交通事故外傷で回復の進行を阻むものに「浮腫」があります。浮腫とは簡単に言うと「むくみ」です。原因はリンパの滞りで、一般的にはさまざまな内臓疾患(心臓・腎臓・肝臓・甲状腺の異常、血管・リンパ系の循環障害、悪性腫瘍)の兆候と言われています。また局所性浮腫の原因には深部静脈血栓症等があります。
リンパ液の流れは、筋肉のポンプ作用と外部からの刺激に委ねられています。重力にまかせて下肢には流れていきますが、下肢から上に戻りにくいのがリンパの特徴です。交通事故で下肢を骨折して長期間ギブス固定を続けた、骨癒合が得られるまで動かさず安静にした・・・すると下肢の筋肉を使う頻度が減るのでリンパの流れが悪くなり、浮腫を併発します。
浮腫が受傷後も長く残存する場合、痛みからリハビリの進行を妨げてしまいます。その結果、筋肉が減ってしまうと、さらにむくみやすくなるという悪循環に陥ります。浮腫は男性より女性に多くみられます。これは筋肉量の差がある為です。早期のリハビリで下肢の筋肉を鍛える必要があります。またむくみのある部位は冷えますので、血液循環も悪くなり、ますますむくみがひどくなります。これを防ぐには冷やさないこと、具体的にはお風呂で温めることが推奨されています。
浮腫が直接、後遺障害と認められることはありませんが、リハビリを阻害するものとしてやっかいな存在です。骨折後の関節可動域制限の残存にも一定の影響、原因となるはずです。しかしながらら自賠責保険は関節可動域制限の原因を「本人のリハビリ不足」とばっさり切り捨てます。骨癒合が良好であるにも関わらず、高齢や浮腫の併発でリハビリが十分にできなかったために、関節可動域制限が残存した・・・このような原因であっても自賠責の審査基準に阻まれます。浮腫の併発で障害がより残存した場合、これは個別具体的な症状として評価されるべきと思います。現状では訴訟上での主張になるかと思います。