泣きそうになりますが、以下等級を確認します。
 
(男子)

・両側の睾丸を失ったもの = 7級13号

・陰茎の大部分を欠損したもの「生殖器に著しい障害を残すもの」 = 9級17号

・一側の睾丸を失ったもの「胸腹部臓器の機能に障害を残すもの」 = 13級相当


(女子)

・卵巣喪失 = 7級相当

・子宮喪失、膣口狭窄、卵管閉塞等 = 9級17号

・狭骨盤(骨盤・尾てい骨の骨折から産道が狭くなった) = 11級相当

 およそ、等級が軽く感じます。これは他の臓器にも言えることですが、人間の臓器は二つ備えているものが多く、片方が失われても機能を維持することがあります。これは睾丸にも当てはまり、片玉が残れば多くの場合で生殖機能を維持できます。 生殖機能の喪失は次回③をご覧下さい。
 
 
13級相当:精巣損傷(30代男性・千葉県)
 
【事案】

 バイクで直進していたところ、信号のない交差点で対向車が急に右折してきたため衝突、受傷。直後から全身の痛みのみならず、下腹部に激しい痛みや違和感を覚える。
 
【問題点】

 受傷後翌日に緊急手術となり、精巣摘出術を行ったが、事故前に既往症として「陰嚢水腫」があったことにより、加重障害により否定される可能性があった。
 
【立証ポイント】

 精巣の立証については、主治医にお会いして後遺障害診断に精巣摘出の旨、術式の記載をいただいた。また視覚的な観点から、外傷を裏付けるためにCT画像の打ち出しやレポートを作成していただいた。その結果、自賠責調査事務所の判断は「陰嚢水腫」を既存障害と評価せずに13級相当を認定した。
 
 
11級相当:骨盤骨折・狭骨盤(10代女性・長野県)

【事案】

 自転車搭乗中、交差点を横断する際、左方から自動車が進入し衝突した。骨盤(恥骨、仙骨)を骨折した。事故直後から臀部痛、大腿骨後面のしびれに悩まされる。
 
【問題点】

 骨盤が癒合して症状固定、後遺障害診断書を主治医に依頼した後に相談を受けた。
 後遺障害診断書を確認したところ、骨盤の変形により自然分娩が将来困難になる可能性がある旨の記載があった。記載した医師は整形外科であったことから、産婦人科にも分娩への影響を診て頂き、障害の予断をお願いしたが、地元の産婦人科医は協力的ではなかった。さらに、依頼者は本件事故によって留年し、受験も控えていることから、遠方の病院へ通うなど時間をかけた立証作業は望めなかった。

 そもそも、将来の出産の影響について、現時点で評価することには限界があった。
 
【立証ポイント】

 産婦人科で診て頂くことを諦めて、新たに画像CDを病院から取得し、連携先の放射線科医に鑑定を依頼した。その結果、分娩時に影響が出る可能性があることを認める記述を得た。この鑑定書と新たに取得した画像CDを、改めて後遺障害診断書に添付して提出した。

 申請から約4ヶ月後、生殖器の障害について骨盤骨折に伴う狭骨盤で11級相当が、また、大腿骨後面のしびれについても14級9号が認められた。さらに本件では、顔面醜状痕で12級14号が認められ、併せて併合10級となった。

 なお、本件申請後、知人の産婦人科医に意見を伺ったところ、骨盤が変形しても、児頭の大きさは個人差があり、分娩時は柔らかいため変形できることから、分娩への影響について、本当のところはわからないとの意見であった。

 申請側は、将来への禍根なき障害認定・解決を目指し、厳しく障害等級を追求しなければならない。対して、被害者が10代の女性であるゆえ、自賠責調査事務所は寛大な判断をしたのかもしれない。
 
 次回 ⇒ 生殖機能の障害