次に三井住友さんの約款です。損J日興、東海日動とも違う、微妙かつ独自の内容です。
<人身傷害> 第5条 損害額の決定
(1)次の①~③区分ごとに、自社基準で算定します。
① ケガの損害
② 後遺障害の損害
③ 死亡 (かなり略しました)
(2)(1)の規定に関わらず賠償義務者がある場合には、保険金請求権者は、(1)の区分ごとに<別紙>に定める基準により算定された金額のうち、賠償義務者に損害請求すべき損害に係る額を除いた金額のみを当社が人身傷害保険金を支払うべき損害の額として、当社に請求することができます。
この場合における、賠償義務者に損害賠償請求すべき損害に係る額とは、(1)①から③までの区分ごとに算定された金額に対し、次の手順に基づいて決定した賠償義務者の責任割合を乗じた額(賠償義務者がある場合において、自賠責保険等によって支払われる金額を下回る場合には、自賠責保険等によって支払われる金額とします。)の合計額とします。
① 当社と保険金請求者との間の協議
② ①の協議が成立しない場合は、当社と保険金請求者との間における訴訟、裁判上の和解または調停。
相変わらず難解な文章です。弁護士の先生ですら「訳わからん」と言っています。訳します・・
「まず、人身傷害の保険金は当社の基準で計算します。それで納得できなければ話し合いましょう。それでもダメなら、うちと裁判して決めようや。」
何とまぁ、三井住友さんの約款は関西っぽいノリを感じます。続いて無保険車傷害ですが、人身傷害約款の(2)とほぼ同じ意味です。あえて全文を対比してみましょう。
<無保険車傷害> 第6条 損害額の決定
当社が無保険車傷害を支払うべき損害の額は、賠償義務者が被保険者またはその父母配偶者もしくは子が被った損害に対して法律上負担すべきものと認められる損害賠償責任の額によって定めます。この場合における損害のは、保険金請求者と賠償義務者との間で損害賠償責任の額が定められているといないにかかわらず、次の手続きによって決定します。
① 当社と保険金請求者との間の協議
② ①の協議が成立しない場合は、当社と保険金請求者との間における訴訟、裁判上の和解または調停。
基本的には人身傷害の支払い内容と同じです。しかし、改定前(吸収前)の無保険車傷害・約款では、「相手との裁判での判決・和解額」をそのまま認める余地があったのですが、それが「自社との交渉」、それがダメなら「自社との裁判」の結果とは・・少々意地悪さを感じます。
※ また、三井住友さんの他社と違う所は「または調停」と、調停の結果も認めていることでしょうか。調停は損保側からよく申立てられる方法の一つです。相互の歩み寄りが基本方針ですので、裁判基準と保険会社基準の”中を取って”のようなぬるい解決金額にできそうです。やはり、交通事故紛争センターや他の斡旋機関は認めないでしょう。
私は実務上、三井住友さんがこう考えているのではないかと想像しています。
1、契約者が賠償先行にて、加害者から賠償金を請求した。もしくは自身に過失無く、全額請求した。
2、その金額から自身の過失分を差し引かれた。もしくは相手に資力無く、踏み倒された。
3、差し引かれた過失分を自身契約の三井住友さんに請求した。もしくは相手は支払わず居直ったので、全額を三井住友さんに請求した。
結果A:それが裁判で決定した賠償総額なら・・①の協議で、「まぁ認めましょう」となる。
結果B:それが交渉や斡旋で決定した賠償総額なら・・②の通り「うちと裁判しましょう」となる。
つまり、契約者に2回裁判をさせないようにしたのではないかと。加害者と裁判して、さらに自分の保険会社とも裁判・・いかにも不毛です。それでも自社基準一辺倒で押し切らず、裁判での決定なら認める姿勢を感じます。しかし、裁判はそれなりに大事、金額や時間の問題から、裁判を断念する契約者が多いと思います。したがって、保険会社の優位は変わらず、三井住友さんの無保険車傷害の約款も改悪されたと言うべきでしょう。
これは、相手との裁判の金額を認める損J日興、あいおいニッセイ同和の約款にも言えることです。裁判外、例えば紛争センターの斡旋や交渉での解決でも、裁判基準相応の金額を得るケースがあります。しかし、裁判で決まった額でなければ、人身傷害の基準を押し付けられてしまうのです。となると、三井住友さんの②のように、自らの契約社である”人身傷害の会社へ保険金請求訴訟”を起さなければならなくなります。やはり、不毛です。
明日からまとめに ⇒ ⑨