく、喫煙難民が発生しています。今や、飲食店は禁煙がデフォ、吸える希少店には「たばこ吸えます」との、のぼりが立っていますす。街中でも、条例で歩きたばこが規制され、喫煙者は駅前の片隅へ、アクリル板で囲った喫煙場所に押し込められています。昭和のオフィスでは、デスクごとに灰皿がありました。喫煙室など、その概念すらありません。煙草を吸わない人が煙を避けて、避難する立場だったのです。まさに、立場の逆転となりました。
本題に戻ります。JRがカスハラに対して、来週に方針を発表するそうです。長年、乗客の理不尽な要求や不当な請求、時には罵詈雑言を浴びせられ、ついにJRもキレたのだと思います。問題のある乗客に対して、毅然とした態度をとること、ハラスメント事例を示すこと、ここまで来た感があります。次いで、行政側も基準を明確化の上、処罰を積極的に適用すべきと思います。しかし、ここにも逆転現象を感じるのです。
民営化前、国鉄と呼ばれていた時代、私は中学生でした。ある日、風の強い日のホームにて、帽子を風に飛ばされ、線路に落としてしまいました。惜しい帽子でもなかったのですが、そのままにはできず、駅員室を訪ねて、落下物の報告をしたのです。ところが、明らかに面倒そうにお茶をすすりながら、「大事な帽子なの?」と。しばし、唖然としたことを覚えています。その駅員は仕方ないとの体で、奥から先端がカギ状の棒をもってきて、「これで取って」と渡されました。えっ、自分で取るの?と・・またしも唖然としましたが、中学生の私は悪い事をした責任を取らなければならないとの思いでホームに戻り、1人ホームの縁にしゃがんで、その棒をつかって帽子を拾おうと作業を始めました。
反対ホームの人達の注目に、顔から火が出る思いでした。さすがに危険を感じたのか、周囲の大人も心配して声を掛けてきた時、先ほどと違う駅員さんが、歩み寄ってきました。無事に帽子を拾い上げると、棒をその駅員さんに渡して、「すみませんでした」と言ってその場を去りました。
これが、昭和の国鉄でした。この駅は南越谷駅です。
当時、何かと強面で有名な駅でした(今は優しい駅員さんばかりです)。
さすがにその駅員の対応は、昭和であっても安全運行義務に反しており、明らかな問題職員だと思います。正しいルールですが、線路への落下物の報告は駅側からの要請事項であり、その回収も駅員のみ可能です。仮に、当時にそのような規則が無かったとしても、この駅員さんの人間性すら疑うひどい話です。
それでも認識としては、私鉄と比べて国鉄の駅員は偉い人なのです。”乗せてもらっている”立場の乗客は、駅員様に迷惑をかけてはいけません。卑屈にそう思っている乗客が普通だったと思います。・・それから40年余年、カスハラに悩まされる駅員など、当時では想像もつきませんでした。時代は変わったものです。
カスハラ「対応いたしません」 厳格な方針発表 JR東グループ
JR東日本グループは26日、客が従業員らに過度な要求や迷惑行為などを行う「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への対処方針を発表した。カスハラが行われた場合、「お客さまへの対応をいたしません」としている。
JR東グループは、対応を中止するカスハラとして、身体的・精神的な攻撃や土下座の要求、社員の個人情報のSNS投稿などを例示した。悪質な場合は警察や弁護士などに相談するという。客の意見や要望には「今後も真摯(しんし)に対応する」とした上で、「カスハラには毅然(きぜん)と対応し、社員一人ひとりを守ることも、継続的に安全で質の高いサービスを提供していくために不可欠と考えた」と説明している。JR各社でカスハラへの対応方針を発表したのは初めてとみられる。鉄道事業者では東京メトロが3月に対応ポリシーを制定している。